Polycomb抑制複合体2は異性型Polycomb抑制複合体1によるヒストンH2Aのユビキチン化により染色体DNAと結合する
近藤 隆・古関明彦
(理化学研究所統合生命医科学研究センター 免疫器官形成研究グループ)
email:近藤 隆
DOI: 10.7875/first.author.2014.092
Variant PRC1 complex-dependent H2A ubiquitylation drives PRC2 recruitment and polycomb domain formation.
Neil P. Blackledge, Anca M. Farcas, Takashi Kondo, Hamish W. King, Joanna F. McGouran, Lars L.P. Hanssen, Shinsuke Ito, Sarah Cooper, Kaori Kondo, Yoko Koseki, Tomoyuki Ishikura, Hannah K. Long, Thomas W. Sheahan, Neil Brockdorff, Benedikt M. Kessler, Haruhiko Koseki, Robert J. Klose
Cell, 157, 1445-1459 (2014)
Polycomb抑制複合体1およびPolycomb抑制複合体2は転写を制御することにより細胞の分化および発生において必須の役割を担っている.しかしながら,それらの染色体DNAにおける標的となる領域の認識の機構に関しては解明されていなかった.これまで,Polycomb抑制複合体1による染色体DNAの認識は,Polycomb抑制複合体2によるヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化に依存すると考えられてきた.しかし,この研究において新たに開発した方法により,Polycomb抑制複合体2はPolycomb抑制複合体1によるヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化を認識することにより,染色体DNAと結合することが見い出された.また,このヒストンH2Aのユビキチン化は従来型のPolycomb抑制複合体1ではなく,異性型のPolycomb抑制複合体1により担われていることも見い出された.
Polycomb群タンパク質は転写抑制性のクロマチンタンパク質である.複数のタンパク質が複合体を形成して機能していることが知られており,これまで,主としてヒストンH2Aの119番目のLysをユビキチン化するPolycomb抑制複合体1,および,ヒストンH3の27番目のLysをトリメチル化するPolycomb抑制複合体2の2つが知られていた1).また,これらが遺伝子発現の抑制のため染色体DNAに結合する際には,まず,Polycomb抑制複合体2が染色体DNAにおける結合領域に存在するヒストンH3の27番目のLysをトリメチル化し,それをPolycomb抑制複合体1の構成タンパク質であるCBXが認識して結合すると考えられていた2).近年になり,Polycomb抑制複合体1にはCBXを含むものだけでなく,RYBPあるいはKDM2Bを含む異性型のPolycomb抑制複合体1も存在することが判明した3,4).しかしながら,これら異性型Polycomb抑制複合体1の機能については不明であった.この研究においては,大腸菌人工染色体を用いてDNA結合タンパク質の結合領域を探索するアッセイ系を開発して,Polycomb群タンパク質の染色体DNAにおける結合領域について検討し,異性型Polycomb抑制複合体1の重要性を見い出した.
近年,Polycomb抑制複合体1にはCBXおよびPHCを含む従来型のPolycomb抑制複合体1と,CBXおよびPHCを含まずRYBPあるいはKDM2Bなどを含む異性型のPolycomb抑制複合体1の存在することが知られるようになってきた.従来型Polycomb抑制複合体1はPCGF2あるいはPCGF4を含むが,異性型Polycomb抑制複合体1はそれらの近縁のタンパク質であるPCGF1,PCGF3,PCGF5を含むことが判明している(図1a).これらの機能の相違を検討するため,Polycomb群タンパク質との結合領域をもたない約200 kbのヒトの染色体の断片を含む大腸菌人工染色体にテトラサイクリン耐性遺伝子の制御配列であるTetO配列を挿入し,これをES細胞に導入した.このES細胞にPolycomb群タンパク質とTetO配列に結合するTETRとの融合タンパク質を発現させることにより,さまざまなPolycomb群タンパク質のDNAとの結合を解析した(図1b).従来型Polycomb抑制複合体1に特異的な構成タンパク質であるPCGF2あるいはPCGF4との融合タンパク質を発現させた場合には,従来型Polycomb抑制複合体1のほかの構成タンパク質がTetO配列の周辺に結合したが,ヒストンヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化およびヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化はみられず,Polycomb抑制複合体2,および,異性型Polycomb抑制複合体1に特異的な構成タンパク質であるPCGF1あるいはKDM2Bの蓄積はみられなかった.また逆に,PCGF1,PCGF3,PCGF5といった異性型Polycomb抑制複合体1に特異的な構成タンパク質との融合タンパク質を発現させた場合,これらのすべてのPolycomb群タンパク質の蓄積することが判明した.これらの観察は,異性型Polycomb抑制複合体1がヒストンH2Aのユビキチン化において重要であり,従来型Polycomb抑制複合体1はその活性にはあまり寄与していないことを示し,異性型Polycomb抑制複合体1がPolycomb群タンパク質による染色体DNAの認識において階層のもっとも上位にあることを示唆した.
これまでは,Polycomb抑制複合体2がヒストンH3の27番目のLysをトリメチル化することにより,Polycomb群タンパク質による染色体DNAの認識を制御していると考えられていた.異性型Polycomb抑制複合体1はヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化を認識するCBXを含まないことから,異性型Polycomb抑制複合体1による染色体DNAの認識はPolycomb抑制複合体2に依存しないことが予測された.さきの実験と同様に,Polycomb抑制複合体2の構成タンパク質であるEEDとTETRとの融合タンパク質を作製し,大腸菌人工染色体を導入したES細胞に発現させた.その結果,大腸菌人工染色体のTetO配列の周辺にPolycomb抑制複合体2の構成タンパク質であるEZHおよびSUZ12の蓄積,および,ヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化が見い出され,さらに,CBX7あるいはPCGF2などの従来型Polycomb抑制複合体1の構成タンパク質が確認された.しかしながら,異性型Polycomb抑制複合体1の構成タンパク質であるPCGF1の蓄積,および,ヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化は見い出されなかった.さきの結果とあわせて考えると,異性型Polycomb抑制複合体1がヒストンH2Aをユビキチン化することにより染色体DNAにPolycomb抑制複合体2をリクルートし,さらに,Polycomb抑制複合体2によるヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化により従来型Polycomb抑制複合体1をリクルートすることが示唆されたが,それぞれの反応は階層的かつ一方向的であり,逆反応は生じないことが示唆された(図2).
KDM2Bは異性型Polycomb抑制複合体1に特異的な構成タンパク質であることが知られているが,その機能は解析されていなかった.Kdm2遺伝子にはKdm2a遺伝子およびKdm2b遺伝子の2つが存在するが,これまでの複合体およびクロマチンの解析において,KDM2AとKDM2Bとは機能がまったく異なっておりPolycomb抑制複合体1に含まれるのはKDM2Bだけであることが示唆されていた.DNA結合領域に変異をもつKDM2BとTETRとの融合タンパク質を,大腸菌人工染色体を導入したES細胞に発現させ,Polycomb群タンパク質,および,ヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化を解析したところ,異性型Polycomb抑制複合体1はPolycomb抑制複合体2,従来型Polycomb抑制複合体1,ヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化の局在に必須であることが判明した.さらに,Kdm2bノックアウトマウスを作製しその表現型を検討した.一般に,動物におけるPolycomb群タンパク質の機能としてホメオティック遺伝子の抑制があり,その機能不全の表現型として脊椎骨の前後軸における同一性の変化がある5).Kdm2bヘテロノックアウトマウスはPolycomb群タンパク質のノックアウトマウスにおいて観察される脊椎骨の同一性の変化の表現型が見い出され,生体においても,異性型のPolycomb抑制複合体1はPolycomb抑制複合体の一員であると明確にいうことのできることが判明した.
この研究においては,新たに開発された大腸菌人工染色体を用いた系を用いて,Polycomb群タンパク質による染色体DNAの認識における階層性について解析した.その結果,これまで異性型Polycomb抑制複合体1に関してはその位置づけが不明であったが,その階層性が明確になった.また,Kdm2bの変異がPolycomb群タンパク質の変異により生じる表現型をもつことが確認されたことにより,従来型Polycomb抑制複合体1と異性型Polycomb抑制複合体1は単にそれぞれの構成タンパク質の一部を共有しているだけではなく,異性型Polycomb抑制複合体1はPolycomb群タンパク質による遺伝子発現の制御機構に密接に結びついていることが確認され,文字どおり,Polycomb抑制複合体の一員であることが証明された.
Polycomb群タンパク質は発生において非常に重要であることはすでに判明しているが,一部のがんの形成においても重要であると考えられている6).Polycomb群タンパク質による遺伝子発現の制御機構の階層における頂点に異性型Polycomb抑制複合体1がくることが判明したことは,その制御の多くを異性型Polycomb抑制複合体1が担っている可能性も示唆しており,今後,異性型Polycomb抑制複合体1の機能解析が重要であると考えられる.
略歴:1992年 東京大学大学院医学研究科博士課程 修了,1994年 癌研究会癌研究所 嘱託研究員,2000年 スイスGeneva大学 博士研究員,2010年 理化学研究所脳科学総合研究センター ユニットリーダー,2013年 理化学研究所統合生命医科学研究センター 研究員を経て,同年より神奈川科学技術アカデミー サブリーダー.
研究テーマ:生命の活動における遺伝子の発現制御と,核あるいは染色体の高次構造のエピジェネティックな相関.
抱負:平穏な日々を過ごすこと.
古関 明彦(Haruhiko Koseki)
理化学研究所統合生命医科学研究センター グループディレクター.
© 2014 近藤 隆・古関明彦 Licensed under CC 表示 2.1 日本
(理化学研究所統合生命医科学研究センター 免疫器官形成研究グループ)
email:近藤 隆
DOI: 10.7875/first.author.2014.092
Variant PRC1 complex-dependent H2A ubiquitylation drives PRC2 recruitment and polycomb domain formation.
Neil P. Blackledge, Anca M. Farcas, Takashi Kondo, Hamish W. King, Joanna F. McGouran, Lars L.P. Hanssen, Shinsuke Ito, Sarah Cooper, Kaori Kondo, Yoko Koseki, Tomoyuki Ishikura, Hannah K. Long, Thomas W. Sheahan, Neil Brockdorff, Benedikt M. Kessler, Haruhiko Koseki, Robert J. Klose
Cell, 157, 1445-1459 (2014)
要 約
Polycomb抑制複合体1およびPolycomb抑制複合体2は転写を制御することにより細胞の分化および発生において必須の役割を担っている.しかしながら,それらの染色体DNAにおける標的となる領域の認識の機構に関しては解明されていなかった.これまで,Polycomb抑制複合体1による染色体DNAの認識は,Polycomb抑制複合体2によるヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化に依存すると考えられてきた.しかし,この研究において新たに開発した方法により,Polycomb抑制複合体2はPolycomb抑制複合体1によるヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化を認識することにより,染色体DNAと結合することが見い出された.また,このヒストンH2Aのユビキチン化は従来型のPolycomb抑制複合体1ではなく,異性型のPolycomb抑制複合体1により担われていることも見い出された.
はじめに
Polycomb群タンパク質は転写抑制性のクロマチンタンパク質である.複数のタンパク質が複合体を形成して機能していることが知られており,これまで,主としてヒストンH2Aの119番目のLysをユビキチン化するPolycomb抑制複合体1,および,ヒストンH3の27番目のLysをトリメチル化するPolycomb抑制複合体2の2つが知られていた1).また,これらが遺伝子発現の抑制のため染色体DNAに結合する際には,まず,Polycomb抑制複合体2が染色体DNAにおける結合領域に存在するヒストンH3の27番目のLysをトリメチル化し,それをPolycomb抑制複合体1の構成タンパク質であるCBXが認識して結合すると考えられていた2).近年になり,Polycomb抑制複合体1にはCBXを含むものだけでなく,RYBPあるいはKDM2Bを含む異性型のPolycomb抑制複合体1も存在することが判明した3,4).しかしながら,これら異性型Polycomb抑制複合体1の機能については不明であった.この研究においては,大腸菌人工染色体を用いてDNA結合タンパク質の結合領域を探索するアッセイ系を開発して,Polycomb群タンパク質の染色体DNAにおける結合領域について検討し,異性型Polycomb抑制複合体1の重要性を見い出した.
1.従来型のPolycomb抑制複合体1と異性型のPolycomb抑制複合体1
近年,Polycomb抑制複合体1にはCBXおよびPHCを含む従来型のPolycomb抑制複合体1と,CBXおよびPHCを含まずRYBPあるいはKDM2Bなどを含む異性型のPolycomb抑制複合体1の存在することが知られるようになってきた.従来型Polycomb抑制複合体1はPCGF2あるいはPCGF4を含むが,異性型Polycomb抑制複合体1はそれらの近縁のタンパク質であるPCGF1,PCGF3,PCGF5を含むことが判明している(図1a).これらの機能の相違を検討するため,Polycomb群タンパク質との結合領域をもたない約200 kbのヒトの染色体の断片を含む大腸菌人工染色体にテトラサイクリン耐性遺伝子の制御配列であるTetO配列を挿入し,これをES細胞に導入した.このES細胞にPolycomb群タンパク質とTetO配列に結合するTETRとの融合タンパク質を発現させることにより,さまざまなPolycomb群タンパク質のDNAとの結合を解析した(図1b).従来型Polycomb抑制複合体1に特異的な構成タンパク質であるPCGF2あるいはPCGF4との融合タンパク質を発現させた場合には,従来型Polycomb抑制複合体1のほかの構成タンパク質がTetO配列の周辺に結合したが,ヒストンヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化およびヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化はみられず,Polycomb抑制複合体2,および,異性型Polycomb抑制複合体1に特異的な構成タンパク質であるPCGF1あるいはKDM2Bの蓄積はみられなかった.また逆に,PCGF1,PCGF3,PCGF5といった異性型Polycomb抑制複合体1に特異的な構成タンパク質との融合タンパク質を発現させた場合,これらのすべてのPolycomb群タンパク質の蓄積することが判明した.これらの観察は,異性型Polycomb抑制複合体1がヒストンH2Aのユビキチン化において重要であり,従来型Polycomb抑制複合体1はその活性にはあまり寄与していないことを示し,異性型Polycomb抑制複合体1がPolycomb群タンパク質による染色体DNAの認識において階層のもっとも上位にあることを示唆した.
2.Polycomb抑制複合体2は染色体DNAの認識において階層の上位にはない
これまでは,Polycomb抑制複合体2がヒストンH3の27番目のLysをトリメチル化することにより,Polycomb群タンパク質による染色体DNAの認識を制御していると考えられていた.異性型Polycomb抑制複合体1はヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化を認識するCBXを含まないことから,異性型Polycomb抑制複合体1による染色体DNAの認識はPolycomb抑制複合体2に依存しないことが予測された.さきの実験と同様に,Polycomb抑制複合体2の構成タンパク質であるEEDとTETRとの融合タンパク質を作製し,大腸菌人工染色体を導入したES細胞に発現させた.その結果,大腸菌人工染色体のTetO配列の周辺にPolycomb抑制複合体2の構成タンパク質であるEZHおよびSUZ12の蓄積,および,ヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化が見い出され,さらに,CBX7あるいはPCGF2などの従来型Polycomb抑制複合体1の構成タンパク質が確認された.しかしながら,異性型Polycomb抑制複合体1の構成タンパク質であるPCGF1の蓄積,および,ヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化は見い出されなかった.さきの結果とあわせて考えると,異性型Polycomb抑制複合体1がヒストンH2Aをユビキチン化することにより染色体DNAにPolycomb抑制複合体2をリクルートし,さらに,Polycomb抑制複合体2によるヒストンH3の27番目のLysのトリメチル化により従来型Polycomb抑制複合体1をリクルートすることが示唆されたが,それぞれの反応は階層的かつ一方向的であり,逆反応は生じないことが示唆された(図2).
3.異性型Polycomb抑制複合体1に特異的な構成タンパク質であるKDM2Bの変異
KDM2Bは異性型Polycomb抑制複合体1に特異的な構成タンパク質であることが知られているが,その機能は解析されていなかった.Kdm2遺伝子にはKdm2a遺伝子およびKdm2b遺伝子の2つが存在するが,これまでの複合体およびクロマチンの解析において,KDM2AとKDM2Bとは機能がまったく異なっておりPolycomb抑制複合体1に含まれるのはKDM2Bだけであることが示唆されていた.DNA結合領域に変異をもつKDM2BとTETRとの融合タンパク質を,大腸菌人工染色体を導入したES細胞に発現させ,Polycomb群タンパク質,および,ヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化を解析したところ,異性型Polycomb抑制複合体1はPolycomb抑制複合体2,従来型Polycomb抑制複合体1,ヒストンH2Aの119番目のLysのユビキチン化の局在に必須であることが判明した.さらに,Kdm2bノックアウトマウスを作製しその表現型を検討した.一般に,動物におけるPolycomb群タンパク質の機能としてホメオティック遺伝子の抑制があり,その機能不全の表現型として脊椎骨の前後軸における同一性の変化がある5).Kdm2bヘテロノックアウトマウスはPolycomb群タンパク質のノックアウトマウスにおいて観察される脊椎骨の同一性の変化の表現型が見い出され,生体においても,異性型のPolycomb抑制複合体1はPolycomb抑制複合体の一員であると明確にいうことのできることが判明した.
おわりに
この研究においては,新たに開発された大腸菌人工染色体を用いた系を用いて,Polycomb群タンパク質による染色体DNAの認識における階層性について解析した.その結果,これまで異性型Polycomb抑制複合体1に関してはその位置づけが不明であったが,その階層性が明確になった.また,Kdm2bの変異がPolycomb群タンパク質の変異により生じる表現型をもつことが確認されたことにより,従来型Polycomb抑制複合体1と異性型Polycomb抑制複合体1は単にそれぞれの構成タンパク質の一部を共有しているだけではなく,異性型Polycomb抑制複合体1はPolycomb群タンパク質による遺伝子発現の制御機構に密接に結びついていることが確認され,文字どおり,Polycomb抑制複合体の一員であることが証明された.
Polycomb群タンパク質は発生において非常に重要であることはすでに判明しているが,一部のがんの形成においても重要であると考えられている6).Polycomb群タンパク質による遺伝子発現の制御機構の階層における頂点に異性型Polycomb抑制複合体1がくることが判明したことは,その制御の多くを異性型Polycomb抑制複合体1が担っている可能性も示唆しており,今後,異性型Polycomb抑制複合体1の機能解析が重要であると考えられる.
文 献
- Shilatifard, A.: Chromatin modifications by methylation and ubiquitination: implications in the regulation of gene expression. Annu. Rev. Biochem., 75, 243-269 (2006)[PubMed]
- Wang, L., Brown J. L., Cao, R. et al.: Hierarchical recruitment of Polycomb group silencing complexes. Mol. Cell, 14, 637-646 (2004)[PubMed]
- Farcas, A. M., Blackledge, N. P., Sudbery, I. et al.: KDM2B links the Polycomb Respressive complex 1 (PRC1) to recognition of CpG islands. Elife, 1, e00205 (2012)[PubMed]
- Gao, Z., Zhang, J., Bonasio, R. et al.: PCGF homologs, CBX proteins, and RYBP define functionally distinct PRC1 family complexes. Mol. Cell, 45, 344-356 (2012)[PubMed]
- Akasaka, T., van Lohuizen, M., vander Lugt, N. et al.: Mice doubly deficient for Polycomb group genes Mel18 and Bmi1 reveal synergy and requirement for maintenance but not initiation of Hox gene expression. Development, 128, 1587-1597 (2001)[PubMed]
- Marchesi, I., Giordano, A. & Bagella, L.: Roles of enhancer of zeste homolog 2: from skeletal muscle differentiation to rhabdomyosarcoma carcinogenesis. Cell Cycle, 15, 516-527 (2014)[PubMed]
著者プロフィール
略歴:1992年 東京大学大学院医学研究科博士課程 修了,1994年 癌研究会癌研究所 嘱託研究員,2000年 スイスGeneva大学 博士研究員,2010年 理化学研究所脳科学総合研究センター ユニットリーダー,2013年 理化学研究所統合生命医科学研究センター 研究員を経て,同年より神奈川科学技術アカデミー サブリーダー.
研究テーマ:生命の活動における遺伝子の発現制御と,核あるいは染色体の高次構造のエピジェネティックな相関.
抱負:平穏な日々を過ごすこと.
古関 明彦(Haruhiko Koseki)
理化学研究所統合生命医科学研究センター グループディレクター.
© 2014 近藤 隆・古関明彦 Licensed under CC 表示 2.1 日本