C型レクチンMCLは結核菌の応答に寄与する新規のトレハロースジミコール酸の受容体である
三宅靖延・山崎 晶
(九州大学生体防御医学研究所 感染ネットワーク研究センター分子免疫学分野)
email:三宅靖延
DOI: 10.7875/first.author.2013.059
C-type lectin MCL is an FcRγ-coupled receptor that mediates the adjuvanticity of mycobacterial cord factor.
Yasunobu Miyake, Kenji Toyonaga, Daiki Mori, Shigeru Kakuta, Yoshihiko Hoshino, Akiko Oyamada, Hisakata Yamada, Ken-ichiro Ono, Mikita Suyama, Yoichiro Iwakura, Yasunobu Yoshikai, Sho Yamasaki
Immunity, 38, 1050-1062 (2013)
結核菌はいまなお人類をおびやかす強力な病原体である.今回,筆者らは,結核菌を認識する新たな受容体としてC型レクチンMCLを見い出した.MCLは結核菌の表面に存在する糖脂質トレハロースジミコール酸を感知し,高親和性のトレハロースジミコール酸受容体であるMincleの発現を誘導するという重要な役割を担っていることがわかった.MCLノックアウトマウスではトレハロースジミコール酸や結核菌による自然免疫応答および獲得免疫応答が障害されたことから,MCLは宿主免疫系による結核菌の応答に重要なタンパク質であることが明らかになった.また,MCLは獲得免疫を強力に活性化させる性質があることも明らかになり,免疫アジュバントの開発につながる可能性も期待される.
わが国における結核の罹患率は先進国のなかでも突出して高く,いまなお新たな治療法の開発が望まれている.そのためには,いまだ不明な点の多い宿主免疫系による結核菌の認識機構を分子レベルで解明することが必要と考えられる.
結核菌は多くの免疫活性化物質を含有しており,そのひとつにコード因子がある.結核菌はひも(コード)状に成長することから,コードを形成する因子が毒性に関与するものと考えられ精製された糖脂質であり,のちに,トレハロースに結核菌に特有の長鎖脂肪酸であるミコール酸が2つエステル結合した構造であることが示されて,トレハロースジミコール酸(trehalose dimycolate:TDM)とよばれるようになった1).トレハロースジミコール酸をマウスやウサギに投与すると急性炎症や肺胞肉芽腫の形成がひき起こされることから結核菌の毒性因子として精力的な研究が行われてきたが,その受容体は半世紀以上のあいだ不明であった.筆者らの研究室では,C型レクチンMincleがトレハロースジミコール酸を認識する受容体であることを明らかにした2).Mincleを欠損したマウスではトレハロースジミコール酸による免疫応答がほぼ完全に消失することから,Mincleは支配的なトレハロースジミコール酸受容体であると考えられた.Mincleは通常の状態では発現しておらず,さまざまなストレスにより一過的に発現が誘導される.筆者らは,Mincleの発現がそれ自体のリガンドであるトレハロースジミコール酸により誘導されることに着目した.通常の状態ではMincleは発現していないにもかかわらず,トレハロースジミコール酸によりMincleの発現が誘導されることは,Mincleのほかに未知のトレハロースジミコール酸の受容体が存在し,それがMincleの発現を誘導しているのではないかと考えた.
Mincleの発現を誘導する未知のトレハロースジミコール酸の受容体を特定するため,Mincleの発現を蛍光タンパク質GFPによりモニターできるレポーターマウスを作製した.トレハロースジミコール酸をマウスに尾静脈投与すると,肺にMincle陽性細胞が集積し結核菌の感染の特徴である肺胞肉芽腫が形成される.Mincle遺伝子の一方の対立遺伝子をGFP遺伝子に置き換えたヘテロ置換マウスでは,肺胞肉芽腫の形成にともないGFP陽性細胞が観察されたことから,GFPはMincleの発現を反映することが確認された.さらに,Mincle遺伝子の両方の対立遺伝子をGFP遺伝子に置き換えたホモ置換マウスでは,Mincle遺伝子は完全に欠損しているにもかかわらずGFP陽性細胞が観察された.この結果から,Mincleの発現はそれ以外のトレハロースジミコール酸の受容体により誘導されていることが明らかになった.ヘテロ置換マウスにおけるGFPの発現はMincleのブロッキング抗体である1B6抗体の投与により抑制された.驚いたことに,1B6抗体はMincleを完全に欠損したホモ置換マウスにおけるGFPの発現をも抑制した.このことから,1B6抗体はMincleのほかのトレハロースジミコール酸の受容体にも交差反応している可能性が推測された.Mincleにおける1B6抗体の認識配列はすでに明らかにされていたので3),当該の配列をコードする遺伝子をデータベースから検索したところ,4つの遺伝子がヒットした.そのうち,肺に発現しており,かつ,膜貫通タンパク質をコードするという条件より,候補はMCL遺伝子にしぼられた.
MCLは1998年に遺伝子クローニングされたC型レクチンかつII型膜貫通タンパク質であり4),ごく最近になり,活性化受容体であること,また,エンドサイトーシス活性をもつことがあいついで報告されたが,リガンドや生理的な役割については不明であった5,6).そこで,組換えMCLタンパク質を作製してトレハロースジミコール酸との結合を調べたところ,Mincleと比較すると親和性は弱いものの,確かにトレハロースジミコール酸と結合した.MCLはMincleと同様にマクロファージや樹状細胞などミエロイド系細胞に発現しており,その発現の様式はMincleとは異なり恒常的であった.また,MCLはMincleと同様にITAM共役型アダプタータンパク質であるFc受容体γ鎖と会合して活性化シグナルを伝達することが明らかになった.
MCLノックアウトマウスを作製し,トレハロースジミコール酸の応答における寄与を検討した.トレハロースジミコール酸による炎症性サイトカインの産生や肺胞肉芽腫の形成など自然免疫応答はMincleノックアウトマウスでほぼ完全に消失することから,当初は,MCLノックアウトマウスではトレハロースジミコール酸の応答に変化はないのではないかと推測した.しかしながら予想に反して,MCLノックアウトマウスに由来する樹状細胞やマクロファージではトレハロースジミコール酸の刺激によるTNFやMIP-2の産生は著明に減弱した.さらに,トレハロースジミコール酸の投与による肺胞肉芽腫の形成も障害された.以上の結果から,MCLもまたトレハロースジミコール酸による自然免疫応答に必須であることが明らかになった.
これまでの解析結果から,MincleとMCLは互いの機能を補完できない,つまり,並列関係ではないことが明らかになった.MCLはMincleが発現するよりさきに恒常的に発現していることから,MCLが最初にトレハロースジミコール酸を認識し,Mincleの発現を誘導しているのではないかと考えた.実際に,MCLノックアウトマウスではトレハロースジミコール酸によるMincleの発現の誘導は著明に減弱した.一方,MincleノックアウトマウスにおけるMCLの発現に変化は認められなかった.以上の結果から,MCLはトレハロースジミコール酸によるMincleの発現を制御していることが明らかになった.
トレハロースジミコール酸は自然免疫だけでなく獲得免疫も惹起するため,古くより免疫アジュバントとして用いられてきた.実際に,トレハロースジミコール酸を免疫アジュバントとして用いることで遅延型過敏症や自己免疫性脳脊髄炎などの獲得免疫応答が誘導される.MCLノックアウトマウスではこれらの獲得免疫応答が強く障害されたことから,MCLはトレハロースジミコール酸による獲得免疫の活性化にも重要であることが明らかになった.
結核菌の感染におけるMCLの寄与について検討を行った.マクロファージに結核菌を感染させると炎症性サイトカインの産生が誘導されるが,MCLを欠損したマクロファージではこれらの産生は有意に減少した.このとき,Mincleの発現の誘導が著明に減弱していることも判明した.以上の結果から,MCLは結核菌の感染に対する免疫応答において重要な役割をはたしていることが明らかになった(図1).
MCL遺伝子はMincle遺伝子座のとなりにコードされており,この2つの遺伝子は高い相同性をもっていた.そこで,これら遺伝子について進化学的な解析を行ったところ,有袋類まではMincle遺伝子のオルソログと考えられる遺伝子のみが存在し,有胎盤類となる過程で遺伝子重複によりMCL遺伝子が生じ,これはヒトにいたるまで保存されていることが判明した.哺乳類は進化の過程でMCLという第2のトレハロースジミコール酸の受容体を獲得することにより,強力な病原体である結核菌に対抗してきたのかもしれない.このように,1つのリガンドに対し,恒常的に発現する低親和性の受容体と,それにより発現の誘導される高親和性の受容体という2つの受容体が準備されている例は,これまでに報告がない.このような2つの受容体による制御機構には,反応を増幅してより効率のよい免疫応答を可能にする,誤作動による免疫系の暴走を防ぐ,などの利点が考えられるが,そのほかにもMCLに特有の機能があるのかもしれない.興味深いことに,Mincleは自然免疫を強力に活性化するのに対し,MCLはむしろ獲得免疫を強く活性化する性質のあることが見い出された.MCLに選択的に作用するリガンドは,自然免疫の活性化による炎症反応を回避して獲得免疫を惹起できる理想的な免疫アジュバントとしての可能性が期待できる.
略歴:2003年 東京工業大学大学院生命理工学研究科 修了,同年 理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究所 研究員を経て,2009年より九州大学生体防御医学研究所 助教.
研究テーマ:免疫受容体を介した生体防御および恒常性の維持機構.
関心事:自己(組織の傷害など)および非自己(病原菌の感染など)による危機に対する生体の応答.
山崎 晶(Sho Yamasaki)
九州大学生体防御医学研究所 教授.
研究室URL:http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/labo/molimm/
© 2013 三宅靖延・山崎 晶 Licensed under CC 表示 2.1 日本
(九州大学生体防御医学研究所 感染ネットワーク研究センター分子免疫学分野)
email:三宅靖延
DOI: 10.7875/first.author.2013.059
C-type lectin MCL is an FcRγ-coupled receptor that mediates the adjuvanticity of mycobacterial cord factor.
Yasunobu Miyake, Kenji Toyonaga, Daiki Mori, Shigeru Kakuta, Yoshihiko Hoshino, Akiko Oyamada, Hisakata Yamada, Ken-ichiro Ono, Mikita Suyama, Yoichiro Iwakura, Yasunobu Yoshikai, Sho Yamasaki
Immunity, 38, 1050-1062 (2013)
要 約
結核菌はいまなお人類をおびやかす強力な病原体である.今回,筆者らは,結核菌を認識する新たな受容体としてC型レクチンMCLを見い出した.MCLは結核菌の表面に存在する糖脂質トレハロースジミコール酸を感知し,高親和性のトレハロースジミコール酸受容体であるMincleの発現を誘導するという重要な役割を担っていることがわかった.MCLノックアウトマウスではトレハロースジミコール酸や結核菌による自然免疫応答および獲得免疫応答が障害されたことから,MCLは宿主免疫系による結核菌の応答に重要なタンパク質であることが明らかになった.また,MCLは獲得免疫を強力に活性化させる性質があることも明らかになり,免疫アジュバントの開発につながる可能性も期待される.
はじめに
わが国における結核の罹患率は先進国のなかでも突出して高く,いまなお新たな治療法の開発が望まれている.そのためには,いまだ不明な点の多い宿主免疫系による結核菌の認識機構を分子レベルで解明することが必要と考えられる.
結核菌は多くの免疫活性化物質を含有しており,そのひとつにコード因子がある.結核菌はひも(コード)状に成長することから,コードを形成する因子が毒性に関与するものと考えられ精製された糖脂質であり,のちに,トレハロースに結核菌に特有の長鎖脂肪酸であるミコール酸が2つエステル結合した構造であることが示されて,トレハロースジミコール酸(trehalose dimycolate:TDM)とよばれるようになった1).トレハロースジミコール酸をマウスやウサギに投与すると急性炎症や肺胞肉芽腫の形成がひき起こされることから結核菌の毒性因子として精力的な研究が行われてきたが,その受容体は半世紀以上のあいだ不明であった.筆者らの研究室では,C型レクチンMincleがトレハロースジミコール酸を認識する受容体であることを明らかにした2).Mincleを欠損したマウスではトレハロースジミコール酸による免疫応答がほぼ完全に消失することから,Mincleは支配的なトレハロースジミコール酸受容体であると考えられた.Mincleは通常の状態では発現しておらず,さまざまなストレスにより一過的に発現が誘導される.筆者らは,Mincleの発現がそれ自体のリガンドであるトレハロースジミコール酸により誘導されることに着目した.通常の状態ではMincleは発現していないにもかかわらず,トレハロースジミコール酸によりMincleの発現が誘導されることは,Mincleのほかに未知のトレハロースジミコール酸の受容体が存在し,それがMincleの発現を誘導しているのではないかと考えた.
1.Mincleの発現は未知のトレハロースジミコール酸の受容体により誘導される
Mincleの発現を誘導する未知のトレハロースジミコール酸の受容体を特定するため,Mincleの発現を蛍光タンパク質GFPによりモニターできるレポーターマウスを作製した.トレハロースジミコール酸をマウスに尾静脈投与すると,肺にMincle陽性細胞が集積し結核菌の感染の特徴である肺胞肉芽腫が形成される.Mincle遺伝子の一方の対立遺伝子をGFP遺伝子に置き換えたヘテロ置換マウスでは,肺胞肉芽腫の形成にともないGFP陽性細胞が観察されたことから,GFPはMincleの発現を反映することが確認された.さらに,Mincle遺伝子の両方の対立遺伝子をGFP遺伝子に置き換えたホモ置換マウスでは,Mincle遺伝子は完全に欠損しているにもかかわらずGFP陽性細胞が観察された.この結果から,Mincleの発現はそれ以外のトレハロースジミコール酸の受容体により誘導されていることが明らかになった.ヘテロ置換マウスにおけるGFPの発現はMincleのブロッキング抗体である1B6抗体の投与により抑制された.驚いたことに,1B6抗体はMincleを完全に欠損したホモ置換マウスにおけるGFPの発現をも抑制した.このことから,1B6抗体はMincleのほかのトレハロースジミコール酸の受容体にも交差反応している可能性が推測された.Mincleにおける1B6抗体の認識配列はすでに明らかにされていたので3),当該の配列をコードする遺伝子をデータベースから検索したところ,4つの遺伝子がヒットした.そのうち,肺に発現しており,かつ,膜貫通タンパク質をコードするという条件より,候補はMCL遺伝子にしぼられた.
2.MCLはFc受容体γ鎖に会合するトレハロースジミコール酸の受容体である
MCLは1998年に遺伝子クローニングされたC型レクチンかつII型膜貫通タンパク質であり4),ごく最近になり,活性化受容体であること,また,エンドサイトーシス活性をもつことがあいついで報告されたが,リガンドや生理的な役割については不明であった5,6).そこで,組換えMCLタンパク質を作製してトレハロースジミコール酸との結合を調べたところ,Mincleと比較すると親和性は弱いものの,確かにトレハロースジミコール酸と結合した.MCLはMincleと同様にマクロファージや樹状細胞などミエロイド系細胞に発現しており,その発現の様式はMincleとは異なり恒常的であった.また,MCLはMincleと同様にITAM共役型アダプタータンパク質であるFc受容体γ鎖と会合して活性化シグナルを伝達することが明らかになった.
3.MCLはトレハロースジミコール酸による自然免疫応答に必須である
MCLノックアウトマウスを作製し,トレハロースジミコール酸の応答における寄与を検討した.トレハロースジミコール酸による炎症性サイトカインの産生や肺胞肉芽腫の形成など自然免疫応答はMincleノックアウトマウスでほぼ完全に消失することから,当初は,MCLノックアウトマウスではトレハロースジミコール酸の応答に変化はないのではないかと推測した.しかしながら予想に反して,MCLノックアウトマウスに由来する樹状細胞やマクロファージではトレハロースジミコール酸の刺激によるTNFやMIP-2の産生は著明に減弱した.さらに,トレハロースジミコール酸の投与による肺胞肉芽腫の形成も障害された.以上の結果から,MCLもまたトレハロースジミコール酸による自然免疫応答に必須であることが明らかになった.
4.MCLはMincleの発現を制御する
これまでの解析結果から,MincleとMCLは互いの機能を補完できない,つまり,並列関係ではないことが明らかになった.MCLはMincleが発現するよりさきに恒常的に発現していることから,MCLが最初にトレハロースジミコール酸を認識し,Mincleの発現を誘導しているのではないかと考えた.実際に,MCLノックアウトマウスではトレハロースジミコール酸によるMincleの発現の誘導は著明に減弱した.一方,MincleノックアウトマウスにおけるMCLの発現に変化は認められなかった.以上の結果から,MCLはトレハロースジミコール酸によるMincleの発現を制御していることが明らかになった.
5.MCLは獲得免疫を活性化する
トレハロースジミコール酸は自然免疫だけでなく獲得免疫も惹起するため,古くより免疫アジュバントとして用いられてきた.実際に,トレハロースジミコール酸を免疫アジュバントとして用いることで遅延型過敏症や自己免疫性脳脊髄炎などの獲得免疫応答が誘導される.MCLノックアウトマウスではこれらの獲得免疫応答が強く障害されたことから,MCLはトレハロースジミコール酸による獲得免疫の活性化にも重要であることが明らかになった.
6.MCLは結核菌の応答に寄与している
結核菌の感染におけるMCLの寄与について検討を行った.マクロファージに結核菌を感染させると炎症性サイトカインの産生が誘導されるが,MCLを欠損したマクロファージではこれらの産生は有意に減少した.このとき,Mincleの発現の誘導が著明に減弱していることも判明した.以上の結果から,MCLは結核菌の感染に対する免疫応答において重要な役割をはたしていることが明らかになった(図1).
おわりに
MCL遺伝子はMincle遺伝子座のとなりにコードされており,この2つの遺伝子は高い相同性をもっていた.そこで,これら遺伝子について進化学的な解析を行ったところ,有袋類まではMincle遺伝子のオルソログと考えられる遺伝子のみが存在し,有胎盤類となる過程で遺伝子重複によりMCL遺伝子が生じ,これはヒトにいたるまで保存されていることが判明した.哺乳類は進化の過程でMCLという第2のトレハロースジミコール酸の受容体を獲得することにより,強力な病原体である結核菌に対抗してきたのかもしれない.このように,1つのリガンドに対し,恒常的に発現する低親和性の受容体と,それにより発現の誘導される高親和性の受容体という2つの受容体が準備されている例は,これまでに報告がない.このような2つの受容体による制御機構には,反応を増幅してより効率のよい免疫応答を可能にする,誤作動による免疫系の暴走を防ぐ,などの利点が考えられるが,そのほかにもMCLに特有の機能があるのかもしれない.興味深いことに,Mincleは自然免疫を強力に活性化するのに対し,MCLはむしろ獲得免疫を強く活性化する性質のあることが見い出された.MCLに選択的に作用するリガンドは,自然免疫の活性化による炎症反応を回避して獲得免疫を惹起できる理想的な免疫アジュバントとしての可能性が期待できる.
文 献
- Noll, H., Bloch, H., Asselineau, J. et al.: The chemical structure of the cord factor of Mycobacterium tuberculosis. Biochim. Biophys. Acta, 20, 299-309 (1956)[PubMed]
- Ishikawa, E., Ishikawa, T., Morita, Y. et al.: Direct recognition of the mycobacterial glycolipid, trehalose dimycolate, by C-type lectin Mincle. J. Exp. Med., 206, 2879-2888 (2009)[PubMed]
- Yamasaki, S., Ishikawa, E., Sakuma, M. et al.: Mincle is an ITAM-coupled activating receptor that senses damaged cells. Nat. Immunol., 9, 1179-1188 (2008)[PubMed]
- Balch, S. G., McKnight, A. J., Seldin, M. F. et al.: Cloning of a novel C-type lectin expressed by murine macrophages. J. Biol. Chem., 273, 18656-18664 (1998)[PubMed]
- Graham, L. M., Gupta, V., Schafer, G. et al.: The C-type lectin receptor CLECSF8 (CLEC4D) is expressed by myeloid cells and triggers cellular activation through Syk kinase. J. Biol. Chem., 287, 25964-25974 (2012)[PubMed]
- Lobato-Pascual, A., Saether, P. C., Dahle, M. K. et al.: Rat macrophage C-type lectin is an activating receptor expressed by phagocytic cells. PLoS One, 8, e57406 (2013)[PubMed]
著者プロフィール
略歴:2003年 東京工業大学大学院生命理工学研究科 修了,同年 理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究所 研究員を経て,2009年より九州大学生体防御医学研究所 助教.
研究テーマ:免疫受容体を介した生体防御および恒常性の維持機構.
関心事:自己(組織の傷害など)および非自己(病原菌の感染など)による危機に対する生体の応答.
山崎 晶(Sho Yamasaki)
九州大学生体防御医学研究所 教授.
研究室URL:http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/labo/molimm/
© 2013 三宅靖延・山崎 晶 Licensed under CC 表示 2.1 日本