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第3のNF-κB活性化機構:紫外線はIKKβのアダプター機能を介してNF-κBの活性化を誘導する

土谷佳弘・鎌田英明
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 医化学研究室)
email:鎌田英明
DOI: 10.7875/first.author.2010.032

Nuclear IKKβ is an adaptor protein for IκBα ubiquitination and degradation in UV-induced NF-κB activation.
Yoshihiro Tsuchiya, Tomoichiro Asano, Keiko Nakayama, Tomohisa Kato Jr., Michael Karin, Hideaki Kamata
Molecular Cell, 39, 570-582 (2010)




要 約


 NF-κBは炎症応答の中核で機能する転写因子であるが,その活性は阻害タンパク質IκBとの会合と分解により制御されている.これまでに,NF-κBの活性化の第1経路としてIKKβがIκBαのN末端をリン酸化して分解を誘導する機構と,第2経路としてIKKαがp100をリン酸化して限定分解を誘導する機構が知られていた.いずれの場合も,ユビキチンリガーゼであるβ-TrCPがリン酸化されたIκBに直接に会合してユビキチン化をひき起こすことにより分解を誘導する.今回,筆者らは,第3のNF-κBの活性化経路として,リン酸化を介さずにIκBが誘導性に分解される機構を見い出した.この経路ではIKKβはキナーゼとして機能するのではなく,β-TrCPとIκBとの会合を介在するアダプタータンパク質として機能していた.細胞を紫外線照射するとIκBαは核内に移行してIKKβと会合する.IKKβにはβ-TrCPが会合しており,この複合体上でIκBαはユビキチン化をうけて最終的にプロテアソームにより分解される.カゼインキナーゼ2やp38 MAPキナーゼもIKKβを介してIκBαの分解を促進する.紫外線照射により活性化されたNF-κBはBcl-xLなどの抗アポトーシス遺伝子の発現を抑制して細胞死を促進することも判明した.

はじめに


 NF-κBはサイトカイン遺伝子の発現を誘導して炎症応答に関与する転写因子である.通常の細胞内ではNF-κBはIκBαやp100などの阻害タンパク質と会合した不活性型として細胞質に存在するが,活性化シグナルを受容すると阻害タンパク質は分解されNF-κBは核内に移行して活性化される1).これまで,NF-κBの活性制御機構については詳細な解析がなされており2つの経路が同定されてきた.NF-κB活性化の第1経路(canonical pathway)は,腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factorα:TNFα)などの炎症性サイトカインがIKKβを活性化してIκBαの分解を誘導する経路である(図1).活性化されたIKKβはIκBαのN末端に存在する2つのセリン残基をリン酸化し,リン酸化されたIκBαはユビキチンリガーゼβ-TrCPによりユビキチン化をうけてプロテアソームによって分解される.最終的に,RelAp50とから構成されるNF-κBが核内に移行して遺伝子発現を誘導する.活性化されたNF-κBはIκBαなどの阻害タンパク質の発現やA20などの活性化抑制タンパク質の発現を誘導するため,NF-κBはすみやかに不活性化される.このようなNF-κBの一過性の活性化は急性炎症応答の惹起と収束の一環を担うものと考えられている.NF-κB活性化の第2経路(non-canonical pathway)は,CD40などに代表されるリンパ球制御関連因子がIKKαを活性化する経路である(図1).活性化されたIKKαはp100をリン酸化し,リン酸化されたp100はβ-TrCPによるユビキチン化を介した限定分解によりp52に変換され,最終的にRelBp52とから構成されるNF-κBが活性化される.IKKαあるいはIKKβによりリン酸化された阻害タンパク質にβ-TrCPが直接に会合してユビキチン化を誘導するのが,この第1の経路と第2の経路に共通したNF-κB活性化機構の分子基盤である.



 一方,紫外線照射により細胞内ではAP-1,NF-κB,p53などの転写因子の活性化が誘導され,おのおのの転写因子はDNA修復,細胞周期の停止や細胞死に関連した特異的な遺伝子発現の制御に関与する.興味深いことに,TNFαによるNF-κBの誘導は強度で一過性であるのに対して,紫外線は弱いが持続的なNF-κBの活性化を誘導する.しかし,紫外線がどのような分子機構を介してIκBの分解とNF-κBの活性化を誘導するのかは未解明であり,第3のNF-κBの活性化経路(atypical pathway)が想定されていた2)図1).さらに,紫外線によるNF-κBの活性化の過程ではIKKβのキナーゼ活性化もIκBαのリン酸化も誘導されないのにもかかわらず3),IκBαの分解にはIKKβが必須であることから4,5),紫外線応答にIKKβがどのように関与するのかも不明であった.そこで筆者らは,IκBαの分解誘導におけるIKKβの機能の解析を行い,紫外線に応答して駆動される第3の経路の分子機構を明らかにした.驚くべきことに,この第3の経路ではIKKβはIκBαに対するキナーゼとして機能するのではなく,IκBαとβ-TrCPとの会合を介在するアダプタータンパク質として機能することが判明した.

1.紫外線によるIκBαの分解はIKKβを必要とするがキナーゼ活性には依存性しない


 紫外線によるNF-κB活性化におけるIKKβの役割を明らかにするため,野生型細胞とIKKβ欠損細胞を用いてIκBαの分解を解析した.野生型細胞では紫外線照射によりIκBαが分解されるのに対してIKKβ欠損細胞では分解されないことから,IκBαの分解にはIKKβが必要であることが確認された.そこで,IKKβ欠損細胞に野生型IKKβあるいはキナーゼ活性を欠損したIKKβ変異体を導入したところ,驚くべきことに,キナーゼ活性欠損IKKβ変異体の導入でもIκBαの分解が誘導されることが判明した.さらに,IKKβによるリン酸化をうけないIκBα変異体を細胞に発現させたところ,紫外線照射によりこのIκBα変異体は分解された.一方,β-TrCPによるユビキチン化をうけないIκBα変異体は分解されなかった.すなわち,紫外線照射によるIκBαの分解にはIKKβによるリン酸化は必要ではないが,β-TrCPによるユビキチン化が必要であることが示唆された.実際に,野生型細胞では紫外線照射によりIκBαのユビキチン化が誘導されるのに対して,IKKβ欠損細胞ではユビキチン化は誘導されなかった.これらのことから,紫外線によるIκBαの分解において,IKKβはキナーゼ活性に非依存的にβ-TrCPによるIκBαのユビキチン化を誘導することが判明した.

2.IKKβはIκBαとβ-TrCPの会合のアダプタータンパク質として機能する


 β-TrCPによるユビキチン化に依存的にIκBαの分解が誘導されることから,β-TrCPとIκBαとの会合におけるIKKβの関与を検討した.野生型細胞とIKKβ欠損細胞にβ-TrCPとIκBαとを導入し,両者の会合を免疫沈降法により解析した.野生型細胞では紫外線照射に応答してβ-TrCPとIκBαとの会合が誘導されるが,IKKβ欠損細胞では会合が誘導されなかった.そこで,IKKβがβ-TrCPとIκBαとの会合を介在するアダプターとして機能していることを想定し,IKKβ欠損細胞にキナーゼ活性欠損IKKβ変異体を導入した.この結果,IKKβはβ-TrCPと恒常的に会合しており,IκBαは紫外線に応答してIKKβを介しβ-TrCPに会合してユビキチン化をうけるものと考えられた.

3.紫外線応答におけるIκBαの核内外のシャトリングと複合体の形成


 それでは,細胞内のどこでIκBαとIKKβとの会合が誘導されるのであろうか? 紫外線照射後のIκBαおよびRelAの細胞内局在の変化を解析したところ,紫外線照射後2時間でIκBαは核内に移行し,8時間後には分解されることが判明した.さらに,レプトマイシンBによりタンパク質の核外移行を阻害すると紫外線照射によるIκBαの分解が抑制されることから,IκBαの核内外のシャトリングが分解に関与するものと考えられた.このことを確認するため,核局在型IκBα変異体および細胞質局在型IκBα変異体を用いて紫外線照射による分解およびユビキチン化の誘導を解析した.核局在型IκBα変異体では紫外線によるユビキチン化は誘導されるものの分解が遅滞し,細胞質局在型IκBα変異体ではユビキチン化は誘導されずに分解が遅滞することが観察された.これらの結果から,紫外線照射に応答してIκBαはまず核内に移行してユビキチン化をうけ,そのあと細胞質に移行してプロテアソーム依存的に分解されるものと考えられた.また,Ca2+キレート剤であるBAPTA-AMが紫外線照射により誘導されるIκBαの核内移行と分解とを抑制することから,IκBαの核内外のシャトリングにはCa2+シグナル伝達が関与していることが考えられた.
 紫外線照射に応答してIκBαが核内に移行してユビキチン化をうけることから,核内でIκBαはIKKβを介してβ-TrCPと会合するものと考えられた.そこで,IKKβ欠損細胞に核外移行シグナルを付加した細胞質局在型IKKβ変異体と核移行シグナルを付加した核局在型IKKβ変異体を導入して解析したところ,TNFαは細胞質にあるIKKβを介してIκBαの分解を誘導するのに対して,紫外線は核内にあるIKKβを介してIκBαの分解をひき起こすことが判明した.実際に,細胞質画分と核画分とでIκBαの会合を解析したところ,紫外線照射に応答して核内に移行したIκBαはIKKβとβ-TrCPとの複合体を形成することが確認された.また,核タンパク質hnRNP-Uはβ-TrCPと会合することが報告されている.そこで,紫外線応答におけるhnRNP-Uの関与を解析したところ,IKKβはhnRNP-Uと恒常的に会合しており,IKKβ,hnRNP-U,β-TrCPの3者は核内で恒常的な複合体を形成していることが判明した.紫外線照射に応答して核内移行したIκBαはIKKβ-hnRNP-U-β-TrCP複合体と会合し,この複合体上でβ-TrCPによるユビキチン化をうけるものと考えられた(図2).




4.紫外線照射に応答してp38とカゼインキナーゼ2はIKKβに会合しIκBαの分解を促進する


 これまでに,紫外線に応答したIκBαの分解にp38 MAPキナーゼとカゼインキナーゼ2とによるIκBαのC末端領域のリン酸化が関与することも報告されている6).この点について解析を行ったところ,紫外線に応答したIκBαの分解に本質的に寄与するのはβ-TrCPを介したユビキチン化であるが,これにくわえて,p38とカゼインキナーゼ2によるリン酸化も分解を促進する効果をもつことが確認された.それでは,p38とカゼインキナーゼ2はIKKβのアダプタータンパク質としての機能とどのような関係にあるのだろうか? 興味深いことに,p38とカゼインキナーゼ2は紫外線照射に応答してIKKβと会合し,IκBα,IKKβ,p38,カゼインキナーゼ2からなる複合体が形成されることが判明した.すなわち,IKKβはβ-TrCPのみならず,p38とカゼインキナーゼ2に対してもアダプタータンパク質として機能すると考えられた.

5.紫外線により活性化されたNF-κBは細胞死を促進する


 NF-κBは抗アポトーシス遺伝子の発現を亢進することにより細胞死を抑制する.しかし,最近の研究により,NF-κBは遺伝子発現を亢進するだけでなく,逆に,遺伝子発現を抑制する転写抑制因子としても機能することが知られている.とくに,紫外線により活性化されたNF-κBはいくつかの遺伝子の発現を抑制してアポトーシスを亢進することが報告されていた7).そこで,IKKβ欠損細胞にIKKβ変異体を導入した再構成細胞で遺伝子発現と細胞死応答とを解析した.キナーゼ活性欠損IKKβ変異体や核局在型IKKβ変異体を発現させると紫外線に応答したNF-κBの活性化をひき起こすことができるが,このとき活性化されたNF-κBはBcl-xLやx-IAPなどをコードする抗アポトーシス遺伝子の発現を特異的に抑制することが確認された.さらに,NF-κBは紫外線による細胞死を促進することも観察された.

おわりに


 NF-κBの活性制御には恒常的なIκBαの分解と刺激に応答した誘導性のIκBαの分解が関与する.誘導性のIκBαの分解としてこれまで2つの経路が知られていたが,この研究で筆者らは,IKKβがアダプタータンパク質として機能する第3の経路を明らかにした.これにくわえて,紫外線によるNF-κBの活性化には恒常的なIκBαの分解も関与する.定常状態でのNF-κBとIκBαとのタンパク質合成・分解のターンオーバーを比較すると,NF-κBのほうがIκBαより安定である.一方,紫外線はeIF-2のリン酸化を介してタンパク質の翻訳を抑制する.すなわち,紫外線によりタンパク質の翻訳が部分的に阻害された状況では,IκBαのタンパク質量が相対的に減少してNF-κBの活性化を亢進することと想定される5,8).紫外線応答では第3の経路による誘導性のIκBαの分解がNF-κB活性化において主要な役割をになうが,このような翻訳制御と恒常的なIκBαの分解も活性化に寄与するものと考えられる.この第3の経路に関して興味深いのは,紫外線だけでなく細胞に対するストレス応答の際にもこの経路が駆動されることである.とくに,炎症部位においては細胞内で活性酸素が産生されてストレスが負荷される9).炎症応答における第3の経路の役割に興味がもたれる.

文 献



  1. Hayden, M. S. & Ghosh, S.: Shared principles in NF-κB signaling. Cell, 132, 344-362 (2008)[PubMed]

  2. Perkins, N. D.: Integrating cell-signalling pathways with NF-κB and IKK function. Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 8, 49-62 (2007)[PubMed]

  3. Li, N. & Karin, M.: Ionizing radiation and short wavelength UV activate NF-κB through two distinct mechanisms. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 13012-13017 (1998)[PubMed]

  4. Huang, T. T., Feinberg, S. L., Suryanarayanan, S. et al.: The zinc finger domain of NEMO is selectively required for NF-κ B activation by UV radiation and topoisomerase inhibitors. Mol. Cell. Biol., 22, 5813-5825 (2002)[PubMed]

  5. O'Dea, E. L., Kearns, J. D. & Hoffmann, A.: UV as an amplifier rather than inducer of NF-κB activity. Mol. Cell, 30, 632-641 (2008)[PubMed]

  6. Kato, T. Jr., Delhase, M., Hoffmann, A. et al.: CK2 is a C-terminal IκB kinase responsible for NF-κB activation during the UV response. Mol. Cell, 12, 829-839 (2003)[PubMed]

  7. Campbell, K. J., Rocha, S. & Perkins, N. D.: Active repression of antiapoptotic gene expression by RelA(p65) NF-κB. Mol. Cell, 13, 853-865 (2004)[PubMed]

  8. Wu, S., Tan, M., Hu, Y. et al.: Ultraviolet light activates NFκB through translational inhibition of IκBα synthesis. J. Biol. Chem., 279, 34898-34902 (2004)[PubMed]

  9. Kamata, H., Honda, S., Maeda, S. et al.: Reactive oxygen species promote TNFα-induced death and sustained JNK activation by inhibiting MAP kinase phosphatases. Cell, 120, 649-661 (2005)[PubMed]



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東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構自然科学教育高度化部門から公開されている生命科学の教科書 “A Comprehensive Approach To LIFE SCIENCE”(羊土社『理系総合のための生命科学 第2版』の英語版)における関連するセクションへのリンクです.



著者プロフィール


土谷 佳弘(Yoshihiro Tsuchiya)
略歴:広島大学大学院医歯薬学総合研究科博士課程 在学中.
研究テーマ:NF-κBの活性制御と炎症応答.
抱負:NF-κBとストレス応答の研究を発展させることにより炎症応答の分子機構を明らかにして,新規治療薬の開発につなげられるような研究成果をあげたいと思っています.

鎌田 英明(Hideaki Kamata)
広島大学大学院医歯薬学総合研究科 准教授.

© 2010 土谷佳弘・鎌田英明 Licensed under CC 表示 2.1 日本