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	<title>ライフサイエンス 新着論文レビュー</title>
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	<description>First author&#039;s</description>
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		<title>抑制性の神経伝達物質GABAは小脳においてシナプスの刈り込みを制御する</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4781</link>
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		<pubDate>Thu, 17 May 2012 01:54:16 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Neuron]]></category>
		<category><![CDATA[シナプス]]></category>
		<category><![CDATA[マウス]]></category>
		<category><![CDATA[神経伝達物質]]></category>
		<category><![CDATA[神経科学]]></category>

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		<description><![CDATA[中山寿子・狩野方伸 （東京大学大学院医学系研究科 神経生理学分野） email：中山寿子，狩野方伸 GABAergic inhibition regulates developmental synapse elimination in the cerebellum. Hisako Nakayama, Taisuke Miyazaki, Kazuo Kitamura, Kouichi Hashimoto, Yuchio Yanagawa, Kunihiko Obata, Kenji Sakimura, Masahiko Watanabe, Masanobu Kano Neuron, 74, 384-396 (2012) 要 約 　生後まもない脳には過剰なシナプスが存在するが，やがて，必要なシナプスは強められ不要なシナプスは除去されて，機能的な神経回路が完成する．この過程は“シナプス刈り込み”とよばれ，神経回路の発達における普遍的な現象である．今回，筆者らは，小脳におけるシナプス刈り込みにおいて抑制性の神経伝達物質であるGABAのはたらきが必要であることを明らかにした．GABAの合成が低下するよう遺伝子改変されたマウスを用い，脳幹から小脳へ興奮性の信号を伝達する登上線維と小脳のプルキンエ細胞とのあいだのシナプスを調べた．その結果，このマウスでは生後10日ごろから生後16日ごろまでのあいだシナプス刈り込みが障害されており，このとき，GABAのはたらきを増強する薬を投与するとシナプス刈り込みは正常となることを確認した．さらに，この遺伝子改変マウスでは登上線維の入力に対してプルキンエ細胞の細胞体において，正常なマウスよりも大きなCa2+濃度の上昇の起こることが認められた．今回の結果から，発達期の小脳ではGABAによる抑制が細胞内のCa2+濃度を制御することにより，シナプス刈り込みに重要なはたらきをしていることが示唆された． はじめに 　発達初期の動物の脳には過剰なシナプスが存在するが，生後の発達の過程において必要なシナプスだけが強められ不要なシナプスは除去されて，成熟した機能的な神経回路が完成する．この過程は“シナプス刈り込み”とよばれており，生後の発達期の神経回路にみられる普遍的な現象であると考えられている．中枢神経系においてシナプス刈り込みを定量的に評価できるのは，小脳の登上線維とプルキンエ細胞とのあいだのシナプスだけであり，この研究では，このシナプスの生後の変化を解析の対象とした．生まれたばかりの動物のプルキンエ細胞では，同じ程度の強さの信号を伝達する5本以上の登上線維がプルキンエ細胞の根元に相当する細胞体にシナプスを形成しているが，成熟した動物では強力な信号を伝達するわずか1本の登上線維が細胞体から大木の枝のように張り出した樹状突起にシナプスを形成している．このような単一の登上線維による支配は，つぎのような過程をへて獲得される．まず生後7日までに，細胞体にシナプスを形成していた複数の登上線維のうち1本だけが強化される（機能分化）．つづく生後2～3週目には，選択的に強化された登上線維はプルキンエ細胞の樹状突起に侵入してシナプスを形成し（樹状突起移行），一方，生後1週目に強化されなかった弱い登上線維のシナプスはプルキンエ細胞の細胞体から除去される（シナプス刈り込み）．その結果，1本の登上線維に由来するシナプスのみがプルキンエ細胞の樹状突起に残る1,2)（図1）． 図1　登上線維からプルキンエ細胞へのシナプスの発達 出生の直後のプルキンエ細胞には，同等の強さの複数の登上線維がシナプスを形成している．生後10日ごろには，生後1週目に選択的に強化された1本の登上線維がプルキンエ細胞の樹状突起へと移行しはじめる．強化されなかった“弱い”登上線維は細胞体にシナプスを形成しつづける．籠細胞はプルキンエ細胞の細胞体に，星状細胞はプルキンエ細胞の樹状突起に，GABA作動性のシナプスを形成する．生後21日ごろには，細胞体の“弱い”登上線維のシナプスは除去され，1本の“強い”登上線維のシナプスのみが樹状突起に維持されるようになる． [Download] 　これまでの研究から，正常なシナプス刈り込みにはニューロンがまわりの環境などの刺激をうけて電気的に活動することが必要であることが知られていた3,4)．グルタミン酸はニューロンの活動を上昇させる興奮性の神経伝達物質であるが，グルタミン酸を受け取る受容体のうちある種のものが欠落するとシナプス刈り込みはうまく起こらない5,6)．一方，γ-アミノ酪酸（GABA）はニューロンの活動を抑える抑制性の神経伝達物質でありニューロンの活動の制御に重要なはたらきをしている．しかし，GABAが神経活動に依存的なシナプス刈り込みに影響するかどうかについてはこれまで不明であった．今回の研究では，GABAを合成する酵素のひとつであるGAD67の遺伝子をヘテロ欠損する遺伝子改変マウス（GAD67-GFPノックインマウス）を解析することにより，GABAによる抑制性のシナプス伝達がシナプス刈り込みに重要なはたらきをすることを発見した． 1．GAD67ヘテロ欠損マウスでは生後2週目においてGABA作動性のシナプス伝達が減弱している 　まず，GAD67遺伝子のヘテロ欠損によりGABA作動性のシナプス伝達が減弱するかどうかを調べた．さまざまな日齢のマウスの小脳から急性切片標本を作製し，ホールセルパッチクランプ法を用いて，プルキンエ細胞から膜電位を固定した状態でGABA作動性の微小シナプス後電流を測定した．その結果，GAD67ヘテロ欠損マウスでは，生後1週目においてはGABA作動性の電流の振幅について野生型マウスに対し有意な差は認められなかったが，生後2週目においてはこの電流の振幅は有意に小さいという結果が得られた．GABAは成熟動物のニューロンに対しては神経活動を抑えるように（抑制性に）作用するが，プルキンエ細胞を含め発達の初期のニューロンに対してはむしろ神経活動を亢進させるように（興奮性に）作用する7)．そこで，GABA作動性のシナプス伝達に異常が認められた生後2週目において，GABAの作用がプルキンエ細胞に対し興奮性か抑制性かを調べた．その結果，GABA受容体の活性化によりプルキンエ細胞の興奮は抑制されることを確認した．すなわち，GAD67ヘテロ欠損マウスでは生後2週目においてプルキンエ細胞へのGABAによる抑制性のシナプス伝達が減弱していることがわかった． 2．GAD67ヘテロ欠損マウスでは生後2週目においてシナプス刈り込みが障害されている 　個々のプルキンエ細胞からホールセル記録を行い，登上線維を1本ずつ別々に電気刺激したときにひき起こされるシナプス後電流を測定することにより，プルキンエ細胞にどの程度の強さの，そして，何本の登上線維が結合しているかを調べた．その結果，GAD67ヘテロ欠損マウスでは，生後9日ごろまでのシナプス刈り込みは正常に起こるが，生後10日目以降のシナプス刈り込みの過程は障害されており，野生型マウスでは登上線維の単一支配が完成している時期においても，約半数のプルキンエ細胞が2本以上の登上線維からのシナプス伝達をうけていることが明らかになった．すなわち，GAD67ヘテロ欠損マウスでは生後2週目においてプルキンエ細胞へのGABA作動性のシナプス伝達が減弱しており，同じ時期の登上線維におけるシナプス刈り込みも障害されていた． 3．小脳皮質におけるGABA作動性のシナプス伝達はシナプス刈り込みを制御する 　GAD67ヘテロ欠損マウスは小脳以外の脳領域においてもGAD67遺伝子がヘテロ欠損しているため，さきに述べた異常が小脳皮質におけるGAD67遺伝子の改変に起因するのか，あるいは，小脳以外の脳領域におけるGAD67遺伝子の改変に起因するのかは明らかでなかった．そこで，遺伝子改変をしていない野生型マウスの小脳皮質に対し，GAD67のはたらきを阻害する3-MPという薬物を生後10日から慢性投与してGABAの合成を抑制した場合に，シナプス刈り込みがどのような影響をうけるのかを調べたところ，GAD67ヘテロ欠損マウスと同様にシナプス刈り込みに異常が起こった．一方，GAD67ヘテロ欠損マウスの小脳皮質にGABAのはたらきを増強するDiazepamという薬物を生後10日から投与したところシナプス刈り込みは正常化した．しかしながら，Diazepamを生後17日から投与した場合にはGAD67ヘテロ欠損マウスのシナプス刈り込みの異常は正常化しなかった．したがって，生後10日ごろから生後16日ごろまでのあいだ，小脳においてGABAが適正にはたらくことがシナプス刈り込みに必須であることが明らかになった． 4．籠細胞からプルキンエ細胞の細胞体へのGABA作動性のシナプス伝達が登上線維におけるシナプス刈り込みに重要である 　小脳皮質の神経回路のなかで，どのGABA作動性のシナプス伝達が登上線維におけるシナプス刈り込みに必要なのかを調べた．プルキンエ細胞は籠細胞および星状細胞からGABA作動性のシナプス伝達を受け取っているが，籠細胞はプルキンエ細胞の細胞体に，星状細胞はプルキンエ細胞の樹状突起に，というように，両者はプルキンエ細胞の異なる部位にシナプスを形成している．シナプスの部位の違いはシナプス電流の波形の差として現われる．これを利用し，プルキンエ細胞で記録されるGABA作動性の電流の波形を詳細に解析することにより，GAD67ヘテロ欠損マウスで減弱しているGABA作動性のシナプス伝達はプルキンエ細胞の細胞体に形成されたシナプスに由来する，すなわち，籠細胞に由来する可能性の高いことを見い出した．この可能性を検証するため，籠細胞とプルキンエ細胞から同時にホールセル記録を行い，単一の籠細胞を刺激したときにプルキンエ細胞に誘発されるGABA作動性のシナプス後電流を測定して，GAD67ヘテロ欠損マウスと野生型マウスとのあいだで比較した．その結果，単一の籠細胞に由来するシナプス後電流はGAD67ヘテロ欠損マウスにおいて有意に小さく，籠細胞がプルキンエ細胞の細胞体に形成するGABA作動性の抑制性シナプスが重要であることがわかった． 5．登上線維の入力に対し発生するプルキンエ細胞におけるCa2+濃度の上昇は籠細胞からのGABA作動性のシナプス伝達により制御される 　GABA作動性のシナプス伝達がどのような機構で登上線維におけるシナプス刈り込みに関与しているのかを検討した．登上線維とプルキンエ細胞とのあいだのシナプスの正常な発達にはプルキンエ細胞に発現する電位依存性Ca2+チャネルが必要であるという先行研究がある8)．そこで，登上線維の活性化によりプルキンエ細胞の細胞体に発生するCa2+流入の大きさがGABA作動性のシナプス伝達の強さにより制御されるという可能性を考え検討した．Ca2+濃度が上昇すると蛍光強度の上昇する色素をプルキンエ細胞に注入し，登上線維を電気刺激したときに細胞体において生じる蛍光強度の変化，すなわち，Ca2+濃度の変化をGABA作動性のシナプス伝達が減弱しているGAD67ヘテロ欠損マウスと野生型マウスとで比較した．その結果，強い登上線維を刺激したときのCa2+濃度の上昇には有意な差は認められなかったが，弱い登上線維を刺激したときのプルキンエ細胞の細胞体におけるCa2+濃度の上昇はGAD67ヘテロ欠損マウスのほうが有意に大きいことがわかった．また，GAD67ヘテロ欠損マウスにGABAのはたらきを増強するDiazepamを投与してGABA作動性のシナプス伝達を増強するとCa2+濃度の上昇が抑制された．これらの結果から，弱い登上線維の入力に対するプルキンエ細胞の細胞体におけるCa2+濃度の上昇の大きさはGABA作動性のシナプス伝達により制御されており，GAD67ヘテロ欠損マウスではGABA作動性のシナプス伝達が減弱しているため野生型マウスよりも大きなCa2+濃度の上昇の起こることが明らかになった． 6．GABAが登上線維におけるシナプス刈り込みを制御する機構 [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>中山寿子・狩野方伸</strong><br />
（東京大学大学院医学系研究科 神経生理学分野）<br />
email：<a href="mailto:nacayama@hiroshima-u.ac.jp">中山寿子</a>，<a href="mailto:mkano-tky@m.u-tokyo.ac.jp">狩野方伸</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">GABAergic inhibition regulates developmental synapse elimination in the cerebellum.</span><br />
<span class="au">Hisako Nakayama, Taisuke Miyazaki, Kazuo Kitamura, Kouichi Hashimoto, Yuchio Yanagawa, Kunihiko Obata, Kenji Sakimura, Masahiko Watanabe, Masanobu Kano</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22542190" target="_blank"><em>Neuron</em>, <strong>74</strong>, 384-396 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4781"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　生後まもない脳には過剰なシナプスが存在するが，やがて，必要なシナプスは強められ不要なシナプスは除去されて，機能的な神経回路が完成する．この過程は“シナプス刈り込み”とよばれ，神経回路の発達における普遍的な現象である．今回，筆者らは，小脳におけるシナプス刈り込みにおいて抑制性の神経伝達物質であるGABAのはたらきが必要であることを明らかにした．GABAの合成が低下するよう遺伝子改変されたマウスを用い，脳幹から小脳へ興奮性の信号を伝達する登上線維と小脳のプルキンエ細胞とのあいだのシナプスを調べた．その結果，このマウスでは生後10日ごろから生後16日ごろまでのあいだシナプス刈り込みが障害されており，このとき，GABAのはたらきを増強する薬を投与するとシナプス刈り込みは正常となることを確認した．さらに，この遺伝子改変マウスでは登上線維の入力に対してプルキンエ細胞の細胞体において，正常なマウスよりも大きなCa<sup>2+</sup>濃度の上昇の起こることが認められた．今回の結果から，発達期の小脳ではGABAによる抑制が細胞内のCa<sup>2+</sup>濃度を制御することにより，シナプス刈り込みに重要なはたらきをしていることが示唆された．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　発達初期の動物の脳には過剰なシナプスが存在するが，生後の発達の過程において必要なシナプスだけが強められ不要なシナプスは除去されて，成熟した機能的な神経回路が完成する．この過程は“シナプス刈り込み”とよばれており，生後の発達期の神経回路にみられる普遍的な現象であると考えられている．中枢神経系においてシナプス刈り込みを定量的に評価できるのは，小脳の登上線維とプルキンエ細胞とのあいだのシナプスだけであり，この研究では，このシナプスの生後の変化を解析の対象とした．生まれたばかりの動物のプルキンエ細胞では，同じ程度の強さの信号を伝達する5本以上の登上線維がプルキンエ細胞の根元に相当する細胞体にシナプスを形成しているが，成熟した動物では強力な信号を伝達するわずか1本の登上線維が細胞体から大木の枝のように張り出した樹状突起にシナプスを形成している．このような単一の登上線維による支配は，つぎのような過程をへて獲得される．まず生後7日までに，細胞体にシナプスを形成していた複数の登上線維のうち1本だけが強化される（機能分化）．つづく生後2～3週目には，選択的に強化された登上線維はプルキンエ細胞の樹状突起に侵入してシナプスを形成し（樹状突起移行），一方，生後1週目に強化されなかった弱い登上線維のシナプスはプルキンエ細胞の細胞体から除去される（シナプス刈り込み）．その結果，1本の登上線維に由来するシナプスのみがプルキンエ細胞の樹状突起に残る<a href="#R1"><sup>1,2)</sup></a>（<a href="#F1">図1</a>）．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　登上線維からプルキンエ細胞へのシナプスの発達</strong><br />
出生の直後のプルキンエ細胞には，同等の強さの複数の登上線維がシナプスを形成している．生後10日ごろには，生後1週目に選択的に強化された1本の登上線維がプルキンエ細胞の樹状突起へと移行しはじめる．強化されなかった“弱い”登上線維は細胞体にシナプスを形成しつづける．籠細胞はプルキンエ細胞の細胞体に，星状細胞はプルキンエ細胞の樹状突起に，GABA作動性のシナプスを形成する．生後21日ごろには，細胞体の“弱い”登上線維のシナプスは除去され，1本の“強い”登上線維のシナプスのみが樹状突起に維持されるようになる．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Kano-Neuron-12.4.25-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Kano-Neuron-12.4.25-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Kano-Neuron-12.4.25-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　これまでの研究から，正常なシナプス刈り込みにはニューロンがまわりの環境などの刺激をうけて電気的に活動することが必要であることが知られていた<a href="#R3"><sup>3,4)</sup></a>．グルタミン酸はニューロンの活動を上昇させる興奮性の神経伝達物質であるが，グルタミン酸を受け取る受容体のうちある種のものが欠落するとシナプス刈り込みはうまく起こらない<a href="#R5"><sup>5,6)</sup></a>．一方，γ-アミノ酪酸（GABA）はニューロンの活動を抑える抑制性の神経伝達物質でありニューロンの活動の制御に重要なはたらきをしている．しかし，GABAが神経活動に依存的なシナプス刈り込みに影響するかどうかについてはこれまで不明であった．今回の研究では，GABAを合成する酵素のひとつであるGAD67の遺伝子をヘテロ欠損する遺伝子改変マウス（GAD67-GFPノックインマウス）を解析することにより，GABAによる抑制性のシナプス伝達がシナプス刈り込みに重要なはたらきをすることを発見した．</p>
<h2>1．GAD67ヘテロ欠損マウスでは生後2週目においてGABA作動性のシナプス伝達が減弱している</h2>
<p>　まず，<em>GAD67</em>遺伝子のヘテロ欠損によりGABA作動性のシナプス伝達が減弱するかどうかを調べた．さまざまな日齢のマウスの小脳から急性切片標本を作製し，ホールセルパッチクランプ法を用いて，プルキンエ細胞から膜電位を固定した状態でGABA作動性の微小シナプス後電流を測定した．その結果，GAD67ヘテロ欠損マウスでは，生後1週目においてはGABA作動性の電流の振幅について野生型マウスに対し有意な差は認められなかったが，生後2週目においてはこの電流の振幅は有意に小さいという結果が得られた．GABAは成熟動物のニューロンに対しては神経活動を抑えるように（抑制性に）作用するが，プルキンエ細胞を含め発達の初期のニューロンに対してはむしろ神経活動を亢進させるように（興奮性に）作用する<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．そこで，GABA作動性のシナプス伝達に異常が認められた生後2週目において，GABAの作用がプルキンエ細胞に対し興奮性か抑制性かを調べた．その結果，GABA受容体の活性化によりプルキンエ細胞の興奮は抑制されることを確認した．すなわち，GAD67ヘテロ欠損マウスでは生後2週目においてプルキンエ細胞へのGABAによる抑制性のシナプス伝達が減弱していることがわかった．</p>
<h2>2．GAD67ヘテロ欠損マウスでは生後2週目においてシナプス刈り込みが障害されている</h2>
<p>　個々のプルキンエ細胞からホールセル記録を行い，登上線維を1本ずつ別々に電気刺激したときにひき起こされるシナプス後電流を測定することにより，プルキンエ細胞にどの程度の強さの，そして，何本の登上線維が結合しているかを調べた．その結果，GAD67ヘテロ欠損マウスでは，生後9日ごろまでのシナプス刈り込みは正常に起こるが，生後10日目以降のシナプス刈り込みの過程は障害されており，野生型マウスでは登上線維の単一支配が完成している時期においても，約半数のプルキンエ細胞が2本以上の登上線維からのシナプス伝達をうけていることが明らかになった．すなわち，GAD67ヘテロ欠損マウスでは生後2週目においてプルキンエ細胞へのGABA作動性のシナプス伝達が減弱しており，同じ時期の登上線維におけるシナプス刈り込みも障害されていた．</p>
<h2>3．小脳皮質におけるGABA作動性のシナプス伝達はシナプス刈り込みを制御する</h2>
<p>　GAD67ヘテロ欠損マウスは小脳以外の脳領域においても<em>GAD67</em>遺伝子がヘテロ欠損しているため，さきに述べた異常が小脳皮質における<em>GAD67</em>遺伝子の改変に起因するのか，あるいは，小脳以外の脳領域における<em>GAD67</em>遺伝子の改変に起因するのかは明らかでなかった．そこで，遺伝子改変をしていない野生型マウスの小脳皮質に対し，GAD67のはたらきを阻害する3-MPという薬物を生後10日から慢性投与してGABAの合成を抑制した場合に，シナプス刈り込みがどのような影響をうけるのかを調べたところ，GAD67ヘテロ欠損マウスと同様にシナプス刈り込みに異常が起こった．一方，GAD67ヘテロ欠損マウスの小脳皮質にGABAのはたらきを増強するDiazepamという薬物を生後10日から投与したところシナプス刈り込みは正常化した．しかしながら，Diazepamを生後17日から投与した場合にはGAD67ヘテロ欠損マウスのシナプス刈り込みの異常は正常化しなかった．したがって，生後10日ごろから生後16日ごろまでのあいだ，小脳においてGABAが適正にはたらくことがシナプス刈り込みに必須であることが明らかになった．</p>
<h2>4．籠細胞からプルキンエ細胞の細胞体へのGABA作動性のシナプス伝達が登上線維におけるシナプス刈り込みに重要である</h2>
<p>　小脳皮質の神経回路のなかで，どのGABA作動性のシナプス伝達が登上線維におけるシナプス刈り込みに必要なのかを調べた．プルキンエ細胞は籠細胞および星状細胞からGABA作動性のシナプス伝達を受け取っているが，籠細胞はプルキンエ細胞の細胞体に，星状細胞はプルキンエ細胞の樹状突起に，というように，両者はプルキンエ細胞の異なる部位にシナプスを形成している．シナプスの部位の違いはシナプス電流の波形の差として現われる．これを利用し，プルキンエ細胞で記録されるGABA作動性の電流の波形を詳細に解析することにより，GAD67ヘテロ欠損マウスで減弱しているGABA作動性のシナプス伝達はプルキンエ細胞の細胞体に形成されたシナプスに由来する，すなわち，籠細胞に由来する可能性の高いことを見い出した．この可能性を検証するため，籠細胞とプルキンエ細胞から同時にホールセル記録を行い，単一の籠細胞を刺激したときにプルキンエ細胞に誘発されるGABA作動性のシナプス後電流を測定して，GAD67ヘテロ欠損マウスと野生型マウスとのあいだで比較した．その結果，単一の籠細胞に由来するシナプス後電流はGAD67ヘテロ欠損マウスにおいて有意に小さく，籠細胞がプルキンエ細胞の細胞体に形成するGABA作動性の抑制性シナプスが重要であることがわかった．</p>
<h2>5．登上線維の入力に対し発生するプルキンエ細胞におけるCa<sup>2+</sup>濃度の上昇は籠細胞からのGABA作動性のシナプス伝達により制御される</h2>
<p>　GABA作動性のシナプス伝達がどのような機構で登上線維におけるシナプス刈り込みに関与しているのかを検討した．登上線維とプルキンエ細胞とのあいだのシナプスの正常な発達にはプルキンエ細胞に発現する電位依存性Ca<sup>2+</sup>チャネルが必要であるという先行研究がある<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>．そこで，登上線維の活性化によりプルキンエ細胞の細胞体に発生するCa<sup>2+</sup>流入の大きさがGABA作動性のシナプス伝達の強さにより制御されるという可能性を考え検討した．Ca<sup>2+</sup>濃度が上昇すると蛍光強度の上昇する色素をプルキンエ細胞に注入し，登上線維を電気刺激したときに細胞体において生じる蛍光強度の変化，すなわち，Ca<sup>2+</sup>濃度の変化をGABA作動性のシナプス伝達が減弱しているGAD67ヘテロ欠損マウスと野生型マウスとで比較した．その結果，強い登上線維を刺激したときのCa<sup>2+</sup>濃度の上昇には有意な差は認められなかったが，弱い登上線維を刺激したときのプルキンエ細胞の細胞体におけるCa<sup>2+</sup>濃度の上昇はGAD67ヘテロ欠損マウスのほうが有意に大きいことがわかった．また，GAD67ヘテロ欠損マウスにGABAのはたらきを増強するDiazepamを投与してGABA作動性のシナプス伝達を増強するとCa<sup>2+</sup>濃度の上昇が抑制された．これらの結果から，弱い登上線維の入力に対するプルキンエ細胞の細胞体におけるCa<sup>2+</sup>濃度の上昇の大きさはGABA作動性のシナプス伝達により制御されており，GAD67ヘテロ欠損マウスではGABA作動性のシナプス伝達が減弱しているため野生型マウスよりも大きなCa<sup>2+</sup>濃度の上昇の起こることが明らかになった．</p>
<h2>6．GABAが登上線維におけるシナプス刈り込みを制御する機構</h2>
<p>　今回の研究により，小脳の登上線維とプルキンエ細胞とのあいだのシナプス刈り込みにおいて，籠細胞からプルキンエ細胞の細胞体へのGABA作動性のシナプス伝達が重要であることがはじめて明らかになった．今回の結果をうけて，GABAが登上線維におけるシナプス刈り込みを制御する機構に関して，以下のようなモデルを提唱する（<a href="#F2">図2</a>）．生後10日ごろから生後16日ごろは，プルキンエ細胞の細胞体では登上線維に由来する興奮性シナプスが減少し，反対に，籠細胞に由来するGABA作動性の抑制性シナプスが増加する時期である<a href="#R9"><sup>9)</sup></a>．この時期には，籠細胞から放出されるGABAによりプルキンエ細胞の細胞体の活動が抑制されるため，登上線維から興奮性の入力が伝達されても細胞体の活動は高くなることはできない．すると，電位依存性Ca<sup>2+</sup>チャネルが十分に開口することができず，細胞体に流入するCa<sup>2+</sup>は少なくなる．十分な量のCa<sup>2+</sup>がないとシナプスを維持することができないため，やがて，プルキンエ細胞の細胞体にシナプスをもつ弱い登上線維は除去されてしまうのに対し，プルキンエ細胞の樹状突起にシナプスをもつ登上線維は維持され，成熟型の神経回路が獲得される．GAD67ヘテロ欠損マウスのようになんらかの原因でGABA作動性のシナプス伝達が減弱してしまうと，弱い登上線維においてもプルキンエ細胞の細胞体にシナプスを維持するのに十分な量のCa<sup>2+</sup>が流入してしまうため，本来はシナプス刈り込みをうけるべきシナプスが維持されてしまうと考えられる．プルキンエ細胞の細胞体へ流入するCa<sup>2+</sup>の量に依存してシナプス刈り込みが制御されているとすれば，Ca<sup>2+</sup>とシナプス刈り込みあるいはシナプス維持とを結ぶ機構とは何かを解明することが今後の重要な研究課題のひとつである．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　GABAが登上線維のシナプス刈り込みを制御する機構</strong><br />
（a）野生型マウス．将来，シナプス刈り込みをうけるべき弱い登上線維の活動によりプルキンエ細胞の細胞体に発生するCa<sup>2+</sup>濃度の上昇は，籠細胞からのGABA作動性のシナプス伝達により小さく抑えられるので，シナプスを維持するための機構がはたらかない．<br />
（b）GAD67ヘテロ欠損マウス．籠細胞からのGABA作動性のシナプス伝達が減弱しているので，弱い登上線維の入力に対しても大きなCa<sup>2+</sup>濃度の上昇が誘導されるため，異所的なシナプスが維持される．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Kano-Neuron-12.4.25-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Kano-Neuron-12.4.25-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Kano-Neuron-12.4.25-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>おわりに</h2>
<p>　これまで，登上線維におけるシナプス刈り込みに関する研究のほとんどは興奮性のシナプス伝達とその下流のシグナルタンパク質に着目して行われてきたが，生体における情報の伝達は興奮と抑制との絶妙なバランスにより成立しているはずであるから，GABA作動性の抑制性シナプスと興奮性シナプスの刈り込みとに着目したこの研究は，生体における神経回路の形成についての理解を格段に深めることが期待される．また，自閉症や統合失調症などの疾患でみられる社会性障害や情緒障害の原因となる細胞レベルの障害は，特定の神経系での興奮性活動と抑制性活動とのバランスの乱れにより起こるというモデルもある．また，統合失調症や自閉症の病因として神経回路の発達異常があり，発達の特定の時期に起こるシナプス刈り込みの異常の関与も考えられている．この研究で見い出されたGABAとシナプス刈り込みとの関連はあくまでマウスにおけるものではあるが，今後，モデル動物やヒトにおける研究がより進むことにより統合失調症や自閉症の病因の理解にもつながることが期待される．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Hashimoto, K. &#038; Kano, M.</span>: <span class="ti">Functional differentiation of multiple climbing fiber inputs during synapse elimination in the developing cerebellum.</span> <span class='so'>Neuron, 38, 785-796 (2003)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12797962" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Hashimoto, K., Ichikawa, R., Kitamura, K. et al.</span>: <span class="ti">Translocation of a &#8220;winner&#8221; climbing fiber to the Purkinje cell dendrite and subsequent elimination of &#8220;losers&#8221; from the soma in developing cerebellum.</span> <span class='so'>Neuron, 63, 106-118 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19607796" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Andjus, P. R., Zhu, L., Cesa, R. et al.</span>: <span class="ti">A change in the pattern of activity affects the developmental regression of the Purkinje cell polyinnervation by climbing fibers in the rat cerebellum.</span> <span class='so'>Neuroscience, 121, 563-572 (2003)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14568018" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Lorenzetto, E., Caselli, L., Feng, G. et al.</span>: <span class="ti">Genetic perturbation of postsynaptic activity regulates synapse elimination in developing cerebellum.</span> <span class='so'>Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106, 16475-16480 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19805323" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Kano, M. &#038; Hashimoto, K.</span>: <span class="ti">Synapse elimination in the central nervous system.</span> <span class='so'>Curr. Opin. Neurobiol., 19, 154-161 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19481442" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Watanabe, M. &#038; Kano, M.</span>: <span class="ti">Climbing fiber synapse elimination in cerebellar Purkinje cells.</span> <span class='so'>Eur. J. Neurosci., 34, 1697-1710 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22103426" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Eilers, J., Plant, T. D., Marandi, N. et al.</span>: <span class="ti">GABA-mediated Ca<sup>2+</sup> signalling in developing rat cerebellar Purkinje neurones.</span> <span class='so'>J. Physiol., 536, 429-437 (2001)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11600678" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R8"><span class='au'>Hashimoto, K., Tsujita, M., Miyazaki, T. et al.</span>: <span class="ti">Postsynaptic P/Q-type Ca<sup>2+</sup> channel in Purkinje cell mediates synaptic competition and elimination in developing cerebellum.</span> <span class='so'>Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 108, 9987-9992 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21628556" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R9"><span class='au'>Ichikawa, R., Yamasaki, M., Miyazaki, T. et al.</span>: <span class="ti">Developmental switching of perisomatic innervation from climbing fibers to basket cell fibers in cerebellar Purkinje cells.</span> <span class='so'>J. Neurosci., 31, 16916-16127 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22114262" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">中山 寿子（Hisako Nakayama）</span><br />
2003年 大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程 単位修得退学，2004年 大阪大学大学院基礎工学研究科にて博士号（理学）取得，同年 金沢大学大学院医学系研究科 研究員，2005年 大阪大学大学院医学系研究科 研究員，2007年 東京大学大学院医学系研究科 研究員を経て，2011年より広島大学大学院医歯薬保健学研究科 助教．</p>
<p><strong>狩野 方伸（Masanobu Kano）</strong><br />
東京大学大学院医学系研究科 教授．<br />
研究室URL：<a href="http://plaza.umin.ac.jp/~neurophy/Kano_Lab_j/Top_j.html" target="_blank">http://plaza.umin.ac.jp/~neurophy/Kano_Lab_j/Top_j.html</a>
</div>
<p>© 2012 中山寿子・狩野方伸 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
		<item>
		<title>セマフォリン3Aによる骨保護作用</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4789</link>
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		<pubDate>Thu, 17 May 2012 01:00:06 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Nature]]></category>
		<category><![CDATA[シグナル伝達]]></category>
		<category><![CDATA[マウス]]></category>
		<category><![CDATA[免疫学]]></category>
		<category><![CDATA[骨形成]]></category>

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		<description><![CDATA[林 幹人・中島友紀・高柳 広 （科学技術振興機構ERATO高柳オステオネットワークプロジェクト） email：高柳 広 Osteoprotection by semaphorin 3A. Mikihito Hayashi, Tomoki Nakashima, Masahiko Taniguchi, Tatsuhiko Kodama, Atsushi Kumanogoh, Hiroshi Takayanagi Nature, 485, 69-74 (2012) 要 約 　成体において骨は，ホルモンによる制御にくわえ，さまざまな細胞間シグナル伝達因子により制御されている．破骨細胞と骨芽細胞との細胞間クロストークは骨の恒常性の維持において非常に重要だが，破骨細胞と骨芽細胞の双方の分化を制御し骨量を規定するような因子はいまだみつかっていない．筆者らは，セマフォリン3Aが破骨細胞の分化抑制と骨芽細胞の分化促進とを同時に行うことで骨保護作用を示すことを明らかにした．セマフォリン3Aはその受容体であるニューロピリン1と結合し，ITAMシグナルおよびRhoAの活性化を抑制することでRANKLにより誘導される破骨細胞の分化を抑制した．また，セマフォリン3Aは古典的Wnt経路をつうじ骨芽細胞の分化を促進し脂肪細胞の分化を抑制することも明らかになった．セマフォリン3Aノックアウトマウスおよび変異ニューロピリン1ノックインマウスのどちらも著明な骨量の低下を示した．セマフォリン3Aの投与の効果を検討したところ，破骨細胞の分化抑制および骨芽細胞の分化促進をともなう顕著な骨量の増加作用をもつことが明らかになった．以上から，セマフォリン3Aは骨関連疾患の新規の治療薬となることが期待される． はじめに 　骨の恒常性はおもにカルシウム調節ホルモンなどの内分泌系により維持されていると考えられてきたが，近年の研究により，免疫系や神経系に関連した因子によっても制御されていることが明らかになってきている1,2)．骨吸収と骨形成とのバランスの破綻が骨粗鬆症などの代謝性の骨疾患につながることから，このバランスを制御する分子機構の理解が新たな治療標的の確立において重要である．骨形成は骨吸収とカップリング機構によりバランスが保たれていることが知られている．現在，骨粗鬆症の治療薬として骨吸収の抑制剤が使用されているが，この場合，カップリング機構により骨形成も同時に抑制されてしまうことがありその治療効果が損なわれてしまうことから，骨吸収と骨形成の双方をバランスよく制御し骨量を回復させる薬剤および治療法の開発が望まれている． 　破骨細胞は単球マクロファージ系の前駆細胞から分化する多核の巨細胞で，骨芽細胞や軟骨細胞，骨細胞などの間葉系細胞から供給されるRANKL（receptor activator of NF-κB ligand）により分化が制御されている1)．骨芽細胞系の細胞ではOsteoprotegerin（Opg）という可溶性のデコイ受容体を産生することによりRANKLの作用のバランスをとっている．しかし，骨芽細胞に由来するOpg以外の破骨細胞の分化抑制因子についてはほとんど解明されていない． 1．セマフォリン3Aは骨芽細胞に由来する破骨細胞の分化抑制因子である 　マウスの頭蓋冠細胞の培養上清はRANKLおよびM-CSF（macrophage-colony stimulating factor，マクロファージコロニー刺激因子）により誘導される破骨細胞の分化を抑制する活性をもつ．Opg以外の新規の骨芽細胞の分化抑制因子の存在を確認するため，Opgを欠損した頭蓋冠細胞の培養上清の破骨細胞の分化に対する影響を検討したところ，野生型の細胞の培養上清と同じ程度ではなかったが有意な分化抑制活性をもつことを見い出した．この培養上清に含まれる分化抑制因子の同定を進めるため，陰イオン交換クロマトグラフィーにより分画を行いそれぞれの画分の破骨細胞の分化に対する影響を検討したところ，強い分化抑制活性を示す画分を発見した．この画分に含まれるタンパク質を同定するため，SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により分離を行い，液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析（LC-MS/MS）法によりその同定を試みた．同定されたタンパク質のうち，分泌タンパク質であり，近年，破骨細胞と骨芽細胞との相互作用にかかわることが報告されている軸索ガイダンス因子のひとつであるセマフォリン3A（semaphorin 3A：Sema3A）に着目した． 　セマフォリン3Aは軸索伸長のガイダンス因子として知られるセマフォリンファミリーに属するタンパク質である3)．哺乳類ではクラス3セマフォリンからクラス7セマフォリンまで約20種が同定されており，その受容体であるニューロピリン（neuropilin：Nrp）ファミリーおよびプレキシン（plexin）ファミリーと複雑なリガンド-受容体の関係で結ばれている．クラス4セマフォリンからクラス6セマフォリンは膜型タンパク質，クラス7セマフォリンはGPIアンカー型タンパク質であり，プレキシンと直接に結合するが，セマフォリン3Aを含むクラス3セマフォリンは分泌型タンパク質でありニューロピリンを介してA型プレキシンからシグナルを伝達する．セマフォリン3Aにはこれまで軸索伸長のほか免疫制御やがん細胞の増殖抑制などさまざまな機能が報告されているが，骨代謝における役割はわかっていなかった． 　セマフォリン3Aを発現する組織あるいは細胞をBioGPSデータベースの検索やRT-PCR法および免疫染色法により調べたところ，全身でもとくに骨芽細胞や骨細胞において高く発現し，逆に，破骨細胞にはほとんど発現がみられなかった．また，骨芽細胞においてはセマフォリンファミリーのなかでもセマフォリン3Aがもっとも高い発現を示した． 　セマフォリン3Aが骨代謝にあたえる影響を生体レベルにおいて検討するため，セマフォリン3Aノックアウトマウスの骨を解析したところ著明な骨量の低下を示し，破骨細胞の分化および骨吸収の顕著な亢進が観察された．RANKLおよびM-CSFによりin vitroにおいて骨髄マクロファージから破骨細胞の分化誘導を行なっても，野生型の細胞とセマフォリン3Aを欠損した細胞とで差はみられず，骨髄における破骨細胞前駆細胞の数にも変化はみられなかったが，セマフォリン3Aノックアウトマウスに由来する骨芽細胞様細胞を支持細胞として破骨細胞の分化を検討したところ，その著明な亢進が観察された．逆に，野生型マウスに由来する骨芽細胞様細胞を支持細胞としてセマフォリン3Aノックアウトマウスに由来する骨髄細胞を破骨細胞へと分化させても正常であったことから，骨芽細胞に由来するセマフォリン3Aが破骨細胞の分化を抑制していることが示唆された．実際に，セマフォリン3Aの組換えタンパク質の効果をRANKLおよびM-CSFによる破骨細胞の分化誘導系で検討したところ，RANKLの添加まえにセマフォリン3Aの処理を行うと用量に依存的な破骨細胞の分化抑制能を示した一方で，RANKLの添加ののちにセマフォリン3Aをくわえてもその効果はまったくみられなかった．また，骨芽細胞におけるRANKLおよびOpgのmRNAの発現や血中のタンパク質濃度はセマフォリン3Aノックアウトマウスでは変化はみられなかった． 　セマフォリン3Aの受容体はニューロピリン1であるが，骨髄マクロファージにおけるニューロピリン1の発現はRANKLの刺激にともない急激かつ強力に抑制されることがわかった．このことが，RANKLの刺激ののちセマフォリン3Aの効果がみられなくなる原因となっていることが考えられた．実際に，ニューロピリン1を強制発現するとRANKLの刺激ののちにもセマフォリン3Aによる破骨細胞の分化抑制活性が確認され，逆に，ニューロピリン1をノックダウンするとその活性はまったくみられなくなった．さらに，クロマチン免疫沈降（ChIP）法やプロモーター解析などにより，ニューロピリン1の発現抑制にはRANKLにより活性化される転写因子のうち，NFATc1やc-Fosではなく，NF-κBが重要な役割をはたしていることが示された． 　また，ニューロピリン1の骨代謝における役割を検討した．ニューロピリン1はVEGFシグナルにも重要でありそのノックアウトマウスは胎生致死であることから，セマフォリンとの結合領域に変異をもつニューロピリン1をノックインしたマウスを解析した．この変異ニューロピリン1ノックインマウスはセマフォリン3Aノックアウトマウスと同様に，破骨細胞の分化と骨吸収の亢進をともなった重篤な骨減少症の表現型を示した． 2．セマフォリン3Aによる破骨細胞の分化抑制の分子機構 　セマフォリン3Aにより制御される破骨細胞の分化がどのような分子機構によるのかを検討した．RANKLの刺激により誘導されるカテプシンK，酒石酸耐性酸性ホスファターゼ，NFATc1をそれぞれコードするmRNAの発現はセマフォリン3Aの処理により強く抑制された一方，RANKLの受容体であるRANKあるいはM-CSFの受容体であるc-FmsをそれぞれコードするmRNAの発現に影響はみられなかった．また，細胞増殖やアポトーシス，RANKLシグナルの下流のMAPキナーゼ活性化への影響も観察されなかった． 　セマフォリン3Aの受容体複合体を形成するA型プレキシンのひとつであるプレキシンA1は，セマフォリン6Cおよびセマフォリン6Dの受容体でもあり，この場合にはニューロピリン1を必要としない．以前に，破骨細胞におけるセマフォリン6D-プレキシンA1シグナルの重要性が示されており，プレキシンA1はセマフォリン6Dをリガンドとする場合はTREM2およびDAP12と複合体を形成し，ITAMシグナルを活性化することで破骨細胞の分化を正に制御することが報告されている4)．以上の事実をふまえ，セマフォリン3Aの存在のもとでは，ニューロピリン1がセマフォリン6DとのあいだでプレキシンA1を競合的に取り合うことで，結果的に破骨細胞の分化を負に制御しているのではないかという仮定をたてた．すなわち，RANKLの刺激のまえはニューロピリン1の発現が十分であることからセマフォリン3A，ニューロピリン1，プレキシンA1が複合体を形成し，TREM2およびDAP12との会合を阻害することで破骨細胞の分化を抑制するが，RANKLの刺激ののちニューロピリン1の発現が低下すると，プレキシンA1はセマフォリン6Dと結合しTREM2およびDAP12と会合できるようになるのではないかと考えた（図1a）．実際に，破骨細胞前駆細胞を用いRANKLの刺激の前後で検討すると，RANKLの刺激のまえにはプレキシンA1とニューロピリン1との結合がみられたが，RANKLの刺激のあとにはその結合が低下し，逆に，TREM2とDAP12とが複合体を形成するようになった．また，セマフォリン3Aをそこにくわえると，RANKLの刺激をあたえてもプレキシンA1とニューロピリン1との結合は保たれたままであった．また，それにともない，ホスホリパーゼCγ2の活性化やCa2+シグナルの活性化にともない観察されるCa2+振動も抑制されていた． 図1　セマフォリン3Aにより誘導されるシグナル伝達経路 （a）破骨細胞におけるシグナル伝達経路． （b）骨芽細胞におけるシグナル伝達経路． [Download] 　さらに，セマフォリン3AはニューロンをはじめマクロファージやT細胞などでも負の走化性を誘導することが知られていることから，破骨細胞前駆細胞の遊走能に対する影響を検討した．セマフォリン3AはM-CSFにより誘導される骨髄マクロファージの遊走を用量に依存的に抑制すること，また，この抑制は変異ニューロピリン1ノックインマウスに由来する細胞ではみられないことを確認した．セマフォリン3Aの下流ではRhoファミリーに属する低分子量Gタンパク質が制御されることが知られているが，骨髄マクロファージではM-CSFにより誘導されるRhoAの活性化の抑制によりM-CSFに対する走化性が低下することが示された（図1a）． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>林 幹人・中島友紀・高柳 広</strong><br />
（科学技術振興機構ERATO高柳オステオネットワークプロジェクト）<br />
email：<a href="mailto:taka.csi@tmd.ac.jp">高柳 広</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Osteoprotection by semaphorin 3A.</span><br />
<span class="au">Mikihito Hayashi, Tomoki Nakashima, Masahiko Taniguchi, Tatsuhiko Kodama, Atsushi Kumanogoh, Hiroshi Takayanagi</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22522930" target="_blank"><em>Nature</em>, <strong>485</strong>, 69-74 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4789"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　成体において骨は，ホルモンによる制御にくわえ，さまざまな細胞間シグナル伝達因子により制御されている．破骨細胞と骨芽細胞との細胞間クロストークは骨の恒常性の維持において非常に重要だが，破骨細胞と骨芽細胞の双方の分化を制御し骨量を規定するような因子はいまだみつかっていない．筆者らは，セマフォリン3Aが破骨細胞の分化抑制と骨芽細胞の分化促進とを同時に行うことで骨保護作用を示すことを明らかにした．セマフォリン3Aはその受容体であるニューロピリン1と結合し，ITAMシグナルおよびRhoAの活性化を抑制することでRANKLにより誘導される破骨細胞の分化を抑制した．また，セマフォリン3Aは古典的Wnt経路をつうじ骨芽細胞の分化を促進し脂肪細胞の分化を抑制することも明らかになった．セマフォリン3Aノックアウトマウスおよび変異ニューロピリン1ノックインマウスのどちらも著明な骨量の低下を示した．セマフォリン3Aの投与の効果を検討したところ，破骨細胞の分化抑制および骨芽細胞の分化促進をともなう顕著な骨量の増加作用をもつことが明らかになった．以上から，セマフォリン3Aは骨関連疾患の新規の治療薬となることが期待される．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　骨の恒常性はおもにカルシウム調節ホルモンなどの内分泌系により維持されていると考えられてきたが，近年の研究により，免疫系や神経系に関連した因子によっても制御されていることが明らかになってきている<a href="#R1"><sup>1,2)</sup></a>．骨吸収と骨形成とのバランスの破綻が骨粗鬆症などの代謝性の骨疾患につながることから，このバランスを制御する分子機構の理解が新たな治療標的の確立において重要である．骨形成は骨吸収とカップリング機構によりバランスが保たれていることが知られている．現在，骨粗鬆症の治療薬として骨吸収の抑制剤が使用されているが，この場合，カップリング機構により骨形成も同時に抑制されてしまうことがありその治療効果が損なわれてしまうことから，骨吸収と骨形成の双方をバランスよく制御し骨量を回復させる薬剤および治療法の開発が望まれている．<br />
　破骨細胞は単球マクロファージ系の前駆細胞から分化する多核の巨細胞で，骨芽細胞や軟骨細胞，骨細胞などの間葉系細胞から供給されるRANKL（receptor activator of NF-κB ligand）により分化が制御されている<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．骨芽細胞系の細胞ではOsteoprotegerin（Opg）という可溶性のデコイ受容体を産生することによりRANKLの作用のバランスをとっている．しかし，骨芽細胞に由来するOpg以外の破骨細胞の分化抑制因子についてはほとんど解明されていない．</p>
<h2>1．セマフォリン3Aは骨芽細胞に由来する破骨細胞の分化抑制因子である</h2>
<p>　マウスの頭蓋冠細胞の培養上清はRANKLおよびM-CSF（macrophage-colony stimulating factor，マクロファージコロニー刺激因子）により誘導される破骨細胞の分化を抑制する活性をもつ．Opg以外の新規の骨芽細胞の分化抑制因子の存在を確認するため，Opgを欠損した頭蓋冠細胞の培養上清の破骨細胞の分化に対する影響を検討したところ，野生型の細胞の培養上清と同じ程度ではなかったが有意な分化抑制活性をもつことを見い出した．この培養上清に含まれる分化抑制因子の同定を進めるため，陰イオン交換クロマトグラフィーにより分画を行いそれぞれの画分の破骨細胞の分化に対する影響を検討したところ，強い分化抑制活性を示す画分を発見した．この画分に含まれるタンパク質を同定するため，SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により分離を行い，液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析（LC-MS/MS）法によりその同定を試みた．同定されたタンパク質のうち，分泌タンパク質であり，近年，破骨細胞と骨芽細胞との相互作用にかかわることが報告されている軸索ガイダンス因子のひとつであるセマフォリン3A（semaphorin 3A：Sema3A）に着目した．<br />
　セマフォリン3Aは軸索伸長のガイダンス因子として知られるセマフォリンファミリーに属するタンパク質である<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>．哺乳類ではクラス3セマフォリンからクラス7セマフォリンまで約20種が同定されており，その受容体であるニューロピリン（neuropilin：Nrp）ファミリーおよびプレキシン（plexin）ファミリーと複雑なリガンド-受容体の関係で結ばれている．クラス4セマフォリンからクラス6セマフォリンは膜型タンパク質，クラス7セマフォリンはGPIアンカー型タンパク質であり，プレキシンと直接に結合するが，セマフォリン3Aを含むクラス3セマフォリンは分泌型タンパク質でありニューロピリンを介してA型プレキシンからシグナルを伝達する．セマフォリン3Aにはこれまで軸索伸長のほか免疫制御やがん細胞の増殖抑制などさまざまな機能が報告されているが，骨代謝における役割はわかっていなかった．<br />
　セマフォリン3Aを発現する組織あるいは細胞をBioGPSデータベースの検索やRT-PCR法および免疫染色法により調べたところ，全身でもとくに骨芽細胞や骨細胞において高く発現し，逆に，破骨細胞にはほとんど発現がみられなかった．また，骨芽細胞においてはセマフォリンファミリーのなかでもセマフォリン3Aがもっとも高い発現を示した．<br />
　セマフォリン3Aが骨代謝にあたえる影響を生体レベルにおいて検討するため，セマフォリン3Aノックアウトマウスの骨を解析したところ著明な骨量の低下を示し，破骨細胞の分化および骨吸収の顕著な亢進が観察された．RANKLおよびM-CSFにより<em>in vitro</em>において骨髄マクロファージから破骨細胞の分化誘導を行なっても，野生型の細胞とセマフォリン3Aを欠損した細胞とで差はみられず，骨髄における破骨細胞前駆細胞の数にも変化はみられなかったが，セマフォリン3Aノックアウトマウスに由来する骨芽細胞様細胞を支持細胞として破骨細胞の分化を検討したところ，その著明な亢進が観察された．逆に，野生型マウスに由来する骨芽細胞様細胞を支持細胞としてセマフォリン3Aノックアウトマウスに由来する骨髄細胞を破骨細胞へと分化させても正常であったことから，骨芽細胞に由来するセマフォリン3Aが破骨細胞の分化を抑制していることが示唆された．実際に，セマフォリン3Aの組換えタンパク質の効果をRANKLおよびM-CSFによる破骨細胞の分化誘導系で検討したところ，RANKLの添加まえにセマフォリン3Aの処理を行うと用量に依存的な破骨細胞の分化抑制能を示した一方で，RANKLの添加ののちにセマフォリン3Aをくわえてもその効果はまったくみられなかった．また，骨芽細胞におけるRANKLおよびOpgのmRNAの発現や血中のタンパク質濃度はセマフォリン3Aノックアウトマウスでは変化はみられなかった．<br />
　セマフォリン3Aの受容体はニューロピリン1であるが，骨髄マクロファージにおけるニューロピリン1の発現はRANKLの刺激にともない急激かつ強力に抑制されることがわかった．このことが，RANKLの刺激ののちセマフォリン3Aの効果がみられなくなる原因となっていることが考えられた．実際に，ニューロピリン1を強制発現するとRANKLの刺激ののちにもセマフォリン3Aによる破骨細胞の分化抑制活性が確認され，逆に，ニューロピリン1をノックダウンするとその活性はまったくみられなくなった．さらに，クロマチン免疫沈降（ChIP）法やプロモーター解析などにより，ニューロピリン1の発現抑制にはRANKLにより活性化される転写因子のうち，NFATc1やc-Fosではなく，NF-κBが重要な役割をはたしていることが示された．<br />
　また，ニューロピリン1の骨代謝における役割を検討した．ニューロピリン1はVEGFシグナルにも重要でありそのノックアウトマウスは胎生致死であることから，セマフォリンとの結合領域に変異をもつニューロピリン1をノックインしたマウスを解析した．この変異ニューロピリン1ノックインマウスはセマフォリン3Aノックアウトマウスと同様に，破骨細胞の分化と骨吸収の亢進をともなった重篤な骨減少症の表現型を示した．</p>
<h2>2．セマフォリン3Aによる破骨細胞の分化抑制の分子機構</h2>
<p>　セマフォリン3Aにより制御される破骨細胞の分化がどのような分子機構によるのかを検討した．RANKLの刺激により誘導されるカテプシンK，酒石酸耐性酸性ホスファターゼ，NFATc1をそれぞれコードするmRNAの発現はセマフォリン3Aの処理により強く抑制された一方，RANKLの受容体であるRANKあるいはM-CSFの受容体であるc-FmsをそれぞれコードするmRNAの発現に影響はみられなかった．また，細胞増殖やアポトーシス，RANKLシグナルの下流のMAPキナーゼ活性化への影響も観察されなかった．<br />
　セマフォリン3Aの受容体複合体を形成するA型プレキシンのひとつであるプレキシンA1は，セマフォリン6Cおよびセマフォリン6Dの受容体でもあり，この場合にはニューロピリン1を必要としない．以前に，破骨細胞におけるセマフォリン6D-プレキシンA1シグナルの重要性が示されており，プレキシンA1はセマフォリン6Dをリガンドとする場合はTREM2およびDAP12と複合体を形成し，ITAMシグナルを活性化することで破骨細胞の分化を正に制御することが報告されている<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>．以上の事実をふまえ，セマフォリン3Aの存在のもとでは，ニューロピリン1がセマフォリン6DとのあいだでプレキシンA1を競合的に取り合うことで，結果的に破骨細胞の分化を負に制御しているのではないかという仮定をたてた．すなわち，RANKLの刺激のまえはニューロピリン1の発現が十分であることからセマフォリン3A，ニューロピリン1，プレキシンA1が複合体を形成し，TREM2およびDAP12との会合を阻害することで破骨細胞の分化を抑制するが，RANKLの刺激ののちニューロピリン1の発現が低下すると，プレキシンA1はセマフォリン6Dと結合しTREM2およびDAP12と会合できるようになるのではないかと考えた（<a href="#F1">図1a</a>）．実際に，破骨細胞前駆細胞を用いRANKLの刺激の前後で検討すると，RANKLの刺激のまえにはプレキシンA1とニューロピリン1との結合がみられたが，RANKLの刺激のあとにはその結合が低下し，逆に，TREM2とDAP12とが複合体を形成するようになった．また，セマフォリン3Aをそこにくわえると，RANKLの刺激をあたえてもプレキシンA1とニューロピリン1との結合は保たれたままであった．また，それにともない，ホスホリパーゼCγ2の活性化やCa<sup>2+</sup>シグナルの活性化にともない観察されるCa<sup>2+</sup>振動も抑制されていた．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　セマフォリン3Aにより誘導されるシグナル伝達経路</strong><br />
（a）破骨細胞におけるシグナル伝達経路．<br />
（b）骨芽細胞におけるシグナル伝達経路．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Takayanagi-Nature-12.5.3-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Takayanagi-Nature-12.5.3-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Takayanagi-Nature-12.5.3-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　さらに，セマフォリン3AはニューロンをはじめマクロファージやT細胞などでも負の走化性を誘導することが知られていることから，破骨細胞前駆細胞の遊走能に対する影響を検討した．セマフォリン3AはM-CSFにより誘導される骨髄マクロファージの遊走を用量に依存的に抑制すること，また，この抑制は変異ニューロピリン1ノックインマウスに由来する細胞ではみられないことを確認した．セマフォリン3Aの下流ではRhoファミリーに属する低分子量Gタンパク質が制御されることが知られているが，骨髄マクロファージではM-CSFにより誘導されるRhoAの活性化の抑制によりM-CSFに対する走化性が低下することが示された（<a href="#F1">図1a</a>）．</p>
<h2>3．セマフォリン3Aは古典的Wnt経路を介し骨芽細胞の分化を制御する</h2>
<p>　興味深いことに，骨の解析においてセマフォリン3Aノックアウトマウスおよび変異ニューロピリン1ノックインマウスのどちらにおいても，破骨細胞の表現型にくわえ骨芽細胞と脂肪細胞にも表現型が生じることを発見した．骨芽細胞の分化や骨形成は非常に低下しており，一方で，骨髄における脂肪細胞の数の増加をみとめ，これらのマウスでは破骨細胞の分化が亢進する一方で，骨芽細胞の分化が著しく低下することで重篤な低骨量の表現型にいたっていることがわかった．また，精巣上体の脂肪組織などほかの脂肪組織における変化はみとめられなかった．<br />
　セマフォリン3Aノックアウトマウスおよび変異ニューロピリン1ノックインマウスにそれぞれ由来する頭蓋冠細胞を骨芽細胞の分化誘導培地で培養したところ，アルカリホスファターゼの活性化や骨結節の形成で確認される骨芽細胞の分化能が顕著に低下していることがわかった．また，セマフォリン3Aによる処理はセマフォリン3Aノックアウトマウスに由来する細胞における骨芽細胞への分化を促進したが，変異ニューロピリン1ノックインマウスに由来する細胞における骨芽細胞の分化に対する影響はみられなかった．一方で，セマフォリン3Aノックアウトマウスあるいは変異ニューロピリン1ノックインマウスに由来するどちらの細胞でも脂肪細胞の分化の異常な亢進がみられ，セマフォリン3Aにより処理するとセマフォリン3Aノックアウトマウスに由来する細胞においては脂肪細胞への分化が抑制されたが，この効果は変異ニューロピリン1ノックインマウスに由来する細胞ではみられなかった．<br />
　セマフォリン3Aを欠損した細胞ではRunx2やOsterix，Osteocalcinなどの骨芽細胞において重要なタンパク質をコードするmRNAの発現が著しく低下しており，逆に，PPARγやC/EBPα，aP2など脂肪細胞において重要なタンパク質のmRNAの発現は上昇していた．これらの結果から，セマフォリン3Aは受容体ニューロピリン1を介して骨芽細胞の分化を活性化し，脂肪細胞の分化を抑制することが示唆された．<br />
　セマフォリン3Aを欠損した細胞ではどのようなシグナル伝達経路が影響をうけているのかを網羅的に調べるため，セマフォリン3Aを欠損した細胞においてマイクロアレイ解析を行いgene set enrichment法により解析した．その結果，コラーゲンなどを含む細胞外マトリックスにかかわるシグナル伝達経路にくわえ，古典的Wnt経路にかかわる因子が広く影響をうけていることがわかった．古典的Wnt経路は間葉系細胞の骨芽細胞への分化を促進し脂肪細胞への分化を抑制することが既知であったことから<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>，この古典的Wnt経路に着目した．実際に，セマフォリン3Aを欠損した細胞ではβカテニンの転写標的として知られる因子の発現が低下していることや，古典的Wnt経路のリガンドであるWnt3aにより刺激した際に核内移行するβカテニンの量が低下していること，さらに，ここにセマフォリン3Aをくわえるとβカテニンの核内移行が促進されることが確認できた．<br />
　セマフォリン3Aシグナルの下流ではRacのグアニンヌクレオチド交換因子（guanine nucleotide exchange factor：GEF）であるFARP2というタンパク質を介しRac1が活性化されることが知られている<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．Rac1は古典的Wnt経路のリガンドに応答したβカテニンの核内移行に重要であることが示されており<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>，この2つのシグナル伝達経路をつなぐ因子としてRac1に着目した（<a href="#F1">図1b</a>）．セマフォリン3Aを欠損した細胞におけるWnt3aの刺激ののちのRac1の活性は低下しており，セマフォリン3Aの刺激により野生型の細胞と同じ程度まで回復することが観察された．また，FARP2のドミナントネガティブ型変異体を強制発現すると，セマフォリン3Aによるβカテニンの核内移行の促進効果や骨芽細胞の分化の促進能がキャンセルされることもわかった．</p>
<h2>4．セマフォリン3Aによる骨保護作用</h2>
<p>　セマフォリン3Aが破骨細胞の分化を抑制し骨芽細胞の分化を促進するという骨量減少性の疾患に対する治療に理想的な作用をもちあわせていることから，セマフォリン3Aの組換えタンパク質の投与の骨に対する影響を調べた．まず，5週齢の野生型マウスにセマフォリン3Aを毎週1回，4週間にわたり投与したところ，破骨細胞の分化および骨吸収の抑制，骨芽細胞の分化および骨形成の亢進をともなう骨量の有意な増加が確認された．また，この投与期間において大きな副作用などはみられなかったことから，セマフォリン3Aは骨吸収と骨形成とを同時に制御することで骨増強作用を発揮する新たな創薬標的になりうると考えられた．<br />
　さらにセマフォリン3Aの治療効果を検討するため，皮質骨にドリルにより穴を開けそこでの骨再生を調べるモデルと，卵巣の摘出による骨粗鬆症モデルに対して，セマフォリン3Aを投与した．どちらの場合でも，セマフォリン3Aは破骨細胞の分化抑制および骨芽細胞の分化促進を同時に実現することにより顕著な骨量の増加作用をもつことが明らかになった．以上の結果から，セマフォリン3Aは骨吸収を抑制すると同時に骨形成を促進することで，カップリング機構の影響をうけにくい骨関連疾患の治療薬となりうることが期待された．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　今回の報告により，骨芽細胞で発現するセマフォリン3Aは骨芽細胞と破骨細胞とを同時に制御することで骨量を増加させるはたらきをもつことが明らかになった（<a href="#F2">図2</a>）．セマフォリン3Aは骨リモデリングの骨形成期において，骨芽細胞が骨基質を産生し，破骨細胞が骨形成の場に近づかないようにするため必要な因子であることが示唆された（<a href="#F2">図2</a>）．セマフォリン3Aの血中における濃度は老齢なマウスでかなり低下していたことから，バイオマーカーとなりうる可能性もある．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　セマフォリン3Aによる骨代謝の制御</strong><br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Takayanagi-Nature-12.5.3-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Takayanagi-Nature-12.5.3-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Takayanagi-Nature-12.5.3-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　骨量を増加させることのできる薬剤の候補は，現在のところ，副甲状腺ホルモン製剤と抗スクレロスチン抗体などであるが，いずれも骨芽細胞が標的であり破骨細胞に対する作用はよくわかっていない．セマフォリン3Aは骨吸収抑制薬と骨形成促進薬の2つの側面を兼ね備えた理想的な薬剤として，今後の治療応用へむけた研究が望まれる．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Takayanagi, H.</span>: <span class="ti">Osteoimmunology: shared mechanisms and crosstalk between the immune and bone systems.</span> <span class='so'>Nat. Rev. Immunol., 7, 292-304 (2007)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17380158" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Elefteriou, F.</span>: <span class="ti">Regulation of bone remodeling by the central and peripheral nervous system.</span> <span class='so'>Arch. Biochem. Biophys., 473, 231-236 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18410742" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Neufeld, G. &#038; Kessler, O.</span>: <span class="ti">The semaphorins: versatile regulators of tumour progression and tumour angiogenesis.</span> <span class='so'>Nat. Rev. Cancer, 8, 632-645 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18580951" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Takegahara, N., Takamatsu, H., Toyofuku, T. et al.</span>: <span class="ti">Plexin-A1 and its interaction with DAP12 in immune responses and bone homeostasis.</span> <span class='so'>Nat. Cell Biol., 8, 615-622 (2006)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16715077" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Krishnan, V., Bryant, H. U. &#038; Macdougald, O. A.</span>: <span class="ti">Regulation of bone mass by Wnt signaling.</span> <span class='so'>J. Clin. Invest., 116, 1202-1209 (2006)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16670761" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Toyofuku, T., Yoshida, J., Sugimoto, T. et al.</span>: <span class="ti">FARP2 triggers signals for Sema3A-mediated axonal repulsion.</span> <span class='so'>Nat. Neurosci., 8, 1712-1719 (2005)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16286926" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Wu, X., Tu, X., Joeng, K. S. et al.</span>: <span class="ti">Rac1 activation controls nuclear localization of β-catenin during canonical Wnt signaling.</span> <span class='so'>Cell, 133, 340-353 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18423204" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">林  幹人（Mikihito Hayashi）</span><br />
略歴：2010年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 修了，同年より科学技術振興機構ERATO高柳オステオネットワークプロジェクト 研究員．<br />
研究テーマ：骨生物学，骨免疫学．<br />
関心事：骨と他臓器のクロストーク．</p>
<p><strong>中島 友紀（Tomoki Nakashima）</strong><br />
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 助教．科学技術振興機構ERATO高柳オステオネットワークプロジェクト グループリーダー 兼任．</p>
<p><strong>高柳  広（Hiroshi Takayanagi）</strong><br />
東京大学大学院医学系研究科 教授．科学技術振興機構ERATO高柳オステオネットワークプロジェクト 研究総括 兼任．<br />
研究室URL：<a href="http://osteoimmunology.com/index.html" target="_blank">http://osteoimmunology.com/index.html</a>
</div>
<p>© 2012 林 幹人・中島友紀・高柳 広 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
		<item>
		<title>出芽酵母はMod5のプリオン化により抗真菌剤などの環境ストレスに対する耐性を獲得する</title>
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		<pubDate>Mon, 14 May 2012 01:00:38 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Science]]></category>
		<category><![CDATA[ストレス]]></category>
		<category><![CDATA[プリオン]]></category>
		<category><![CDATA[出芽酵母]]></category>
		<category><![CDATA[生化学]]></category>

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		<description><![CDATA[鈴木元治郎・田中元雅 （理化学研究所脳科学総合研究センター タンパク質構造疾患研究チーム） email：鈴木元治郎，田中元雅 A yeast prion, Mod5, promotes acquired drug resistance and cell survival under environmental stress. Genjiro Suzuki, Naoyuki Shimazu, Motomasa Tanaka Science, 336, 355-359 (2012) 要 約 　プリオンはタンパク質からなる遺伝因子であり，凝集したタンパク質がそれ自体を鋳型として可溶性のタンパク質を凝集体へと構造変化させることにより伝播すると考えられている．哺乳類では狂牛病などのプリオン病がプリオンにより伝播すると考えられているが，出芽酵母においてもこれまで複数のプリオンが見い出されてきた．これらの酵母プリオンはなんらかの生理学的な役割を積極的にはたしているものと考えられるが，どのような細胞機能をはたしているのか，また，どのような機構でプリオンを利用しているのかについては不明である．今回，筆者らは，出芽酵母のtRNAイソペンテニルトランスフェラーゼであるMod5が伝播性の凝集体を形成する，すなわち，プリオン化することを発見した．また，このMod5のプリオン化により，tRNAのイソペンテニル化だけでなくエルゴステロールの合成量も変化することが明らかになった．Mod5がプリオン化した出芽酵母では，おそらくエルゴステロールが増加することにより抗真菌剤に対し耐性となること，また，抗真菌剤の存在するときにはMod5のプリオン化した出芽酵母の出現頻度が上昇することもわかった．これらの結果から，出芽酵母ではプリオン化による表現型の変化により環境変化に応答することがわかり，環境ストレスに対する応答という生存に非常に重要な細胞機能においてプリオンが寄与していることを明らかにした． はじめに 　哺乳類において狂牛病などのプリオン病をひき起こす原因として知られるプリオンによる細胞質遺伝現象は1)，出芽酵母においても複数が存在すると報告されており，哺乳類のプリオンと共通した性質を多くもつことから精力的に研究されている2)．プリオンはアミロイドとよばれる線維状の凝集体となったタンパク質が，自己を鋳型として凝集していない可溶性のタンパク質を凝集させることにより，自己複製を行い伝播していくと考えられており，これまでに同定された酵母プリオンはすべてアミロイドを形成しやすいとされるグルタミン残基およびアスパラギン残基に富む配列（Q/Nリッチ配列）をもつことが知られている．また，多くのQ/Nリッチ配列をもつタンパク質は，酵母プリオンである可能性の高いことが示唆されている3)．出芽酵母では多くのタンパク質がプリオン化すること，酵母プリオンのなかには染色体の構造変化にかかわるタンパク質や転写因子などのタンパク質が含まれていること，翻訳終結因子であるSup35がプリオン化した[PSI+]酵母の出現頻度は環境ストレスにより上昇すること，自然界に存在する出芽酵母のなかにも酵母プリオンをもつものが存在すること，などから，酵母プリオンは哺乳類のプリオンのように疾患の原因としてふるまうという負の側面だけでなく，細胞機能におけるなんらかの役割をもつことが予想されている4,5)．今回，筆者らは，出芽酵母において哺乳類のプリオンと同様にQ/Nリッチ配列をもたないプリオンを探索し，そうした新たな酵母プリオンとしてMod5を同定した．さらに，Mod5のプリオン化により出芽酵母が周辺の環境変化に迅速に応答することを見い出し，酵母プリオンが環境への適応という細胞機能をはたしていることを示した． 1．Mod5はQ/Nリッチ配列をもたないが線維状の凝集体を形成する 　これまでに同定された酵母プリオンはすべてPINという性質をもつことが知られている6)．PINとはSup35のプリオン化による遺伝因子[PSI+]の出現を誘導する性質のことである．この性質を利用したスクリーニングを行い，新規の酵母プリオンの候補としてMod5を同定した．Mod5はtRNAの37位のアデニンをイソペンテニル化する酵素であり，酵母プリオンに特徴的なQ/Nリッチ配列をもたない7)．そこで，Mod5がアミロイドの性質をもつ線維状の凝集体を形成するかどうかを調べた．大腸菌で発現および精製したMod5をかくはんすると凝集体を形成した．この凝集体を電子顕微鏡で観察したところ線維状の構造を示し，アミロイドに選択的に結合するチオフラビンTやコンゴレッドと結合した．Mod5の凝集体はそれ自体の凝集を促進することや，Sup35の凝集を促進するといったアミロイドに特徴的な性質をもつこともわかった．これらのことから，Mod5はQ/Nリッチ配列をもたないにもかかわらず，アミロイドの性質をもつ線維状の凝集体を形成することが明らかになった． 2．Mod5の凝集によりMod5がプリオン化した[MOD+]酵母が出現する 　試験管内で形成したMod5の凝集体を出芽酵母に導入することにより，Mod5の凝集体が形成されプリオン化するかどうかを検討した8)．まず，Mod5の凝集体を導入することによりその機能が低下し，ピリミジンのアナログである5-フルオロウラシルに対し感受性となる株を単離した．これらの株を分子シャペロンのひとつHsp104の阻害剤であるグアニジンで処理すると5-フルオロウラシルへの感受性がなくなるものが存在した．酵母プリオンの伝播はHsp104に依存することが知られており，グアニジンの処理により表現型が回復することは酵母プリオンに特徴的な現象であることから，これらの株ではMod5がプリオン化している可能性が高いと考えられた．そこで，Mod5のプリオン化による遺伝因子を[MOD+]と名づけ，Mod5がプリオン化した株を[MOD+]酵母，Mod5がプリオン化していない野生型株を[mod-]酵母とよぶこととした． 　[MOD+]酵母におけるMod5の細胞内局在をGFPとの融合タンパク質により調べてみると，野生型の酵母ではMod5は細胞質の全体に拡散していたが，[MOD+]酵母では細胞質に凝集体をもつものの割合が増加していることが明らかになった．さらに，[MOD+]酵母では界面活性剤であるSDSに耐性をもつ凝集体が野生型の酵母と比べ著しく増加していることも明らかとなった．また，[MOD+]酵母のHSP104遺伝子を破壊したところ，ほかの酵母プリオンをもつ株と同様に，[MOD+]酵母は[mod-]酵母へと変化した．また，[MOD+]は細胞質性の遺伝因子であり優性遺伝することも明らかになった．これらのことから，Mod5は新規な酵母プリオンであることが確かめられた．これまでに同定された酵母プリオンはすべてQ/Nリッチ配列をもっていたが，今回，出芽酵母においてQ/Nリッチ配列をもたない酵母プリオンがはじめて同定された． 3．[MOD+]酵母ではエルゴステロールが増加し抗真菌剤への耐性を獲得する 　[MOD+]酵母においてどのような細胞機能の変化が起こっているかを調べた．[MOD+]酵母ではMod5の機能の低下していることが予想されたので，tRNAのイソプロピル化について定量したところ，[MOD+]酵母ではこれが減少していることが明らかになりMod5の機能が低下していることがわかった．Mod5はジメチルアリル二リン酸を基質とすることが知られている．ジメチルアリル二リン酸は出芽酵母におけるエルゴステロール合成経路においてErg20の基質となることが知られており，Mod5とErg20はtRNA修飾とエルゴステロール合成経路においてジメチルアリル二リン酸を競合して利用していると考えられている9)（図1a）．[MOD+]酵母ではMod5の機能が低下していたため，[MOD+]酵母においてエルゴステロールを定量したところ確かにエルゴステロールが増加していた． 図1　Mod5の機能の変化がtRNAの修飾とエルゴステロールの合成にあたえる影響 （a）ジメチルアリル二リン酸はMod5とErg20の共通の基質であり，Mod5とErg20はジメチルアリル二リン酸を競合的に利用してそれぞれtRNAの修飾とエルゴステロールの合成に利用している． （b）[MOD+]酵母ではMod5の機能が低下している．そのため，Mod5によるジメチルアリル二リン酸の消費量が低下し，エルゴステロールの合成量が増加していると考えられる． [Download] 　エルゴステロールは真菌類において細胞膜を構成する物質のひとつであり，動物細胞におけるコレステロールと同様なはたらきをするものと考えられている．また，動物細胞には存在せず真菌類に存在することから多くの抗真菌剤の標的とされている．そこで，[MOD+]酵母の抗真菌剤に対する耐性を調べたところ，フルコナゾールなどの抗真菌剤に対する耐性が上昇していることがわかった．また，[MOD+]酵母はチューブリンの脱重合剤であるノコダゾールに対する耐性も獲得していることが明らかになった．これらのことから，[MOD+]酵母ではMod5がプリオン化することによりエルゴステロールが増加し，抗真菌剤への耐性といった生存に有利にはたらく機能変化が生じていることが示された（図1b）． 4．抗真菌剤の存在のもとでは[MOD+]酵母の出現頻度が上昇する 　酵母プリオンのなかにはストレスによりプリオン化が誘導されるものが知られている．そこで，抗真菌剤の存在により[MOD+]酵母の出現が誘導されるかどうかを検討したところ，抗真菌剤の存在するときには[MOD+]酵母の出現頻度が顕著に上昇していることがわかった．つぎに，[MOD+]酵母と[mod-]酵母とを1対1の割合で混ぜ，抗真菌剤の存在下および非存在下においてそれぞれの増殖優位性を調べた．その結果，抗真菌剤の存在するときには[MOD+]酵母の割合が増加し，およそ36時間後にはほとんどすべてが[MOD+]酵母となったのに対し，抗真菌剤の存在しないときには[mod-]酵母の割合が増加し，60時間後にはほとんどすべてが[mod-]酵母となった．また，抗真菌剤の存在しないときの[mod-]酵母の割合の増加は，[MOD+]酵母と[mod-]酵母との増殖速度の違いによることも明らかになった．これらのことから，[MOD+]酵母はストレスのないときには生存に不利となるが，抗真菌剤などのストレスのあるときには生存に有利となり，その出現が誘導されることが明らかになった（図2）．つまり，出芽酵母はMod5のプリオン化と非プリオン化の可逆的な変換により周辺の環境変化にすばやく適応していることが明らかになった． 図2　Mod5の凝集による環境変化への迅速な応答 （a）野生型株である[mod-]酵母からMod5がプリオン化している[MOD+]酵母への変換は非常に低い割合で起こるものと考えられる．[MOD+]酵母は抗真菌剤へ抵抗性を示すが，多くの環境では野生型酵母に比べ増殖が遅いため，野生型酵母が増殖に有利となる． （b）抗真菌剤の存在しないときには野生型株である[mod-]酵母が増殖に優位性をもつのでほぼすべてが野生型酵母となる．抗真菌剤の存在するときにはMod5がプリオン化した[MOD+]酵母が増殖に優位性をもつが，抗真菌剤が存在しなくなりストレスから解放されると野生型酵母が優位性をもつようになる．このようにして，出芽酵母はプリオンの構造変化により刻々と変化する周辺環境に迅速に適応しているものと考えられる． [Download] おわりに 　今回，筆者らは，プリオン化と非プリオン化を使い分けるという，ゲノムの変化をともなわないエピジェネッティックな応答により，出芽酵母が薬剤をはじめとする環境ストレスにすばやく適応することを示した（図2）．微生物の薬剤耐性の獲得は医療や農業などにおいて大きな問題となっており，薬剤耐性の獲得にプリオンが関与していることを示したことは産業的にも意義があるものと考えられる．今回の結果は，プリオンという現象がプリオン病の病因としてだけでなく，周辺環境への応答という生存に不可欠な細胞機能にも関与していることを示したものであり，プリオンがエピジェネティックな因子として広く細胞機能の制御にかかわっている可能性を示した． 文 献 [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>鈴木元治郎・田中元雅</strong><br />
（理化学研究所脳科学総合研究センター タンパク質構造疾患研究チーム）<br />
email：<a href="mailto:gsuzuki@brain.riken.jp">鈴木元治郎</a>，<a href="mailto:motomasa@brain.riken.jp">田中元雅</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">A yeast prion, Mod5, promotes acquired drug resistance and cell survival under environmental stress.</span><br />
<span class="au">Genjiro Suzuki, Naoyuki Shimazu, Motomasa Tanaka</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22517861" target="_blank"><em>Science</em>, <strong>336</strong>, 355-359 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4771"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　プリオンはタンパク質からなる遺伝因子であり，凝集したタンパク質がそれ自体を鋳型として可溶性のタンパク質を凝集体へと構造変化させることにより伝播すると考えられている．哺乳類では狂牛病などのプリオン病がプリオンにより伝播すると考えられているが，出芽酵母においてもこれまで複数のプリオンが見い出されてきた．これらの酵母プリオンはなんらかの生理学的な役割を積極的にはたしているものと考えられるが，どのような細胞機能をはたしているのか，また，どのような機構でプリオンを利用しているのかについては不明である．今回，筆者らは，出芽酵母のtRNAイソペンテニルトランスフェラーゼであるMod5が伝播性の凝集体を形成する，すなわち，プリオン化することを発見した．また，このMod5のプリオン化により，tRNAのイソペンテニル化だけでなくエルゴステロールの合成量も変化することが明らかになった．Mod5がプリオン化した出芽酵母では，おそらくエルゴステロールが増加することにより抗真菌剤に対し耐性となること，また，抗真菌剤の存在するときにはMod5のプリオン化した出芽酵母の出現頻度が上昇することもわかった．これらの結果から，出芽酵母ではプリオン化による表現型の変化により環境変化に応答することがわかり，環境ストレスに対する応答という生存に非常に重要な細胞機能においてプリオンが寄与していることを明らかにした．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　哺乳類において狂牛病などのプリオン病をひき起こす原因として知られるプリオンによる細胞質遺伝現象は<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>，出芽酵母においても複数が存在すると報告されており，哺乳類のプリオンと共通した性質を多くもつことから精力的に研究されている<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．プリオンはアミロイドとよばれる線維状の凝集体となったタンパク質が，自己を鋳型として凝集していない可溶性のタンパク質を凝集させることにより，自己複製を行い伝播していくと考えられており，これまでに同定された酵母プリオンはすべてアミロイドを形成しやすいとされるグルタミン残基およびアスパラギン残基に富む配列（Q/Nリッチ配列）をもつことが知られている．また，多くのQ/Nリッチ配列をもつタンパク質は，酵母プリオンである可能性の高いことが示唆されている<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>．出芽酵母では多くのタンパク質がプリオン化すること，酵母プリオンのなかには染色体の構造変化にかかわるタンパク質や転写因子などのタンパク質が含まれていること，翻訳終結因子であるSup35がプリオン化した[<em>PSI</em><sup>+</sup>]酵母の出現頻度は環境ストレスにより上昇すること，自然界に存在する出芽酵母のなかにも酵母プリオンをもつものが存在すること，などから，酵母プリオンは哺乳類のプリオンのように疾患の原因としてふるまうという負の側面だけでなく，細胞機能におけるなんらかの役割をもつことが予想されている<a href="#R4"><sup>4,5)</sup></a>．今回，筆者らは，出芽酵母において哺乳類のプリオンと同様にQ/Nリッチ配列をもたないプリオンを探索し，そうした新たな酵母プリオンとしてMod5を同定した．さらに，Mod5のプリオン化により出芽酵母が周辺の環境変化に迅速に応答することを見い出し，酵母プリオンが環境への適応という細胞機能をはたしていることを示した．</p>
<h2>1．Mod5はQ/Nリッチ配列をもたないが線維状の凝集体を形成する</h2>
<p>　これまでに同定された酵母プリオンはすべてPINという性質をもつことが知られている<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．PINとはSup35のプリオン化による遺伝因子[<em>PSI</em><sup>+</sup>]の出現を誘導する性質のことである．この性質を利用したスクリーニングを行い，新規の酵母プリオンの候補としてMod5を同定した．Mod5はtRNAの37位のアデニンをイソペンテニル化する酵素であり，酵母プリオンに特徴的なQ/Nリッチ配列をもたない<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．そこで，Mod5がアミロイドの性質をもつ線維状の凝集体を形成するかどうかを調べた．大腸菌で発現および精製したMod5をかくはんすると凝集体を形成した．この凝集体を電子顕微鏡で観察したところ線維状の構造を示し，アミロイドに選択的に結合するチオフラビンTやコンゴレッドと結合した．Mod5の凝集体はそれ自体の凝集を促進することや，Sup35の凝集を促進するといったアミロイドに特徴的な性質をもつこともわかった．これらのことから，Mod5はQ/Nリッチ配列をもたないにもかかわらず，アミロイドの性質をもつ線維状の凝集体を形成することが明らかになった．</p>
<h2>2．Mod5の凝集によりMod5がプリオン化した[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母が出現する</h2>
<p>　試験管内で形成したMod5の凝集体を出芽酵母に導入することにより，Mod5の凝集体が形成されプリオン化するかどうかを検討した<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>．まず，Mod5の凝集体を導入することによりその機能が低下し，ピリミジンのアナログである5-フルオロウラシルに対し感受性となる株を単離した．これらの株を分子シャペロンのひとつHsp104の阻害剤であるグアニジンで処理すると5-フルオロウラシルへの感受性がなくなるものが存在した．酵母プリオンの伝播はHsp104に依存することが知られており，グアニジンの処理により表現型が回復することは酵母プリオンに特徴的な現象であることから，これらの株ではMod5がプリオン化している可能性が高いと考えられた．そこで，Mod5のプリオン化による遺伝因子を[<em>MOD</em><sup>+</sup>]と名づけ，Mod5がプリオン化した株を[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母，Mod5がプリオン化していない野生型株を[<em>mod</em><sup>-</sup>]酵母とよぶこととした．<br />
　[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母におけるMod5の細胞内局在をGFPとの融合タンパク質により調べてみると，野生型の酵母ではMod5は細胞質の全体に拡散していたが，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母では細胞質に凝集体をもつものの割合が増加していることが明らかになった．さらに，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母では界面活性剤であるSDSに耐性をもつ凝集体が野生型の酵母と比べ著しく増加していることも明らかとなった．また，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母の<em>HSP104</em>遺伝子を破壊したところ，ほかの酵母プリオンをもつ株と同様に，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母は[<em>mod</em><sup>-</sup>]酵母へと変化した．また，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]は細胞質性の遺伝因子であり優性遺伝することも明らかになった．これらのことから，Mod5は新規な酵母プリオンであることが確かめられた．これまでに同定された酵母プリオンはすべてQ/Nリッチ配列をもっていたが，今回，出芽酵母においてQ/Nリッチ配列をもたない酵母プリオンがはじめて同定された．</p>
<h2>3．[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母ではエルゴステロールが増加し抗真菌剤への耐性を獲得する</h2>
<p>　[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母においてどのような細胞機能の変化が起こっているかを調べた．[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母ではMod5の機能の低下していることが予想されたので，tRNAのイソプロピル化について定量したところ，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母ではこれが減少していることが明らかになりMod5の機能が低下していることがわかった．Mod5はジメチルアリル二リン酸を基質とすることが知られている．ジメチルアリル二リン酸は出芽酵母におけるエルゴステロール合成経路においてErg20の基質となることが知られており，Mod5とErg20はtRNA修飾とエルゴステロール合成経路においてジメチルアリル二リン酸を競合して利用していると考えられている<a href="#R9"><sup>9)</sup></a>（<a href="#F1">図1a</a>）．[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母ではMod5の機能が低下していたため，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母においてエルゴステロールを定量したところ確かにエルゴステロールが増加していた．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　Mod5の機能の変化がtRNAの修飾とエルゴステロールの合成にあたえる影響</strong><br />
（a）ジメチルアリル二リン酸はMod5とErg20の共通の基質であり，Mod5とErg20はジメチルアリル二リン酸を競合的に利用してそれぞれtRNAの修飾とエルゴステロールの合成に利用している．<br />
（b）[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母ではMod5の機能が低下している．そのため，Mod5によるジメチルアリル二リン酸の消費量が低下し，エルゴステロールの合成量が増加していると考えられる．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Science-12.4.20-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Science-12.4.20-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Science-12.4.20-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　エルゴステロールは真菌類において細胞膜を構成する物質のひとつであり，動物細胞におけるコレステロールと同様なはたらきをするものと考えられている．また，動物細胞には存在せず真菌類に存在することから多くの抗真菌剤の標的とされている．そこで，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母の抗真菌剤に対する耐性を調べたところ，フルコナゾールなどの抗真菌剤に対する耐性が上昇していることがわかった．また，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母はチューブリンの脱重合剤であるノコダゾールに対する耐性も獲得していることが明らかになった．これらのことから，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母ではMod5がプリオン化することによりエルゴステロールが増加し，抗真菌剤への耐性といった生存に有利にはたらく機能変化が生じていることが示された（<a href="#F1">図1b</a>）．</p>
<h2>4．抗真菌剤の存在のもとでは[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母の出現頻度が上昇する</h2>
<p>　酵母プリオンのなかにはストレスによりプリオン化が誘導されるものが知られている．そこで，抗真菌剤の存在により[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母の出現が誘導されるかどうかを検討したところ，抗真菌剤の存在するときには[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母の出現頻度が顕著に上昇していることがわかった．つぎに，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母と[<em>mod</em><sup>-</sup>]酵母とを1対1の割合で混ぜ，抗真菌剤の存在下および非存在下においてそれぞれの増殖優位性を調べた．その結果，抗真菌剤の存在するときには[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母の割合が増加し，およそ36時間後にはほとんどすべてが[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母となったのに対し，抗真菌剤の存在しないときには[<em>mod</em><sup>-</sup>]酵母の割合が増加し，60時間後にはほとんどすべてが[<em>mod</em><sup>-</sup>]酵母となった．また，抗真菌剤の存在しないときの[<em>mod</em><sup>-</sup>]酵母の割合の増加は，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母と[<em>mod</em><sup>-</sup>]酵母との増殖速度の違いによることも明らかになった．これらのことから，[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母はストレスのないときには生存に不利となるが，抗真菌剤などのストレスのあるときには生存に有利となり，その出現が誘導されることが明らかになった（<a href="#F2">図2</a>）．つまり，出芽酵母はMod5のプリオン化と非プリオン化の可逆的な変換により周辺の環境変化にすばやく適応していることが明らかになった．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　Mod5の凝集による環境変化への迅速な応答</strong><br />
（a）野生型株である[<em>mod</em><sup>-</sup>]酵母からMod5がプリオン化している[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母への変換は非常に低い割合で起こるものと考えられる．[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母は抗真菌剤へ抵抗性を示すが，多くの環境では野生型酵母に比べ増殖が遅いため，野生型酵母が増殖に有利となる．<br />
（b）抗真菌剤の存在しないときには野生型株である[<em>mod</em><sup>-</sup>]酵母が増殖に優位性をもつのでほぼすべてが野生型酵母となる．抗真菌剤の存在するときにはMod5がプリオン化した[<em>MOD</em><sup>+</sup>]酵母が増殖に優位性をもつが，抗真菌剤が存在しなくなりストレスから解放されると野生型酵母が優位性をもつようになる．このようにして，出芽酵母はプリオンの構造変化により刻々と変化する周辺環境に迅速に適応しているものと考えられる．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Science-12.4.20-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Science-12.4.20-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Science-12.4.20-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>おわりに</h2>
<p>　今回，筆者らは，プリオン化と非プリオン化を使い分けるという，ゲノムの変化をともなわないエピジェネッティックな応答により，出芽酵母が薬剤をはじめとする環境ストレスにすばやく適応することを示した（<a href="#F2">図2</a>）．微生物の薬剤耐性の獲得は医療や農業などにおいて大きな問題となっており，薬剤耐性の獲得にプリオンが関与していることを示したことは産業的にも意義があるものと考えられる．今回の結果は，プリオンという現象がプリオン病の病因としてだけでなく，周辺環境への応答という生存に不可欠な細胞機能にも関与していることを示したものであり，プリオンがエピジェネティックな因子として広く細胞機能の制御にかかわっている可能性を示した．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Prusiner, S. B.</span>: <span class="ti">Novel proteinaceous infectious particles cause scrapie.</span> <span class='so'>Science, 216, 136-144 (1982)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6801762" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Wickner, R. B.</span>: <span class="ti">[URE3] as an altered <em>URE2</em> protein: evidence for a prion analog in <em>Saccharomyces cerevisiae</em>.</span> <span class='so'>Science, 264, 566-569 (1994)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7909170" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Alberti, S., Halfmann, R., King, O. et al.</span>: <span class="ti">A systematic survey identifies prions and illuminates sequence features of prionogenic proteins.</span> <span class='so'>Cell, 137, 146-158 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19345193" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Tyedmers, J., Madariaga, M. L., Lindquist, S.</span>: <span class="ti">Prion switching in response to environmental stress.</span> <span class='so'>PLoS Biol., 6, e294 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19067491" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Halfmann, R., Jarosz, D. F., Jones, S. K. et al.</span>: <span class="ti">Prions are a common mechanism for phenotypic inheritance in wild yeasts.</span> <span class='so'>Nature, 482, 363-368 (2012)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22337056" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Derkatch, I. L., Bradley, M. E., Hong, J. Y. et al.</span>: <span class="ti">Prions affect the appearance of other prions: the story of <em>[PIN<sup>+</sup>]</em>.</span> <span class='so'>Cell, 106, 171-182 (2001)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11511345" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Dihanich, M. E., Najarian, D., Clark, R. et al.</span>: <span class="ti">Isolation and characterization of MOD5, a gene required for isopentenylation of cytoplasmic and mitochondrial tRNAs of <em>Saccharomyces cerevisiae</em>.</span> <span class='so'>Mol. Cell. Biol., 7, 177-184 (1987)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3031456" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R8"><span class='au'>Tanaka, M., Chien, P., Naber, N. et al.</span>: <span class="ti">Conformational variations in an infectious protein determine prion strain differences.</span> <span class='so'>Nature, 428, 323-328 (2004)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15029196" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R9"><span class='au'>Benko, A. L., Vaduva, G., Martin, N. C. et al.</span>: <span class="ti">Competition between a sterol biosynthetic enzyme and tRNA modification in addition to changes in the protein synthesis machinery causes altered nonsense suppression.</span> <span class='so'>Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 61-66 (2000)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10618371" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">鈴木 元治郎（Genjiro Suzuki）</span><br />
略歴：2006年 東京大学大学院新領域創成科学研究科 修了，同年より理化学研究所脳科学総合研究センター 研究員．<br />
研究テーマ：タンパク質の凝集やプリオンが細胞にどのような影響をあたえるか．</p>
<p><strong>田中 元雅（Motomasa Tanaka）</strong><br />
理化学研究所脳科学総合研究センター チームリーダー．<br />
研究室URL：<a href="http://www.motomasalab.brain.riken.jp/" target="_blank">http://www.motomasalab.brain.riken.jp/</a>
</div>
<p>© 2012 鈴木元治郎・田中元雅 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		<title>P2X受容体のATP認識機構およびチャネル活性化機構</title>
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		<pubDate>Fri, 11 May 2012 00:30:30 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Nature]]></category>
		<category><![CDATA[ATP]]></category>
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		<category><![CDATA[構造生物学]]></category>

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		<description><![CDATA[服部素之・Eric Gouaux （米国Oregon Health and Science大学Vollum Institute） email：服部素之 Molecular mechanism of ATP binding and ion channel activation in P2X receptors. Motoyuki Hattori, Eric Gouaux Nature, 485, 207-212 (2012) 要 約 　P2X受容体は細胞外のATPにより活性化されるリガンド作動性のイオンチャネルで，細胞外ATPシグナル伝達において中心的な役割をはたす受容体のひとつである．7つのサブタイプがホモ三量体およびヘテロ三量体を構成し，神経伝達，筋肉収縮，痛覚，味覚，炎症反応など，多様な生理現象にかかわることが知られている．しかしながら，その生理学的な重要性にもかかわらず，P2X受容体によるATP認識機構およびチャネル活性化機構の構造基盤はこれまで明らかではなかった．今回，筆者らは，P2X4受容体のATP結合型開状態とアポ型閉状態のX線結晶構造解析，および，それにともなう電気生理学的および生化学的な解析を行った．その結果，ATP結合型構造において新規のATP結合モチーフを見い出すとともに，その立体構造にもとづきP2X受容体によるATPの特異的な認識機構を明らかにした．また，得られたATP結合型開状態とアポ型閉状態の立体構造を比較することで，ATPの結合がどのような構造変化をひき起こしチャネルの開閉へとつながるのか，というチャネル活性化機構につき立体構造にもとづく分子機構を提唱した． はじめに 　ATPは生命において代謝，生合成，能動輸送などのエネルギー源として広く用いられている．その一方で，神経伝達物質など細胞外におけるシグナル分子としてもATPは機能するという概念は古くから提唱されていたものの1)，当時は広く受け入れられた概念ではなかった．そのような状況のなか，いまから約20年前にイオンチャネル型のP2X受容体およびGタンパク質共役型のP2Y受容体2) の2種類の細胞外ATP受容体が遺伝子クローニングされ3)，それ以後，細胞外ATPシグナル伝達の研究は飛躍的な進展をみせている4)． 　P2X受容体は細胞外のATPにより活性化されるリガンド作動性かつ非選択性のカチオンチャネルである．エキソサイトーシスや組織の損傷などにともない細胞外へと放出されたATPにより活性化されたP2X受容体によるイオンの流入は，膜電位の変化やCa2+濃度の変化へとつながり一連の細胞内シグナル伝達をひき起こす．P2X受容体はP2X1からP2X7まで7つのサブタイプに分類され，それぞれのサブタイプがホモ三量体もしくはヘテロ三量体を構成することで，さまざまな生物物理学的および薬理学的な特性をもつ多様な機能を発揮している5)．この多様なサブユニット構成をもつP2X受容体は生体において広く発現しており，神経伝達，筋肉収縮，痛覚，味覚，炎症反応など，さまざまな生理現象にかかわることが知られている．それにともない，P2X受容体は神経疾患，心血管疾患，炎症性疾患などに対する新規の治療薬の有望な標的とされている6)．その一方で，構造解析にむけた試料の調製が困難である真核生物の膜タンパク質であることから，P2X受容体の高分解能な立体構造情報は近年まで非常にかぎられており，これまで，ゼブラフィッシュに由来するP2X4受容体のアポ型閉状態の立体構造が報告されているのみであった7)．そのため，P2X受容体によるATP認識機構やATPの結合にともなうチャネル活性化機構についての立体構造にもとづく理解はきわめてかぎられた状況にあった． 1．P2X受容体の構造解析とその全体構造 　ATP結合型をとるP2X受容体の立体構造を明らかにすべく，ATPの存在のもとP2X受容体の結晶化に適した発現コンストラクトの同定のため，さまざまな生物種に由来するP2X受容体オーソログの発現スクリーニングを行った．その結果，ゼブラフィッシュに由来するP2X4受容体の発現コンストラクトにさらに変異導入を行うことで，ATPの存在下において2.8Å分解能のX線回折像をあたえる良質な結晶を得た．また，生化学的および電気生理学的な解析により，この改良されたコンストラクトはP2X受容体として適切なATP結合能およびチャネル活性を保持していることもあわせて確認した．このような構造解析にむけた発現コンストラクトの機能評価は今回のP2X受容体の構造解析にかぎった話ではなく，それぞれ対象とするタンパク質の構造からどのような生物学的な議論を行いたいかをふまえたうえで，構造解析の前段階から機能評価を行っていく必要があるだろう．また，ATPの非存在下においても結晶化を行い，既知のアポ型構造（3.1Å分解能）より高分解能となる2.9Å分解能のX線回折データを収集した．得られたX線回折データを用い，ATP存在下およびATP非存在下におけるゼブラフィッシュに由来するP2X4受容体につき，分子置換法による構造決定を行った（PDB ID：4DW0，4DW1）． 　構造決定されたP2X4受容体は比較的大きな可溶性の細胞外ドメインと6回の膜貫通へリックスを含む膜貫通ドメインから構成されるホモ三量体を形成していた（図1a）．これらのドメイン構成において，細胞外ドメインがATP結合能をもつのに対し，膜貫通ドメインはイオンの透過を担っていた．また，それぞれの単一サブニットは“イルカ”に似た形状をしており（図2a），以後の立体構造の説明には適宜この“イルカモデル”を用いる．ATP存在下およびATP非存在下のそれぞれのサブユニット構造を重ね合わせたところ，全体としてはよく一致していたものの，ATP結合部位および膜貫通へリックスにおいて大きな構造変化がみられた（図2a）．ここでは，ATP存在下での立体構造，および，ATP存在下とATP非存在下での構造の比較をとおして，P2X受容体によるATP認識機構およびチャネル活性化機構を議論する． 図1　ATP結合型開状態におけるP2X4受容体の結晶構造 （a）細胞膜と平行な向きからみた全体構造．それぞれのサブニットを異なる色で示し，ATPをボール表示した． （b）ATP結合部位の拡大図．それぞれのアミノ酸残基をスティック表示し，アミノ酸残基とATPとのあいだの水素結合を点線で示した．（A）と（B）は，となりあうそれぞれのサブユニットを示す． （c）細胞の内側からみた膜貫通ドメインの構造．それぞれの数字は，となりあうサブユニットのAla347のあいだ，および，Ala347とイオン透過孔の中心とのあいだの距離．TM：膜貫通へリックス． [Download] 図2　 P2X4受容体におけるチャネルの活性化機構 （a）ATP結合型の構造において単一サブユニットを“イルカモデル”にもとづき着色した．さらに，ATP結合型の三量体の構造とアポ型の三量体の構造とを重ね合わせた際のアポ型の構造の単一サブユニットを灰色で示した． （b）チャネル活性化機構の模式図．ATPに依存的な閉状態から開状態への構造変化を矢印で示した．（A）と（B）は，となりあうそれぞれのサブユニットを示す． [Download] 2．ATP結合部位 　ATPの存在下において構造決定されたP2X4受容体の構造において，以前のアポ型の構造においてはみられなかった有意な電子密度を同定し，電子密度の形状などからこれをATPに相当する電子密度であると結論づけた．このATP結合部位はP2X受容体三量体の細胞外ドメインのそれぞれのサブユニットのあいだに1つずつ存在しており（図1a），その結果，P2X受容体三量体には結晶学的な3回対称性にもとづく3つの等価なATP結合部位が存在していた． 　このサブユニットのあいだに位置するATP結合部位は，アルギニン残基やリジン残基など正電荷をもつ多数のアミノ酸残基を含んでいた（図1b）．これらのアミノ酸残基はP2X受容体ファミリーにおいて厳密に保存されており，さらに，過去に行われたさまざまな変異体の解析から，いずれのアミノ酸残基もP2X受容体のATP依存的なチャネル活性に重要であることが明らかとなっている． 　このサブユニットのあいだに位置する正電荷クラスターは，ATPのそれぞれのリン酸基を非常に強固に認識していた（図1b），その結果，βリン酸およびγリン酸がアデニン環のほうにむかっており，ATPはU字型のような形状をしていた（図1b）．これは，ほかの多くのATP結合タンパク質の構造ではATPのそれぞれのリン酸基がアデニン環から遠ざかるようなかたちで直線的に伸びた形状をしていると比較して，非常に特徴的であるといえた．また，この正電荷クラスターによるそれぞれのリン酸基の強固な認識は，ほかのアデノシンリン酸（ADPとAMP）に対し，P2X受容体がATPをどのように特異的に認識しているのかを説明するものであった． 　その一方で，ATPのアデニン環はThr189の主鎖のカルボニル基および側鎖，Lys70の主鎖のカルボニル基とのあいだに合計3本の水素結合を形成していた（図1b）．このATP結合部位にCTP，GTP，UTPといったほかのヌクレオチド三リン酸を重ね合わせたところ，それぞれのヌクレオチド三リン酸の塩基部分とATP結合部位とのあいだにそれぞれ2本，1本，0本の水素結合が形成可能であると示唆され，これは生化学的な解析ともよく一致していた．このことから，ヌクレオチド三リン酸の塩基部分とATP結合部位とのあいだに形成可能な水素結合の数が塩基特異性には重要であり，とくに，保存されたスレオニン残基がP2X受容体の塩基特異性を決定していることが強く示唆された． 　それに対し，ATPのリボースとP2X受容体とのあいだでは，一部に疎水性の相互作用がみられたものの，特異的な水素結合の形成はみられなかった（図1b）．また，このリボース環の2位と3位の酸素原子はいずれも溶媒との接触の可能な部位に位置しており（図1b），この部位が修飾されたリボース修飾ATPアナログがP2X受容体の非特異的な作用薬もしくは拮抗薬として作用することと一致した．そのため，今回の構造をもとに新たなリボース修飾ATPアナログをデザインすることで，P2X受容体に対する新規の阻害剤を創出することができるかもしれない． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>服部素之・Eric Gouaux</strong><br />
（米国Oregon Health and Science大学Vollum Institute）<br />
email：<a href="mailto:hattori@ohsu.edu">服部素之</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Molecular mechanism of ATP binding and ion channel activation in P2X receptors.</span><br />
<span class="au">Motoyuki Hattori, Eric Gouaux</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22535247" target="_blank"><em>Nature</em>, <strong>485</strong>, 207-212 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4764"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　P2X受容体は細胞外のATPにより活性化されるリガンド作動性のイオンチャネルで，細胞外ATPシグナル伝達において中心的な役割をはたす受容体のひとつである．7つのサブタイプがホモ三量体およびヘテロ三量体を構成し，神経伝達，筋肉収縮，痛覚，味覚，炎症反応など，多様な生理現象にかかわることが知られている．しかしながら，その生理学的な重要性にもかかわらず，P2X受容体によるATP認識機構およびチャネル活性化機構の構造基盤はこれまで明らかではなかった．今回，筆者らは，P2X<sub>4</sub>受容体のATP結合型開状態とアポ型閉状態のX線結晶構造解析，および，それにともなう電気生理学的および生化学的な解析を行った．その結果，ATP結合型構造において新規のATP結合モチーフを見い出すとともに，その立体構造にもとづきP2X受容体によるATPの特異的な認識機構を明らかにした．また，得られたATP結合型開状態とアポ型閉状態の立体構造を比較することで，ATPの結合がどのような構造変化をひき起こしチャネルの開閉へとつながるのか，というチャネル活性化機構につき立体構造にもとづく分子機構を提唱した．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　ATPは生命において代謝，生合成，能動輸送などのエネルギー源として広く用いられている．その一方で，神経伝達物質など細胞外におけるシグナル分子としてもATPは機能するという概念は古くから提唱されていたものの<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>，当時は広く受け入れられた概念ではなかった．そのような状況のなか，いまから約20年前にイオンチャネル型のP2X受容体およびGタンパク質共役型のP2Y受容体<a href="#R2"><sup>2)</sup></a> の2種類の細胞外ATP受容体が遺伝子クローニングされ<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>，それ以後，細胞外ATPシグナル伝達の研究は飛躍的な進展をみせている<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>．<br />
　P2X受容体は細胞外のATPにより活性化されるリガンド作動性かつ非選択性のカチオンチャネルである．エキソサイトーシスや組織の損傷などにともない細胞外へと放出されたATPにより活性化されたP2X受容体によるイオンの流入は，膜電位の変化やCa<sup>2+</sup>濃度の変化へとつながり一連の細胞内シグナル伝達をひき起こす．P2X受容体はP2X<sub>1</sub>からP2X<sub>7</sub>まで7つのサブタイプに分類され，それぞれのサブタイプがホモ三量体もしくはヘテロ三量体を構成することで，さまざまな生物物理学的および薬理学的な特性をもつ多様な機能を発揮している<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．この多様なサブユニット構成をもつP2X受容体は生体において広く発現しており，神経伝達，筋肉収縮，痛覚，味覚，炎症反応など，さまざまな生理現象にかかわることが知られている．それにともない，P2X受容体は神経疾患，心血管疾患，炎症性疾患などに対する新規の治療薬の有望な標的とされている<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．その一方で，構造解析にむけた試料の調製が困難である真核生物の膜タンパク質であることから，P2X受容体の高分解能な立体構造情報は近年まで非常にかぎられており，これまで，ゼブラフィッシュに由来するP2X<sub>4</sub>受容体のアポ型閉状態の立体構造が報告されているのみであった<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．そのため，P2X受容体によるATP認識機構やATPの結合にともなうチャネル活性化機構についての立体構造にもとづく理解はきわめてかぎられた状況にあった．</p>
<h2>1．P2X受容体の構造解析とその全体構造</h2>
<p>　ATP結合型をとるP2X受容体の立体構造を明らかにすべく，ATPの存在のもとP2X受容体の結晶化に適した発現コンストラクトの同定のため，さまざまな生物種に由来するP2X受容体オーソログの発現スクリーニングを行った．その結果，ゼブラフィッシュに由来するP2X<sub>4</sub>受容体の発現コンストラクトにさらに変異導入を行うことで，ATPの存在下において2.8Å分解能のX線回折像をあたえる良質な結晶を得た．また，生化学的および電気生理学的な解析により，この改良されたコンストラクトはP2X受容体として適切なATP結合能およびチャネル活性を保持していることもあわせて確認した．このような構造解析にむけた発現コンストラクトの機能評価は今回のP2X受容体の構造解析にかぎった話ではなく，それぞれ対象とするタンパク質の構造からどのような生物学的な議論を行いたいかをふまえたうえで，構造解析の前段階から機能評価を行っていく必要があるだろう．また，ATPの非存在下においても結晶化を行い，既知のアポ型構造（3.1Å分解能）より高分解能となる2.9Å分解能のX線回折データを収集した．得られたX線回折データを用い，ATP存在下およびATP非存在下におけるゼブラフィッシュに由来するP2X<sub>4</sub>受容体につき，分子置換法による構造決定を行った（PDB ID：<a href="http://service.pdbj.org/mine/Detail2?PDBID=4dw0&#038;PAGEID=Summary" target="_blank">4DW0</a>，<a href="http://service.pdbj.org/mine/Detail2?PDBID=4dw1&#038;PAGEID=Summary" target="_blank">4DW1</a>）．<br />
　構造決定されたP2X<sub>4</sub>受容体は比較的大きな可溶性の細胞外ドメインと6回の膜貫通へリックスを含む膜貫通ドメインから構成されるホモ三量体を形成していた（<a href="#F1">図1a</a>）．これらのドメイン構成において，細胞外ドメインがATP結合能をもつのに対し，膜貫通ドメインはイオンの透過を担っていた．また，それぞれの単一サブニットは“イルカ”に似た形状をしており（<a href="#F2">図2a</a>），以後の立体構造の説明には適宜この“イルカモデル”を用いる．ATP存在下およびATP非存在下のそれぞれのサブユニット構造を重ね合わせたところ，全体としてはよく一致していたものの，ATP結合部位および膜貫通へリックスにおいて大きな構造変化がみられた（<a href="#F2">図2a</a>）．ここでは，ATP存在下での立体構造，および，ATP存在下とATP非存在下での構造の比較をとおして，P2X受容体によるATP認識機構およびチャネル活性化機構を議論する．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　ATP結合型開状態におけるP2X<sub>4</sub>受容体の結晶構造</strong><br />
（a）細胞膜と平行な向きからみた全体構造．それぞれのサブニットを異なる色で示し，ATPをボール表示した．<br />
（b）ATP結合部位の拡大図．それぞれのアミノ酸残基をスティック表示し，アミノ酸残基とATPとのあいだの水素結合を点線で示した．（A）と（B）は，となりあうそれぞれのサブユニットを示す．<br />
（c）細胞の内側からみた膜貫通ドメインの構造．それぞれの数字は，となりあうサブユニットのAla347のあいだ，および，Ala347とイオン透過孔の中心とのあいだの距離．TM：膜貫通へリックス．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hattori-Nature-12.5.10-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hattori-Nature-12.5.10-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hattori-Nature-12.5.10-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　 P2X<sub>4</sub>受容体におけるチャネルの活性化機構</strong><br />
（a）ATP結合型の構造において単一サブユニットを“イルカモデル”にもとづき着色した．さらに，ATP結合型の三量体の構造とアポ型の三量体の構造とを重ね合わせた際のアポ型の構造の単一サブユニットを灰色で示した．<br />
（b）チャネル活性化機構の模式図．ATPに依存的な閉状態から開状態への構造変化を矢印で示した．（A）と（B）は，となりあうそれぞれのサブユニットを示す．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hattori-Nature-12.5.10-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hattori-Nature-12.5.10-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hattori-Nature-12.5.10-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>2．ATP結合部位</h2>
<p>　ATPの存在下において構造決定されたP2X<sub>4</sub>受容体の構造において，以前のアポ型の構造においてはみられなかった有意な電子密度を同定し，電子密度の形状などからこれをATPに相当する電子密度であると結論づけた．このATP結合部位はP2X受容体三量体の細胞外ドメインのそれぞれのサブユニットのあいだに1つずつ存在しており（<a href="#F1">図1a</a>），その結果，P2X受容体三量体には結晶学的な3回対称性にもとづく3つの等価なATP結合部位が存在していた．<br />
　このサブユニットのあいだに位置するATP結合部位は，アルギニン残基やリジン残基など正電荷をもつ多数のアミノ酸残基を含んでいた（<a href="#F1">図1b</a>）．これらのアミノ酸残基はP2X受容体ファミリーにおいて厳密に保存されており，さらに，過去に行われたさまざまな変異体の解析から，いずれのアミノ酸残基もP2X受容体のATP依存的なチャネル活性に重要であることが明らかとなっている．<br />
　このサブユニットのあいだに位置する正電荷クラスターは，ATPのそれぞれのリン酸基を非常に強固に認識していた（<a href="#F1">図1b</a>），その結果，βリン酸およびγリン酸がアデニン環のほうにむかっており，ATPはU字型のような形状をしていた（<a href="#F1">図1b</a>）．これは，ほかの多くのATP結合タンパク質の構造ではATPのそれぞれのリン酸基がアデニン環から遠ざかるようなかたちで直線的に伸びた形状をしていると比較して，非常に特徴的であるといえた．また，この正電荷クラスターによるそれぞれのリン酸基の強固な認識は，ほかのアデノシンリン酸（ADPとAMP）に対し，P2X受容体がATPをどのように特異的に認識しているのかを説明するものであった．<br />
　その一方で，ATPのアデニン環はThr189の主鎖のカルボニル基および側鎖，Lys70の主鎖のカルボニル基とのあいだに合計3本の水素結合を形成していた（<a href="#F1">図1b</a>）．このATP結合部位にCTP，GTP，UTPといったほかのヌクレオチド三リン酸を重ね合わせたところ，それぞれのヌクレオチド三リン酸の塩基部分とATP結合部位とのあいだにそれぞれ2本，1本，0本の水素結合が形成可能であると示唆され，これは生化学的な解析ともよく一致していた．このことから，ヌクレオチド三リン酸の塩基部分とATP結合部位とのあいだに形成可能な水素結合の数が塩基特異性には重要であり，とくに，保存されたスレオニン残基がP2X受容体の塩基特異性を決定していることが強く示唆された．<br />
　それに対し，ATPのリボースとP2X受容体とのあいだでは，一部に疎水性の相互作用がみられたものの，特異的な水素結合の形成はみられなかった（<a href="#F1">図1b</a>）．また，このリボース環の2位と3位の酸素原子はいずれも溶媒との接触の可能な部位に位置しており（<a href="#F1">図1b</a>），この部位が修飾されたリボース修飾ATPアナログがP2X受容体の非特異的な作用薬もしくは拮抗薬として作用することと一致した．そのため，今回の構造をもとに新たなリボース修飾ATPアナログをデザインすることで，P2X受容体に対する新規の阻害剤を創出することができるかもしれない．</p>
<h2>3．イオン透過孔</h2>
<p>　以前から構造解析されていたアポ型のP2X受容体では，2番目の膜貫通へリックスから構成されるイオン透過孔はせまく閉じていた（<a href="#F1">図1c</a>）．それに対し，今回，新たに構造解析されたATP結合型のP2X受容体では，それぞれの膜貫通へリックスはイオン透過孔の中心から遠ざかるような構造変化をみせており，その結果，イオン透過孔は大きく開いた形状となっていた（<a href="#F1">図1c</a>）．このイオン透過孔はAla347およびLeu351の付近でもっとも狭くなっており（<a href="#F1">図1c</a>），その直径はおよそ7Åであった．これは，以前の電気生理学的な解析から示唆されていた開状態のP2X受容体におけるイオン透過孔の大きさとよく一致するものであった．さらに，今回の構造においてはイオン透過孔を構成するアミノ酸残基についても過去の電気生理学的な解析とよく一致しており，それらのことから，今回，構造を決定したATP結合型のP2X受容体は，チャネルの“活性化型開状態”に相当するものであると考えられた．</p>
<h2>4．チャネル活性化機構</h2>
<p>　“ATP結合型開状態”と“アポ型閉状態”の構造を比較することで，ATPの結合により開始されるチャネル活性機構の提唱を試みた（<a href="#F2">図2b</a>）．まず，ATPの結合にともない，“イルカモデル”における“Head”ととなりあうサブユニットの“Dorsal Fin”とから形成されるクレフトが閉じ，ATPを包み込むような構造変化が起こる．その一方で，“Left Flipper”はATP結合部位からはじき出されるような動きを示す．これらATP結合部位を形成するそれぞれのモチーフは，ATP結合部位と膜貫通ドメインとのあいだに位置する“Body”と構造的につながっている．そのため，Left FlipperおよびとなりあうサブユニットのDorsal Finに起こるATPに依存的な構造変化は，両方のサブニットのBodyが外側へ広がるような動きへとつながる．このBodyの構造変化において，Bodyの下半分を構成する“Lower Body”がレバーアームのような動きをみせるのに対し，その上半分を構成する“Upper Body”はほとんど構造変化を示さず，このレバーアーム運動における支点として機能する．さらに，Lower Bodyは膜貫通ドメインと直接につながっているため，Lower Bodyの外側へ広がるような構造変化はイオン透過孔の拡大をひき起こし，チャネルの閉状態から開状態への構造変化，つまり，チャネルの活性化へとつながる．すなわち，ATP結合部位，Lower Body，膜貫通ドメイン，それぞれの構造的な共役により，ATP結合部位における比較的小さな構造変化が膜貫通ドメインにおける大きな構造変化をひき起こすことを可能としている．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　この研究では，P2X受容体の立体構造にもとづき，そのATP認識機構を明らかにするとともに，ATPの結合にともなうチャネル活性化機構を提唱した．これらの知見により，細胞外ATPシグナル伝達の開始を保証する分子機構の理解が大きく進展したといえる．また，この研究から得られたATP結合部位などの立体構造情報はP2X受容体を標的とした創薬の促進へとつながることが期待される．<br />
　しかしながら，細胞外ATPシグナル伝達の終結の理解に重要なATP結合型不活性状態である“脱感作状態”の立体構造はいまだ明らかになっておらず，P2X受容体を介した細胞外ATPシグナル伝達の開始から終結までの一連のダイナミクスの理解にはさらなる研究の進展が必要だといえる．また，P2X受容体はホモ三量体だけでなくヘテロ三量体を形成することで多様な機能の発現を実現しているものと思われるが，このヘテロ三量体の形成の立体構造にもとづく理解はほぼ皆無である．そのため，P2X受容体の構造生物学はまだまだはじまったばかりといっていい状況にあり，今後の展開に注目していきたい．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
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<li id="R2"><span class='au'>Webb, T. E., Simon, J., Krishek, B. J. et al.</span>: <span class="ti">Cloning and functional expression of a brain G-protein-coupled ATP receptor.</span> <span class='so'>FEBS Lett., 324, 219-225 (1993)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8508924" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Valera, S., Hussy, N., Evans, R. J. et al.</span>: <span class="ti">A new class of ligand-gated ion channel defined by P2x receptor for extracellular ATP.</span> <span class='so'>Nature, 371, 516-519 (1994)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7523951" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Burnstock, G.</span>: <span class="ti">Purinergic signalling: Its unpopular beginning, its acceptance and its exciting future.</span> <span class='so'>BioEssays, 34, 218-225 (2012)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22237698" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
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<li id="R7"><span class='au'>Kawate, T., Michel, J. C., Birdsong, W. T. et al.</span>: <span class="ti">Crystal structure of the ATP-gated P2X<sub>4</sub> ion channel in the closed state.</span> <span class='so'>Nature, 460, 592-598 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19641588" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">服部 素之（Motoyuki Hattori）</span><br />
略歴：2009年 東京工業大学大学院生命理工学研究科 修了，同年より米国Oregon Health and Science大学 博士研究員．<br />
研究テーマ：イオンチャネルの構造生物学．<br />
抱負：立体構造の解析を出発点として，既知の現象の“説明”にとどまらず，新しい現象の“予測”につながるような研究をしていきたい．</p>
<p><strong>Eric Gouaux</strong><br />
米国Oregon Health and Science大学Senior Scientist．<br />
研究室URL：<a href="http://www.ohsu.edu/xd/research/centers-institutes/vollum/faculty/gouauxlab.cfm" target="_blank">http://www.ohsu.edu/xd/research/centers-institutes/vollum/faculty/gouauxlab.cfm</a>
</div>
<p>© 2012 服部素之・Eric Gouaux Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		<item>
		<title>紫外線高感受性症候群A群の原因遺伝子の同定と転写と共役したDNA修復における機能の解析</title>
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		<pubDate>Wed, 09 May 2012 06:16:51 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Nature Genetics]]></category>
		<category><![CDATA[DNA修復]]></category>
		<category><![CDATA[マウス]]></category>
		<category><![CDATA[分子生物学]]></category>
		<category><![CDATA[紫外線高感受性症候群]]></category>

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		<description><![CDATA[西條将文・田中亀代次 （大阪大学大学院生命機能研究科 細胞機能学研究室） email：西條将文 Mutations in UVSSA cause UV-sensitive syndrome and destabilize ERCC6 in transcription-coupled DNA repair. Xue Zhang, Katsuyoshi Horibata, Masafumi Saijo, Chie Ishigami, Akiko Ukai, Shin-ichiro Kanno, Hidetoshi Tahara, Edward G Neilan, Masamitsu Honma, Takehiko Nohmi, Akira Yasui, Kiyoji Tanaka Nature Genetics, 44, 593-597 (2012) 要 約 　紫外線高感受性症候群はヌクレオチド除去修復の副経路である転写と共役した修復を欠損する遺伝性疾患である．筆者らは，紫外線高感受性症候群A群の原因遺伝子の候補を微小核融合法とCGHアレイ解析法を用いて特定した．紫外線高感受性症候群A群の患者に由来する細胞においてこの遺伝子のORFに変異が検出され，患者の細胞にこの遺伝子のcDNAを導入することで転写と共役した修復が回復したことから，UVSSA遺伝子と命名されたこの遺伝子が紫外線高感受性症候群A群の原因遺伝子であると結論づけた．その産物であるUVSSAは，ユビキチン鎖分解酵素USP7と複合体を形成すること，紫外線の照射に関係なく転写と共役した修復にかかわるタンパク質であるERCC8と相互作用すること，紫外線を照射した細胞より調製したクロマチン画分において転写と共役した修復にかかわるタンパク質であるERCC6およびRNAポリメラーゼIIと相互作用することが明らかになった．また，UVSSAはUSP7と協調して紫外線を照射したのちのERCC6の安定化と低リン酸化型RNAポリメラーゼIIの回復に関与していた． はじめに 　紫外線高感受性症候群（ultraviolet -sensitive syndrome）は劣性の遺伝性疾患であり，日光過敏性を示し皮膚にシミやソバカスを多発する．紫外線によるDNAの損傷はヌクレオチド除去修復（nucleotide excision [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>西條将文・田中亀代次</strong><br />
（大阪大学大学院生命機能研究科 細胞機能学研究室）<br />
email：<a href="mailto:saijom@fbs.osaka-u.ac.jp">西條将文</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Mutations in UVSSA cause UV-sensitive syndrome and destabilize ERCC6 in transcription-coupled DNA repair.</span><br />
<span class="au">Xue Zhang, Katsuyoshi Horibata, Masafumi Saijo, Chie Ishigami, Akiko Ukai, Shin-ichiro Kanno, Hidetoshi Tahara, Edward G Neilan, Masamitsu Honma, Takehiko Nohmi, Akira Yasui, Kiyoji Tanaka</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22466612" target="_blank"><em>Nature Genetics</em>, <strong>44</strong>, 593-597 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4742"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　紫外線高感受性症候群はヌクレオチド除去修復の副経路である転写と共役した修復を欠損する遺伝性疾患である．筆者らは，紫外線高感受性症候群A群の原因遺伝子の候補を微小核融合法とCGHアレイ解析法を用いて特定した．紫外線高感受性症候群A群の患者に由来する細胞においてこの遺伝子のORFに変異が検出され，患者の細胞にこの遺伝子のcDNAを導入することで転写と共役した修復が回復したことから，<em>UVSSA</em>遺伝子と命名されたこの遺伝子が紫外線高感受性症候群A群の原因遺伝子であると結論づけた．その産物であるUVSSAは，ユビキチン鎖分解酵素USP7と複合体を形成すること，紫外線の照射に関係なく転写と共役した修復にかかわるタンパク質であるERCC8と相互作用すること，紫外線を照射した細胞より調製したクロマチン画分において転写と共役した修復にかかわるタンパク質であるERCC6およびRNAポリメラーゼIIと相互作用することが明らかになった．また，UVSSAはUSP7と協調して紫外線を照射したのちのERCC6の安定化と低リン酸化型RNAポリメラーゼIIの回復に関与していた．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　紫外線高感受性症候群（ultraviolet -sensitive syndrome）は劣性の遺伝性疾患であり，日光過敏性を示し皮膚にシミやソバカスを多発する．紫外線によるDNAの損傷はヌクレオチド除去修復（nucleotide excision repair：NER）により除去されるが，紫外線高感受性症候群ではその副経路である転写と共役した修復<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>（transcription-coupled repair：TCR）が欠損しており，転写の鋳型鎖にあるDNA損傷が迅速に除去されないためRNAポリメラーゼIIがDNA損傷部位で停止したまま転写を再開できない．紫外線高感受性症候群には少なくとも3つの遺伝的な相補性群が存在するが，このうち2つの相補性群の原因遺伝子は<em>ERCC8</em>遺伝子（<em>CSA</em>遺伝子）および<em>ERCC6</em>遺伝子（<em>CSB</em>遺伝子）であることが報告されている<a href="#R2"><sup>2-5)</sup></a>．<em>ERCC8</em>遺伝子および<em>ERCC6</em>遺伝子は転写と共役した修復を欠損する別の遺伝性疾患であるCockayne症候群の原因遺伝子でもある．紫外線高感受性症候群では臨床症状は比較的軽微なのに対し，Cockayne症候群では成長障害，精神神経症状，早期老化など重篤な症状がみられる．紫外線高感受性症候群とCockayne症候群のどちらにおいても紫外線によりひき起こされる転写と共役した修復が欠損しているにもかかわらず症状に違いの生じる理由について，Cockayne症候群では酸化的なDNA損傷の修復や転写についても影響をうけている可能性が考えられているが，結論はまだでていない．転写と共役した修復は転写の鋳型鎖におけるDNA損傷によりRNAポリメラーゼIIが停止することが引き金になっていると考えられ，ERCC8およびERCC6の関与することがわかっているが，その分子機構は明らかでない．<br />
　今回，筆者らは，原因遺伝子のわかっていない紫外線高感受性症候群A群の原因遺伝子の同定を試みた．その遺伝子産物は転写と共役した修復にかかわる新たなタンパク質であり，その機能を解析することは転写と共役した修復の分子機構の解明につながるとともに，紫外線高感受性症候群とCockayne症候群との臨床症状の違いを説明する一助になると考えられる．</p>
<h2>1．紫外線高感受性症候群A群の原因遺伝子の同定</h2>
<p>　紫外線高感受性症候群A群の患者に由来する繊維芽細胞であるKps3細胞<a href="#R3"><sup>3)</sup></a> は，紫外線に高感受性を示し，紫外線を照射したのちにRNA合成の回復がみられないという特徴がある．紫外線高感受性症候群A群の原因遺伝子をクローニングするため，Kps3細胞に対して微小核融合法<a href="#R6"><sup>6)</sup></a> によりヒトの染色体を1本ずつ導入し紫外線に対し抵抗性を示すクローンの単離を試みたが，正常な細胞と同じ程度の紫外線への抵抗性を示すクローンは得られなかった．そこでつぎに，マウスA9細胞より調製した微小核とKps3細胞とを融合しマウスの染色体をランダムに導入した（<a href="#F1">図1</a>）．紫外線を定期的に照射しながら6週間にわたり培養した結果，紫外線に抵抗性を示す4つの独立したクローンが得られた．これらのクローンは正常な細胞と同じ程度の紫外線への抵抗性と紫外線を照射したのちのRNA合成の回復を示した．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　微小核融合法による紫外線に抵抗性をもつクローンの単離</strong><br />
紫外線に抵抗性をもつクローンを単離するため，紫外線高感受性症候群A群の患者に由来するKps3細胞にマウスA9細胞より調製した微小核を融合することでマウスの染色体をランダムに導入した．染色体を断片化するため，場合によりγ線を照射した微小核を使用している．結果として，紫外線に抵抗性を示すクローンが4つ得られた．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Nature-Genetics-12.4.26-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Nature-Genetics-12.4.26-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Nature-Genetics-12.4.26-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　これら4つのクローンに導入されたマウスのDNAを同定するためCGHアレイ解析を行った．4つのうち2つのクローンにはマウス第5染色体の全体（このうち1つには，さらに第12染色体と第17染色体の一部も）が導入されていた．残りの2つのクローンにはマウス第5染色体の断片が導入されていた．導入されたDNAで共通している領域は600 kbで11個の遺伝子が存在していた．<br />
　つぎに，この領域をカバーする6つのBACクローンをKps3細胞に導入して紫外線に対する抵抗性を調べたところ，1つの遺伝子（<em>4933407H18Rik</em>）のみを含むBACクローンの導入により紫外線への抵抗性が生じた．この<em>4933407H18Rik</em>のヒトにおけるホモログは<em>KIAA1530</em> <a href="#R7"><sup>7)</sup></a> であり，紫外線高感受性症候群A群の患者に由来する細胞においてこの<em>KIAA1530</em>のcDNAを解析したところ，血縁関係のない日本人の患者2人<a href="#R3"><sup>3,8)</sup></a> においてホモ接合性の同じ変異，また，イラン人の患者<a href="#R2"><sup>2)</sup></a> で別のホモ接合性の変異がみつかった．これらの変異はともに早期翻訳終結をひき起こす．また，<em>KIAA1530</em>のcDNAをKps3細胞に導入することにより，紫外線への抵抗性と紫外線の照射ののちのRNA合成の回復が正常な細胞と同じ程度にまで回復した．以上の結果は，<em>KIAA1530</em>が紫外線高感受性症候群A群の原因遺伝子であることを示しており<em>UVSSA</em>遺伝子と命名した．<br />
　紫外線高感受性症候群の患者においてCockayne症候群の原因遺伝子である<em>ERCC6</em>遺伝子および<em>ERCC8</em>遺伝子のホモ接合性の変異がみつかっている．そこで，Cockayne症候群の臨床症状を示し紫外線によりひき起こされる転写と共役した修復を欠損しているが<em>ERCC6</em>遺伝子および<em>ERCC8</em>遺伝子に変異をもたない患者3例について，<em>UVSSA</em>遺伝子のもつORFの塩基配列を調べたが変異はみつからなかった．<br />
　<em>UVSSA</em>遺伝子はヒト第4染色体p16.3に座位し709アミノ酸残基からなるタンパク質をコードしている．UVSSAは，N末端側にVHS/ENTHドメイン，C末端側にDUF2043ドメインをもち，シロイヌナズナ，イネ，線虫においてホモログが同定されているがその機能はわかっていない．</p>
<h2>2．UVSSAと転写と共役した修復にかかわるタンパク質との相互作用</h2>
<p>　転写と共役した修復におけるUVSSAの機能を明らかにするため，UVSSAと相互作用するタンパク質の同定を試みた．エピトープタグを付加したUVSSAをHEK293細胞で発現させて免疫沈降を行い共沈するタンパク質を質量分析法により解析したところ，ユビキチン鎖分解酵素であるUSP7が同定された．USP7のsiRNAを導入した正常な細胞は紫外線に対し感受性となり紫外線の照射ののちのRNA合成の回復が低下したことから，USP7が転写と共役した修復に関与することが示された．興味深いことに，USP7のsiRNAを導入した細胞ではUSP7だけではなくUVSSAの量も減少していることがわかった．逆に，UVSSAのノックダウンではUSP7は減少しなかった．これらの結果は，細胞においてUSP7はUVSSAより大量に存在し，UVSSAはUSP7と複合体を形成することにより安定化されていることを示していた．<br />
　つぎに，UVSSAとほかの転写と共役した修復にかかわるタンパク質との相互作用を調べた．紫外線高感受性症候群A群の患者に由来するKps3細胞においてエピトープタグを付加したUVSSAを発現させ免疫沈降を行ったところ，可溶性画分ではERCC8は紫外線の照射に関係なくUVSSAと共沈したが，ERCC6およびRNAポリメラーゼIIは共沈しなかった．一方，紫外線を照射した細胞より調製したクロマチン画分ではERCC6，ERCC8，RNAポリメラーゼIIの共沈がみられた．ERCC6はDNA損傷部位で停止したRNAポリメラーゼIIに対し転写と共役した修復にかかわるタンパク質をリクルートするのに必須であることが知られている<a href="#R9"><sup>9)</sup></a>．そこで，UVSSA-USP7複合体あるいはERCC8の紫外線を照射したのちのRNAポリメラーゼIIへの結合がERCC6に依存するかどうかを調べるため，ERCC6を欠損しているCockayne症候群B群の患者に由来する細胞においてエピトープタグを付加したUVSSAを発現させ免疫沈降を行った．この場合には，UVSSAとUSP7，ERCC8の共沈はさきと同様にみられたが，RNAポリメラーゼIIとの共沈は紫外線を照射した細胞より調製したクロマチン画分でもみられなかった．これらの結果は，UVSSA-USP7複合体およびERCC8はERCC6に依存的にDNA損傷部位で停止したRNAポリメラーゼIIに結合することを示していた．ERCC8を欠損しているCockayne症候群A群の患者に由来する細胞においては，USP7は紫外線の照射にかかわらずUVSSAと共沈したが，RNAポリメラーゼIIとの共沈は紫外線を照射した細胞より調製したクロマチン画分でもみられなかった．これらの結果は，DNA損傷部位で停止したRNAポリメラーゼIIおよびERCC6へのUVSSA-USP7複合体の結合はERCC8に依存的であることを示していた．</p>
<h2>3．UVSSA-USP7複合体のERCC6の安定性への関与</h2>
<p>　紫外線の照射により生じるDNA損傷により，RNAポリメラーゼIIによる転写の伸長が阻害されるだけでなく，RNAポリメラーゼIIの最大サブユニットRPB1のC末端領域が低リン酸化型であるRNAポリメラーゼII aが減少する．このRNAポリメラーゼII aは転写の再開に必要であり，紫外線の照射ののち時間とともに回復するが，転写と共役した修復を欠損したCockayne症候群の患者に由来する細胞では回復しないことが報告されている<a href="#R10"><sup>10)</sup></a>．Kps3細胞とUVSSAを発現させて正常化したKps3細胞とでRPB1のリン酸化状態を調べると，正常化したKps3細胞では紫外線の照射ののちRNAポリメラーゼII aはいったん減少したあと回復したのに対し，Kps3細胞ではRNAポリメラーゼII aは減少したまま回復しなかった．この結果は，ERCC6，ERCC8にくわえUVSSAもRNAポリメラーゼII aの回復に必要であることを示していた．<br />
　紫外線の照射ののちのタンパク質の量的な変化としては，ERCC6もKps3細胞とUVSSAを発現させて正常化したKps3細胞とで差がみられた．正常化したKps3細胞では紫外線を照射したのちのERCC6の減少はわずかなのに対し，Kps3細胞では大幅な減少がみられた．この結果は，UVSSAは転写と共役した修復においてERCC6を安定化するのに重要な役割をはたしていることを示唆した．紫外線を照射したのちのERCC6の減少は，UVSSAをノックダウンした細胞のみならずUSP7をノックダウンした細胞においても観察された．一方，UVSSAを欠損しているKps3細胞においてUSP7をノックダウンしてもERCC6の減少に変化はなかった．これらの結果より，紫外線の照射ののちにERCC6が分解しないようUVSSAとUSP7とが協調してはたらいているものと考えられた．また，プロテアソーム阻害剤MG132が存在するとKps3細胞における紫外線の照射ののちのERCC6の減少が抑制されるとともに，RNAポリメラーゼII aの回復もみられた．<br />
　以上の結果より，UVSSAが機能しないと，紫外線の照射ののちERCC6はユビキチン化されてプロテアソームにより分解され，そのためRNAポリメラーゼII aの回復は起こらないことが示された（<a href="#F2">図2</a>）．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　UVSSAによるERCC6の安定化</strong><br />
UVSSAを欠損している紫外線高感受性症候群の患者に由来する細胞では，転写と共役した修復にかかわるタンパク質のひとつであり転写の再開に必要なERCC6の分解が紫外線の照射ののち増加する．UVSSAはユビキチン鎖分解酵素であるUSP7と複合体を形成しており，この複合体の機能によりERCC6が安定化される．<br />
Ub：ユビキチン．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Nature-Genetics-12.4.26-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Nature-Genetics-12.4.26-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tanaka-Nature-Genetics-12.4.26-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>おわりに</h2>
<p>　ERCC6はDNA損傷部位で停止したRNAポリメラーゼIIに修復にかかわるほかのタンパク質をリクルートするのに必須であり，また，転写の再開にも必要なタンパク質である．今回の結果より，UVSSA-USP7複合体は紫外線を照射したのちのERCC6の安定化に関与することが示された．このERCC6の安定化によりRNAポリメラーゼII aが回復し転写が再開するものと考えられた．一方，紫外線高感受性症候群A群の患者に由来するKps3細胞では転写の鋳型鎖にあるDNA損傷の除去がみられないことから，UVSSAは転写の再開だけでなくDNA損傷を除去する過程においても必要である．その機能がさきに述べたようなERCC6の安定化によるものなのか，あるいは，別のはたらきがあるのかはまだ不明である．今後，転写と共役した修復にかかわるタンパク質として新たにくわわったUVSSA-USP7複合体の機能を解析することにより，転写と共役した修復の分子機構の明らかになることが期待される．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Hanawalt, P. C. &#038; Spivak, G.</span>: <span class="ti">Transcription-coupled DNA repair: two decades of progress and surprises.</span> <span class='so'>Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 9, 958-970 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19023283" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Spivak, G.</span>: <span class="ti">UV-sensitive syndrome.</span> <span class='so'>Mutat. Res., 577, 162-169 (2005)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15916784" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Itoh, T., Ono, T. &#038; Yamaizumi, M.</span>: <span class="ti">A new UV-sensitive syndrome not belonging to any complementation groups of xeroderma pigmentosum or Cockayne syndrome: siblings showing biochemical characteristics of Cockayne syndrome without typical clinical manifestations.</span> <span class='so'>Mutat. Res., 314, 233-248 (1994)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7513056" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Horibata, K., Iwamoto, Y., Kuraoka, I. et al.</span>: <span class="ti">Complete absence of Cockayne syndrome group B gene product gives rise to UV-sensitive syndrome but not Cockayne syndrome.</span> <span class='so'>Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101, 15410-15415 (2004)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15486090" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Nardo, T., Oneda, R., Spivak, G. et al.</span>: <span class="ti">A UV-sensitive syndrome patient with a specific CSA mutation reveals separable roles for CSA in response to UV and oxidative DNA damage.</span> <span class='so'>Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106, 6209-6214 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19329487" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
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</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">西條 将文（Masafumi Saijo）</span><br />
略歴：1990年 東京大学大学院薬学系研究科 修了，国立がんセンター研究所 リサーチレジデント，大阪大学細胞生体工学センター 助手，助教授を経て，2002年より大阪大学大学院生命機能研究科 准教授．<br />
研究テーマ：ヌクレオチド除去修復の分子機構．</p>
<p><strong>田中 亀代次（Kiyoji Tanaka）</strong><br />
大阪大学大学院生命機能研究科 特任教授．
</div>
<p>© 2012 西條将文・田中亀代次 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
		<item>
		<title>大脳新皮質における神経新生プログラムの哺乳類と鳥類との進化的な保存性</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4739</link>
		<comments>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4739#comments</comments>
		<pubDate>Wed, 09 May 2012 03:41:30 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Developmental Cell]]></category>
		<category><![CDATA[ニューロン]]></category>
		<category><![CDATA[ニワトリ]]></category>
		<category><![CDATA[発生生物学]]></category>
		<category><![CDATA[細胞分化]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://first.lifesciencedb.jp/?p=4739</guid>
		<description><![CDATA[鈴木郁夫・平田たつみ （国立遺伝学研究所 脳機能研究部門） email：鈴木郁夫，平田たつみ The temporal sequence of the mammalian neocortical neurogenetic program drives mediolateral pattern in the chick pallium. Ikuo K. Suzuki, Takahiko Kawasaki, Takashi Gojobori, Tatsumi Hirata Developmental Cell, 22, 863-870 (2012) 要 約 　哺乳類の大脳新皮質では膨大かつ多様なニューロンが接線方向に整然と並び，特徴的な層構造をとっている．この層構造は哺乳類のすべての種において共通しているが，鳥類や爬虫類などの哺乳類以外の羊膜類にはみられない．そのため，層構造をもつ大脳新皮質は哺乳類の誕生の直後に現われた進化的に新しい脳領域であると考えられている．しかし，大脳新皮質の層構造が実際にどのような進化の過程をへて誕生したのかはほとんど明らかになっておらず，長年にわたり議論されてきたにもかかわらずいまだ決着はついていない．この研究では，哺乳類の大脳新皮質の上層と下層において特異的なニューロンが，ニワトリの終脳にも存在することを明らかにした．さらに，これらのニューロンのサブタイプは哺乳類とニワトリのどちらにおいても非常によく似た過程をへて神経前駆細胞から産生されることがわかった．これらの事実は，哺乳類と鳥類との共通祖先の段階からすでに大脳新皮質にこれらのニューロンのサブタイプが存在していたことを示唆した．一方で，ニワトリの終脳において下層タイプと上層タイプのそれぞれのニューロンは哺乳類のような層状の分布は示さず，内側と外側の部位に離れて存在していた．そして，この内側と外側とに離れたニューロンのサブタイプの分布は，哺乳類とは異なる神経新生の空間的な制御により形成されていた．つまり，大脳新皮質におけるニューロンのレパートリーを産み出すための分子機構は哺乳類と鳥類との分岐以前の神経前駆細胞に存在していたものの，それぞれの系統が特殊化する過程において神経新生の空間的な制御様式を独自に進化させたことにより，それぞれの系統に固有の脳におけるニューロンの配置パターンが生まれたものと考えられた． はじめに 　われわれの認知機能の多くは大脳新皮質の神経回路に依存している．哺乳類の大脳新皮質は終脳の背側部（外套）に存在し，哺乳類以外の動物にはみられない特有の層構造を発達させている．大脳新皮質ではそれぞれの層ごとに性質のよく似たニューロンが集まっていて，たとえば，下層には皮質外へと投射する出力を担うニューロンが多く，上層には皮質内で局所回路を形成するニューロンが多い1,2)．こういった層特異的なニューロンの性質は神経前駆細胞から産生されるタイミングにより決定されることがわかっており，早期に分化するニューロンほどより下層タイプの性質をもち，より後期に分化するニューロンほど上層タイプの性質をもつ2,3)． 　大脳新皮質は比較的最近になり誕生した哺乳類において爆発的な発達をとげたため，“新皮質”という名があたえられている．しかし，大脳新皮質に相同な脳領域は鳥類や爬虫類といった哺乳類以外の生物においても確認されていて，大脳新皮質そのものが進化的に新しい脳領域であるわけではない4)．大脳新皮質と相同な領域を含む哺乳類以外の生物の外套では哺乳類のような層構造は観察されず，哺乳類の大脳新皮質のそれぞれの層に特異的なサブタイプのニューロンが存在しているのかどうかも定かでなかった5-7)． 1．ニワトリの終脳における大脳新皮質の層特異的なニューロンの分布パターン 　哺乳類の大脳新皮質におけるニューロンのサブタイプが哺乳類以外の生物においても存在するかどうかはわかっていなかった．そこで，発生期の哺乳類の大脳新皮質において特定の層で特異的に発現し層特異的なニューロンの運命決定に寄与している転写因子の遺伝子を中心に大脳新皮質の層特異的なマーカー遺伝子2) を選び，ニワトリの終脳における発現パターンを解析した．その結果，下層（第5層）に特異的なマーカー遺伝子は内側の領域で，上層（おもに第2/3層）に特異的なマーカー遺伝子は外側の領域で発現していた（図1）．この結果から，ニワトリの終脳においても哺乳類の大脳新皮質におけるニューロンのレパートリーが保存されていることが明らかになった．しかし，これらのニューロンのサブタイプの脳における空間配置パターンは哺乳類の層構造とは異なり，下層タイプと上層タイプのニューロンはそれぞれ内側と外側とに離れて分布していた． 図1　大脳新皮質の層特異的なニューロンの分布パターンの比較 （a）哺乳類． （b）ニワトリ． 哺乳類の大脳新皮質において下層と上層に特異的なニューロンは，ニワトリの外套において内側と外側の離れた領域にそれぞれ分布している． [Download] 2．ニワトリの終脳における大脳新皮質の層特異的なニューロンの産生パターン 　哺乳類の大脳新皮質の形成においては，神経前駆細胞から産生されたニューロンのサブタイプは分化したタイミングにより最終的に位置する層が決定される．また，大脳新皮質の領域のどの部位であっても，同じように下層から上層へと順に神経新生が進む．ニワトリの外套において，これらのニューロンのサブタイプがどのように産生されているかを調べた．まず，発生の初期においてさまざまな領域の神経前駆細胞を蛍光標識し，下層タイプおよび上層タイプのニューロンの産生部位と移動経路を解析した．すると，下層のマーカーを発現するニューロンは内側の神経前駆細胞に由来し，上層のマーカーを発現するニューロンは外側の神経前駆細胞に由来することが明らかになった．また，発生のさまざまなタイミングでチミジンの類似物質であるBrdUを一過的に取り込ませ，下層あるいは上層のマーカーを発現するニューロンの分化のタイミングを調べた．その結果，下層のマーカーを発現するニューロンの大多数は発生から5日前後に分化し，上層のマーカーを発現するニューロンの多くは発生から7日前後に分化していることがわかった．これらのことから，ニワトリの終脳においては，下層タイプのニューロンは内側の神経前駆細胞からより早い発生ステージに産生され，上層タイプのニューロンは外側の神経前駆細胞からより遅いステージに産生されることがわかった． 3．ニワトリの外套での培養条件におけるニューロンの産生パターン 　哺乳類の大脳新皮質においてはどの領域の神経前駆細胞も下層から上層まですべての層のニューロンを産生する．それに対して，ニワトリの外套では内側と外側の神経前駆細胞はそれぞれ下層タイプと上層タイプのどちらかのニューロンを産生する．そこで，ニワトリにおける神経新生の領域特異性を産み出す分子機構について，つぎの2つの仮説を考えた．1）内側と外側のそれぞれの領域の神経前駆細胞それ自体のニューロン産生能力が異なるため，実際に産生されるニューロンのサブタイプが領域ごとに異なる．2）神経前駆細胞それ自体は領域によらず均質であるが，神経前駆細胞の周囲の環境からの制御様式が内側と外側とで異なるため，結果として産生されるニューロンのサブタイプは領域ごとに異なる． 　この2つの仮説のうちどちらがより確からしいかを検証するため，ニワトリの外套の内側と外側のそれぞれの領域から神経前駆細胞を取り出し，胚での環境因子を除外した培養条件におけるニューロンの産生能力を調べた．このとき，神経前駆細胞を低密度で培養することで8)，単一の神経前駆細胞に由来するクローンを得ることができ，個々のクローンにおいて下層タイプあるいは上層タイプのニューロンが存在するかどうかを解析できる．解析の結果，ニワトリの外套の内側と外側のどちらの領域から単離した場合でも，神経前駆細胞は下層タイプと上層タイプの両方のニューロンを産み出すことがわかった．さらに，培養条件においても個々の神経前駆細胞は下層タイプのニューロンをさきに生み出し，そのあとで上層タイプのニューロンを産み出すことがわかった．したがって，培養条件においてはニワトリの外套の神経前駆細胞に内側と外側の由来による違いは存在しない．どちらに由来する神経前駆細胞であっても，哺乳類の大脳新皮質の神経前駆細胞と同様に，下層から上層の順でつぎつぎに複数のサブタイプのニューロンを産生する．よって，2）の仮説，すなわち，ニワトリの外套において内側と外側とで異なるサブタイプのニューロンが産生される理由は，神経前駆細胞をとりまく環境からの制御様式の異なることが原因であるという仮説が支持された． 4．ニワトリの外套における神経新生の時空間的な制御パターン 　神経前駆細胞のニューロン産生能力それ自体がどの領域でも同じであるなら，内側と外側のそれぞれの領域で異なるサブタイプのニューロンが生まれるのはなぜだろうか？　その答えは，神経前駆細胞の分裂と分化の時空間的なダイナミクスの解析から得られた．おもに下層タイプのニューロンが産生される神経新生の早期においては，内側から外側までどの領域でも比較的均質に神経新生が起こっていた．ところが，上層タイプのニューロンが産生される神経新生の後期においては，内側の領域での神経新生はきわめて低いレベルに抑制されていた一方で，外側の領域では神経前駆細胞が爆発的に分裂しニューロンが産生されていた．このため，神経新生の後期に産生される上層タイプのニューロンが外側の領域に集中すると考えられた．内側と外側のどちらの領域に由来する神経前駆細胞も基本的に同等なニューロン産生能力をもつことが示された培養実験の結果とあわせて考えると，内側と外側とでは神経新生に対する環境からの制御様式が異なっているため，最終的に産み出されるニューロンのサブタイプが異なるのだと考えられた（図2）． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>鈴木郁夫・平田たつみ</strong><br />
（国立遺伝学研究所 脳機能研究部門）<br />
email：<a href="mailto:suzuki.ikuo@gmail.com">鈴木郁夫</a>，<a href="mailto:tathirat@nig.ac.jp">平田たつみ</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">The temporal sequence of the mammalian neocortical neurogenetic program drives mediolateral pattern in the chick pallium.</span><br />
<span class="au">Ikuo K. Suzuki, Takahiko Kawasaki, Takashi Gojobori, Tatsumi Hirata</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22424929" target="_blank"><em>Developmental Cell</em>, <strong>22</strong>, 863-870 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4739"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　哺乳類の大脳新皮質では膨大かつ多様なニューロンが接線方向に整然と並び，特徴的な層構造をとっている．この層構造は哺乳類のすべての種において共通しているが，鳥類や爬虫類などの哺乳類以外の羊膜類にはみられない．そのため，層構造をもつ大脳新皮質は哺乳類の誕生の直後に現われた進化的に新しい脳領域であると考えられている．しかし，大脳新皮質の層構造が実際にどのような進化の過程をへて誕生したのかはほとんど明らかになっておらず，長年にわたり議論されてきたにもかかわらずいまだ決着はついていない．この研究では，哺乳類の大脳新皮質の上層と下層において特異的なニューロンが，ニワトリの終脳にも存在することを明らかにした．さらに，これらのニューロンのサブタイプは哺乳類とニワトリのどちらにおいても非常によく似た過程をへて神経前駆細胞から産生されることがわかった．これらの事実は，哺乳類と鳥類との共通祖先の段階からすでに大脳新皮質にこれらのニューロンのサブタイプが存在していたことを示唆した．一方で，ニワトリの終脳において下層タイプと上層タイプのそれぞれのニューロンは哺乳類のような層状の分布は示さず，内側と外側の部位に離れて存在していた．そして，この内側と外側とに離れたニューロンのサブタイプの分布は，哺乳類とは異なる神経新生の空間的な制御により形成されていた．つまり，大脳新皮質におけるニューロンのレパートリーを産み出すための分子機構は哺乳類と鳥類との分岐以前の神経前駆細胞に存在していたものの，それぞれの系統が特殊化する過程において神経新生の空間的な制御様式を独自に進化させたことにより，それぞれの系統に固有の脳におけるニューロンの配置パターンが生まれたものと考えられた．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　われわれの認知機能の多くは大脳新皮質の神経回路に依存している．哺乳類の大脳新皮質は終脳の背側部（外套）に存在し，哺乳類以外の動物にはみられない特有の層構造を発達させている．大脳新皮質ではそれぞれの層ごとに性質のよく似たニューロンが集まっていて，たとえば，下層には皮質外へと投射する出力を担うニューロンが多く，上層には皮質内で局所回路を形成するニューロンが多い<a href="#R1"><sup>1,2)</sup></a>．こういった層特異的なニューロンの性質は神経前駆細胞から産生されるタイミングにより決定されることがわかっており，早期に分化するニューロンほどより下層タイプの性質をもち，より後期に分化するニューロンほど上層タイプの性質をもつ<a href="#R2"><sup>2,3)</sup></a>．<br />
　大脳新皮質は比較的最近になり誕生した哺乳類において爆発的な発達をとげたため，“新皮質”という名があたえられている．しかし，大脳新皮質に相同な脳領域は鳥類や爬虫類といった哺乳類以外の生物においても確認されていて，大脳新皮質そのものが進化的に新しい脳領域であるわけではない<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>．大脳新皮質と相同な領域を含む哺乳類以外の生物の外套では哺乳類のような層構造は観察されず，哺乳類の大脳新皮質のそれぞれの層に特異的なサブタイプのニューロンが存在しているのかどうかも定かでなかった<a href="#R5"><sup>5-7)</sup></a>．</p>
<h2>1．ニワトリの終脳における大脳新皮質の層特異的なニューロンの分布パターン</h2>
<p>　哺乳類の大脳新皮質におけるニューロンのサブタイプが哺乳類以外の生物においても存在するかどうかはわかっていなかった．そこで，発生期の哺乳類の大脳新皮質において特定の層で特異的に発現し層特異的なニューロンの運命決定に寄与している転写因子の遺伝子を中心に大脳新皮質の層特異的なマーカー遺伝子<a href="#R2"><sup>2)</sup></a> を選び，ニワトリの終脳における発現パターンを解析した．その結果，下層（第5層）に特異的なマーカー遺伝子は内側の領域で，上層（おもに第2/3層）に特異的なマーカー遺伝子は外側の領域で発現していた（<a href="#F1">図1</a>）．この結果から，ニワトリの終脳においても哺乳類の大脳新皮質におけるニューロンのレパートリーが保存されていることが明らかになった．しかし，これらのニューロンのサブタイプの脳における空間配置パターンは哺乳類の層構造とは異なり，下層タイプと上層タイプのニューロンはそれぞれ内側と外側とに離れて分布していた．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　大脳新皮質の層特異的なニューロンの分布パターンの比較</strong><br />
（a）哺乳類．<br />
（b）ニワトリ．<br />
哺乳類の大脳新皮質において下層と上層に特異的なニューロンは，ニワトリの外套において内側と外側の離れた領域にそれぞれ分布している．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hirata-Developmental-Cell-12.4.16-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hirata-Developmental-Cell-12.4.16-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hirata-Developmental-Cell-12.4.16-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>2．ニワトリの終脳における大脳新皮質の層特異的なニューロンの産生パターン</h2>
<p>　哺乳類の大脳新皮質の形成においては，神経前駆細胞から産生されたニューロンのサブタイプは分化したタイミングにより最終的に位置する層が決定される．また，大脳新皮質の領域のどの部位であっても，同じように下層から上層へと順に神経新生が進む．ニワトリの外套において，これらのニューロンのサブタイプがどのように産生されているかを調べた．まず，発生の初期においてさまざまな領域の神経前駆細胞を蛍光標識し，下層タイプおよび上層タイプのニューロンの産生部位と移動経路を解析した．すると，下層のマーカーを発現するニューロンは内側の神経前駆細胞に由来し，上層のマーカーを発現するニューロンは外側の神経前駆細胞に由来することが明らかになった．また，発生のさまざまなタイミングでチミジンの類似物質であるBrdUを一過的に取り込ませ，下層あるいは上層のマーカーを発現するニューロンの分化のタイミングを調べた．その結果，下層のマーカーを発現するニューロンの大多数は発生から5日前後に分化し，上層のマーカーを発現するニューロンの多くは発生から7日前後に分化していることがわかった．これらのことから，ニワトリの終脳においては，下層タイプのニューロンは内側の神経前駆細胞からより早い発生ステージに産生され，上層タイプのニューロンは外側の神経前駆細胞からより遅いステージに産生されることがわかった．</p>
<h2>3．ニワトリの外套での培養条件におけるニューロンの産生パターン</h2>
<p>　哺乳類の大脳新皮質においてはどの領域の神経前駆細胞も下層から上層まですべての層のニューロンを産生する．それに対して，ニワトリの外套では内側と外側の神経前駆細胞はそれぞれ下層タイプと上層タイプのどちらかのニューロンを産生する．そこで，ニワトリにおける神経新生の領域特異性を産み出す分子機構について，つぎの2つの仮説を考えた．1）内側と外側のそれぞれの領域の神経前駆細胞それ自体のニューロン産生能力が異なるため，実際に産生されるニューロンのサブタイプが領域ごとに異なる．2）神経前駆細胞それ自体は領域によらず均質であるが，神経前駆細胞の周囲の環境からの制御様式が内側と外側とで異なるため，結果として産生されるニューロンのサブタイプは領域ごとに異なる．<br />
　この2つの仮説のうちどちらがより確からしいかを検証するため，ニワトリの外套の内側と外側のそれぞれの領域から神経前駆細胞を取り出し，胚での環境因子を除外した培養条件におけるニューロンの産生能力を調べた．このとき，神経前駆細胞を低密度で培養することで<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>，単一の神経前駆細胞に由来するクローンを得ることができ，個々のクローンにおいて下層タイプあるいは上層タイプのニューロンが存在するかどうかを解析できる．解析の結果，ニワトリの外套の内側と外側のどちらの領域から単離した場合でも，神経前駆細胞は下層タイプと上層タイプの両方のニューロンを産み出すことがわかった．さらに，培養条件においても個々の神経前駆細胞は下層タイプのニューロンをさきに生み出し，そのあとで上層タイプのニューロンを産み出すことがわかった．したがって，培養条件においてはニワトリの外套の神経前駆細胞に内側と外側の由来による違いは存在しない．どちらに由来する神経前駆細胞であっても，哺乳類の大脳新皮質の神経前駆細胞と同様に，下層から上層の順でつぎつぎに複数のサブタイプのニューロンを産生する．よって，2）の仮説，すなわち，ニワトリの外套において内側と外側とで異なるサブタイプのニューロンが産生される理由は，神経前駆細胞をとりまく環境からの制御様式の異なることが原因であるという仮説が支持された．</p>
<h2>4．ニワトリの外套における神経新生の時空間的な制御パターン</h2>
<p>　神経前駆細胞のニューロン産生能力それ自体がどの領域でも同じであるなら，内側と外側のそれぞれの領域で異なるサブタイプのニューロンが生まれるのはなぜだろうか？　その答えは，神経前駆細胞の分裂と分化の時空間的なダイナミクスの解析から得られた．おもに下層タイプのニューロンが産生される神経新生の早期においては，内側から外側までどの領域でも比較的均質に神経新生が起こっていた．ところが，上層タイプのニューロンが産生される神経新生の後期においては，内側の領域での神経新生はきわめて低いレベルに抑制されていた一方で，外側の領域では神経前駆細胞が爆発的に分裂しニューロンが産生されていた．このため，神経新生の後期に産生される上層タイプのニューロンが外側の領域に集中すると考えられた．内側と外側のどちらの領域に由来する神経前駆細胞も基本的に同等なニューロン産生能力をもつことが示された培養実験の結果とあわせて考えると，内側と外側とでは神経新生に対する環境からの制御様式が異なっているため，最終的に産み出されるニューロンのサブタイプが異なるのだと考えられた（<a href="#F2">図2</a>）．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　ニワトリの外套の発生における神経新生の時空間的なダイナミクス</strong><br />
ニワトリの個々の神経前駆細胞は哺乳類の大脳新皮質の神経前駆細胞と同様の多分化能をもち，上層タイプと下層タイプの両方のニューロンを産生する能力をもつ．しかし，内側と外側のそれぞれの領域で異なる様式により神経新生が制御されているため，それぞれの領域で実際に産生されるニューロンのサブタイプは異なっている．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hirata-Developmental-Cell-12.4.16-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hirata-Developmental-Cell-12.4.16-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Hirata-Developmental-Cell-12.4.16-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>おわりに</h2>
<p>　哺乳類の大脳新皮質とニワトリにおける相同領域は構造的に大きく異なっているにもかかわらず，共通したニューロンのレパートリーが存在することを発見した．さらに，どちらの生物においてもこれらのニューロンは単一の神経前駆細胞より下層タイプから上層タイプへつねに決まった順で産生されていた．これまで，哺乳類の大脳新皮質の層特異的なニューロンのサブタイプは，層構造それ自体の進化的な起源と同じタイミングで獲得されたと考えられてきた．しかし，この研究の結果から，ニューロンのレパートリーの起源は層構造それ自体の進化的な起源よりも古く，少なくとも，哺乳類と鳥類との共通祖先より古い段階から存在していたことが示唆された．つまり，哺乳類と鳥類は共通祖先から共通したニューロン産生能力をもつ神経前駆細胞を受け継ぎ，それぞれの系統進化の過程で神経新生の時空間的な制御パターンに独自の修正をくわえることによりまったく異なる細胞分布パターンを獲得したのだろうと考えられた．<br />
　この研究では，哺乳類と鳥類という比較的遠く離れた系統間の比較から，ニューロンのサブタイプの産生機構が驚くほどに保存されているという結果を得た．しかし，2つの系統のあいだで大きく異なっている脳におけるニューロンの分布パターンがどのような進化的な変遷をへて誕生したのかを理解するためには，さらにいくつかの別の系統についての知見が不可欠である．哺乳類と鳥類との外群にあたる両生類や魚類，さらには，原始的な羊膜類の形質をいまだ保持していると考えられるカメやトカゲなどの爬虫類についての研究が興味深い知見をもたらすだろう．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Leone, D. P., Srinivasan, K., Chen, B. et al.</span>: <span class="ti">The determination of projection neuron identity in the developing cerebral cortex.</span> <span class='so'>Curr. Opin. Neurobiol., 18, 28-35 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18508260" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Molyneaux, B. J., Arlotta, P., Menezes, J. R. et al.</span>: <span class="ti">Neuronal subtype specification in the cerebral cortex.</span> <span class='so'>Nat. Rev. Neurosci., 8, 427-437 (2007)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17514196" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>McConnell, S. K.</span>: <span class="ti">The generation of neuronal diversity in the central nervous system.</span> <span class='so'>Annu. Rev. Neurosci., 14, 269-300 (1991)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2031572" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Puelles, L., Kuwana, E., Puelles, E. et al.</span>: <span class="ti">Pallial and subpallial derivatives in the embryonic chick and mouse telencephalon, traced by the expression of the genes Dlx-2, Emx-1, Nkx-2.1, Pax-6, and Tbr-1.</span> <span class='so'>J. Comp. Neurol., 424, 409-438 (2000)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10906711" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Jarvis, E. D., Gunturkun, O., Bruce, L. et al.</span>: <span class="ti">Avian brains and a new understanding of vertebrate brain evolution.</span> <span class='so'>Nat. Rev. Neurosci., 6, 151-159 (2005)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15685220" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Medina, L. &#038; Reiner, A.</span>: <span class="ti">Do birds possess homologues of mammalian primary visual, somatosensory and motor cortices?</span> <span class='so'>Trends Neurosci., 23, 1-12 (2000)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10631781" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Northcutt, R. G. &#038; Kaas, J. H.</span>: <span class="ti">The emergence and evolution of mammalian neocortex.</span> <span class='so'>Trends Neurosci., 18, 373-379 (1995)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7482801" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R8"><span class='au'>Shen, Q., Wang, Y., Dimos, J. T. et al.</span>: <span class="ti">The timing of cortical neurogenesis is encoded within lineages of individual progenitor cells.</span> <span class='so'>Nat. Neurosci., 9, 743-751 (2006)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16680166" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">鈴木 郁夫（Ikuo K. Suzuki）</span><br />
略歴：2010年 総合研究大学大学院生命科学研究科 修了，同年 国立遺伝学研究所 博士研究員を経て，2012年よりベルギーLibre de Bruxelles大学 博士研究員．<br />
研究テーマ：ヒトの大脳皮質に特有の発生および進化の分子機構の理解．</p>
<p><strong>平田 たつみ（Tatsumi Hirata）</strong><br />
国立遺伝学研究所 准教授．<br />
研究室URL：<a href="http://www.nig.ac.jp/labs/Brain/new/j/hirata_lab_j/toppu.html" target="_blank">http://www.nig.ac.jp/labs/Brain/new/j/hirata_lab_j/toppu.html</a>
</div>
<p>© 2012 鈴木郁夫・平田たつみ Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
		<item>
		<title>2型糖尿病での膵β細胞の機能障害において炎症性マクロファージの浸潤が重要な役割をはたす</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4730</link>
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		<pubDate>Tue, 08 May 2012 01:00:25 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Cell Metabolism]]></category>
		<category><![CDATA[マウス]]></category>
		<category><![CDATA[疾患生物学]]></category>
		<category><![CDATA[糖尿病]]></category>
		<category><![CDATA[脂肪酸]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://first.lifesciencedb.jp/?p=4730</guid>
		<description><![CDATA[江口航生・真鍋一郎・永井良三 （東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学） email：江口航生 Saturated fatty acid and TLR signaling link β cell dysfunction and islet inflammation. Kosei Eguchi, Ichiro Manabe, Yumiko Oishi-Tanaka, Mitsuru Ohsugi, Nozomu Kono, Fusa Ogata, Nobuhiro Yagi, Umeharu Ohto, Masao Kimoto, Kensuke Miyake, Kazuyuki Tobe, Hiroyuki Arai, Takashi Kadowaki, Ryozo Nagai Cell Metabolism, 15, 518-533 (2012) 要 約 　2型糖尿病の病態は末梢臓器におけるインスリン抵抗性と膵β細胞からのインスリンの分泌不全により特徴づけられる．インスリン抵抗性については近年の研究により慢性炎症のはたす役割がますます明らかになっている一方，膵β細胞の機能障害において炎症のはたす役割はいまだ明らかになっていない．パルミチン酸はウェスタンダイエットに多く含まれ，膵β細胞に直接に細胞障害を惹起することが以前より知られている飽和脂肪酸である．筆者らは，このパルミチン酸をマウス個体に投与するモデルを確立した．このモデルを用いることにより，パルミチン酸は膵β細胞に存在するToll様受容体TLR4を介してケモカインを分泌させ，CD11b陽性Ly-6C陽性のM1型炎症性マクロファージを膵島に呼び寄せることにより膵島に炎症を惹起させていることが示された．そして，この膵島の炎症は膵β細胞の機能障害を起こすと同時に，ケモカインの発現の増幅を起こす悪循環を生じていることが明らかになった．実際に，2型糖尿病モデルマウスの膵島でもM1型マクロファージが集積し，インターロイキン1βやTNFαなどの炎症性サイトカインの発現が上昇していた．以上のいずれのモデルマウスでもM1型マクロファージの集積を抑えることにより膵β細胞の機能に回復が認められ，膵島の炎症を標的とした薬物が新たな治療戦略となる可能性が示唆された． はじめに 　脂質摂取量の増加および身体活動量の低下にともない肥満と2型糖尿病が急速に増加しており，その分子機構の解明と新たな治療法の開発が世界的に大きな課題となっている．最近では，肥満に関連する疾患の発症機構において炎症のはたす役割がますます明らかになっている．肥満者や2型糖尿病患者では血中の炎症性サイトカインのレベルが上昇しており，これら炎症性サイトカインがインスリンシグナルを阻害することが知られている．一方，膵β細胞の機能障害においては，最近になり，インターロイキン1受容体のアンタゴニストが2型糖尿病患者の血糖のレベルと膵β細胞の機能を回復するとの報告や1)，2型糖尿病患者の膵島にマクロファージが集積しているとの観察報告があるが2)，2型糖尿病において膵島に炎症があるならどのような分子機構で惹起されているのか，膵β細胞の機能障害へ直接の寄与の有無など，今後の解明が必要とされている． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>江口航生・真鍋一郎・永井良三</strong><br />
（東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学）<br />
email：<a href="mailto:eguchik-tky@umin.net">江口航生</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Saturated fatty acid and TLR signaling link β cell dysfunction and islet inflammation.</span><br />
<span class="au">Kosei Eguchi, Ichiro Manabe, Yumiko Oishi-Tanaka, Mitsuru Ohsugi, Nozomu Kono, Fusa Ogata, Nobuhiro Yagi, Umeharu Ohto, Masao Kimoto, Kensuke Miyake, Kazuyuki Tobe, Hiroyuki Arai, Takashi Kadowaki, Ryozo Nagai</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22465073" target="_blank"><em>Cell Metabolism</em>, <strong>15</strong>, 518-533 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4730"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　2型糖尿病の病態は末梢臓器におけるインスリン抵抗性と膵β細胞からのインスリンの分泌不全により特徴づけられる．インスリン抵抗性については近年の研究により慢性炎症のはたす役割がますます明らかになっている一方，膵β細胞の機能障害において炎症のはたす役割はいまだ明らかになっていない．パルミチン酸はウェスタンダイエットに多く含まれ，膵β細胞に直接に細胞障害を惹起することが以前より知られている飽和脂肪酸である．筆者らは，このパルミチン酸をマウス個体に投与するモデルを確立した．このモデルを用いることにより，パルミチン酸は膵β細胞に存在するToll様受容体TLR4を介してケモカインを分泌させ，CD11b陽性Ly-6C陽性のM1型炎症性マクロファージを膵島に呼び寄せることにより膵島に炎症を惹起させていることが示された．そして，この膵島の炎症は膵β細胞の機能障害を起こすと同時に，ケモカインの発現の増幅を起こす悪循環を生じていることが明らかになった．実際に，2型糖尿病モデルマウスの膵島でもM1型マクロファージが集積し，インターロイキン1βやTNFαなどの炎症性サイトカインの発現が上昇していた．以上のいずれのモデルマウスでもM1型マクロファージの集積を抑えることにより膵β細胞の機能に回復が認められ，膵島の炎症を標的とした薬物が新たな治療戦略となる可能性が示唆された．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　脂質摂取量の増加および身体活動量の低下にともない肥満と2型糖尿病が急速に増加しており，その分子機構の解明と新たな治療法の開発が世界的に大きな課題となっている．最近では，肥満に関連する疾患の発症機構において炎症のはたす役割がますます明らかになっている．肥満者や2型糖尿病患者では血中の炎症性サイトカインのレベルが上昇しており，これら炎症性サイトカインがインスリンシグナルを阻害することが知られている．一方，膵β細胞の機能障害においては，最近になり，インターロイキン1受容体のアンタゴニストが2型糖尿病患者の血糖のレベルと膵β細胞の機能を回復するとの報告や<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>，2型糖尿病患者の膵島にマクロファージが集積しているとの観察報告があるが<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>，2型糖尿病において膵島に炎症があるならどのような分子機構で惹起されているのか，膵β細胞の機能障害へ直接の寄与の有無など，今後の解明が必要とされている．<br />
　さて，肥満において2型糖尿病を惹起する因子は多様であると考えられるが，そのひとつに遊離脂肪酸があげられる．肥満では血中の遊離脂肪酸のレベルが上昇しており，飽和脂肪酸の多い食事と血中の飽和脂肪酸の濃度の上昇は2型糖尿病の新規発症の独立した危険因子である．また，パルミチン酸などの飽和脂肪酸が培養膵β細胞に細胞障害性を示すことから，“脂肪毒性”が膵β細胞の機能障害に寄与することが提唱されている．しかし，長鎖飽和脂肪酸は常温では固体であることなどから，個体における膵β細胞へのはたらきは不明のままである．<br />
　この研究では，2型糖尿病での膵β細胞の機能障害における膵島の炎症の存在とそのはたす役割を明らかにし，また，膵島に炎症が惹起される分子機構についてパルミチン酸投与モデルにおける膵島での自然免疫シグナルに着目して検討を行った．さらに，その結果を2型糖尿病モデルマウスである<em>db</em>/<em>db</em>マウスおよびKK-<em>A<sup>y</sup></em>マウスにおいて検証した．</p>
<h2>1．パルミチン酸はマウス個体において膵β細胞の機能障害を生じる</h2>
<p>　パルミチン酸が培養細胞において膵β細胞の機能障害を生じることについては以前より複数の報告があるが<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>，パルミチン酸は常温で固体であることから個体における作用についてはいまだ不明のままである．そこで，マウスに静脈からパルミチン酸エチルを持続的に投与することにより血中の遊離パルミチン酸のみを選択的に増加させる方法を確立した．この手法を用いると，パルミチン酸の持続投与は14時間以内にインスリン遺伝子および糖尿病に関与する転写因子をコードする<em>Pdx1</em>遺伝子の発現を低下させるとともに，膵島のグルコース反応性インスリン分泌を阻害した．つまり，パルミチン酸はマウス個体において膵β細胞の急速な機能障害をひき起こすことが明らかになった．</p>
<h2>2．パルミチン酸によるマウス個体における膵β細胞の急速な機能障害はTLR4-Myd88シグナルを介している</h2>
<p>　パルミチン酸はマクロファージのもつToll様受容体（Toll-like receptor：TLR）であるTLR4を活性化することが報告されており<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>，また，膵β細胞にはTLR4の発現することが報告されている<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．これより，パルミチン酸によるマウス個体における膵β細胞の機能障害においてTLR4シグナルの関与する可能性を検討することにした．TLR4またはToll様受容体のアダプタータンパク質であるMyd88のノックアウトマウスに静脈からのパルミチン酸の持続的な投与を行った結果，これらのノックアウトマウスではパルミチン酸による膵β細胞の機能障害が有意に抑制されており，パルミチン酸による膵β細胞の機能障害はTLR4-MyD88シグナルを介していることを同定した．一方，MIN6培養β細胞におけるパルミチン酸による膵β細胞の機能障害においては，TLR4あるいはMyd88のsiRNAによるノックダウンによって変化は認められなかった．以上より，マウス個体では培養細胞で同定されたシグナル機構のほか，膵β細胞において急速な機能障害をひき起こすまったく新しい機序の重要であることが示唆された．</p>
<h2>3．パルミチン酸は炎症性マクロファージを膵島に呼び寄せる</h2>
<p>　以上の<em>in vitro</em>および<em>in vivo</em>における結果から，<em>in vivo</em>においては膵β細胞とほかの細胞との細胞間相互作用を介した膵β細胞の機能障害の機構のある可能性を検討した．膵臓をインスリンおよびCD11bの蛍光抗体により染色し共焦点顕微鏡による観察を行ったところ，膵島には定常状態において多数のCD11b陽性細胞の存在することが明らかになった．さらにくわしく検討するため，単離した膵島に存在する免疫細胞をフローサイトメトリーにより解析した．その結果，膵島には定常状態においてCD11b陽性Ly-6C陰性細胞が存在し，パルミチン酸の持続投与はこの常在の細胞とは異なるCD11b陽性Ly-6C陽性細胞を特異的に動員することが明らかになった．これらの細胞をセルソーターで回収し形態および遺伝子発現を解析したところ，CD11b陽性Ly-6C陽性細胞はインターロイキン1βとTNFα（tumor necrosis factorα，腫瘍壊死因子α）を発現するM1型炎症性マクロファージであり，それに対して，CD11b陽性Ly-6C陰性を示す常在性のマクロファージはインターロイキン10を発現しCD206陽性およびCD301陽性であるM2型マクロファージの形質を示した<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．すなわち，パルミチン酸の持続投与は膵島に存在するマクロファージのM1型マクロファージへの極性シフトを生じることが示された．</p>
<h2>4．膵β細胞においてM1型マクロファージの集積にはTLR4-Myd88シグナルが必須である</h2>
<p>　パルミチン酸はどのようにして膵島においてマクロファージの極性シフトを生じさせるのだろうか．単離した膵島におけるmRNA解析ではパルミチン酸の持続投与によりMCP-1をコードする<em>Ccl2</em>遺伝子やCXCL1をコードする<em>Cxcl1</em>遺伝子などケモカイン遺伝子の発現が誘導されており，<em>Ccl2</em>ノックアウトマウスではM1型マクロファージの集積が有意に抑制されていて，CCL2-CCR2シグナルを含むケモカインシグナルの活性化がM1型マクロファージを膵島に呼び寄せていると同定した．<br />
　さらにTLR4ノックアウトマウスおよびMyd88ノックアウトマウスにおいて同様の解析を行ったところ膵島におけるケモカイン遺伝子の発現誘導は認められず，M1型マクロファージの集積は有意に抑制されていた．そこで，野生型マウスとTLR4ノックアウトマウスとを用いた骨髄移植実験を行った．その結果，骨髄に由来する細胞のTLR4はM1型マクロファージの集積には必要でなく，受容側の臓器のTLR4がM1型マクロファージの集積に必須であることが明らかになった．さらに，M1型マクロファージの集積は膵外分泌腺では認められず膵島に特異性のあったことから，膵島に特異的かつ膵島の主要な細胞種である膵β細胞に着目した．まず，MIN6培養β細胞においてパルミチン酸の持続投与はTLR4-MyD88シグナルに依存的に<em>Ccl2</em>遺伝子および<em>Cxcl1</em>遺伝子の発現を誘導し，さらに，パルミチン酸を持続投与したマウスからセルソーターを用いて単離した膵β細胞でも<em>Ccl2</em>遺伝子および<em>Cxcl1</em>遺伝子の発現が強く誘導されていた．以上より，膵β細胞はTLR4-MyD88シグナルを介してパルミチン酸に応答し，ケモカインを産生することにより膵島へM1型マクロファージを動員すると考えられた．</p>
<h2>5．パルミチン酸は膵β細胞とマクロファージとの相互作用を起こし炎症の増悪の悪循環を形成する</h2>
<p>　以上のマウス個体の解析結果をより具体的に理解するため，培養細胞の共培養系における評価を行うことにした．MIN6β細胞のみで培養，または，MIN6β細胞とRaw264マクロファージとを100対1の割合で共培養し，14時間のパルミチン酸の持続投与による刺激を行うと，MIN6β細胞のみの培養ではグルコース反応性インスリン分泌が増強されるのに対し共培養ではそれが抑制された．そこで，MIN6β細胞とRaw264マクロファージとをBoydenチェンバーを用いて共培養しそれぞれの細胞のmRNAを解析すると，互いの存在が，MIN6β細胞においてはケモカインをコードする<em>Ccl2</em>遺伝子および<em>Cxcl1</em>遺伝子の発現を，Raw264マクロファージにおいては炎症性サイトカインであるインターロイキン1βおよびTNFαをそれぞれコードする<em>Il1b</em>遺伝子および<em>Tnfa</em>遺伝子の発現を，大きく増幅することが観察された．さらに，パルミチン酸により刺激したRaw264マクロファージの培養上清は，MIN6β細胞におけるパルミチン酸による<em>Ccl2</em>遺伝子や<em>Cxcl1</em>遺伝子の発現誘導，および，インスリン遺伝子や<em>Pdx1</em>遺伝子の発現抑制を増強すること，そして，これらはインターロイキン1βおよびTNFαの中和抗体により部分的に抑制されることが観察された．すなわち，膵β細胞からのケモカインによりいったん膵島へのM1型マクロファージの集積がはじまると，炎症性サイトカインを介した膵β細胞とマクロファージとの相互作用により炎症および膵β細胞の機能障害がさらに亢進する，という悪循環を形成することが明らかになった．</p>
<h2>6．M1型マクロファージはパルミチン酸による<em>in vivo</em>での膵β細胞の機能障害に必須である</h2>
<p>　以上の結果から，パルミチン酸の持続投与による膵β細胞の機能障害におけるM1型マクロファージの役割を直接的に評価する必要があると考えた．クロドロネート内包リポソーム<a href="#R7"><sup>7)</sup></a> により膵島へのM1型マクロファージの集積を阻害すると，パルミチン酸による膵島におけるインターロイキン1βおよびTNFαの誘導はほぼ完全に抑えられ，また，膵β細胞の機能障害はほぼ完全に抑制されることがわかった．すなわち，<em>in vivo</em>における14時間のパルミチン酸の持続投与による急速な膵β細胞の機能障害においては，M1型マクロファージの集積と膵島の炎症が主要な役割を担うことが明らかになった．</p>
<h2>7．炎症性マクロファージは糖尿病モデルマウスにおける膵β細胞の機能障害において重要な役割をはたす</h2>
<p>　ここまでに明らかにされたM1型マクロファージの集積による炎症プロセスが2型糖尿病の発症に寄与しているのかどうかを検討するため，糖尿病モデルマウスである<em>db</em>/<em>db</em>マウスおよびKK-<em>A<sup>y</sup></em>マウスの膵島の解析を行った．その結果，いずれのモデルマウスの膵島においても炎症性メディエーターをコードする<em>Ccl2</em>遺伝子，<em>Il1b</em>遺伝子，<em>Tnfa</em>遺伝子などの発現が上昇しており，M1型マクロファージの集積も認めた．<em>db</em>/<em>db</em>マウスおよびKK-<em>A<sup>y</sup></em>マウスにおいてクロドロネート内包リポソームによりM1型マクロファージを除去したところ，膵島においてインスリン遺伝子および<em>Pdx1</em>遺伝子の発現が回復し，経口グルコース負荷試験により耐糖能の改善を認め，経静脈グルコース負荷試験における初期のインスリン分泌，および，単離した膵島におけるグルコース反応性インスリン分泌は改善した．すなわち，M1型マクロファージの集積と膵島の炎症による膵β細胞の機能障害の機構は，これら2型糖尿病モデルマウスにおいても重要な役割をはたすことが明らかになった．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　この研究は，以前より知られているパルミチン酸による直接的な膵β細胞の機能障害にくわえ，膵β細胞がToll様受容体TLR4を介してパルミチン酸を感知しM1型マクロファージを動員することにより惹起される炎症のプロセスが膵β細胞の機能障害を生じるという，新しい機序を明らかにした（<a href="#F1">図1</a>）．さらに，M1型マクロファージを中心とした炎症のプロセスが糖尿病モデルマウスである<em>db</em>/<em>db</em>マウスおよびKK-<em>A<sup>y</sup></em>マウスでも重要であったことから，2型糖尿病における膵β細胞の機能障害に炎症の機序が広く寄与していることが示唆された．肥満においては，脂肪組織や肝臓におけるインスリン抵抗性の惹起，さらには，動脈硬化の病態形成においても炎症が大きく寄与している．今回の結果は，肥満を背景とする病態に広く炎症が寄与していることを示すとともに，遊離脂肪酸が肥満を背景とする炎症の惹起に重要であることを示唆した．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　パルミチン酸による膵β細胞の機能障害の分子機構</strong><br />
パルミチン酸は膵β細胞においてTLR4シグナルを介しMCP-1やCXCL1などのケモカインの分泌を生じ，CD11b陽性Ly-6C陽性のM1型マクロファージを膵島に呼び込む．M1型マクロファージはインターロイキン1βやTNFαといった炎症性サイトカインを分泌し膵島に炎症を惹起する．いったんM1型マクロファージの集積がはじまると，炎症性サイトカインがさらにケモカインの分泌を促進し膵島の炎症を増悪する，という悪循環が生じる．以上の分子機構で生じる膵島の炎症が，すでに報告されている小胞体ストレスなど細胞自立的な分子機構と並行し，膵β細胞の機能障害を惹起する．<br />
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<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Nagai-Cell-Metabolism-12.4.3-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Nagai-Cell-Metabolism-12.4.3-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Larsen, C. M., Faulenbach, M., Vaag, A. et al.</span>: <span class="ti">Interleukin-1-receptor antagonist in type 2 diabetes mellitus.</span> <span class='so'>N. Engl. J. Med., 356, 1517-1526 (2007)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17429083" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Ehses, J.A., Perren, A., Eppler, E. et al.</span>: <span class="ti">Increased number of islet-associated macrophages in type 2 diabetes.</span> <span class='so'>Diabetes, 56, 2356-2370 (2007)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17579207" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Diakogiannaki, E., Welters, H. J. &#038; Morgan, N. G.</span>: <span class="ti">Differential regulation of the endoplasmic reticulum stress response in pancreatic β-cells exposed to long-chain saturated and monounsaturated fatty acids.</span> <span class='so'>J. Endocrinol., 197, 553-563 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18492819" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Lee, J. Y., Sohn, K. H., Rhee, S. H. et al.</span>: <span class="ti">Saturated fatty acids, but not unsaturated fatty acids, induce the expression of cyclooxygenase-2 mediated through Toll-like receptor 4.</span> <span class='so'>J. Biol. Chem., 276, 16683-16689 (2001)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11278967" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Schulthess, F. T., Paroni, F., Sauter, N. S. et al.</span>: <span class="ti">CXCL10 impairs β cell function and viability in diabetes through TLR4 signaling.</span> <span class='so'>Cell Metab., 9, 125-139 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19187771" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Lawrence, T. &#038; Natoli, G.</span>: <span class="ti">Transcriptional regulation of macrophage polarization: enabling diversity with identity.</span> <span class='so'>Nat. Rev. Immunol., 11, 750-761 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22025054" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
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</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">江口 航生（Kosei Eguchi）</span><br />
略歴：2008年 東京大学大学院医学系研究科博士課程 修了，2010年より東京大学大学院医学系研究科 特任助教（現 助教）．<br />
研究テーマ：心血管疾患および代謝性疾患における脂肪毒性と炎症の役割．非免疫細胞におけるToll様受容体の活性化機構と役割．<br />
関心事：ヒトの摂食行動がいかにして心血管疾患や代謝性疾患につながるのか．</p>
<p><strong>真鍋 一郎（Ichiro Manabe）</strong><br />
東京大学大学院医学系研究科 講師．</p>
<p><strong>永井 良三（Ryozo Nagai）</strong><br />
自治医科大学 学長．
</div>
<p>© 2012 江口航生・真鍋一郎・永井良三 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
		<item>
		<title>シナプスの機能を恒常的に制御する逆行性シグナル伝達はシナプス後細胞におけるTORシグナル伝達経路に依存する</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4707</link>
		<comments>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4707#comments</comments>
		<pubDate>Wed, 02 May 2012 06:21:08 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Neuron]]></category>
		<category><![CDATA[シグナル伝達]]></category>
		<category><![CDATA[シナプス]]></category>
		<category><![CDATA[神経科学]]></category>
		<category><![CDATA[翻訳制御]]></category>

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		<description><![CDATA[鶴留 一也 （カナダMcGill大学Department of Physiology） email：鶴留一也 TOR is required for the retrograde regulation of synaptic homeostasis at the Drosophila neuromuscular junction. Jay Penney, Kazuya Tsurudome, Edward H. Liao, Fatima Elazzouzi, Mark Livingstone, Miranda Gonzalez, Nahum Sonenberg, A. Pejmun Haghighi Neuron, 74, 166-178 (2012) 要 約 　ニューロンどうしのつながりを担うシナプスは，神経回路の発達の過程で形成と削減とがくり返されその機能に必要なものが生き残っていく．いったん安定したシナプスでは，そのシナプス伝達を確実なものとするために刺激に対する神経伝達物質の放出を補償する機構が必要となる．なんらかの原因によりシナプス伝達にかかわるタンパク質がうまく機能しなくなりシナプス伝達の効率が下がった場合でも，神経伝達物質の放出量を増加することにより恒常的にシナプス機能を維持する機構の存在が示されているが，その具体的な担い手はまだ明らかになっていない．この論文で，筆者らは，シナプス後細胞においてTORにより制御される翻訳機構が逆行性シナプス伝達の制御に必要であることを示した．TORは4E-BPあるいはS6Kを介する2つのシグナル伝達経路をつうじてキャップ結合タンパク質eIF4Eの活性を制御する．eIF4Eが活性化されるとmRNAの5’側非翻訳領域にあるキャップ構造とキャップ結合タンパク質複合体との相互作用が増加し，通常の状態では翻訳されにくい，込み入った構造をとる5’側非翻訳領域をもつmRNAの翻訳の促進されることが確認された．このTORシグナル伝達経路による翻訳の活性化を利用することにより，その標的となる逆行性シグナル伝達にかかわるタンパク質を同定できるものと期待される． はじめに 　神経系の発達が最終段階をむかえると，確立された神経回路の機能を保つためニューロンどうしの接合部であるシナプスは安定な情報の伝達能力をもつことが望まれる．ニューロンが外部からうけた刺激に応じてその情報をほかのニューロンへと確実に伝えるためには，大きく分けて2つの方法が考えられる．ひとつは，シナプス後細胞において受容体のはたらきを増強し確実に情報を受け取れる体制を整えること，すなわち，シナプス後細胞における受容体の発現の上昇およびシナプスへの局在化の促進である．学習などにかかわるシナプス可塑性では，この方法によりシナプス機能の強化の行われていることが多い1)．もうひとつは，シナプス後細胞でひき起こされる反応をモニターしシナプスに放出される神経伝達物質を刺激に応じた適切な量とすることで，たとえば，シナプス後細胞において受容体が機能不全におちいり神経伝達物質の放出に対し十分に反応できない場合，シナプス前細胞は神経伝達物質の放出量を増加することにより一定の刺激に対し相応の反応をシナプス後細胞にひき起こすことができる．この恒常的な神経伝達物質の放出量の制御は，シナプス後細胞からシナプス前細胞への逆行性シグナル伝達により行われているものと考えられている．シナプス後細胞において受容体は翻訳のレベルでその発現が局所的に促進されることが知られているが1,2)，その一方で，その翻訳が逆行性シグナル伝達による神経伝達物質の放出量の制御に関係しているかどうかはこれまで不明であった． 　ショウジョウバエ3令幼虫の筋接合部のシナプスでは，グルタミン酸受容体チャネルのサブユニットのひとつをコードするGluRIIA遺伝子についてその変異体が開発され，逆行性シナプス伝達における機能制御のモデルとして研究が行われている3)．このGluRIIA変異体ではグルタミン酸受容体チャネルによる電流の透過量が野生型の約半分となっているため，刺激に対し野生型と同等の反応をひき起こすのに必要な神経伝達物質の放出量が約2倍になっている．筆者らは，このモデルシナプスを用い，翻訳が恒常的なシナプス機能の制御機構に対しどのように影響をあたえているかを調べた． 1．恒常的なシナプス機能の制御機構への翻訳開始因子の関与 　GluRIIA変異体において起こるシナプス機能の制御機構は翻訳によりどのような影響をうけるのだろうか？　この点を明らかにするため，eIF2αとeIF4Eという2つの重要な翻訳開始因子4) について検討した．それぞれの翻訳開始因子の変異体のヘテロ接合体とGluRIIA変異体のホモ接合体との二重変異体を作製しその発現量をGluRIIA変異体において抑制したところ，eIF2α変異のヘテロ接合体では影響はなかったが，eIF4E変異のヘテロ接合体ではGluRIIA変異体におけるシナプス機能の制御機構が阻害されシナプス伝達物質の放出量が減少していた．このことは，eIF4Eを介する翻訳開始機構が逆行性シグナル伝達を介する恒常的なシナプス機能の制御機構において重要な役割を担っていることを意味した． 　つぎに，eIF4Eを制御しているTOR（target of rapamycin）について検討した．TORはさまざまな生体情報をとりまとめタンパク質合成や代謝反応など多様なシグナル伝達をひき起こし5)，シナプス可塑性などへの関与も報告されているが6)，恒常的なシナプス機能の制御機構への関与については知られていない．TOR変異体のヘテロ接合体とGluRIIA変異体のホモ接合体との二重変異体を用いた実験の結果，TOR変異体のヘテロ接合体でもまた，eIF4E変異体のヘテロ接合体と同じく，GluRIIA変異体におけるシナプス機能の制御機構が阻害されることが示された．また，野生型GluRIIA遺伝子をもつショウジョウバエでは，TOR変異およびeIF2α変異はともにGluRIIA遺伝子の発現量を低下させグルタミン酸受容体の神経伝達物質に対する反応を減少させるが，eIF2α変異体ではシナプス機能の制御機構により神経伝達物質の放出量が増加するのに対し，TOR変異体ではシナプス機能の制御機構は阻害され通常よりも弱い反応を示すようになった．以上の結果から，恒常的なシナプス機能の制御機構にはTORにより制御されるeIF4Eを介した翻訳開始機構が重要な役割をはたしていることが明らかになった． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>鶴留 一也</strong><br />
（カナダMcGill大学Department of Physiology）<br />
email：<a href="mailto:kazuya.tsurudome@mcgill.ca">鶴留一也</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">TOR is required for the retrograde regulation of synaptic homeostasis at the <em>Drosophila</em> neuromuscular junction.</span><br />
<span class="au">Jay Penney, Kazuya Tsurudome, Edward H. Liao, Fatima Elazzouzi, Mark Livingstone, Miranda Gonzalez, Nahum Sonenberg, A. Pejmun Haghighi</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22500638" target="_blank"><em>Neuron</em>, <strong>74</strong>, 166-178 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4707"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　ニューロンどうしのつながりを担うシナプスは，神経回路の発達の過程で形成と削減とがくり返されその機能に必要なものが生き残っていく．いったん安定したシナプスでは，そのシナプス伝達を確実なものとするために刺激に対する神経伝達物質の放出を補償する機構が必要となる．なんらかの原因によりシナプス伝達にかかわるタンパク質がうまく機能しなくなりシナプス伝達の効率が下がった場合でも，神経伝達物質の放出量を増加することにより恒常的にシナプス機能を維持する機構の存在が示されているが，その具体的な担い手はまだ明らかになっていない．この論文で，筆者らは，シナプス後細胞においてTORにより制御される翻訳機構が逆行性シナプス伝達の制御に必要であることを示した．TORは4E-BPあるいはS6Kを介する2つのシグナル伝達経路をつうじてキャップ結合タンパク質eIF4Eの活性を制御する．eIF4Eが活性化されるとmRNAの5’側非翻訳領域にあるキャップ構造とキャップ結合タンパク質複合体との相互作用が増加し，通常の状態では翻訳されにくい，込み入った構造をとる5’側非翻訳領域をもつmRNAの翻訳の促進されることが確認された．このTORシグナル伝達経路による翻訳の活性化を利用することにより，その標的となる逆行性シグナル伝達にかかわるタンパク質を同定できるものと期待される．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　神経系の発達が最終段階をむかえると，確立された神経回路の機能を保つためニューロンどうしの接合部であるシナプスは安定な情報の伝達能力をもつことが望まれる．ニューロンが外部からうけた刺激に応じてその情報をほかのニューロンへと確実に伝えるためには，大きく分けて2つの方法が考えられる．ひとつは，シナプス後細胞において受容体のはたらきを増強し確実に情報を受け取れる体制を整えること，すなわち，シナプス後細胞における受容体の発現の上昇およびシナプスへの局在化の促進である．学習などにかかわるシナプス可塑性では，この方法によりシナプス機能の強化の行われていることが多い<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．もうひとつは，シナプス後細胞でひき起こされる反応をモニターしシナプスに放出される神経伝達物質を刺激に応じた適切な量とすることで，たとえば，シナプス後細胞において受容体が機能不全におちいり神経伝達物質の放出に対し十分に反応できない場合，シナプス前細胞は神経伝達物質の放出量を増加することにより一定の刺激に対し相応の反応をシナプス後細胞にひき起こすことができる．この恒常的な神経伝達物質の放出量の制御は，シナプス後細胞からシナプス前細胞への逆行性シグナル伝達により行われているものと考えられている．シナプス後細胞において受容体は翻訳のレベルでその発現が局所的に促進されることが知られているが<a href="#R1"><sup>1,2)</sup></a>，その一方で，その翻訳が逆行性シグナル伝達による神経伝達物質の放出量の制御に関係しているかどうかはこれまで不明であった．<br />
　ショウジョウバエ3令幼虫の筋接合部のシナプスでは，グルタミン酸受容体チャネルのサブユニットのひとつをコードする<em>GluRIIA</em>遺伝子についてその変異体が開発され，逆行性シナプス伝達における機能制御のモデルとして研究が行われている<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>．この<em>GluRIIA</em>変異体ではグルタミン酸受容体チャネルによる電流の透過量が野生型の約半分となっているため，刺激に対し野生型と同等の反応をひき起こすのに必要な神経伝達物質の放出量が約2倍になっている．筆者らは，このモデルシナプスを用い，翻訳が恒常的なシナプス機能の制御機構に対しどのように影響をあたえているかを調べた．</p>
<h2> 1．恒常的なシナプス機能の制御機構への翻訳開始因子の関与</h2>
<p>　<em>GluRIIA</em>変異体において起こるシナプス機能の制御機構は翻訳によりどのような影響をうけるのだろうか？　この点を明らかにするため，eIF2αとeIF4Eという2つの重要な翻訳開始因子<a href="#R4"><sup>4)</sup></a> について検討した．それぞれの翻訳開始因子の変異体のヘテロ接合体と<em>GluRIIA</em>変異体のホモ接合体との二重変異体を作製しその発現量を<em>GluRIIA</em>変異体において抑制したところ，<em>eIF2α</em>変異のヘテロ接合体では影響はなかったが，<em>eIF4E</em>変異のヘテロ接合体では<em>GluRIIA</em>変異体におけるシナプス機能の制御機構が阻害されシナプス伝達物質の放出量が減少していた．このことは，eIF4Eを介する翻訳開始機構が逆行性シグナル伝達を介する恒常的なシナプス機能の制御機構において重要な役割を担っていることを意味した．<br />
　つぎに，eIF4Eを制御しているTOR（target of rapamycin）について検討した．TORはさまざまな生体情報をとりまとめタンパク質合成や代謝反応など多様なシグナル伝達をひき起こし<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>，シナプス可塑性などへの関与も報告されているが<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>，恒常的なシナプス機能の制御機構への関与については知られていない．<em>TOR</em>変異体のヘテロ接合体と<em>GluRIIA</em>変異体のホモ接合体との二重変異体を用いた実験の結果，<em>TOR</em>変異体のヘテロ接合体でもまた，<em>eIF4E</em>変異体のヘテロ接合体と同じく，<em>GluRIIA</em>変異体におけるシナプス機能の制御機構が阻害されることが示された．また，野生型<em>GluRIIA</em>遺伝子をもつショウジョウバエでは，<em>TOR</em>変異および<em>eIF2α</em>変異はともに<em>GluRIIA</em>遺伝子の発現量を低下させグルタミン酸受容体の神経伝達物質に対する反応を減少させるが，<em>eIF2α</em>変異体ではシナプス機能の制御機構により神経伝達物質の放出量が増加するのに対し，<em>TOR</em>変異体ではシナプス機能の制御機構は阻害され通常よりも弱い反応を示すようになった．以上の結果から，恒常的なシナプス機能の制御機構にはTORにより制御されるeIF4Eを介した翻訳開始機構が重要な役割をはたしていることが明らかになった．</p>
<h2> 2．恒常的なシナプス機能の制御機構にはシナプス後細胞においてTORが関与する</h2>
<p>　TORが恒常的なシナプス機能の制御機構に関与していることが明らかになったが，TORはシナプス前細胞とシナプス後細胞のどちらで機能しているのだろうか？　<em>TOR</em>変異体と<em>GluRIIA</em>変異体との二重変異体において，シナプス前細胞のみあるいはシナプス後細胞のみでTORを過剰発現したところ，シナプス後細胞において過剰発現させたときのみシナプス機能の制御機構のはたらくことがわかった．さらに，<em>GluRIIA</em>変異体においてRNAi法によりシナプス前細胞あるいはシナプス後細胞のいずれかでTORをノックダウンしたところ，同様に，シナプス後細胞においてノックダウンしたときのみシナプス機能の制御機構が阻害される結果となった．これらより，恒常的なシナプス機能の制御機構にはシナプス後細胞においてTORの機能が必要であることが示された．<br />
　神経系の発達段階においてどのくらいの時間TORが機能することが必要なのだろうか？　<em>GluRIIA</em>変異をもつショウジョウバエ幼虫にTORを抑制するラパマイシンをさまざまな時間あたえたところ，6時間では影響はみられなかったが，12時間をこえるとシナプス増強の抑制されることが観察された．これにより，適正なレベルでのシナプス機能の維持にはシナプス後細胞においてある程度の時間TORが持続的に機能することが必要であることがわかった．</p>
<h2> 3．TORは4E-BPあるいはS6Kを経由する2つのシグナル伝達経路をつうじeIF4Eの活性を制御する</h2>
<p>　TORはさまざまな生体シグナルの処理にかかわっているが，キャップ構造依存性の翻訳開始機構の制御にも関与している<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．具体的には，翻訳開始因子eIF4Eと結合してeIF4Eのキャップ結合タンパク質複合体への集合を抑制する4E-BPをリン酸化により抑制したり，S6Kをリン酸化することによりこれを活性化させ，さらに下流の翻訳開始因子eIF4Bをリン酸化して翻訳開始を促進したりする（<a href="#F1">図1</a>）．恒常的なシナプス機能の制御機構においてもこれらのシグナル伝達経路が使われているのかどうかを調べるため，<em>GluRIIA</em>変異体のシナプス後細胞において恒常的活性型4E-BPを過剰発現させたり，<em>S6K</em>変異体のヘテロ接合体と<em>GluRIIA</em>変異体との二重変異体を作製したりしたところ，どちらにおいても恒常的なシナプス機能の制御機構が阻害をうけていることが明らかになった．さらに，<em>GluRIIA</em>変異体ではリン酸化されて活性化したS6Kのタンパク質量が野生型に比べ増加していることがわかった．これらの結果より，4E-BPを経由するシグナル伝達経路とS6Kを経由するシグナル伝達経路というTORの2つのシグナル伝達経路を介した翻訳開始の制御が恒常的なシナプス機能の制御機構に不可欠であることが示された．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　TORシグナル伝達経路と翻訳開始を促進するキャップ結合タンパク質複合体</strong><br />
TORは4E-BPを経由するシグナル伝達経路とS6Kを経由するシグナル伝達経路の2つのシグナル伝達経路を介してキャップ結合タンパク質複合体を制御し翻訳を促進する．<br />
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<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tsurudome-Neuron-12.4.11-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tsurudome-Neuron-12.4.11-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2> 4．シナプス後細胞においてTORは神経伝達物質の放出を促進する逆行性シグナル伝達をひき起こす</h2>
<p>　これまで，<em>GluRIIA</em>変異体における恒常的なシナプス機能の制御機構においてTORが重要であることが示されてきたが，TORはシナプス機能の制御機構を起こす逆行性シグナル伝達をひき起こすのに十分なのだろうか？　TORを野生型ショウジョウバエのシナプス後細胞において過剰発現させたところ，神経伝達物質の放出量の過剰な増加がひき起こされた．この過剰な増加は<em>eIF4E</em>変異あるいは<em>S6K</em>変異をヘテロ接合として導入することにより抑制された．また，シナプス前膜において神経伝達物質の放出のための立体構造を構成するタンパク質Brp <a href="#R8"><sup>8)</sup></a> の変異体をヘテロ接合として導入することによっても抑制することができたため，この神経伝達物質の過剰な放出は逆行性シグナル伝達によりひき起こされるシナプス前細胞におけるタンパク質の構成変化に依存することが示された．さらに，恒常的活性型S6Kをシナプス後細胞に過剰発現させた場合にもTORを過剰発現させたときと同様のシナプス機能の増強がみられた．これにより，TORの過剰な活性が翻訳開始機構を活性化し，逆行性シグナル伝達によりシナプス前細胞からの過剰な神経伝達物質の放出をひき起こすことが示された．<br />
　TORの過剰発現によりひき起こされた神経伝達物質の過剰な放出と，<em>GluRIIA</em>変異体で観察されるシナプス機能の増強は，同じシグナル伝達経路によるものなのだろうか？　この疑問に答えるため，<em>GluRIIA</em>変異体のシナプス後細胞においてTORを過剰発現させた．その結果，TORの過剰発現はそれ以上の神経伝達物質の放出を増加することはなく，<em>GluRIIA</em>変異体で起こるシナプス機能の増強と同じレベルの増強が起こり，神経伝達物質の放出量は適正なレベルにとどまることが示された．これにより，<em>GluRIIA</em>変異体の恒常的なシナプス機能の制御機構と，TORの過剰発現により起こる神経伝達物質の放出量の増加は，同じ逆行性シグナル伝達経路によりひき起こされていることが確認された．</p>
<h2> 5．複雑で安定な5’側非翻訳領域をもつmRNAの翻訳はTOR活性に依存して制御される</h2>
<p>　TORはキャップ結合タンパク質eIF4Eを介してキャップ構造依存性の翻訳開始機構を活性化し標的遺伝子の翻訳を促進するものと考えられるが，なぜ，標的遺伝子（この場合は，シナプス機能の制御機構にかかわる遺伝子）の翻訳が特異的に促進されるのだろうか？　この疑問に対し，mRNAの5’側非翻訳領域の構造的な複雑さの違いが翻訳開始に影響をあたえているためではないかという仮説をたてた．mRNAの5’側非翻訳領域の安定度は，その2次構造の複雑さを反映するフォールディング自由エネルギーにより表される<a href="#R9"><sup>9)</sup></a>．このフォールディング自由エネルギーを指標とし，安定な構造をもつmRNAからやや不安定な構造をもつ3種類のmRNAの5’側非翻訳領域についてその発現を調べたところ，フォールディング自由エネルギーが比較的小さく不安定な5’側非翻訳領域をもつmRNAは高い発現を示したのに対し，フォールディング自由エネルギーが大きく安定な5’側非翻訳領域をもつmRNAからの発現は非常に低かった．さらに，安定した構造をもつ5’側非翻訳領域とGFPをコードする領域とを組み合わせたmRNAを作製し，野生型およびTORを過剰発現させたショウジョウバエに導入してGFPの発現を調べたところ，TORの過剰発現体では野生型に比べGFPの発現が増加していることがわかった．つまり，フォールディング自由エネルギーの大きい安定な5’側非翻訳領域をもつmRNAは，TORが活性化し翻訳が活発化するまではあまり翻訳されず待機状態となっていることが示唆された．恒常的なシナプス機能の制御機構にかかわる逆行性シグナル伝達を担うタンパク質は，フォールディング自由エネルギーの比較的大きい安定な5’側非翻訳領域をもつmRNAから翻訳されると推測され，そのため，TORが活性化されたときに特異的に翻訳が促進されるものと考えられた．このことから，フォールディング自由エネルギーの大きさを目安としたスクリーニングにより，TORの標的となる逆行性シグナル伝達にかかわるタンパク質を同定できるものと期待される．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　今回の研究では，恒常的なシナプス機能の制御機構にTORを中心とする翻訳開始機構が機能していることが明らかにされた（<a href="#F2">図2</a>）．これまで，シナプス前細胞における神経伝達物質の放出量の制御にかかわる機構について研究が進んでいたが<a href="#R8"><sup>8,10)</sup></a>，シナプス後細胞におけるTORの役割が明らかにされたことで，シナプス前細胞とシナプス後細胞のそれぞれにおけるシグナル伝達の流れが大まかに示された．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　TORにより制御される翻訳開始機構に依存した逆行性シナプス伝達によるシナプス機能の制御機構のモデル</strong><br />
<em>GluRIIA</em>変異体における恒常的なシナプス機能の制御機構は，シナプス後細胞でのTORを中心とした翻訳開始機構によりひき起こされる．標的遺伝子の翻訳が活性化されることで，逆行性シナプス伝達によりシグナルはシナプス前細胞へ伝達される．<br />
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<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tsurudome-Neuron-12.4.11-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Tsurudome-Neuron-12.4.11-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　TORはその機能の多様さからさまざまな疾患において関連タンパク質としてあげられている<a href="#R11"><sup>11)</sup></a>．TORとそのシグナル伝達経路を構成するタンパク質に異常が起こった場合に起こりうる疾患には，おもなものとして結節性硬化症，パーキンソン病，アルツハイマー病，ハンチントン病などがあげられ，そのなかにはTORの異常な活性化によりニューロンの疲弊や細胞死をひき起こすものも含まれる．TORによるニューロンの過剰な発火は今回の研究により明らかにされたシグナル伝達経路によってもひき起こされるので，さらに詳細な検討を重ねることにより，いくつかの病態に結びつくような生理学的な知見が得られるのではないかと期待される．<br />
　今後の課題としては，まず，TORにより翻訳の促進をうける標的タンパク質の探索があげられる．シナプス前細胞へシグナルを伝達するタンパク質ではGbbなどが候補として研究されてきたが<a href="#R10"><sup>10)</sup></a>，それ以外にもシナプス機能を特異的に制御する逆行性シグナル伝達タンパク質の存在も否定できない．どのような経路でシナプス前細胞へシグナルが伝達されているかを明らかにすることができれば，その経路を利用することで異常なシグナル伝達によるニューロンの過剰な活動を防ぐ薬剤の開発などにもつながると期待される．また，TORがどのようなシグナルをうけて活性化されるのかを調べることも恒常的なシナプス機能の制御機構の全体像を知るために重要なので，TORを中心としたシグナル伝達経路についてもさらに検討していきたい．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Costa-Mattioli, M., Sossin, W. S., Klann, E. et al.</span>: <span class="ti">Translational control of long-lasting synaptic plasticity and memory.</span> <span class='so'>Neuron, 61, 10-26 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19146809" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Sigrist, S. J., Thiel, P. R., Reiff, D. F. et al.</span>: <span class="ti">Postsynaptic translation affects the efficacy and morphology of neuromuscular junctions.</span> <span class='so'>Nature, 405, 1062-1065 (2000)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10890448" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Petersen, S. A., Fetter, R. D., Noordermeer, J. N. et al.</span>: <span class="ti">Genetic analysis of glutamate receptors in <em>Drosophila</em> reveals a retrograde signal regulating presynaptic transmitter release.</span> <span class='so'>Neuron, 19, 1237-1248 (1997)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9427247" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
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</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">鶴留 一也（Kazuya Tsurudome）</span><br />
略歴：2006年 九州工業大学大学院生命体工学研究科博士課程 修了，同年 カナダMcGill大学 博士研究員を経て，2011年より同 リサーチアソシエイト．<br />
研究テーマ：ショウジョウバエの筋接合部におけるシナプス伝達機能の制御機構．<br />
抱負：日進月歩の進展があり変化の激しい分野だが，日々の研究を大切にして大きなテーマとして成就できるようがんばりたい．また，新しい技術の導入や新規のプロジェクトにも積極的に挑戦していきたい．
</div>
<p>© 2012 鶴留 一也 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		<title>Dom34-Hbs1複合体は異常mRNAの3’末端で停滞したリボソームを解離しmRNA品質管理機構に普遍的な役割をはたす</title>
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		<pubDate>Wed, 02 May 2012 01:01:18 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Molecular Cell]]></category>
		<category><![CDATA[分子生物学]]></category>
		<category><![CDATA[品質管理]]></category>
		<category><![CDATA[翻訳]]></category>
		<category><![CDATA[ｍRNA]]></category>

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		<description><![CDATA[稲田 利文 （東北大学大学院薬学研究科 遺伝子制御薬学分野） email：稲田利文 Dom34:Hbs1 plays a general role in quality-control systems by dissociation of a stalled ribosome at the 3’ end of aberrant mRNA. Tatsuhisa Tsuboi, Kazushige Kuroha, Kazuhei Kudo, Shiho Makino, Eri Inoue, Isao Kashima, Toshifumi Inada Molecular Cell, DOI: 10.1016/j.molcel.2012.03.013 要 約 　近年のヒトゲノム研究により遺伝子疾患の原因となる変異が数多く同定されているが，ほとんどの遺伝病についてその治療法は確立されてない．遺伝病の原因となる変異遺伝子のmRNAは細胞のもつmRNA品質管理機構により迅速に分解されるため，変異をもつ異常タンパク質の発現は抑制されている．終止コドンをもたないノンストップmRNAは代表的な異常mRNAのひとつであり，ノンストップmRNA分解機構により迅速に分解される．この機構においては，ノンストップmRNAの3’末端に停滞したリボソームがmRNAから解離したのち，エキソソームにより3’末端から迅速に分解されるというモデルが提唱されている．このmRNAの3’末端で停滞したリボソームがmRNAから解離する反応はエキソソームによるノンストップmRNAの分解に必須であるが，その分子機構は長らく不明であった．筆者らは，リボソームがmRNAの3’末端で停滞したとき，翻訳終結因子eRF1-eRF3複合体と相同性をもつDom34-Hbs1複合体が翻訳伸長複合体のA部位に結合し，リボソームを解離させることを明らかにした．この研究により，細胞のもつ新たなmRNA品質管理機構のしくみが分子レベルで明らかになっただけでなく，遺伝病の原因ともなるさまざまな異常タンパク質の生合成を効率的に抑制する治療薬の開発にも貢献することが期待される． はじめに 　異常mRNAは細胞のもつmRNA品質管理機構により認識され排除されることにより，遺伝子発現の正確性は保証されている．このmRNA品質管理機構については，1）本来の位置より上流に終止コドンをもつmRNAを分解するナンセンス変異依存性mRNA分解機構1)（nonsense-mediated mRNA decay：NMD），2）終止コドンをもたないノンストップmRNAを分解する機構2)（non-stop decay：NSD），3）翻訳伸長反応が途中で停止したmRNAを分解する機構3)（no-go decay：NGD），などが知られている．これらのmRNA品質管理機構においては異常な翻訳終結もしくは伸長阻害が引き金となり，異常mRNAが迅速に分解されることで異常タンパク質の発現が抑制されると考えられてきた．筆者らは，異常mRNAに由来するタンパク質の発現抑制機構について解析し，mRNAの分解促進にくわえ，翻訳の抑制と異常タンパク質の分解が異常タンパク質の発現抑制に重要であることを明らかにしてきた4-6)． 　ノンストップmRNAは正常な細胞においてもORFの途中へのポリA鎖の付加により産生され，mRNA全体の数％をしめている．また，正常なmRNAが3’末端からエキソソームにより分解される反応の中間体としてもノンストップmRNAは生じる．さらに，翻訳伸長が途中で停止したmRNAを分解するNGDにおいてmRNAの分子内切断により生じる5’側の分解中間体もノンストップmRNAである．このように，細胞にはさまざまなノンストップmRNAが存在しており，これらは3’末端から迅速に分解されることで異常なタンパク質の発現が抑制されている．しかしながら，これらのノンストップmRNAがエキソソームにより3’末端から分解されるためには，ノンストップmRNAの3’末端で停滞したリボソームがmRNAから解離することが必須である．この反応は終止コドンに依存しない翻訳終結反応であり，翻訳終結因子eRF1に依存しないペプチド鎖の解離およびリボソームの解離の反応機構は長らく不明であった．3’末端で停滞したリボソームはSki7により解離しノンストップmRNAはエキソソームにより3’末端から迅速に分解されるというモデルが提唱されているが，このモデルを支持する実験データは報告されておらず，3’末端で停滞したリボソームが解離される分子機構は未解明のままであった． 1．Dom34-Hbs1複合体はmRNAの3’末端で停滞したリボソームを解離する [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>稲田 利文</strong><br />
（東北大学大学院薬学研究科 遺伝子制御薬学分野）<br />
email：<a href="mailto:tinada@m.tohoku.ac.jp">稲田利文</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Dom34:Hbs1 plays a general role in quality-control systems by dissociation of a stalled ribosome at the 3’ end of aberrant mRNA.</span><br />
<span class="au">Tatsuhisa Tsuboi, Kazushige Kuroha, Kazuhei Kudo, Shiho Makino, Eri Inoue, Isao Kashima, Toshifumi Inada</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22503425" target="_blank"><em>Molecular Cell</em>, DOI: 10.1016/j.molcel.2012.03.013</a></span></div>
<p><span id="more-4702"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　近年のヒトゲノム研究により遺伝子疾患の原因となる変異が数多く同定されているが，ほとんどの遺伝病についてその治療法は確立されてない．遺伝病の原因となる変異遺伝子のmRNAは細胞のもつmRNA品質管理機構により迅速に分解されるため，変異をもつ異常タンパク質の発現は抑制されている．終止コドンをもたないノンストップmRNAは代表的な異常mRNAのひとつであり，ノンストップmRNA分解機構により迅速に分解される．この機構においては，ノンストップmRNAの3’末端に停滞したリボソームがmRNAから解離したのち，エキソソームにより3’末端から迅速に分解されるというモデルが提唱されている．このmRNAの3’末端で停滞したリボソームがmRNAから解離する反応はエキソソームによるノンストップmRNAの分解に必須であるが，その分子機構は長らく不明であった．筆者らは，リボソームがmRNAの3’末端で停滞したとき，翻訳終結因子eRF1-eRF3複合体と相同性をもつDom34-Hbs1複合体が翻訳伸長複合体のA部位に結合し，リボソームを解離させることを明らかにした．この研究により，細胞のもつ新たなmRNA品質管理機構のしくみが分子レベルで明らかになっただけでなく，遺伝病の原因ともなるさまざまな異常タンパク質の生合成を効率的に抑制する治療薬の開発にも貢献することが期待される．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　異常mRNAは細胞のもつmRNA品質管理機構により認識され排除されることにより，遺伝子発現の正確性は保証されている．このmRNA品質管理機構については，1）本来の位置より上流に終止コドンをもつmRNAを分解するナンセンス変異依存性mRNA分解機構<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>（nonsense-mediated mRNA decay：NMD），2）終止コドンをもたないノンストップmRNAを分解する機構<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>（non-stop decay：NSD），3）翻訳伸長反応が途中で停止したmRNAを分解する機構<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>（no-go decay：NGD），などが知られている．これらのmRNA品質管理機構においては異常な翻訳終結もしくは伸長阻害が引き金となり，異常mRNAが迅速に分解されることで異常タンパク質の発現が抑制されると考えられてきた．筆者らは，異常mRNAに由来するタンパク質の発現抑制機構について解析し，mRNAの分解促進にくわえ，翻訳の抑制と異常タンパク質の分解が異常タンパク質の発現抑制に重要であることを明らかにしてきた<a href="#R4"><sup>4-6)</sup></a>．<br />
　ノンストップmRNAは正常な細胞においてもORFの途中へのポリA鎖の付加により産生され，mRNA全体の数％をしめている．また，正常なmRNAが3’末端からエキソソームにより分解される反応の中間体としてもノンストップmRNAは生じる．さらに，翻訳伸長が途中で停止したmRNAを分解するNGDにおいてmRNAの分子内切断により生じる5’側の分解中間体もノンストップmRNAである．このように，細胞にはさまざまなノンストップmRNAが存在しており，これらは3’末端から迅速に分解されることで異常なタンパク質の発現が抑制されている．しかしながら，これらのノンストップmRNAがエキソソームにより3’末端から分解されるためには，ノンストップmRNAの3’末端で停滞したリボソームがmRNAから解離することが必須である．この反応は終止コドンに依存しない翻訳終結反応であり，翻訳終結因子eRF1に依存しないペプチド鎖の解離およびリボソームの解離の反応機構は長らく不明であった．3’末端で停滞したリボソームはSki7により解離しノンストップmRNAはエキソソームにより3’末端から迅速に分解されるというモデルが提唱されているが，このモデルを支持する実験データは報告されておらず，3’末端で停滞したリボソームが解離される分子機構は未解明のままであった．</p>
<h2> 1．Dom34-Hbs1複合体はmRNAの3’末端で停滞したリボソームを解離する</h2>
<p>　Dom34-Hbs1複合体は翻訳終結因子eRF1-eRF3複合体と相同性をもち，翻訳伸長複合体のA部位に結合しリボソームサブユニットの解離とリボソームからのペプチジルtRNAの解離をひき起こすことが生化学的な解析により示されていた<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．しかしながら，生体におけるDom34-Hbs1複合体の機能は不明であった．そこで，ノンストップmRNAを分解するNSDにおけるDom34-Hbs1複合体の機能を解析するため，自己切断活性をもつハンマーヘッドリボザイムを用いて細胞内にノンストップmRNAを効率よく発現させる系を構築し，Dom34-Hbs1複合体がmRNAの3’末端で停滞したリボソームを解離させるのかどうか検討した．その結果，ノンストップmRNAに由来するタンパク質の生合成にはDom34-Hbs1複合体が必要であり<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>，Dom34-Hbs1複合体の存在しない細胞ではノンストップmRNAの3’末端で停滞したリボソームはペプチジルtRNAを含む状態で存在していることが明らかになった．この結果から，Dom34-Hbs1複合体は終止コドンに依存しない翻訳終結反応に必須であることが<em>in vivo</em>においてはじめて証明された（<a href="#F1">図1</a>）．同様の結果は，出芽酵母あるいはヒトの試験管内翻訳反応系を用いた生化学的な解析においても報告されている<a href="#R7"><sup>7,9)</sup></a>．Dom34はtRNAときわめて類似した構造をもち<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>，GTP結合因子Hbs1との複合体として翻訳伸長複合体のA部位に結合し，終止コドンに依存することなくmRNAからリボソームを解離させることが明らかになった．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　停滞したリボソームの解離によるmRNAの迅速な分解</strong><br />
Dom34-Hbs1複合体はmRNAの3’末端で停滞したリボソームを解離させることにより，エキソソームによる異常mRNAの分解をひき起こす．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Inada-Molecular-Cell-12.5.11-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Inada-Molecular-Cell-12.5.11-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Inada-Molecular-Cell-12.5.11-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2> 2．ノンストップmRNA分解機構の新たなモデル</h2>
<p>　ノンストップmRNAの3’末端で停滞したリボソームがmRNAから解離する反応は，3’→5’方向のエキソヌクレアーゼ活性をもつエキソソーム複合体によるmRNAの分解に必須である．ノンストップmRNAの安定性をDom34-Hbs1複合体の存在しない細胞で測定したところ，Dom34-Hbs1複合体はノンストップmRNAの迅速な分解に必須であることが明らかになった．以前に筆者らは，ノンストップmRNAでは正常なmRNAでは翻訳されないポリA鎖が翻訳されて翻訳伸長が阻害されること，ノンストップmRNAに由来する異常タンパク質はプロテアソームにより迅速に分解されること，を報告した．そこで，今回のDom34-Hbs1複合体の機能解析の結果とあわせ，ノンストップmRNAを分解するNSDについて以下のような新規のモデルを提唱する（<a href="#F2">図2</a>）．1）ノンストップmRNAには終止コドンが存在しないため，正常なmRNAでは翻訳されないポリA鎖が翻訳されてポリリジンが生合成されることで，翻訳伸長反応が阻害される<a href="#R4"><sup>4-6)</sup></a>．ポリリジンによる翻訳伸長反応の阻害の分子機構としては，リボソームトンネルと新生ポリペプチド鎖のもつポリリジンとの静電的な相互作用によりリボソームの活性あるいは構造が変化することによる可能性が考えられる．2）全体の数％ではノンストップmRNAの3’末端まで翻訳反応が起こり，その3’末端でリボソームが停止する．3）この翻訳伸長複合体のA部位にはコドンが存在しないため，翻訳終結因子eRF1やアミノアシルtRNAは結合できない．そのことから，このA部位にDom34-Hbs1複合体が結合しリボソームをノンストップmRNAから解離させる．4）ノンストップmRNAの3’末端は解放され，エキソソームがこれを3’末端から効率よく分解する．ノンストップmRNAのポリA鎖がリボソームにより翻訳されることでポリA結合タンパク質がポリA鎖から解離することにより，ノンストップmRNAはXrn1によっても5’末端からも効率よく分解される<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．5）生合成された異常タンパク質はユビキチン化され，プロテアソームにより分解される<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　ノンストップmRNA分解機構の新たなモデル</strong><br />
1）ノンストップmRNAにおいて翻訳伸長反応が阻害される．2）mRNAの3’末端でリボソームが停止する．3）翻訳伸長複合体のA部位にDom34-Hbs1複合体が結合しリボソームをmRNAから解離させる．4）エキソソームがノンストップmRNAを3’末端から効率よく分解する．5）異常タンパク質はユビキチン化されプロテアソームにより分解される．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Inada-Molecular-Cell-12.5.11-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Inada-Molecular-Cell-12.5.11-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Inada-Molecular-Cell-12.5.11-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2> 3．mRNA品質管理機構におけるDom34-Hbs1複合体の普遍的な機能</h2>
<p>　ノンストップmRNAを分解するNSDおいてだけでなく，翻訳伸長が途中で停止したmRNAを分解するNGDにおいても，翻訳伸長阻害に依存したmRNAの分子内切断により生じる2つの分解中間体のうち5’側の断片（5’側分解中間体）はノンストップmRNAである．NGDの5’側分解中間体におけるDom34-Hbs1複合体の機能を解析したところ，この5’側分解中間体の分解にもDom34-Hbs1複合体は必要であることがわかった．Dom34-Hbs1複合体は翻訳活性を失った異常リボソームRNAを迅速に分解する機構（nonfunctional rRNA decay：NRD）にも関与している．これらの結果から，Dom34-Hbs1複合体が“停滞したリボソーム”という共通した翻訳異常を認識し，NGD，NSD，NRDという3つのmRNA品質管理機構を作動させる普遍的な機能をもつことが明らかになった．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　今回の研究により，ノンストップmRNAを分解するNSDと，翻訳伸長が途中で停止したmRNAを分解するNGDの分子機構の理解が大きく進んだ．しかしながら，ノンストップmRNAの3’末端で停滞したリボソームに結合している翻訳停止産物について，そのペプチド鎖解離反応を担うタンパク質は不明である．また，NGDを担うエンドヌクレアーゼの同定など解決すべき問題は山積している．現在，ノンストップmRNAに由来するタンパク質の分解機構について，国内外の多数の研究グループが精力的に解析を進めている．とくに，異常タンパク質の分解に関与するユビキチンリガーゼの特異性や，翻訳に共役したユビキチン化反応については，今後の数年で飛躍的に解明の進むものと予想される．さらに研究を進めることにより，種をこえて保存されたmRNA品質管理機構の全容を明らかにし，治療薬の開発につなげたい．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Isken, O. &#038; Maquat, L. E.</span>: <span class="ti">Quality control of eukaryotic mRNA: safeguarding cells from abnormal mRNA function.</span> <span class='so'>Genes Dev., 21, 1833-1856 (2007)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17671086" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>van Hoof, A., Frischmeyer, P. A., Dietz, H. C. et al.</span>: <span class="ti">Exosome mediated recognition and degradation of mRNAs lacking a termination codon.</span> <span class='so'>Science, 295, 2262-2264 (2002)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11910110" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Doma, M. K. &#038; Parker, R.</span>: <span class="ti">Endonucleolytic cleavage of eukaryotic mRNAs with stalls in translation elongation.</span> <span class='so'>Nature, 440, 561-564 (2006)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16554824" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Inada, T. &#038; Aiba, H.</span>: <span class="ti">Translation of aberrant mRNAs lacking a termination codon or with a shortened 3&#8242;-UTR is repressed after initiation in yeast.</span> <span class='so'>EMBO J., 24, 1584-1595 (2005)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15933721" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Ito-Harashima, S., Kuroha, K., Tatematsu, T. et al.</span>: <span class="ti">Translation of the poly(A) tail plays crucial roles in nonstop mRNA surveillance via translation repression and protein destabilization by proteasome in yeast.</span> <span class='so'>Genes Dev., 21, 519-524 (2007)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17344413" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Dimitrova, L. N., Kuroha, K., Tatematsu, T. et al.</span>: <span class="ti">Nascent peptide-dependent translation arrest leads to Not4p-mediated protein degradation by the proteasome.</span> <span class='so'>J. Biol. Chem., 284, 10343-10352 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19204001" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Shoemaker C. J., Eyler, D. E., Green, R.</span>: <span class="ti">Dom34:Hbs1 promotes subunit dissociation and peptidyl-tRNA drop-off to initiate no-go decay.</span> <span class='so'>Science, 330, 369-372 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20947765" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R8"><span class='au'>Kobayashi, K., Kikuno, I., Kuroha, K. et al.</span>: <span class="ti">Structural basis for mRNA surveillance by archaeal Pelota and GTP-bound EF1α complex.</span> <span class='so'>Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 107, 17575-17579 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20876129" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R9"><span class='au'>Pisareva, V. P., Shabkin, M. A., Hellen, C. U. et al.</span>: <span class="ti">Dissociation by Pelota, Hbs1 and ABCE1 of mammalian vacant 80S ribosomes and stalled elongation complexes.</span> <span class='so'>EMBO J., 30, 1804-1957 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21448132" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">稲田 利文（Toshifumi Inada）</span><br />
略歴：1992年 東京大学大学院理学系研究科博士課程 修了，同年 名古屋大学理学部 助手，1998年 米国California大学Berkeley校 研究員，2002年 名古屋大学理学部 助教授を経て，2010年より東北大学大学院薬学研究科 教授．<br />
研究テーマ：遺伝子の発現制御をささえるmRNA品質管理機構の解明．すべてのmRNAは細胞のもつmRNA品質管理機構により正常な機能をもつことが保証されている．その解明は遺伝子発現の理解に不可欠であり，遺伝病治療薬の開発の基礎ともなるmRNA品質管理機構の解明を進めている．研究室見学大歓迎．<br />
研究室URL：<a href="http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~idenshi/idenshi-j.shtml" target="_blank">http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~idenshi/idenshi-j.shtml</a>
</div>
<p>© 2012 稲田 利文 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
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		<title>マカクザルに対する前帯状皮質の前部への局所的な微小電気刺激は悲観的な意思決定を導く</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4699</link>
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		<pubDate>Wed, 02 May 2012 01:00:45 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Nature Neuroscience]]></category>
		<category><![CDATA[ニューロン]]></category>
		<category><![CDATA[マカクザル]]></category>
		<category><![CDATA[神経科学]]></category>
		<category><![CDATA[近接回避]]></category>

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		<description><![CDATA[雨森賢一・Ann M. Graybiel （米国Massachusetts Institute of Technology，McGovern Institute for Brain Research，Department of Brain and Cognitive Sciences） email：雨森賢一 Localized microstimulation of primate pregenual cingulate cortex induces negative decision-making. Ken-ichi Amemori, Ann M. Graybiel Nature Neuroscience, 15, 776-785 (2012) 要 約 　ヒトや動物において不安の定量化法として用いられてきた近接回避葛藤のパラダイムを用いた近接回避の意思決定課題を考案し，課題を遂行しているマカクザルの前帯状皮質においてニューロン活動を記録した．すると，課題に関連したニューロンは帯状溝の付近に多く分布していた．とくに，前帯状皮質の一部である帯状溝の腹側では回避選択に関連したニューロンが多くみつかった．この部位への微小電気刺激によりニューロン活動の変化をひき起こすと回避選択の頻度が上昇した．この微小電気刺激の効果をくわしく調べると，報酬と比較して嫌悪刺激を過大に評価するために回避選択のひき起こされていることがわかった．さらに，この微小電気刺激の効果は抗不安薬により消失した．このことから，前帯状皮質の前部の一部のニューロン活動は近接回避の意思決定を制御し，不安などの悲観的な価値判断を導く情動や気分の発現に重要な役割をはたしていることがわかった． はじめに 　報酬と同時に罰があたえられる場合，その報酬と罰のセットを受け入れるか（近接），受け入れないか（回避），という意思決定に関して心理的な葛藤が生じる1)．これは近接回避葛藤とよばれ，心理学における重要なコンセプトのひとつである2)．近接回避の意思決定は，罰にともなうコストと報酬にともなう利益とを統合して価値判断を行い，近接あるいは回避に対する効用価値を導き出すという内的なプロセスから導かれ，心理的な葛藤はこのプロセスを反映しているものと考えられる（図1a）．この近接回避の意思決定は不安やうつといった情動や気分と関係が深い．たとえば，不安を感じやすい人は回避選択が多く，逆に，うつの人は近接選択が有意に少ない3)．さらに，このパラダイムは動物を用い抗不安薬の効用を定量化するための実験などに用いられており，とくにDiazepamは近接選択を誘導することが知られている4)． 図1　近接回避葛藤とその意思決定課題 （a）近接回避葛藤． （b）この研究で用いた近接回避課題． [Download] 　マカクザルでは帯状皮質がこのコストと利益との統合に重要な役割をはたしていることが示唆されてきた5)．ほかにも，サルのこの部位のニューロン活動は，課題遂行の意欲や6)，提示された報酬の期待からの誤差7) を表現していることなどが報告されている．とくに，脳梁膝の前方に位置する前帯状皮質の前部（pregenual auterior cingulate cortex，pACC）は，広範な前頭前皮質との相互結合のみならず，扁桃体からの直接の入力を受け8)，さらには線条体のストリオソームに投射するなど9)，皮質下の構造とも関係の深いことが知られている，このことから，前帯状皮質の前部は認知と情動の中継地点にあたるものと考えられている． 　しかしながら，前帯状皮質の前部におけるニューロン活動が実際に情動や意思決定にどのようにかかわっているのかについてはほとんどわかっていない．この問題に取り組むため，筆者らは，近接回避葛藤をひき起こすと考えられる意思決定課題をつくり，課題を遂行しているマカクザルの前帯状皮質の前部におけるニューロン活動を多電極記録法により記録し，さらに，微小電気刺激法により局所的なニューロン活動の変化をひき起こすことで，前帯状皮質の前部におけるニューロン活動が意思決定や価値判断をどのように制御しているか調べた． 1．近接回避課題におけるサルの意思決定 　まず，以下の近接回避課題（図1b）を遂行しているマカクザルの前帯状皮質においてニューロン活動を記録した．サルはジョイスティックの手前に手を置くことで自発的にタスクを開始した．そののち，手がかり刺激として赤色と黄色の2本のバーが眼前のディスプレイに提示された．赤色のバーの長さはのちにあたえられる報酬の量を意味し，黄色のバーの長さはのちにあたえられる空気の吹きつけの強さを意味した．空気の吹きつけはサルの頬にむけられていて回避すべき嫌悪刺激としてはたらいた．提示された2本のバーの長さをもとに，サルは報酬と空気の吹きつけを受け入れるか（近接），あるいは，拒否するか（回避）を選択し，ジョイスティックで十字か四角のターゲットのどちらかを選ぶことでそれを報告した．サルが十字のターゲットを選ぶと近接を意味し，報酬と空気の吹きつけとが提示された強さと量だけあたえられた．四角のターゲットを選ぶと回避を意味し，タスク遂行の意欲をかろうじて維持するレベルのごく少量の報酬があたえられた． 　サルの近接回避の意思決定には一定のパターンがみられた．これを解析するため，計量経済学で用いられる条件付きロジットモデルを用い10)，サルがどのように価値判断を行っているかを定量的にモデル化した．すると，近接回避の効用関数は“報酬-嫌悪刺激”という線形のかたちで表され，近接回避の境界線も線形になった．また，境界線の傾きをみることでサルの報酬と嫌悪刺激に対する感度を推定することができた．サルの意思決定は，効用関数が正ならば近接，負ならば回避，0に近い場合には反応速度が長くなり葛藤状態となる，と特徴づけられた． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>雨森賢一・Ann M. Graybiel</strong><br />
（米国Massachusetts Institute of Technology，McGovern Institute for Brain Research，Department of Brain and Cognitive Sciences）<br />
email：<a href="mailto:amemori@mit.edu">雨森賢一</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Localized microstimulation of primate pregenual cingulate cortex induces negative decision-making.</span><br />
<span class="au">Ken-ichi Amemori, Ann M. Graybiel</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22484571" target="_blank"><em>Nature Neuroscience</em>, <strong>15</strong>, 776-785 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4699"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　ヒトや動物において不安の定量化法として用いられてきた近接回避葛藤のパラダイムを用いた近接回避の意思決定課題を考案し，課題を遂行しているマカクザルの前帯状皮質においてニューロン活動を記録した．すると，課題に関連したニューロンは帯状溝の付近に多く分布していた．とくに，前帯状皮質の一部である帯状溝の腹側では回避選択に関連したニューロンが多くみつかった．この部位への微小電気刺激によりニューロン活動の変化をひき起こすと回避選択の頻度が上昇した．この微小電気刺激の効果をくわしく調べると，報酬と比較して嫌悪刺激を過大に評価するために回避選択のひき起こされていることがわかった．さらに，この微小電気刺激の効果は抗不安薬により消失した．このことから，前帯状皮質の前部の一部のニューロン活動は近接回避の意思決定を制御し，不安などの悲観的な価値判断を導く情動や気分の発現に重要な役割をはたしていることがわかった．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　報酬と同時に罰があたえられる場合，その報酬と罰のセットを受け入れるか（近接），受け入れないか（回避），という意思決定に関して心理的な葛藤が生じる<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．これは近接回避葛藤とよばれ，心理学における重要なコンセプトのひとつである<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．近接回避の意思決定は，罰にともなうコストと報酬にともなう利益とを統合して価値判断を行い，近接あるいは回避に対する効用価値を導き出すという内的なプロセスから導かれ，心理的な葛藤はこのプロセスを反映しているものと考えられる（<a href="#F1">図1a</a>）．この近接回避の意思決定は不安やうつといった情動や気分と関係が深い．たとえば，不安を感じやすい人は回避選択が多く，逆に，うつの人は近接選択が有意に少ない<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>．さらに，このパラダイムは動物を用い抗不安薬の効用を定量化するための実験などに用いられており，とくにDiazepamは近接選択を誘導することが知られている<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　近接回避葛藤とその意思決定課題</strong><br />
（a）近接回避葛藤．<br />
（b）この研究で用いた近接回避課題．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Amemori-Nature-Neuroscience-12.4.25-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Amemori-Nature-Neuroscience-12.4.25-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Amemori-Nature-Neuroscience-12.4.25-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　マカクザルでは帯状皮質がこのコストと利益との統合に重要な役割をはたしていることが示唆されてきた<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．ほかにも，サルのこの部位のニューロン活動は，課題遂行の意欲や<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>，提示された報酬の期待からの誤差<a href="#R7"><sup>7)</sup></a> を表現していることなどが報告されている．とくに，脳梁膝の前方に位置する前帯状皮質の前部（pregenual auterior cingulate cortex，pACC）は，広範な前頭前皮質との相互結合のみならず，扁桃体からの直接の入力を受け<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>，さらには線条体のストリオソームに投射するなど<a href="#R9"><sup>9)</sup></a>，皮質下の構造とも関係の深いことが知られている，このことから，前帯状皮質の前部は認知と情動の中継地点にあたるものと考えられている．<br />
　しかしながら，前帯状皮質の前部におけるニューロン活動が実際に情動や意思決定にどのようにかかわっているのかについてはほとんどわかっていない．この問題に取り組むため，筆者らは，近接回避葛藤をひき起こすと考えられる意思決定課題をつくり，課題を遂行しているマカクザルの前帯状皮質の前部におけるニューロン活動を多電極記録法により記録し，さらに，微小電気刺激法により局所的なニューロン活動の変化をひき起こすことで，前帯状皮質の前部におけるニューロン活動が意思決定や価値判断をどのように制御しているか調べた．</p>
<h2> 1．近接回避課題におけるサルの意思決定</h2>
<p>　まず，以下の近接回避課題（<a href="#F1">図1b</a>）を遂行しているマカクザルの前帯状皮質においてニューロン活動を記録した．サルはジョイスティックの手前に手を置くことで自発的にタスクを開始した．そののち，手がかり刺激として赤色と黄色の2本のバーが眼前のディスプレイに提示された．赤色のバーの長さはのちにあたえられる報酬の量を意味し，黄色のバーの長さはのちにあたえられる空気の吹きつけの強さを意味した．空気の吹きつけはサルの頬にむけられていて回避すべき嫌悪刺激としてはたらいた．提示された2本のバーの長さをもとに，サルは報酬と空気の吹きつけを受け入れるか（近接），あるいは，拒否するか（回避）を選択し，ジョイスティックで十字か四角のターゲットのどちらかを選ぶことでそれを報告した．サルが十字のターゲットを選ぶと近接を意味し，報酬と空気の吹きつけとが提示された強さと量だけあたえられた．四角のターゲットを選ぶと回避を意味し，タスク遂行の意欲をかろうじて維持するレベルのごく少量の報酬があたえられた．<br />
　サルの近接回避の意思決定には一定のパターンがみられた．これを解析するため，計量経済学で用いられる条件付きロジットモデルを用い<a href="#R10"><sup>10)</sup></a>，サルがどのように価値判断を行っているかを定量的にモデル化した．すると，近接回避の効用関数は“報酬-嫌悪刺激”という線形のかたちで表され，近接回避の境界線も線形になった．また，境界線の傾きをみることでサルの報酬と嫌悪刺激に対する感度を推定することができた．サルの意思決定は，効用関数が正ならば近接，負ならば回避，0に近い場合には反応速度が長くなり葛藤状態となる，と特徴づけられた．</p>
<h2> 2．近接回避課題を遂行しているサルの前帯状皮質の前部におけるニューロン活動</h2>
<p>　前帯状皮質のニューロンはおもに手がかり刺激が提示されたあと活動し，意思決定を反映していると考えられた．とくに，帯状溝の背側から腹側にいたる領域で課題に関連する活動が多く記録された（<a href="#F2">図2a</a>）．これらのニューロン活動がどのような情報を再現しているかを調べるため，報酬量，嫌悪刺激の強さ，近接回避の選択，反応時間などのパラメーターとニューロン活動との相関を重回帰分析の手法を用いて解析した．すると，提示された報酬と嫌悪刺激の価値が高くサルの近接に対する意欲が高いときにより活動の高くなるニューロンと，提示された価値が低くサルの回避に対する意欲が高いときに活動の高くなるニューロンの2つに大別できた．興味深いことに，帯状溝の付近ではこれらのニューロンは等しい割合でみつかったが，帯状溝の腹側から前帯状皮質の前部にかけての領域では回避にかかわるニューロンが優位に存在した（<a href="#F2">図2a</a>）．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　前帯状皮質の前部におけるニューロン活動</strong><br />
（a）前帯状皮質における課題に関連するニューロンの分布．<br />
（b）微小電気刺激が意思決定に対し効果のあった部位．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Amemori-Nature-Neuroscience-12.4.25-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Amemori-Nature-Neuroscience-12.4.25-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Amemori-Nature-Neuroscience-12.4.25-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2> 3．前帯状皮質の前部への局所的な微小電気刺激は回避選択の頻度を増加させる</h2>
<p>　帯状溝の腹側では回避にかかわるニューロンが優勢であったため，この部位は回避選択にとくにかかわっている可能性が考えられた．これを検証するため，課題を遂行しているサルに対しニューロン活動を局所的に変化させる微小な（70～80μA）の高周波（200 Hz）の電気刺激をあたえた．サルに250回以上の課題を遂行させたのち，手がかり刺激を提示しているあいだに微小電気刺激をあたえるという試行を250回行った．すると，前帯状皮質において調べた93カ所のうち15カ所において，微小電気刺激なしの試行と微小電気刺激ありの試行とのあいだでサルの意思決定は有意に変化した．そのほとんど（14カ所）は帯状溝の腹側の前帯状皮質の前部にあたる領域であり（<a href="#F2">図2b</a>），それらのほぼすべて（13カ所）が回避選択の頻度を増加させた．微小電気刺激はサルの手の皮膚の電気伝導度を変えず，このことから，痛みなどにともなう自律的な応答はひき起こしていないものと考えられた．さらに，微小電気刺激の効果をよく調べると，近接回避の意思決定の境界線についておもに傾きだけが変化していた．これは，報酬と嫌悪刺激に対する内的な相対価値が変化し，サルは微小電気刺激によってより悲観的な価値判断を行うようになったことを示した（<a href="#F3">図3</a>）．さらに，連続してあたえられた250回の微小電気刺激の影響は試行ごとに累積することもわかった．</p>
<p><a name="F3"></a>
<div id="fig3-caption-text" style="display: none;"><strong>図3　報酬-嫌悪刺激直線で示された意思決定</strong><br />
（a）微小電気刺激をあたえるまえの近接回避の意思決定．<br />
（b）微小電気刺激をあたえているあいだの近接回避の意思決定．<br />
（c）微小電気刺激は近接回避の境界線の傾きを変化させた．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Amemori-Nature-Neuroscience-12.4.25-Fig.3.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure3" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig3-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig3-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Amemori-Nature-Neuroscience-12.4.25-Fig.3.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/05/Amemori-Nature-Neuroscience-12.4.25-Fig.3.png" alt="figure3" width="200px" /></a></div><div id="fig3-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig3-caption').innerHTML = $('fig3-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2> 4．微小電気刺激により誘導された回避選択の増加は抗不安薬により消失する</h2>
<p>　微小電気刺激の効果がくり返しにより累積することから，微小電気刺激の意思決定に対する影響は一過性のものではなく，悲観的な価値判断が持続する“不安”に近いものであると考えられた．そこで，くり返し微小電気刺激をあたえることにより回避選択の頻度が増えた状態とし，抗不安薬であるDiazepamを筋肉注射した．すると，4回のうち3回はもとの意思決定にもどり，そのうち1回は，むしろ接近選択の頻度が増加した．このことから，電気刺激が報酬と嫌悪刺激を統合し価値判断する意思決定のプロセスに選択的に影響をあたえ，さらに，サルは嫌悪刺激を過大に評価することで悲観的な意思決定を導くものと考えられた．また，抗不安薬によりその効果が消失したことから，その悲観的な意思決定は不安に関係しているものと考えられた．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　ヒトの前帯状皮質の前部は強迫性障害，心的外傷後ストレス障害，あるいは，依存症といった広範な不安障害に関連していると報告されている．とくに，選択的セロトニン取り込み阻害剤などさまざまな抗うつ薬により治療の可能なタイプのうつ病では前帯状皮質の前部における過活動が認められている<a href="#R11"><sup>11)</sup></a>．すなわち，これらのタイプのうつ病や不安障害は前帯状皮質の前部の異常なふるまいに起因している可能性がある．解剖学的には，前帯状皮質の前部はワーキングメモリーなどの認知機能や目的志向的な行動の中心である前頭連合野との関係がもっとも密な大脳辺縁系である．また，古典的なマカクザルの生理学的研究によると，前帯状皮質の前部は発声に関する領野であるとされ，筆者らも，微小電気刺激によりクーコール（仲間を呼ぶコールで，社会的な意味をもつとされる）をひき起こすことがあることを確認した．また，最近の研究では，前帯状皮質の前部はサルの社会的な価値判断に関係する領野であるとも考えられてきている．これらのことから，前帯状皮質の前部のニューロンは，社会的な関係や環境状況にもとづいて行われる近接回避の価値判断を担い，その結果として，サルに悲観的な気分を発現させるものと考えられる．また，前帯状皮質の前部の一部のニューロンはこれらの価値判断の情報を扁桃体や線条体といった皮質下の構造に伝達することで，意思決定を悲観的な方向へと導いているのかもしれない．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
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<li id="R2"><span class='au'>Elliot, A. J. (ed.)</span>: <span class="ti">Handbook of Approach and Avoidance Motivation.</span> <span class='so'>Psychology Press, New York (2008)</span></li>
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<li id="R4"><span class='au'>Rowlett, J. K., Lelas, S., Tornatzky, W. et al.</span>: <span class="ti">Anti-conflict effects of benzodiazepines in rhesus monkeys: relationship with therapeutic doses in humans and role of GABA<sub>A</sub> receptors.</span> <span class='so'>Psychopharmacology, 184, 201-211 (2006)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16378217" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
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</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">雨森 賢一（Ken-ichi Amemori）</span><br />
略歴：2001年 奈良先端科学技術大学院大学 修了，北海道大学大学院医学研究科 助手，2005年 米国Massachusetts Institute of Technology博士研究員を経て，2009年より同Research Scientist．<br />
研究テーマ：霊長類の情動と意思決定におけるシステム神経科学．<br />
関心事：神経系の数理，神経工学，情動と社会性の脳内機構，精神医学．</p>
<p><strong>Ann M. Graybiel</strong><br />
米国Massachusetts Institute of TechnologyにてInstitute Professor．<br />
研究室URL：<a href="http://web.mit.edu/bcs/graybiel-lab/" target="_blank">http://web.mit.edu/bcs/graybiel-lab/</a>
</div>
<p>© 2012 雨森賢一・Ann M. Graybiel Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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