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	<title>ライフサイエンス 新着論文レビュー</title>
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		<title>新規の神経修飾因子の可視化法により明らかになったドーパミンを介した空腹時の味覚制御</title>
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		<pubDate>Tue, 21 Feb 2012 01:00:55 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Cell]]></category>
		<category><![CDATA[イメージング]]></category>
		<category><![CDATA[ショウジョウバエ]]></category>
		<category><![CDATA[神経修飾因子]]></category>
		<category><![CDATA[神経科学]]></category>

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		<description><![CDATA[稲垣 秀彦 （米国California Institute of Technology，Division of Biology） email：稲垣秀彦 Visualizing neuromodulation in vivo: TANGO-mapping of dopamine signaling reveals appetite control of sugar sensing. Hidehiko K. Inagaki, Shlomo Ben-Tabou de-Leon, Allan M. Wong, Smitha Jagadish, Hiroshi Ishimoto, Gilad Barnea, Toshihiro Kitamoto, Richard Axel, David J. Anderson Cell, 148, 583-595 (2012) 要 約 　動物は空腹や覚醒などの状態に応じ適切に行動を変化させる．ドーパミンやセロトニンなどの神経修飾因子は神経回路にはたらきその情報処理を変化させることから，脳における状態制御にかかわることが示唆されてきた．しかし，これらの神経修飾因子が脳の“いつ”“どこ”で機能しているのか，神経回路のレベルで調べる汎用的な手法が存在しなかったため知見は不足していた．今回，筆者らは，脳において神経修飾因子の作用した神経回路を可視化する新規の手法を開発した．実際に，ショウジョウバエの脳においてこの手法を応用しドーパミンの量を測定した結果，空腹時における摂食行動の変化はドーパミンが甘み感覚ニューロンへのCa2+の流入量を増加させることにより誘起されていることが判明した．このように，この手法により神経修飾因子による行動の変化が神経回路のレベルで説明できるようになった．この手法を発展させほかの生物種にも応用することで，今後，脳における状態制御の分子機構の理解が進むものと期待される． はじめに 　生物は状態に応じ行動を適切に変化させる．たとえば，同じ食べ物が目のまえにあっても，満腹時は食べないが空腹時には食べる1)．同じものを見ても，同じことを聞いても，覚醒のレベルや気分しだいで感じ方がまったく変わることもある．このように，同じ感覚（脳への入力）があっても，状態により行動（脳からの出力）の変化することは，ヒトを含め多くの生物種で知られている．状態に応じて最適な行動をとることを可能にするこの“状態制御”は，生存のため非常に重要である．また，ヒトの気分や情動などもこれに似た現象であり，その異常が精神疾患の原因とも考えられている．そのため，脳の状態制御の機構を理解することは，脳の基本的な分子機構の解明のみならず，精神疾患の治療のためにも重要である． 　このような脳の状態制御は，脳における情報処理が状態により切り替わることで実現されていると考えられる．このような情報処理の切り替えを制御するものとして，ドーパミン，セロトニン，神経タンパク質など，“神経修飾因子”とよばれる化学物質が重要であると考えられてきた．これらの神経修飾因子は情報の演算単位であるシナプスどうしの結合の強さを変化させることで，神経回路の情報処理および出力を変化させる2,3)．実際に，カニやザリガニの消化器官を動かす神経節は，たった十個以下のニューロンからなる非常に小さな回路であるにもかかわらず，異なった神経修飾因子がはたらくことで数十種類もの異なった運動を制御していることが知られている4)．さらに大きな神経節である脳における，より複雑な状態ごとの行動変化も，同様に神経修飾因子により制御されている可能性が非常に高い．実際，多くの神経疾患にかかわる薬剤は神経修飾因子のアゴニストやアンタゴニストである．しかし，これら神経修飾因子が“どの状態のとき”“脳のどの部位”を修飾しているのかについての知見は少数の例外を除いてほとんどなく5-7)，状態制御の詳細な分子機構に関する知見はほぼない．これは，神経修飾因子が脳の“いつ”“どこ”ではたらきかけているかを可視化する方法がこれまで存在しなかったためである．そこで今回，筆者らは，脳における神経修飾因子の作用を可視化する手法を開発した．遺伝学的なツールが豊富に存在することで開発の容易なショウジョウバエを用い，この手法を用いて空腹時の摂食行動の制御の分子機構の解明をめざした． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>稲垣 秀彦</strong><br />
（米国California Institute of Technology，Division of Biology）<br />
email：<a href="mailto:hidehiko@caltech.edu">稲垣秀彦</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Visualizing neuromodulation in vivo: TANGO-mapping of dopamine signaling reveals appetite control of sugar sensing.</span><br />
<span class="au">Hidehiko K. Inagaki, Shlomo Ben-Tabou de-Leon, Allan M. Wong, Smitha Jagadish, Hiroshi Ishimoto, Gilad Barnea, Toshihiro Kitamoto, Richard Axel, David J. Anderson</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22304923" target="_blank"><em>Cell</em>, <strong>148</strong>, 583-595 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4394"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　動物は空腹や覚醒などの状態に応じ適切に行動を変化させる．ドーパミンやセロトニンなどの神経修飾因子は神経回路にはたらきその情報処理を変化させることから，脳における状態制御にかかわることが示唆されてきた．しかし，これらの神経修飾因子が脳の“いつ”“どこ”で機能しているのか，神経回路のレベルで調べる汎用的な手法が存在しなかったため知見は不足していた．今回，筆者らは，脳において神経修飾因子の作用した神経回路を可視化する新規の手法を開発した．実際に，ショウジョウバエの脳においてこの手法を応用しドーパミンの量を測定した結果，空腹時における摂食行動の変化はドーパミンが甘み感覚ニューロンへのCa<sup>2+</sup>の流入量を増加させることにより誘起されていることが判明した．このように，この手法により神経修飾因子による行動の変化が神経回路のレベルで説明できるようになった．この手法を発展させほかの生物種にも応用することで，今後，脳における状態制御の分子機構の理解が進むものと期待される．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　生物は状態に応じ行動を適切に変化させる．たとえば，同じ食べ物が目のまえにあっても，満腹時は食べないが空腹時には食べる<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．同じものを見ても，同じことを聞いても，覚醒のレベルや気分しだいで感じ方がまったく変わることもある．このように，同じ感覚（脳への入力）があっても，状態により行動（脳からの出力）の変化することは，ヒトを含め多くの生物種で知られている．状態に応じて最適な行動をとることを可能にするこの“状態制御”は，生存のため非常に重要である．また，ヒトの気分や情動などもこれに似た現象であり，その異常が精神疾患の原因とも考えられている．そのため，脳の状態制御の機構を理解することは，脳の基本的な分子機構の解明のみならず，精神疾患の治療のためにも重要である．<br />
　このような脳の状態制御は，脳における情報処理が状態により切り替わることで実現されていると考えられる．このような情報処理の切り替えを制御するものとして，ドーパミン，セロトニン，神経タンパク質など，“神経修飾因子”とよばれる化学物質が重要であると考えられてきた．これらの神経修飾因子は情報の演算単位であるシナプスどうしの結合の強さを変化させることで，神経回路の情報処理および出力を変化させる<a href="#R2"><sup>2,3)</sup></a>．実際に，カニやザリガニの消化器官を動かす神経節は，たった十個以下のニューロンからなる非常に小さな回路であるにもかかわらず，異なった神経修飾因子がはたらくことで数十種類もの異なった運動を制御していることが知られている<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>．さらに大きな神経節である脳における，より複雑な状態ごとの行動変化も，同様に神経修飾因子により制御されている可能性が非常に高い．実際，多くの神経疾患にかかわる薬剤は神経修飾因子のアゴニストやアンタゴニストである．しかし，これら神経修飾因子が“どの状態のとき”“脳のどの部位”を修飾しているのかについての知見は少数の例外を除いてほとんどなく<a href="#R5"><sup>5-7)</sup></a>，状態制御の詳細な分子機構に関する知見はほぼない．これは，神経修飾因子が脳の“いつ”“どこ”ではたらきかけているかを可視化する方法がこれまで存在しなかったためである．そこで今回，筆者らは，脳における神経修飾因子の作用を可視化する手法を開発した．遺伝学的なツールが豊富に存在することで開発の容易なショウジョウバエを用い，この手法を用いて空腹時の摂食行動の制御の分子機構の解明をめざした．</p>
<h2>1．新規の手法Tangoマップにより脳におけるドーパミンの量を測定できる</h2>
<p>　神経修飾因子はそれぞれ異なるGタンパク質共役型受容体を介してニューロンに作用する．たとえば，ドーパミンはドーパミン受容体，セロトニンはセロトニン受容体を介してニューロンどうしの結合の強度や遺伝子発現などを変化させている．この際，神経修飾因子の結合により活性化したGタンパク質共役型受容体はアレスチンとよばれるタンパク質と結合することが知られている．すなわち，アレスチンとGタンパク質共役型受容体との相互作用を測定することで，神経修飾因子がニューロンに作用したかどうかを調べることが可能になる．<br />
　そこで，アレスチンがタンパク質共役型受容体に結合したときのみニューロンにおいて蛍光タンパク質が発現するような人工シグナル伝達系を構築した（<a href="#F1">図1a</a>）．この人工シグナル伝達系は2種類の人工タンパク質よりなる．ひとつはGタンパク質共役型受容体をTEVプロテアーゼの切断配列を介し転写因子と結合させた融合タンパク質，もうひとつはアレスチンとTEVプロテアーゼとの融合タンパク質である．神経修飾因子がGタンパク質共役型受容体と転写因子との融合タンパク質に結合すると，アレスチン-TEVプロテアーゼ融合タンパク質がGタンパク質共役型受容体の側に結合し転写因子とのあいだにあるTEVプロテアーゼ切断配列を切断する．すると，転写因子が遊離し核へと移行することが可能となり，この転写因子がGFPなど蛍光タンパク質をコードするレポーター遺伝子を発現させる．この人工シグナル伝達系を用いることで，原理的には神経修飾因子のはたらいた度合いに応じニューロンにおける蛍光タンパク質の量を変化させることができる．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　Tangoマップによる脳におけるドーパミンの可視化</strong><br />
（a）原理となる人工シグナル伝達系．<br />
（b）空腹時には甘みを検知する味覚ニューロンがドーパミンにより修飾される．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Inagaki-Cell-12.2.2-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Inagaki-Cell-12.2.2-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Inagaki-Cell-12.2.2-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　そこで実際に，Gタンパク質共役型受容体としてドーパミン受容体を用いたこの人工シグナル伝達系をショウジョウバエの脳において発現させ，脳におけるドーパミンの量を薬剤の投与により増減させてみた．その結果，脳における蛍光タンパク質の量もドーパミンの量に応じ変化した（<a href="#F1">図1b</a>）．これより，神経修飾因子の量に応じてGFPが発現する可視化ツールの作製に成功したものと判断した．なお，この手法はドーパミン受容体に依存的な方法ではなく，測定したい神経修飾因子それぞれの受容体を用いることでさまざまな神経修飾因子それぞれに特異的な測定が可能であった．この手法のもととなった，培養細胞においてGタンパク質共役型受容体の活性を測定する方法であるTango法にもとづき<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>，この手法をTangoマップと名づけた．</p>
<h2>2．空腹時にはドーパミンが甘みを検知する味覚ニューロンを修飾しその感度を変化させる</h2>
<p>　このツールを用いて，本来の目的である状態制御の分子機構の解明を試みた．そのためのモデル系として，もっとも原始的な状態制御のひとつと考えられる“空腹”と“満腹”にともなう行動の変化を選択した．まず，空腹時と満腹時での脳におけるドーパミンによる修飾の差をドーパミン受容体のTangoマップを用いて測定した．その結果，空腹時には甘みを検知する味覚ニューロンがドーパミンにより修飾されていることが判明した（<a href="#F1">図1b</a>）．すなわち，空腹時にはドーパミンが味覚の変化をひき起こしていることが予想された．<br />
　そこで，行動実験により空腹時の味覚の変化を解析し，それがドーパミンにより制御されているのかどうかを調べた．空腹時には餓死をさけるため糖分の低い食料でも食べられるよう甘みの感受性の上昇することが多くの生物種において知られている<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．まず，同様の変化がショウジョウバエでもみられるか調べるため，ショウジョウバエの口吻に異なった濃度のスクロース水溶液を提示し摂食行動を示すかどうか調べた（<a href="#F2">図2</a>）．さまざまな濃度のスクロース水溶液を用意しショウジョウバエが口吻を伸ばすかどうかを調べることで，摂食行動におけるスクロースに対する感受性を測定することができる．その結果，満腹時に比べ空腹時にはスクロースに対する感受性の上昇していることが測定された．よって，ほかの生物種と同様に，ショウジョウバエにおいても空腹時には甘みの感受性の上昇することが示された．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　ショウジョウバエのスクロースに対する摂食行動を調べる行動実験</strong><br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Inagaki-Cell-12.2.2-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Inagaki-Cell-12.2.2-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Inagaki-Cell-12.2.2-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　つぎに，ドーパミンがこの変化を誘起しているのかどうか調べるため，脳におけるドーパミンの量を薬理学的または遺伝学的に増加させスクロースに対する摂食行動を調べた．その結果，空腹時と同様に，この操作によっても甘みの感受性の上昇することがわかった．つまり，ドーパミンの量の増加が空腹を模倣することが明らかになった．また，Tangoマップのデータからは空腹時にはドーパミンが甘み感覚ニューロンに作用することが明らかになっていたため，空腹時の甘み感受性の上昇もドーパミンにより制御されていることに矛盾はなかった．<br />
　そこで，ドーパミンが甘み感覚ニューロンにはたらくことにより空腹時における甘み感受性が上昇しているのかどうか調べた．具体的には，甘み感覚ニューロンにおいて特異的にドーパミン受容体を阻害し，空腹時に甘み感受性が変化するかどうかを調べた．まず，甘み感覚ニューロンからRNAを抽出し，そこに発現しているドーパミン受容体の種類を同定した．つぎに，甘み感覚ニューロンに発現していたドーパミン受容体をRNAi法により特異的にノックダウンした．その結果，予想どおり，空腹時における甘み感受性の上昇が阻害された．すなわち，空腹時にはドーパミンが甘み感覚ニューロンにはたらくことで甘みに対する感受性の上昇していることが遺伝学的に実証された．</p>
<h2>3．ドーパミンは甘み感覚ニューロンへのCa<sup>2+</sup>の流入量を制御することで感度の変化をひき起こす</h2>
<p>　ドーパミンは甘み感覚ニューロンにどのように作用することで摂食行動を変化させているのだろうか？　これを調べるため，空腹時における甘み感覚ニューロンの生理学的な性質の変化を調べた．まず，スクロースに対する応答を電気生理学的な手法により調べたところ，驚くべきことに，空腹時と満腹時とのあいだで発火の頻度には顕著な差が測定されなかった．すなわち，空腹は甘み感覚ニューロンの発火の頻度には影響をあたえずにその出力を変えていることになった．そこで，甘み感覚ニューロンがほかのニューロンへと出力する神経終末におけるCa<sup>2+</sup>の流入量を，遺伝学的なCa<sup>2+</sup>センサーであるGCaMP3を用いたCa<sup>2+</sup>イメージング法により調べた<a href="#R9"><sup>9)</sup></a>．その結果，同じスクロース水溶液に対するCa<sup>2+</sup>流入量が空腹時には空腹時に比べ増加していた．また，ドーパミンを脳に直接にくわえることでも同じ変化が測定され，ドーパミン受容体の変異体ではこの変化は測定されなかった．すなわち，空腹時にはドーパミンを介したシグナルが甘み感覚ニューロンに作用することでその神経末端におけるCa<sup>2+</sup>流入量が増加し，同じスクロース水溶液を提示されても摂食行動が亢進していることが明確に示された（<a href="#F3">図3</a>）．</p>
<p><a name="F3"></a>
<div id="fig3-caption-text" style="display: none;"><strong>図3　ドーパミンによる空腹時の摂食行動の変化</strong><br />
満腹時と空腹時におけるスクロースに対する摂食行動の変化は，ドーパミンが甘み感受ニューロンでのCa<sup>2+</sup>流入量を増やすことで説明される．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Inagaki-Cell-12.2.2-Fig.3.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure3" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig3-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig3-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Inagaki-Cell-12.2.2-Fig.3.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Inagaki-Cell-12.2.2-Fig.3.png" alt="figure3" width="200px" /></a></div><div id="fig3-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig3-caption').innerHTML = $('fig3-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>おわりに</h2>
<p>　新規のツールTangoマップを用いることで，“どの状態のとき”に脳の“どの部位”で“どの神経修飾因子”が作用しているか，可視化することが可能になった．さらに，この可視化された情報にもとづき，遺伝学的な手法や神経生理学的な手法と組み合わせることで，“状態”がどのように制御されているのか，その分子機構を神経回路のレベルで研究することが可能になった．実際にこの研究では，このツールを用いることで空腹時の行動変化（スクロースに対する摂食行動の頻度の増加）がどのように起こるかを説明できた．この手法Tangoマップは，行動中の動物の脳における神経修飾因子の活動を神経回路のレベル，かつ，神経修飾因子に特異的に測定できるという大きなメリットがある．ただし，シグナル/ノイズ比や時間分解能にはまだ改善の余地が大いにあり，今後も改良する予定である．<br />
　脳の“状態”がどのように制御されているか，どのように表現されているかについての知見は，ほぼない．これまでに明らかになっていることとしては，“状態”どうしが排他的であることがあげられる．たとえば，“空腹”と“満腹”とは共存せず排他的である．このことから，異なった状態は異なった中枢で制御されておりそれぞれが抑制しあっている，また，ひとつの中枢がいくつもの状態を活動状態の違いとして表現しているためほかの状態は同時には存在しえない，など，いくつかの可能性が予想される．今後，神経修飾因子の可視化の手法をほかの高等生物あるいはほかの高等な“状態”にも応用していくことで，脳の重要な機能である“状態制御”の分子機構の解明が進むことを期待している．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Dethier, V. G.</span>: <span class="ti">The Hungry Fly: A Physiological Study of the Behavior Associated with Feeding.</span> <span class='so'>Harvard University Press, Cambridge (1976)</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Birmingham, J. T. &#038; Tauck, D. L.</span>: <span class="ti">Neuromodulation in invertebrate sensory systems: from biophysics to behavior.</span> <span class='so'>J. Exp. Biol., 206, 3541-3546 (2003)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12966045" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Hurley, L. M., Devilbiss, D. M. &#038; Waterhouse, B. D.</span>: <span class="ti">A matter of focus: monoaminergic modulation of stimulus coding in mammalian sensory networks.</span> <span class='so'>Curr. Opin. Neurobiol., 14, 488-495 (2004)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15321070" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Harris-Warrick, R. M. &#038; Marder, E.</span>: <span class="ti">Modulation of neural networks for behavior.</span> <span class='so'>Annu. Rev. Neurosci., 14, 39-57 (1991)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2031576" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Lebestky, T., Chang, J. S., Dankert, H. et al.</span>: <span class="ti">Two different forms of arousal in <em>Drosophila</em> are oppositely regulated by the dopamine D1 receptor ortholog DopR via distinct neural circuits.</span> <span class='so'>Neuron, 64, 522-536 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19945394" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Krashes, M. J., DasGupta, S., Vreede, A. et al.</span>: <span class="ti">A neural circuit mechanism integrating motivational state with memory expression in <em>Drosophila</em>.</span> <span class='so'>Cell, 139, 416-427 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19837040" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Root, C. M., Ko, K. I., Jafari, A. et al.</span>: <span class="ti">Presynaptic facilitation by neuropeptide signaling mediates odor-driven food search.</span> <span class='so'>Cell, 145, 133-144 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21458672" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R8"><span class='au'>Barnea, G., Strapps, W., Herrada, G. et al.</span>: <span class="ti">The genetic design of signaling cascades to record receptor activation.</span> <span class='so'>Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105, 64-69 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18165312" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R9"><span class='au'>Tian, L., Hires, S. A., Mao, T. et al.</span>: <span class="ti">Imaging neural activity in worms, flies and mice with improved GCaMP calcium indicators.</span> <span class='so'>Nat Methods, 6, 875-881 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19898485" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">稲垣 秀彦（Hidehiko K. Inagaki）</span><br />
略歴：米国California Institute of Technology大学院博士課程 在学中．<br />
研究テーマ：脳における状態制御の分子機構．<br />
抱負：新規の手法の開発や集団イメージング，電気生理学的な手法を活用し，集団としてのニューロンがどのように情報や状態をコードしているかを明らかにしたい．
</div>
<p>© 2012 稲垣 秀彦 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
		<item>
		<title>成人T細胞白血病から明らかになった新たなクロストーク経路の異常とがん</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4367</link>
		<comments>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4367#comments</comments>
		<pubDate>Tue, 14 Feb 2012 01:00:11 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Cancer Cell]]></category>
		<category><![CDATA[エピジェネティクス]]></category>
		<category><![CDATA[シグナル伝達]]></category>
		<category><![CDATA[マイクロRNA]]></category>
		<category><![CDATA[疾患生物学]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://first.lifesciencedb.jp/?p=4367</guid>
		<description><![CDATA[山岸 誠・渡邉俊樹 （東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディカルゲノム専攻病態医療科学分野） email：山岸 誠，渡邉俊樹 Polycomb-mediated loss of miR-31 activates NIK-dependent NF-κB pathway in adult T cell leukemia and other cancers. Makoto Yamagishi, Kazumi Nakano, Ariko Miyake, Tadanori Yamochi, Yayoi Kagami, Akihisa Tsutsumi, Yuka Matsuda, Aiko Sato-Otsubo, Satsuki Muto, Atae Utsunomiya, Kazunari Yamaguchi, Kaoru Uchimaru, Seishi Ogawa, Toshiki Watanabe Cancer Cell, 21, 121-135 (2012) [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>山岸 誠・渡邉俊樹</strong><br />
（東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディカルゲノム専攻病態医療科学分野）<br />
email：<a href="mailto:myamagishi@mgs.k.u-tokyo.ac.jp">山岸 誠</a>，<a href="mailto:tnabe@ims.u-tokyo.ac.jp">渡邉俊樹</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Polycomb-mediated loss of miR-31 activates NIK-dependent NF-κB pathway in adult T cell leukemia and other cancers.</span><br />
<span class="au">Makoto Yamagishi, Kazumi Nakano, Ariko Miyake, Tadanori Yamochi, Yayoi Kagami, Akihisa Tsutsumi, Yuka Matsuda, Aiko Sato-Otsubo, Satsuki Muto, Atae Utsunomiya, Kazunari Yamaguchi, Kaoru Uchimaru, Seishi Ogawa, Toshiki Watanabe</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22264793" target="_blank"><em>Cancer Cell</em>, <strong>21</strong>, 121-135 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4367"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　成人T細胞白血病は日本人に100万人以上，世界では推定2000万人の感染者がいるHTLV-1によりひき起こされる重篤な白血病で，有効な治療法は確立していない．筆者らは，HTLV-1感染者コホート共同研究班の全面的な協力を得て，世界ではじめて成人T細胞白血病患者の細胞のゲノム，mRNA，マイクロRNAの大規模な統合解析を完了した．その結果，成人T細胞白血病の悪性化をひき起こす原因として，マイクロRNAのひとつmiR-31がすべての成人T細胞白血病患者において著しく減少していることを明らかにした．miR-31の減少はその標的遺伝子の産物であるNIKの過剰な発現とそれにともなうNF-κBシグナルの恒常的な活性化を誘発すること，miR-31を再導入すると細胞死が誘導されることが示された．ゲノムの欠損およびPolycombファミリーに依存的なエピジェネティックな異常がmiR-31の発現低下の原因であり，また，成人T細胞白血病だけでなく乳がん細胞やB細胞における免疫応答反応でも同じ機構が保存されていることがわかった．したがって，Polycombファミリー，miR-31，NIKのバランスが細胞の運命に重要であることが示された．Polycombファミリーは細胞の恒常性や分化などの多彩な機能に必須であると同時に，その異常は多くのがん細胞における重要な分子標的となっている．マイクロRNAを介したPolycombファミリーとNF-κBとのクロストークは新たな概念であり，この研究の成果より，エピジェネティックな異常がNF-κBシグナルの恒常的な活性化を介しアポトーシスに対する抵抗性の獲得に寄与することが明らかになった．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　成人T細胞白血病（adult T cell leukemia/lymphoma：ATL）はHTLV-1（human T cell leukemia virus type 1，ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型）の感染によりひき起こされる重篤なT細胞性の白血病である．50～60年という長い潜伏期間のあいだHTLV-1に感染した末梢血のT細胞には複数の遺伝子異常が蓄積しがん化がひき起こされる（<a href="#F1">図1</a>）．現在，世界には2000万人以上の感染者がいるとされるが，わが国ではとくに多く，約120万人の感染者が存在し毎年1000人をこえる感染者がきわめて予後の不良な成人T細胞白血病を発症する．白血病やウイルスが発見された当時からこの分野における日本人研究者の貢献度は多大であるが，ウイルスによる細胞の不死化や腫瘍化，治療への抵抗性などの分子機構にはいまだに不明な点が多く残されており有効な治療法は存在しない．ウイルスの根絶と白血病の予防，新規の治療法の開発をめざした分子レベルでの病態の解明が必須である<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　HTLV-1の感染と成人T細胞白血病のモデル</strong><br />
成人T細胞白血病はHTLV-1感染者（キャリア）の約5％に発症する．成人T細胞白血病細胞はウイルス遺伝子の発現が低く，さまざまな遺伝子異常の蓄積によりシグナル伝達系の撹乱が起こっている．miR-31は成人T細胞白血病の全例において低下しており，腫瘍細胞の悪性化に寄与する．<br />
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<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Watanabe-Cancer-Cell-12.1.17-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Watanabe-Cancer-Cell-12.1.17-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　成人T細胞白血病細胞およびHTLV-1感染細胞の生物学的な特徴として恒常的なNF-κBシグナルの活性化があり，これにより細胞の異常な増殖および生存が確保されている<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．HTLV-1感染細胞ではウイルスの遺伝子産物であるTaxがNF-κBの定型的（canonical）経路および非定型的（noncanonical）経路を劇的に活性化するが，通常はTaxの発現が認められない成人T細胞白血病細胞におけるNF-κBシグナルの活性化の機構には不明な点が多かった．そののち，遺伝子発現の解析によりNIK（NF-κB-inducing kinase）をコードするmRNAの過剰な発現が恒常的なNF-κBシグナルの活性化に寄与していることが明らかになっているが<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>，NIKの異常発現の機構は明らかになっていなかった．NF-κBシグナルの異常な活性化とそれにともなう腫瘍細胞の生存能の獲得および悪性化は，成人T細胞白血病だけでなく多くの固形がんや悪性リンパ腫，白血病において共通してみられるがん細胞の特徴のひとつである．そのなかでも，NIKの高発現による異常な活性化は重要な位置をしめているが，正常を逸脱するその機構は不明でありがん研究の全体における課題であった．<br />
　筆者らは，成人T細胞白血病患者のマイクロRNAの解析，mRNAの発現解析，および，ゲノム異常の解析を統合してその分子病態の全貌にアプローチした．その結果として明らかになった成人T細胞白血病における分子異常はその臨床的な特徴をよく反映しており，分子マーカーや治療標的としてさまざまな情報を提示した．さらに，明らかにされた新たな分子機構はがん研究の全体に新たな概念を提唱した．</p>
<h2>1．成人T細胞白血病の臨床検体を用いた大規模な統合解析からみる分子病態</h2>
<p>　これまでの成人T細胞白血病の研究の多くは細胞株か少数の患者に由来する細胞から得られた情報を基盤としたものであり，実際の成人T細胞白血病細胞を分子レベルで正確に理解することが成人T細胞白血病の研究において重要な課題であった．いまだ有効な治療法のない成人T細胞白血病に対し根本的な情報を得るため，筆者らはまず，全国的なHTLV-1疫学調査および検体バンク組織であるHTLV-1感染者コホート共同研究班（JSPFAD，URL：<a href="http://htlv1.org/" target="_blank">http://htlv1.org/</a>）の全面的な協力を得て，成人T細胞白血病の臨床検体を用いたマイクロRNAおよびmRNAの大規模な解析に着手した．米国Agilent Technologies社のマイクロRNAマイクロアレイを用い，成人T細胞白血病細胞40例，正常なCD4陽性T細胞22例について解析を行った結果，非常に厳しい検定をクリアした61個のマイクロRNAにおける発現異常を同定した．ほかのがん細胞における報告と同様に，成人T細胞白血病細胞では発現の異常を示すマイクロRNAのほとんどは発現の低下を示した．成人T細胞白血病細胞におけるマイクロRNAの発現パターンはユニークで，マイクロRNAの発現をもって正常なT細胞と区別できることもわかった．この61個のマイクロRNAのなかでもっとも差の大きかったmiR-31は，正常なT細胞では比較的発現量が高く，一方で，成人T細胞白血病細胞では非常に発現が低いもしくは検出限界以下にまで発現が低下していた．miR-31は乳がん細胞の転移能をはじめさまざまな細胞機能にかかわる重要なマイクロRNAで<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>，その発現の低下が細胞の運命に重要な意味を包含するものと考えられた．</p>
<h2>2．miR-31の発現低下とその生物学的な意義</h2>
<p>　マイクロRNAのおもな生物学的な機能は標的遺伝子の3’側非翻訳領域に結合することによりその発現を負に制御することである．外来の合成siRNAとは異なり，マイクロRNAによる配列の認識はゆらぎが特徴的であり，ひとつのマイクロRNAが複数個の遺伝子を制御することができる．細胞の運命に重大な影響をあたえるような標的遺伝子の探索には，物理的な抑制効果と同時に標的遺伝子の側の機能や挙動も重要な指標となり，したがって，多角的な実験的検証が必須になる．筆者らは，成人T細胞白血病の全例で発現が低下していたmiR-31のT細胞における生物学的な意義を明らかにするため，以下の検討を行った．1）miR-31の標的遺伝子を4つのアルゴリズムにより予測，2）成人T細胞白血病細胞のmRNAの大規模な解析データとのすりあわせによる検証，3）変異を導入したレポーターアッセイ，4）miR-31の増減に対する候補となる標的遺伝子の定量，5）miR-31と標的遺伝子との関係の保存性の確認．以上により，NIKをコードする遺伝子がmiR-31の新規の標的遺伝子であることが明らかになった．NIKはNF-κBの非定型的経路の活性化に必須のリン酸化酵素であり，その発現量がNF-κBシグナルの恒常的な活性化に直接的に寄与することが複数のがんにおいて報告されている．成人T細胞白血病ではNIKをコードするmRNAの量が増加していることがわかっていたが<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>，過剰な発現の原因は明らかにされていなかった．成人T細胞白血病患者に由来する細胞から樹立された細胞株にmiR-31を過剰に発現させるとNIKのmRNA量およびタンパク質量が低下し，NF-κBシグナルが低下することがわかった．これらの細胞では増殖能の低下，抗アポトーシス遺伝子の発現の低下，アポトーシス感受性の向上がみられた．さらに，miR-31を発現誘導するレンチウイルスベクターは成人T細胞白血病患者から直接取り出した腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することがわかった．以上より，miR-31の発現の低下は成人T細胞白血病細胞の生存にとって重要であり，その分子機構はNIKの過剰な発現の誘導であることが示された．NF-κBシグナルは非常に複雑な制御機構を備えているが，miR-31が新たなNF-κBシグナルの抑制因子として同定された．</p>
<h2>3．ゲノムおよびエピゲノムの異常とmiR-31の発現制御</h2>
<p>　細胞内での成熟したマイクロRNAのダイナミズムは，転写制御および転写後の成熟過程の制御により規定されている．成人T細胞白血病の全例で発現の低下のみられたmiR-31は転移性乳がんや前立腺がんなどでも発現が低下しており，がん細胞における一般性と重要性が示唆されたが，細胞内においてmiR-31の量がどのように制御されているかについては不明であった．<em>miR-31</em>遺伝子は多くのがん細胞でゲノムの欠失が頻発する9p21.3の<em>CDKN2A/B</em>領域に隣接しており，成人T細胞白血病においてもゲノムの不安定性が予測された．成人T細胞白血病168症例での大規模なDNAコピー数の解析の結果，12.5％の症例で<em>miR-31</em>遺伝子のホモもしくはヘテロの欠損のあることがわかった．一方で，同時に行ったマイクロRNAの発現解析では，ゲノムの欠損のない症例でも正常なT細胞に比べmiR-31の量が大きく減少していることがわかった．そこで，発現解析データとアルゴリズムから<em>miR-31</em>遺伝子の転写構造を予測したところ，miR-31は<em>LOC554202</em>遺伝子のイントロン領域にコードされ，独立した転写が起こっていることがわかった．また興味深いことに，YY1という転写因子の認識配列が<em>miR-31</em>遺伝子の転写開始点の上流に蓄積していた．このYY1はPolycombファミリーに属するDNA結合タンパク質で，ヒストンH3の27番目のリジン残基のメチル化酵素であるEZH2をはじめとするPRC2（Polycomb repressive complex 2）のリクルーターとしての機能が注目されている<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．そこで，YY1のノックダウン実験を行ったところ，<em>miR-31</em>遺伝子領域へのYY1の蓄積が減少し，それに付随してEZH2のリクルートが減少することがわかった．<br />
　では，成人T細胞白血病細胞をはじめとする高悪性度の腫瘍において，なぜmiR-31の発現が激減するのか？　成人T細胞白血病におけるmRNAの発現解析の結果，ヒストンH3の27番目のリジン残基のトリメチル化を誘導するPolycombファミリーに属するEZH2およびSUZ12をコードする遺伝子の発現が正常なT細胞に比べ高いことがわかった．成人T細胞白血病細胞株においてこれらPolycombファミリーをノックダウンすると，<em>miR-31</em>遺伝子領域へのPRC2のリクルートが減少し，その結果，ヒストンH3の27番目のリジン残基および9番目のリジン残基のメチル化レベルが低下した．さらに，ヒストンの脱アセチル化を介して転写抑制にはたらくHDAC1の結合量も減少し，その結果，miR-31の発現が回復することがわかった．以上の実験データから，Polycombファミリーの発現異常がmiR-31の発現低下を誘導するという新たな分子機構が明らかになった．この事実は，成人T細胞白血病患者に由来する腫瘍細胞をクロマチン免疫沈降アッセイにより直接的に調べた結果，<em>miR-31</em>遺伝子領域に異常な抑制的メチル化をもつヒストンが検出され，また，EZH2のノックダウンが直接に細胞死を誘導したこと，さらに，同様の分子機構が好転移性乳がん細胞やB細胞株においても保存されていたことからもサポートされた．<br />
　以上より，細胞内における成熟miR-31の発現量は，ゲノムの安定性と，YY1とPRC2によるエピジェネティックな制御の2つの側面により規定されていることが示された．</p>
<h2>4．PolycombファミリーによるmiR-31制御を介したNF-κB経路への影響</h2>
<p>　miR-31はNIKのほかRhoA，Radixin，インテグリンα5，FoxP3，FIH，E2F2などさまざまなタンパク質をコードする遺伝子を負に制御し細胞の運命に強く影響する．一方で，miR-31を制御するPolycombファミリーは多くの悪性リンパ腫，白血病，固形がんの増殖，生存，転移能に重要であるが，どの標的遺伝子が細胞の表現型に直接に影響するかについては不明な点が多かった．そこで，この研究で明らかになったmiR-31によるNIKを介したNF-κB経路の制御とPolycombファミリーによるmiR-31の発現制御とをあわせ，Polycombファミリーによるエピジェネティックな制御がNIKに依存的なNF-κB経路の制御にかかわるという仮説をたてた．これまで，PolycombファミリーとNF-κB経路との関係は不明であった．<br />
　成人T細胞白血病細胞株においてEZH2もしくはSUZ12をノックダウンすると，さきに述べたようにmiR-31の発現が誘導され，このとき，NIKの量が減少することにより下流へのシグナルが停止しNF-κBシグナルが低下した．さらに，これらの細胞では細胞の増殖および細胞死への抵抗性が低下した．Polycombファミリー，miR-31，NIKはそれぞれの経路の上流に位置し，細胞に対するアウトプットはさまざまに拡散すると考えられるが，以下の実験事実によりこの分子機構は非常に重要であると考えられた．1）Polycombファミリーのノックダウンにより低下したNF-κBシグナルはmiR-31の阻害剤を共存させることにより回復することから，PolycombファミリーによるNF-κBの制御にはmiR-31の仲介が重要である，2）Polycombファミリーのノックダウンにより誘導される成人T細胞白血病細胞の強制的なアポトーシスは3’側非翻訳領域を削除したNIKによりレスキューされる，つまり，Polycombファミリーにより獲得された異常な生存能の一部はNIKにより具現化されている．3）miR-31の過剰な発現やPolycombファミリーのノックダウンはB細胞におけるBAFFやCD40LからのNF-κBの非定型的経路の活性化を阻害することから，がん細胞のシグナルだけでなく正常細胞のシグナルの制御にも重要である．4）miR-31の発現およびPolycombファミリーのノックダウンにより成人T細胞白血病細胞のMDC（CCR4リガンド）に対する走化性が低下し，NIK以外のmiR-31の標的遺伝子による表現型はPolycombファミリーによっても影響をうける．</p>
<h2>5．新規の治療法の開発へ</h2>
<p>　Polycombファミリーの過剰な発現，miR-31の発現の低下，NIK量の増加とNF-κBシグナルの恒常的な活性化は，いずれも成人T細胞白血病の臨床検体から明らかになった．この研究の総括として，この腫瘍細胞の分子レベルでの特徴が細胞の生存にどのように影響するかを検討した．miR-31の強制発現，また，EZH2もしくはNIKのノックダウンを行うレンチウイルスベクターを作製し，患者に由来する腫瘍細胞に直接に導入することにより<em>ex vivo</em>での評価を行った．その結果，ある程度の個人差をもっていずれのレンチウイルスも複数の成人T細胞白血病の症例で強烈なアポトーシスを誘導することがわかった．同様の処理は正常の末梢血の単核球もしくはT細胞に対しては効果が微弱であり，それぞれの因子の存在量のバランスの異常が成人T細胞白血病細胞の生存に重要であることが示された．これらの結果は，miR-31が成人T細胞白血病細胞に特異的な細胞障害性をもつことを示しており，この細胞に特異的な導入法を開発することにより成人T細胞白血病の新規の治療法につながる可能性をもつと考えられた．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　この研究は，成人T細胞白血病における新たな分子標的とNF-κBシグナルの活性化の機序を明らかにするとともに，Polycombファミリーによるエピジェネティックな制御，マイクロRNAによる細胞運命の決定，NF-κB経路による免疫細胞および腫瘍細胞の分子基盤，という3つのコンテクストに新たな生物学的なリンクを見い出した（<a href="#F2">図2</a>）．また，この研究で得られた知見は以下の点で重要であった．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　Polycombファミリーに依存的なmiR-31の発現低下はNIKなどの標的遺伝子を介して細胞の表現型に影響する</strong><br />
これらの因子のあいだの関係はさまざまな細胞で保存されており，それぞれの因子の存在量のバランスにより均衡が保たれている．バランスをくずした細胞は悪性化をたどるものと考えられる．<br />
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<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Watanabe-Cancer-Cell-12.1.17-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Watanabe-Cancer-Cell-12.1.17-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　1つ目は，NIKの新たな制御機構を明らかにしたことである．NIKは成人T細胞白血病以外にも，多発性骨髄腫，悪性リンパ腫，乳がんなどにおけるNF-κBシグナルの異常な活性化の原因タンパク質である．また，NIKは免疫担当細胞をはじめとする種々の細胞の正常機能に必須であり，NIKをめぐる基礎研究は注目をあつめている．NF-κB経路の複雑な制御系にmiR-31が組み込まれていること，さらに，Polycombファミリーに依存的なエピジェネティックな制御がマイクロRNAを介してNF-κBシグナルの制御に寄与するという発見は，今後のシグナル伝達の研究に対し大きく貢献するものと考えられる．<br />
　2つ目は，PolycombファミリーはマイクロRNAの発現を制御することにより，より多くの遺伝子の発現につき転写および翻訳の段階において影響力をもつ可能性のあることである．また，Polycombファミリー自体も複数のマイクロRNAにより制御されていることがわかっている．現に，成人T細胞白血病においてはEZH2を抑制するマイクロRNAが減少していた．<br />
　3つ目は，Polycombファミリーによる標的配列の認識機構の一端を明らかにしたことである．PRC2による標的配列の認識はYY1だけでは説明できないことは複数の研究により示されているが，miR-31のようにYY1結合配列の蓄積という特殊なケースが細胞に対する影響力の大きい可能性がある．<br />
　4つ目は，シグナルのクロストークと細胞の正常機能についてである．この研究で得られた知見はそれぞれの鍵となる因子の異常な挙動を指標として明らかになったが，それぞれの因子は元来，細胞の恒常性や正常機能に重要であると考えられる．がん研究から得られた知見がより基礎的および臨床的な理解に貢献することを期待したい．<br />
　最後に，miR-31の成人T細胞白血病に対する分子標的薬としての応用の可能性が示されたといえる．今後の研究により実用化が可能となれば，成人T細胞白血病のみならず同様の分子病態を示すがんの新たな治療法の開発の先例となる可能性がある．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Iwanaga, M., Watanabe, T., Utsunomiya, A. et al.</span>: <span class="ti">Human T-cell leukemia virus type I (HTLV-1) proviral load and disease progression in asymptomatic HTLV-1 carriers: a nationwide prospective study in Japan.</span> <span class='so'>Blood, 116, 1211-1219 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20448111" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Watanabe, M., Ohsugi, T., Shoda, M. et al.</span>: <span class="ti">Dual targeting of transformed and untransformed HTLV-1-infected T cells by DHMEQ, a potent and selective inhibitor of NF-κB, as a strategy for chemoprevention and therapy of adult T-cell leukemia.</span> <span class='so'>Blood, 106, 2462-2471 (2005)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15956280" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Saitoh, Y., Yamamoto, N., Dewan, M. Z. et al.</span>: <span class="ti">Overexpressed NF-κB-inducing kinase contributes to the tumorigenesis of adult T-cell leukemia and Hodgkin Reed-Sternberg cells.</span> <span class='so'>Blood, 111, 5118-5129 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18305221" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Valastyan, S., Reinhardt, F., Benaich, N. et al.</span>: <span class="ti">A pleiotropically acting microRNA, miR-31, inhibits breast cancer metastasis.</span> <span class='so'>Cell, 137, 1032-1046 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19524507" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Simon, J. A. &#038; Kingston, R. E.</span>: <span class="ti">Mechanisms of polycomb gene silencing: knowns and unknowns.</span> <span class='so'>Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 10, 697-708 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19738629" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">山岸  誠（Makoto Yamagishi）</span><br />
略歴：2009年 東京大学大学院新領域創成科学研究科 修了，同年 エイズ予防財団 リサーチレジデントを経て，2011年より東京大学大学院新領域創成科学研究科 特任研究員．<br />
研究テーマ：白血病およびリンパ腫における分子病態，とくに，エピジェネティクス，マイクロRNA，シグナル伝達．HIVの潜伏化の分子機構．<br />
関心事：腫瘍細胞および正常細胞におけるエピジェネティクス，マイクロRNA，シグナル伝達系のクロストーク．基礎研究から発信する情報を臨床へフィードバックすることをめざしたい．</p>
<p><strong>渡邉 俊樹（Toshiki Watanabe）</strong><br />
東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授<br />
研究室URL：<a href="http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/ltcb-mgs/" target="_blank">http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/ltcb-mgs/</a>
</div>
<p>© 2012 山岸 誠・渡邉俊樹 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		<title>セントロメアにおける新しいヒストン様の構造</title>
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		<pubDate>Fri, 10 Feb 2012 08:06:56 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Cell]]></category>
		<category><![CDATA[キネトコア]]></category>
		<category><![CDATA[セントロメア]]></category>
		<category><![CDATA[ヒストン]]></category>
		<category><![CDATA[構造生物学]]></category>

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		<description><![CDATA[西野達哉・深川竜郎 （国立遺伝学研究所 分子遺伝研究部門） email：西野達哉，深川竜郎 CENP-T-W-S-X forms a unique centromeric chromatin structure with a histone-like fold. Tatsuya Nishino, Kozo Takeuchi, Karen E. Gascoigne, Aussie Suzuki, Tetsuya Hori, Takuji Oyama, Kosuke Morikawa, Iain M. Cheeseman, Tatsuo Fukagawa Cell, 148, 487-501 (2012) 要 約 　染色体が娘細胞へ正確に分配されるためには，複数のタンパク質複合体がセントロメアとよばれるゲノムDNA領域に集合しキネトコアという構造をつくらなければならない．このキネトコア構造が形成されるため，どのようなタンパク質がどのように集合してセントロメアDNAと結合しているのかという分子機構に関しては不明な点が多い．この研究では，高等動物のキネトコアに局在するCENP-T-W複合体とCENP-S-X複合体に注目し，構造生物学的，生化学的，細胞生物学的な解析を行った．その結果，試験管内で再構成したニワトリのCENP-T-W複合体とCENP-S-X複合体は，結合してCENP-T-W-S-X複合体という安定なヘテロ四量体を形成することが明らかになった．X線結晶構造解析により明らかにされたCENP-T-W複合体，CENP-S-X複合体，および，CENP-T-W-S-X複合体の構造はヒストンと類似していた．CENP-T-W-S-X複合体はDNAに超らせんを導入する活性を示し，ヒストンと似たDNAとの結合特性のあることも明らかになった．さらに，DNAとの結合にかかわるアミノ酸残基およびヘテロ四量体の形成に必要なアミノ酸残基に変異を導入したCENP-T-W-S-X複合体を発現するニワトリDT40細胞では，正常なキネトコアが形成されないことがわかった．以上の結果から，CENP-T-W-S-X複合体が通常のヒストンのようにDNAと結合しヌクレオソームと似た構造をセントロメア領域において形成することが，キネトコア構造の構築に必須であると結論した． はじめに 　生物の全ゲノム情報を担う染色体は細胞周期の過程をつうじ正確に複製され分配される．染色体の複製機構や分配機構の異常は遺伝情報の不正確な伝達につながり，その結果，がん化をはじめとする細胞への悪影響が生じる．したがって，染色体の複製や分配の分子機構を解明することは基礎生物学および医科学の両面から大切である．細胞周期のS期において複製された染色体は，M期になると両極から延びた紡錘体にとらえられて娘細胞へと分配される．この染色体分配の際に紡錘体が結合する染色体の特殊な構造がキネトコア（動原体）である．このキネトコアはセントロメアとよばれるゲノムDNA領域に形成される．興味深いことに，キネトコアが形成されるセントロメア領域のDNA配列に特異性はなく，セントロメア領域はエピジェネティックな機構により決定されている．つまり，どのような配列をもつDNA領域もセントロメアになりうるが，いったん，その領域がセントロメアになると次世代の細胞にもその情報が受け継がれる．これまでの多くの研究から，セントロメア領域の決定に関与するエピジェネティックマーカーとしてはヒストンH3のバリアントであるCENP-Aが有力候補であると考えられている1,2)．どのようなDNA配列をもつセントロメアにもCENP-Aが存在するのでCENP-Aがセントロメアの形成において重要なはたらきを担っていることはまちがいないが，CENP-Aのみで機能的なキネトコア構造をつくることはできない2)．したがって，CENP-Aとともにキネトコアの形成に関与するタンパク質の役割を解明することが必須である． 　キネトコアはセンロメアDNA上に形成されるので，キネトコア形成の基礎となるタンパク質はDNAと直接に結合している可能性が高い．筆者らの研究室では，キネトコアに存在するDNA結合タンパク質としてCENP-T-W複合体を同定している3)．さらに最近，CENP-Tを非セントロメア領域に異所局在化させると，その領域にキネトコア様の構造が形成されることも報告している4)．これらの事実はCENP-T-W複合体がキネトコア形成の基盤として機能している可能性を示唆している．しかしながら，CENP-T-W複合体がどのようにセントロメア領域を認識してセントロメアDNAと結合しキネトコアの形成に関与しているのかについては不明な点が多い．CENP-Tがキネトコアの形成にどのようにかかわっているのかを明らかにする目的で，構造生物学的，生化学的，細胞生物学的な手法を駆使して研究を行った．その結果，CENP-T-W複合体はCENP-S-X複合体というほかのキネトコアタンパク質複合体とヘテロ四量体を形成していることが明らかになった．また，CENP-T-W-S-X複合体はヒストンに類似した構造をとり，通常のヒストンのようにDNAと結合し，セントロメア領域においてヌクレオソームに似た構造を形成している可能性を示した． 1．CENP-T-W複合体はヒストンに構造が類似した二量体からなる複合体である 　CENP-T-W複合体のDNAへの結合様式を理解する目的で，ニワトリのCENP-TのDNA結合にかかわるC末端側の領域と完全長のCENP-Wを大腸菌において発現させ，精製ののち再構成した．得られたCENP-T-W複合体を結晶化しX線構造解析した結果，分解能2.2Åで構造決定に成功した（PDB ID：3B0C，3B0D）．決定された結晶構造から，二量体からなるCENP-T-W複合体の構造はヌクレオソームにおけるヒストン5) の二量体の部分の構造と類似していることが明らかになった．ヒストンとの構造の類似性，および，ヒストンのDNAとの結合に重要な領域を参考にして，CENP-TおよびCENP-WのDNAとの結合にかかわる領域を予想した．この領域のアミノ酸残基に変異を導入したCENP-T-W複合体を精製してDNA結合活性を解析した結果，活性の低下が確認された．また，ニワトリDT40細胞を用いて野生型CENP-WとこのDNA結合活性が低下したCENP-W変異体とを置換したところ，このCENP-W変異体は機能しないことが明らかになった．以上の結果から，ヒストンに類似したCENP-T-W複合体のDNA結合活性はキネトコアの形成に必須であると結論した． 2．CENP-S-X複合体もヒストンと類似しDNA結合活性を示す四量体を形成する 　筆者らは，以前の研究において，CENP-T-W複合体と関連するタンパク質複合体としてCENP-S-X複合体を同定していた6)．CENP-T-W複合体の機能を理解するにはCENP-S-X複合体との関連をより詳細に解析する必要性があると考え，ニワトリCENP-S-X複合体を大腸菌で発現し精製したのち構造生物学的な解析を行った．精製したCENP-S-X複合体のゲルろ過パターンからCENP-S-X複合体は四量体を形成することが示唆されたが，実際に分解能2.15Åで結晶構造を決定したCENP-S-X複合体は四量体の構造をとっていた（PDB ID：3B0B）．CENP-S-X複合体の構造はヒストンと類似しており，CENP-T-W複合体とも類似していた．CENP-S-X複合体はCENP-T-W複合体と同様にDNA結合活性をもっており，やはり，ヒストンとの構造の類似性からDNA結合に関与する領域を予想した．この領域のアミノ酸残基に変異を導入しDNAへの結合性を低下させた変異型のCENP-S-X複合体はキネトコアに局在したが，ほかのキネトコアタンパク質の集合が不全になっていた．したがって，DNA結合活性はCENP-S-X複合体の機能に重要であると考えられた． 　CENP-S-X複合体とCENP-T-W複合体の構造は全体的には類似していたものの，CENP-SのC末端側に存在する伸びたαヘリックス（α4ヘリックスとよぶ）はCENP-Tには存在せず，2つのαヘリックス構造が折り返したかたちで存在していた（α4ヘリックスおよびα5ヘリックスとよぶ）．この構造の違いがCENP-Tの機能に重要である可能性を考え，α4ヘリックスおよびα5ヘリックスを欠失させたCENP-T変異体をニワトリDT40細胞において発現させた結果，このCENP-T変異体はキネトコアへは局在しないことがわかった．したがって，CENP-TのC末端側にある2つのαヘリックス領域がCENP-T-W複合体のキネトコアへの局在に必須であると結論された． 3．CENP-T-W複合体とCENP-S-X複合体は結合してヘテロ四量体を形成する 　CENP-T-W複合体の構造とCENP-S-X複合体の構造には部分的に違いはみられるものの全体的な構造は類似している．機能的にも構造的にも両者が類似していることから，これらが協調して機能している可能性が考えられた．そこで，CENP-T-W複合体とCENP-S-X複合体とが物理的に結合する可能性を考え，両者を混合してゲルろ過解析を行った．CENP-T-W複合体は二量体の構造を，CENP-S-X複合体は四量体の構造をとるので，当初，両者が結合するのであればより分子量の大きい場所に新しいゲルろ過ピークが検出されるものと予想した．しかし意外なことに，1本のピークがCENP-S-X複合体のピークより分子量のやや小さい場所に検出された．このピークに含まれるタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析するとCENP-T，CENP-W，CENP-S，CENP-Xがほぼ同じ量ずつ検出された．これらの結果より，CENP-S-X複合体とCENP-T-W複合体とを混合するとCENP-S-X四量体の一部がCENP-T-W二量体と交換しCENP-T-W-S-Xヘテロ四量体が形成されることが示唆された． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>西野達哉・深川竜郎</strong><br />
（国立遺伝学研究所 分子遺伝研究部門）<br />
email：<a href="mailto:tnishino@lab.nig.ac.jp">西野達哉</a>，<a href="mailto:tfukagaw@lab.nig.ac.jp">深川竜郎</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">CENP-T-W-S-X forms a unique centromeric chromatin structure with a histone-like fold.</span><br />
<span class="au">Tatsuya Nishino, Kozo Takeuchi, Karen E. Gascoigne, Aussie Suzuki, Tetsuya Hori, Takuji Oyama, Kosuke Morikawa, Iain M. Cheeseman, Tatsuo Fukagawa</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22304917" target="_blank"><em>Cell</em>, <strong>148</strong>, 487-501 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4350"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　染色体が娘細胞へ正確に分配されるためには，複数のタンパク質複合体がセントロメアとよばれるゲノムDNA領域に集合しキネトコアという構造をつくらなければならない．このキネトコア構造が形成されるため，どのようなタンパク質がどのように集合してセントロメアDNAと結合しているのかという分子機構に関しては不明な点が多い．この研究では，高等動物のキネトコアに局在するCENP-T-W複合体とCENP-S-X複合体に注目し，構造生物学的，生化学的，細胞生物学的な解析を行った．その結果，試験管内で再構成したニワトリのCENP-T-W複合体とCENP-S-X複合体は，結合してCENP-T-W-S-X複合体という安定なヘテロ四量体を形成することが明らかになった．X線結晶構造解析により明らかにされたCENP-T-W複合体，CENP-S-X複合体，および，CENP-T-W-S-X複合体の構造はヒストンと類似していた．CENP-T-W-S-X複合体はDNAに超らせんを導入する活性を示し，ヒストンと似たDNAとの結合特性のあることも明らかになった．さらに，DNAとの結合にかかわるアミノ酸残基およびヘテロ四量体の形成に必要なアミノ酸残基に変異を導入したCENP-T-W-S-X複合体を発現するニワトリDT40細胞では，正常なキネトコアが形成されないことがわかった．以上の結果から，CENP-T-W-S-X複合体が通常のヒストンのようにDNAと結合しヌクレオソームと似た構造をセントロメア領域において形成することが，キネトコア構造の構築に必須であると結論した．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　生物の全ゲノム情報を担う染色体は細胞周期の過程をつうじ正確に複製され分配される．染色体の複製機構や分配機構の異常は遺伝情報の不正確な伝達につながり，その結果，がん化をはじめとする細胞への悪影響が生じる．したがって，染色体の複製や分配の分子機構を解明することは基礎生物学および医科学の両面から大切である．細胞周期のS期において複製された染色体は，M期になると両極から延びた紡錘体にとらえられて娘細胞へと分配される．この染色体分配の際に紡錘体が結合する染色体の特殊な構造がキネトコア（動原体）である．このキネトコアはセントロメアとよばれるゲノムDNA領域に形成される．興味深いことに，キネトコアが形成されるセントロメア領域のDNA配列に特異性はなく，セントロメア領域はエピジェネティックな機構により決定されている．つまり，どのような配列をもつDNA領域もセントロメアになりうるが，いったん，その領域がセントロメアになると次世代の細胞にもその情報が受け継がれる．これまでの多くの研究から，セントロメア領域の決定に関与するエピジェネティックマーカーとしてはヒストンH3のバリアントであるCENP-Aが有力候補であると考えられている<a href="#R1"><sup>1,2)</sup></a>．どのようなDNA配列をもつセントロメアにもCENP-Aが存在するのでCENP-Aがセントロメアの形成において重要なはたらきを担っていることはまちがいないが，CENP-Aのみで機能的なキネトコア構造をつくることはできない<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．したがって，CENP-Aとともにキネトコアの形成に関与するタンパク質の役割を解明することが必須である．<br />
　キネトコアはセンロメアDNA上に形成されるので，キネトコア形成の基礎となるタンパク質はDNAと直接に結合している可能性が高い．筆者らの研究室では，キネトコアに存在するDNA結合タンパク質としてCENP-T-W複合体を同定している<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>．さらに最近，CENP-Tを非セントロメア領域に異所局在化させると，その領域にキネトコア様の構造が形成されることも報告している<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>．これらの事実はCENP-T-W複合体がキネトコア形成の基盤として機能している可能性を示唆している．しかしながら，CENP-T-W複合体がどのようにセントロメア領域を認識してセントロメアDNAと結合しキネトコアの形成に関与しているのかについては不明な点が多い．CENP-Tがキネトコアの形成にどのようにかかわっているのかを明らかにする目的で，構造生物学的，生化学的，細胞生物学的な手法を駆使して研究を行った．その結果，CENP-T-W複合体はCENP-S-X複合体というほかのキネトコアタンパク質複合体とヘテロ四量体を形成していることが明らかになった．また，CENP-T-W-S-X複合体はヒストンに類似した構造をとり，通常のヒストンのようにDNAと結合し，セントロメア領域においてヌクレオソームに似た構造を形成している可能性を示した．</p>
<h2>1．CENP-T-W複合体はヒストンに構造が類似した二量体からなる複合体である</h2>
<p>　CENP-T-W複合体のDNAへの結合様式を理解する目的で，ニワトリのCENP-TのDNA結合にかかわるC末端側の領域と完全長のCENP-Wを大腸菌において発現させ，精製ののち再構成した．得られたCENP-T-W複合体を結晶化しX線構造解析した結果，分解能2.2Åで構造決定に成功した（PDB ID：3B0C，3B0D）．決定された結晶構造から，二量体からなるCENP-T-W複合体の構造はヌクレオソームにおけるヒストン<a href="#R5"><sup>5)</sup></a> の二量体の部分の構造と類似していることが明らかになった．ヒストンとの構造の類似性，および，ヒストンのDNAとの結合に重要な領域を参考にして，CENP-TおよびCENP-WのDNAとの結合にかかわる領域を予想した．この領域のアミノ酸残基に変異を導入したCENP-T-W複合体を精製してDNA結合活性を解析した結果，活性の低下が確認された．また，ニワトリDT40細胞を用いて野生型CENP-WとこのDNA結合活性が低下したCENP-W変異体とを置換したところ，このCENP-W変異体は機能しないことが明らかになった．以上の結果から，ヒストンに類似したCENP-T-W複合体のDNA結合活性はキネトコアの形成に必須であると結論した．</p>
<h2>2．CENP-S-X複合体もヒストンと類似しDNA結合活性を示す四量体を形成する</h2>
<p>　筆者らは，以前の研究において，CENP-T-W複合体と関連するタンパク質複合体としてCENP-S-X複合体を同定していた<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．CENP-T-W複合体の機能を理解するにはCENP-S-X複合体との関連をより詳細に解析する必要性があると考え，ニワトリCENP-S-X複合体を大腸菌で発現し精製したのち構造生物学的な解析を行った．精製したCENP-S-X複合体のゲルろ過パターンからCENP-S-X複合体は四量体を形成することが示唆されたが，実際に分解能2.15Åで結晶構造を決定したCENP-S-X複合体は四量体の構造をとっていた（PDB ID：3B0B）．CENP-S-X複合体の構造はヒストンと類似しており，CENP-T-W複合体とも類似していた．CENP-S-X複合体はCENP-T-W複合体と同様にDNA結合活性をもっており，やはり，ヒストンとの構造の類似性からDNA結合に関与する領域を予想した．この領域のアミノ酸残基に変異を導入しDNAへの結合性を低下させた変異型のCENP-S-X複合体はキネトコアに局在したが，ほかのキネトコアタンパク質の集合が不全になっていた．したがって，DNA結合活性はCENP-S-X複合体の機能に重要であると考えられた．<br />
　CENP-S-X複合体とCENP-T-W複合体の構造は全体的には類似していたものの，CENP-SのC末端側に存在する伸びたαヘリックス（α4ヘリックスとよぶ）はCENP-Tには存在せず，2つのαヘリックス構造が折り返したかたちで存在していた（α4ヘリックスおよびα5ヘリックスとよぶ）．この構造の違いがCENP-Tの機能に重要である可能性を考え，α4ヘリックスおよびα5ヘリックスを欠失させたCENP-T変異体をニワトリDT40細胞において発現させた結果，このCENP-T変異体はキネトコアへは局在しないことがわかった．したがって，CENP-TのC末端側にある2つのαヘリックス領域がCENP-T-W複合体のキネトコアへの局在に必須であると結論された．</p>
<h2>3．CENP-T-W複合体とCENP-S-X複合体は結合してヘテロ四量体を形成する</h2>
<p>　CENP-T-W複合体の構造とCENP-S-X複合体の構造には部分的に違いはみられるものの全体的な構造は類似している．機能的にも構造的にも両者が類似していることから，これらが協調して機能している可能性が考えられた．そこで，CENP-T-W複合体とCENP-S-X複合体とが物理的に結合する可能性を考え，両者を混合してゲルろ過解析を行った．CENP-T-W複合体は二量体の構造を，CENP-S-X複合体は四量体の構造をとるので，当初，両者が結合するのであればより分子量の大きい場所に新しいゲルろ過ピークが検出されるものと予想した．しかし意外なことに，1本のピークがCENP-S-X複合体のピークより分子量のやや小さい場所に検出された．このピークに含まれるタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析するとCENP-T，CENP-W，CENP-S，CENP-Xがほぼ同じ量ずつ検出された．これらの結果より，CENP-S-X複合体とCENP-T-W複合体とを混合するとCENP-S-X四量体の一部がCENP-T-W二量体と交換しCENP-T-W-S-Xヘテロ四量体が形成されることが示唆された．<br />
　このCENP-T-W-S-X複合体の構造をより詳細に知るためにその構造解析を試み，分解能2.4Åで結晶構造を決定した（<a href="#F1">図1</a>，PDB ID：3VH5，3VH6）．構造解析の結果，CENP-T-W-S-X複合体はCENP-S-X複合体よりも四量体の形成に必要な自由エネルギーが低く，より安定な構造をとることがわかった．さらに，ヘテロ四量体の形成にかかわる領域を詳細に解析した結果，その形成に必須なCENP-SおよびCENP-Tのアミノ酸残基を同定した．これらのアミノ酸残基に変異を導入したCENP-S変異体あるいはCENP-T変異体は，それぞれ野生型CENP-Xあるいは野生型CENP-Wと二量体を形成するものの，CENP-T-W-S-Xへテロ四量体を形成しないことが示された．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　CENP-T-W-S-Xへテロ四量体の構造のリボン図</strong><br />
CENP-S，CENP-X，CENP-T，CENP-Wは，それぞれ，ピンク色，青色，緑色，黄色で表した．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Fukagawa-Cell-12.2.2-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Fukagawa-Cell-12.2.2-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Fukagawa-Cell-12.2.2-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>4．CENP-T-W-S-X複合体のへテロ四量体の構造はキネトコアの形成に必須である</h2>
<p>　組換えタンパク質を用いた構造生物学的および生化学的な解析からCENP-T-W-S-X複合体がヘテロ四量体を形成することが示されたが，このヘテロ四量体の形成が細胞内におけるキネトコアの構築にどのようにかかわっているかを明らかにすることが重要であった．そこで，ヘテロ四量体が形成されないような変異体を細胞内で発現させてその意義について解析を行った．はじめに，ヘテロ四量体が形成されないCENP-S変異体をニワトリDT40細胞において発現させると核に拡散した局在を示し，キネトコアには局在しなかった．これは，CENP-T-W-S-X複合体のヘテロ四量体の構造の形成がCENP-Sのキネトコアへの局在に必須であること意味していた．つぎに，ヘテロ四量体が形成されないCENP-T変異体をCENP-Tノックアウト細胞へ導入した．野生型CENP-Tの発現がCENP-T変異体の発現に置き換わったこの細胞において，キネトコアにおけるCENP-Tのシグナルは観察されたものの，本来の20％程度の強さであった．また，Ndc80という微小管と結合するキネトコアタンパク質の局在も大きく失われていた．これらのタンパク質の局在性の異常にともない，分裂期に異常を示す多数の細胞が存在しこれらの細胞は死滅した．以上のニワトリDT40細胞を用いた研究から，CENP-T-W-S-X複合体のヘテロ四量体の構造はキネトコアの形成に必須であることが明確に示された．</p>
<h2>5．DNA-CENP-T-W-S-X複合体はヌクレオソームに似た特性をもつ</h2>
<p>　CENP-T-W複合体もCENP-S-X複合体もそれぞれの複合体のみでDNA結合活性を示すが，タンパク質-DNA複合体をゲル電気泳動により解析したところそれぞれ異なる泳動パターンが得られた．DNA-CENP-T-W複合体は巨大な複合体をつくりやすくゲルの内部に入らないような巨大な複合体が形成された．一方，DNA-CENP-S-X複合体では複数のバンドがラダー状に観察され，これは，DNAに一定の間隔で複数個のCENP-S-X複合体が結合していることを意味していた．そこで，CENP-T-W-S-X複合体とDNAとの結合様式を解析した結果，等量のDNAとCENP-T-W-S-X複合体とが結合したと考えられる1本のバンドが検出された．このことは，DNA-CENP-T-W-S-X複合体が安定な複合体を形成していることを示唆していた．<br />
　DNAはヒストンのまわりにまきついてヌクレオソームという構造をとることが知られている<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．CENP-T-W-S-X複合体もヒストンと構造が類似しており，また，DNA結合部位が類似していることから，DNAがCENP-T-W-S-X複合体の周辺を巻くように結合する可能性が考えられた．その点を明らかにするためDNA超らせん化アッセイを行った．このアッセイは，環状DNAをトポイソメラーゼIにより弛緩型に変換させたのち，タンパク質とともに反応させDNAのトポロジーの変化をアガロース電気泳動により検出する方法である．ヒストンを用いてこのアッセイを行うと，ヌクレオソームの形成に準じて環状DNAのトポアイソマーが検出される．CENP-T-W-S-X複合体を用いてDNA超らせん化アッセイを行った結果，ヒストンより活性は弱いもののトポアイソマーが検出され，この複合体がDNAに超らせんを導入する活性をもつことが明らかになった．DNA結合部位に変異を導入した変異型のCENP-T-W-S-X複合体では超らせん化活性が減少したこともあわせて，DNAはCENP-T-W-S-X複合体のまわりを巻くように結合していると結論した．<br />
　つぎに，長さの異なるDNAとCENP-T-W-S-X複合体との結合実験を行ったところ，この複合体は100 bpの長さのDNAともっとも効率よく1本のバンドを形成した．また，100 bpより長いDNAとCENP-T-W-S-X複合体を結合させたのちこのDNA-タンパク質複合体をマイクロコッカルヌクレアーゼで消化した結果，約100 bpのDNAがヌクレアーゼによる消化から保護された．この消化実験およびDNA超らせん化アッセイの結果を総合的に考察すると，約100 bpのDNAがCENP-T-W-S-X複合体の周辺を巻くように結合しヌクレオソーム様の構造を形成していると考えられた（<a href="#F2">図2</a>）．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　キネトコアに存在するCENP-T-W-S-X複合体とDNAからなるユニークなクロマチン構造</strong><br />
CENP-S-X四量体とCENP-T-W二量体が結合してCENP-T-W-S-Xヘテロ四量体を形成する．このCENP-T-W-S-X複合体はヒストンに似た構造をとっており，通常のヒストンのまわりをDNAが巻いているように，CENP-T-W-S-X複合体もDNAがそのまわりを巻いた独自の構造を形成する．この構造が正常なキネトコア形成の種となる．CENP-S-X複合体をはたらかないようにするとDNAに適切に結合せず正常なキネトコアは形成されない．<br />
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<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Fukagawa-Cell-12.2.2-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Fukagawa-Cell-12.2.2-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>おわりに</h2>
<p>　この研究では，キネトコア形成の足場となることが予想されたCENP-Tが<a href="#R3"><sup>3,4)</sup></a>，セントロメアのクロマチンにおいてCENP-T-W-S-X複合体というユニークなヒストン様の構造を形成していることを示した．これまで，セントロメアのクロマチンに関する研究というとセントロメアに特異的なヒストンのバリアントであるCENP-Aの機能<a href="#R1"><sup>1,2)</sup></a> と構造<a href="#R7"><sup>7)</sup></a> が中心であったが，CENP-Aの存在だけでは説明できない点が多くあった．この研究により提唱されたCENP-T-W-S-X複合体を含むクロマチン構造は，今後，セントロメアの機能を解析するうえで重要な方向性をあたえており，学問的な意義は高いと考えられた．さらに，ヒストンと類似したタンパク質がヌクレオソーム様の構造をとる可能性を示した点は，セントロメアだけでなくクロマチンのかかわる生物学の全体に大きなインパクトをあたえた．ヒストンには多くのバリアントが存在し，クロマチンはこのバリアントの組合せにより独自の機能をはたすことが知られている．たとえば，転写の活発なクロマチン領域と活発でないクロマチン領域とでヒストンの構成が異なっていることはよく知られており，近年，ヒストンのコードする遺伝情報として注目されている．今回の研究は，ヒストンと類似したタンパク質の組合せによってもクロマチンは独自の機能をはたす可能性を示唆した．CENP-S-X複合体はセントロメア領域にくわえDNA損傷部位にも存在することが知られている<a href="#R8"><sup>8,9)</sup></a>．DNA損傷部位にはCENP-T-W複合体は存在しないことから，そこではCENP-S-X複合体が単独あるいはほかのタンパク質と結合してDNAと結合している可能性が考えられる．しかしながら，CENP-S-X複合体がCENP-T-W複合体と結合するとセントロメアに局在し独自のクロマチン構造を形成するようになる（<a href="#F2">図2</a>）．ヒストンと類似したタンパク質の組合せで独自の機能を発揮するというモデルは，通常のヒストンのバリアントの組合せからなる，いわゆる“ヒストンコード”を広げた新しいクロマチンコードといえる<a href="#R10"><sup>10)</sup></a>．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Black, B.E. &#038; Cleveland, D.W.</span>: <span class="ti">Epigenetic centromere propagation and the nature of CENP-A nucleosomes.</span> <span class='so'>Cell, 144, 471-479 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21335232" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Perpelescu, M. &#038; Fukagawa, T.</span>: <span class="ti">The ABCs of CENPs.</span> <span class='so'>Chromosoma, 120, 425-446 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21751032" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Hori, T., Amano, M., Suzuki, A. et al.</span>: <span class="ti">CCAN makes multiple contacts with centromeric DNA to provide distinct pathways to the outer kinetochore.</span> <span class='so'>Cell, 135, 1039-1052 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19070575" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Gascoigne, K. E., Takeuchi, K., Suzuki, A. et al.</span>: <span class="ti">Induced ectopic kinetochore assembly bypasses the requirement for CENP-A nucleosomes.</span> <span class='so'>Cell, 145, 410-422 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21529714" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Luger, K., Mader, A. W., Richmond, R. K. et al.</span>: <span class="ti">Crystal structure of the nucleosome core particle at 2.8Å resolution.</span> <span class='so'>Nature, 389, 251-260 (1997)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9305837" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Amano, M., Suzuki, A., Hori, T. et al.</span>: <span class="ti">The CENP-S complex is essential for the stable assembly of outer kinetochore structure.</span> <span class='so'>J. Cell Biol., 186, 173-182 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19620631" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Tachiwana, H., Kagawa, W., Shiga, T. et al.</span>: <span class="ti">Crystal structure of the human centromeric nucleosome containing CENP-A.</span> <span class='so'>Nature, 476, 232-235 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21743476" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R8"><span class='au'>Singh, T. R., Saro, D., Ali, A. M. et al.</span>: <span class="ti">MHF1-MHF2, a histone-fold-containing protein complex, participates in the Fanconi anemia pathway via FANCM.</span> <span class='so'>Mol. Cell, 37, 879-886 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20347429" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R9"><span class='au'>Yan, Z., Delannoy, M., Ling, C. et al.</span>: <span class="ti">A histone-fold complex and FANCM form a conserved DNA-remodeling complex to maintain genome stability.</span> <span class='so'>Mol. Cell, 37, 865-878 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20347428" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R10"><span class='au'>Foltz, D. R. &#038; Stukenberg, P. T.</span>: <span class="ti">A new histone at the centromere?</span> <span class='so'>Cell, 148, 394-396 (2012)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22304909" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">西野 達哉（Tatsuya Nishino）</span><br />
略歴：2001年 大阪大学大学院医学系研究科 修了，2003年 オーストリアResearch Institute of Molecular Pathology研究員，2006年 英国Oxford大学 研究員，2008年 大阪大学蛋白質研究所 招聘研究員を経て，2009年より国立遺伝学研究所 助教．<br />
研究テーマ：真核生物の染色体分配装置の構造生物学．</p>
<p><strong>深川 竜郎（Tatsuo Fukagawa）</strong><br />
国立遺伝学研究所 教授．<br />
研究室URL：<a href="http://www.nig.ac.jp/labs/MolGene/index_j.html" target="_blank">http://www.nig.ac.jp/labs/MolGene/index_j.html</a>
</div>
<p>© 2012 西野達哉・深川竜郎 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
		<item>
		<title>キノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造からみた呼吸酵素の分子進化</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4335</link>
		<comments>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4335#comments</comments>
		<pubDate>Fri, 10 Feb 2012 05:44:47 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Nature Structural & Molecular Biology]]></category>
		<category><![CDATA[プロトンポンプ]]></category>
		<category><![CDATA[呼吸酵素]]></category>
		<category><![CDATA[構造生物学]]></category>
		<category><![CDATA[水チャネル]]></category>

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		<description><![CDATA[松本悠史・當舎武彦・城 宜嗣 （理化学研究所放射光科学総合研究センター 城生体金属科学研究室） email：城 宜嗣 Crystal structure of quinol-dependent nitric oxide reductase from Geobacillus stearothermophilus. Yushi Matsumoto, Takehiko Tosha, Andrei V. Pisliakov, Tomoya Hino, Hiroshi Sugimoto, Shingo Nagano, Yuji Sugita, Yoshitsugu Shiro Nature Structural &#038; Molecular Biology, 19, 238-245 (2012) 要 約 　現在の地球上の生物の多くは酸素分子を利用した好気呼吸によりエネルギーを得ている．好気呼吸では呼吸鎖末端酸化酵素が酸素分子の還元と共役してプロトンを細胞の内側から外側へと能動輸送することにより，ATP合成酵素を効率よく機能させている．アミノ酸配列の相同性から，嫌気呼吸にみられる一酸化窒素還元酵素は呼吸鎖末端酸化酵素の祖先蛋白質であると考えられているが，一酸化窒素還元酵素はプロトンポンプとしての機能をもたない．つまり，呼吸酵素は一酸化窒素還元酵素から呼吸鎖末端酸化酵素への進化の過程においてプロトンポンプ機能を獲得したといえる．筆者らは，呼吸酵素の分子進化に関し理解を深めるため，呼吸酵素のなかで最後まで立体構造が未解明であったキノール依存型一酸化窒素還元酵素の構造解析に挑戦し，好熱菌に由来する酵素の結晶構造を2.5Å分解能で決定した．通説では一酸化窒素還元酵素の触媒反応に必要なプロトンは細胞の外側から供給されるとされているが，キノール依存型一酸化窒素還元酵素には対応するプロトンの輸送経路を確認できなかった．その代わり，活性部位と細胞の内側とをつなぐ親水性の水チャネルが発見され，これがプロトンの輸送経路として機能するという予想外の結果が得られた．興味深いことに，このキノール依存型一酸化窒素還元酵素に特有の水チャネルは，好気呼吸酵素である呼吸鎖末端酸化酵素が分子進化のすえ獲得したプロトンポンプ経路の一部に対応していた．このように，キノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造は一酸化窒素還元酵素が分子進化の過程でどのようにプロトンポンプ機能を得るにいたったのか，その解明にせまる大きな手がかりをあたえるものであった． はじめに 　一酸化窒素還元酵素は細菌の細胞膜に存在する金属酵素で，一酸化窒素（NO）を還元し亜酸化窒素（N2O）を生成する（2NO + 2H+ + 2e- → N2O + H2O）．一酸化窒素還元酵素はおもに，硝酸を段階的に還元し窒素分子を生成する，脱窒反応とよばれる嫌気呼吸を行う細菌にみられる．このような細菌は脱窒反応によりATPを合成しており嫌気条件において生育できる．注目すべきことに，一酸化窒素還元酵素は好気呼吸の根幹を担う呼吸鎖末端酸化酵素の主要サブユニットと20％程度のアミノ酸配列の相同性を示す．このことから，一酸化窒素還元酵素と呼吸鎖末端酸化酵素とは進化的に関連が深いと考えられてきた1)．呼吸鎖末端酸化酵素は酸素分子の還元反応（O2 + [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>松本悠史・當舎武彦・城 宜嗣</strong><br />
（理化学研究所放射光科学総合研究センター 城生体金属科学研究室）<br />
email：<a href="mailto:yshiro@riken.jp">城 宜嗣</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Crystal structure of quinol-dependent nitric oxide reductase from <em>Geobacillus stearothermophilus</em>.</span><br />
<span class="au">Yushi Matsumoto, Takehiko Tosha, Andrei V. Pisliakov, Tomoya Hino, Hiroshi Sugimoto, Shingo Nagano, Yuji Sugita, Yoshitsugu Shiro</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22266822" target="_blank"><em>Nature Structural &#038; Molecular Biology</em>, <strong>19</strong>, 238-245 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4335"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　現在の地球上の生物の多くは酸素分子を利用した好気呼吸によりエネルギーを得ている．好気呼吸では呼吸鎖末端酸化酵素が酸素分子の還元と共役してプロトンを細胞の内側から外側へと能動輸送することにより，ATP合成酵素を効率よく機能させている．アミノ酸配列の相同性から，嫌気呼吸にみられる一酸化窒素還元酵素は呼吸鎖末端酸化酵素の祖先蛋白質であると考えられているが，一酸化窒素還元酵素はプロトンポンプとしての機能をもたない．つまり，呼吸酵素は一酸化窒素還元酵素から呼吸鎖末端酸化酵素への進化の過程においてプロトンポンプ機能を獲得したといえる．筆者らは，呼吸酵素の分子進化に関し理解を深めるため，呼吸酵素のなかで最後まで立体構造が未解明であったキノール依存型一酸化窒素還元酵素の構造解析に挑戦し，好熱菌に由来する酵素の結晶構造を2.5Å分解能で決定した．通説では一酸化窒素還元酵素の触媒反応に必要なプロトンは細胞の外側から供給されるとされているが，キノール依存型一酸化窒素還元酵素には対応するプロトンの輸送経路を確認できなかった．その代わり，活性部位と細胞の内側とをつなぐ親水性の水チャネルが発見され，これがプロトンの輸送経路として機能するという予想外の結果が得られた．興味深いことに，このキノール依存型一酸化窒素還元酵素に特有の水チャネルは，好気呼吸酵素である呼吸鎖末端酸化酵素が分子進化のすえ獲得したプロトンポンプ経路の一部に対応していた．このように，キノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造は一酸化窒素還元酵素が分子進化の過程でどのようにプロトンポンプ機能を得るにいたったのか，その解明にせまる大きな手がかりをあたえるものであった．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　一酸化窒素還元酵素は細菌の細胞膜に存在する金属酵素で，一酸化窒素（NO）を還元し亜酸化窒素（N<sub>2</sub>O）を生成する（2NO + 2H<sup>+</sup> + 2e<sup>-</sup> → N<sub>2</sub>O + H<sub>2</sub>O）．一酸化窒素還元酵素はおもに，硝酸を段階的に還元し窒素分子を生成する，脱窒反応とよばれる嫌気呼吸を行う細菌にみられる．このような細菌は脱窒反応によりATPを合成しており嫌気条件において生育できる．注目すべきことに，一酸化窒素還元酵素は好気呼吸の根幹を担う呼吸鎖末端酸化酵素の主要サブユニットと20％程度のアミノ酸配列の相同性を示す．このことから，一酸化窒素還元酵素と呼吸鎖末端酸化酵素とは進化的に関連が深いと考えられてきた<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．呼吸鎖末端酸化酵素は酸素分子の還元反応（O<sub>2</sub> + 4H<sup>+</sup> + 4e<sup>-</sup> → 2H<sub>2</sub>O）により生じるエネルギーを利用して細胞内のプロトンを細胞外へと汲み出すプロトンポンプ機能をもち，その結果として生じる細胞膜のあいだのプロトン濃度勾配がATP合成酵素を効率よく稼働させる．この呼吸の本質ともいえる呼吸鎖末端酸化酵素の機能は一酸化窒素還元酵素にはないものである．地球上の酸素濃度が劇的に上昇したのは光合成細菌が出現した約30億年前のことである．それ以前に存在していた原始生物は酸素分子ではなく窒素化合物や硫黄化合物を利用して呼吸を行っていたことを考慮すると，嫌気呼吸酵素である一酸化窒素還元酵素が好気呼吸酵素である呼吸鎖末端酸化酵素に進化することで生物は地球環境に適応しさらなる進化をとげたという筋書きが予想される．つまり，一酸化窒素還元酵素から呼吸鎖末端酸化酵素への機能変換のしくみを理解することは生物進化の理解につながる．<br />
　呼吸酵素の分子進化に関する研究においてはアミノ酸配列の系統解析がおもな手法として用いられてきた<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．しかし，よりくわしい分子進化の理解のためには機能を直接に反映する立体構造にもとづいた議論が必要不可欠である．系統解析により，呼吸酵素は，好気条件において機能する種々の呼吸鎖末端酸化酵素，低酸素環境においてはたらく<em>cbb</em><sub>3</sub>型の呼吸鎖末端酸化酵素，および，シトクロム<em>c</em>を電子供与体とするシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素とキノールを電子供与体とするキノール依存型一酸化窒素還元酵素の2種類からなる一酸化窒素還元酵素，に分類される．これらの呼吸酵素のうち，好気条件においてはたらく種々の呼吸鎖末端酸化酵素の立体構造が決定されており<a href="#R3"><sup>3,4)</sup></a>，2010年には，<em>cbb</em><sub>3</sub>型呼吸鎖末端酸化酵素の立体構造が報告され<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>，ついで，筆者らの研究室において，シトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造が解明された<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>（<a href="http://first.lifesciencedb.jp/archives/1706" target="_blank">新刊論文レビュー</a> でも掲載）．つまり，残るキノール依存型一酸化窒素還元酵素の立体構造が決定されれば，呼吸酵素の分子進化を立体構造にもとづきより詳細に検討できるものと期待されていた．</p>
<h2>1．キノール依存型一酸化窒素還元酵素の全体構造</h2>
<p>　構造解析に適した試料を得るため，熱安定性にすぐれる好熱菌<em>Geobacillus stearothermophilus</em>に由来するキノール依存型一酸化窒素還元酵素の遺伝子をクローニングし，大腸菌において過剰に発現させた．種々の界面活性剤の存在下において結晶化の条件を検討したところ，2.5Å分解能でキノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造を決定することができた（PDB ID：<a href="http://service.pdbj.org/mine/Detail2?PDBID=3ayf&#038;PAGEID=Summary" target="_blank">3AYF</a>）．キノール依存型一酸化窒素還元酵素は14本の膜貫通αヘリックスと細胞外に突き出た親水性ドメインからなる構造をしていた．2つのサブユニットからなるシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素と比較すると，サブユニット構造をもたないキノール依存型一酸化窒素還元酵素は膜貫通ヘリックスを1本多くもっており，このヘリックスはシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素の2つのサブユニットをつなぐように配置されていた．また，シトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素とは異なりキノール依存型一酸化窒素還元酵素は細胞外の親水性領域にヘム<em>c</em>をもたないにもかかわらず，その立体構造はシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素と同様にシトクロム<em>c</em>型の構造であった．キノール依存型一酸化窒素還元酵素においてヘム<em>c</em>の結合部位に対応する部位には疎水性のアミノ酸残基がクラスターを形成しており，疎水分子であるヘム<em>c</em>がなくてもシトクロム<em>c</em>型の構造を維持しているものと推察できた．</p>
<h2>2．活性部位の構造</h2>
<p>　NO還元反応はヘム（ヘム<em>b</em><sub>3</sub>）とその近傍に存在する非ヘム鉄からなる複核中心で起こる．今回，明らかにされたキノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造では活性部位の非ヘム鉄が亜鉛に置き換わっていた．元素分析の結果から，大腸菌で発現させたキノール依存型一酸化窒素還元酵素は活性部位に非ヘム鉄含むものと亜鉛を含むものとが混在しており，精製および結晶化をへて亜鉛が結合したキノール依存型一酸化窒素還元酵素のみが単結晶として得られることがわかった．<br />
　キノール依存型一酸化窒素還元酵素とシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素の活性部位の立体構造を比較したところ，亜鉛と非ヘム鉄の違いはあるものの，非ヘム金属に配位している3つのHis残基の配置はよく一致していた（<a href="#F1">図1</a>）．一方，シトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素においては非ヘム鉄の配位子であったGlu残基が，キノール依存型一酸化窒素還元酵素においては亜鉛から遠ざかっており非ヘム金属に配位しないという違いがみられた．現時点では，このGlu残基の配向の違いが非ヘム金属の違いによるのか，あるいは，キノール依存型一酸化窒素還元酵素とシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素との違いによるのか定かではない．しかし，今回，得られたキノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造を用いた分子動力学計算から，活性部位のGlu残基は非ヘム金属へ配位したり解離したり，周辺の条件により柔軟に構造を変化できることが示された．筆者らは，このGlu残基の構造変化がNO還元反応に重要なのではないかと考えている．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　一酸化窒素還元酵素の活性部位の立体構造</strong><br />
（a）好熱菌に由来するキノール依存型一酸化窒素還元酵素．<br />
（b）緑膿菌に由来するシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素（PDB ID：<a href="http://service.pdbj.org/mine/Detail2?PDBID=3o0r&#038;PAGEID=Summary" target="_blank">3O0R</a>）．<br />
ヘム<em>b</em><sub>3</sub>を赤色のスティックで示した．キノール依存型一酸化窒素還元酵素では活性部位の非ヘム鉄が亜鉛に置き換わっていた．また，シトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素において非ヘム鉄の配位子であったGlu211に対応するGlu512は，キノール依存型一酸化窒素還元酵素では非ヘム金属に配位していなかった．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Shiro-Nature-Structural-Molecular-Biology-12.2.3-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Shiro-Nature-Structural-Molecular-Biology-12.2.3-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Shiro-Nature-Structural-Molecular-Biology-12.2.3-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>3．プロトン輸送経路</h2>
<p>　NO還元反応の起こる複核中心は膜貫通領域に埋まっており，反応に必要なプロトンは細胞膜の内側あるいは外側から供給される必要がある．多くの研究がなされてきたシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素ではプロトンは細胞の外側から供給されることが示されている<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．実際に，シトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造では活性部位のGlu残基から細胞外へとつづくプロトン輸送経路が観測された<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．しかし，キノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造には細胞外と活性部位とをつなぐプロトン輸送経路を見い出すことはできなかった．代わりに，活性部位のGlu残基から細胞の内側へと延びる水分子を大量に含んだチャネル（水チャネル）が観測され，これがプロトン輸送経路として機能していることが予想された（<a href="#F2">図2</a>）．実際に，水チャネルを構成するアミノ酸残基の変異体を用いた実験や分子動力学計算の結果，水チャネルがキノール依存型一酸化窒素還元酵素におけるプロトン輸送経路としてはたらくことが示唆された．この水チャネルを形成する親水性のアミノ酸残基はシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素にはみられずキノール依存型一酸化窒素還元酵素においてよく保存されていることから，水チャネルがキノール依存型一酸化窒素還元酵素に特異的であることを強調したい．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　呼吸酵素におけるプロトン輸送経路</strong><br />
（a）好熱菌に由来するキノール依存型一酸化窒素還元酵素にみられた細胞内から活性部位へとつづく水チャネル．全体構造における水チャネルの位置とその拡大を示した．触媒反応に必要なプロトンは，細胞内から水チャネルに存在する水分子（赤色の球）を介し活性部位へと輸送されることが示唆された．<br />
（b）緑膿菌に由来するシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素（PDB ID：<a href="http://service.pdbj.org/mine/Detail2?PDBID=3o0r&#038;PAGEID=Summary" target="_blank">3O0R</a>）．触媒反応に必要なプロトンは細胞外から供給される．キノール依存型一酸化窒素還元酵素にみられた水チャネルに対応する部位は疎水的で，細胞内と活性部位をつなぐプロトン輸送経路はみられない．<br />
（c）<em>cbb</em><sub>3</sub>型呼吸鎖末端酸化酵素におけるプロトンポンプ経路（PDB ID：<a href="http://service.pdbj.org/mine/Detail2?PDBID=3mk7&#038;PAGEID=Summary" target="_blank">3MK7</a>）．細胞内からのプロトンはKチャネルを通過して活性部位へと輸送され，活性部位を経由して細胞外へと運ばれる．Kチャネルの位置はキノール依存型一酸化窒素還元酵素における水チャネルと対応する部位にみられる．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Shiro-Nature-Structural-Molecular-Biology-12.2.3-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Shiro-Nature-Structural-Molecular-Biology-12.2.3-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Shiro-Nature-Structural-Molecular-Biology-12.2.3-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>4．電子伝達</h2>
<p>　キノール類似体の存在下においてキノール依存型一酸化窒素還元酵素を結晶化させることで，電子供与体であるキノール結合部位を決定できた（PDB ID：<a href="http://service.pdbj.org/mine/Detail2?PDBID=3ayg&#038;PAGEID=Summary" target="_blank">3AYG</a>）．その結果，キノールは膜貫通領域の細胞外側における近傍に結合し，キノール依存型一酸化窒素還元酵素に特徴的なアミノ酸残基との相互作用により認識されていることがわかった．また，キノール結合部位は電子伝達の担い手であるヘム<em>b</em>から3.8Åの距離に位置しており，キノールからの電子はヘム<em>b</em>にわたされ複核中心へとうけわたされることが示された．<br />
　また，ヘム<em>b</em>とヘム<em>b</em><sub>3</sub>とを架橋するようにヘムのプロピオン酸のあいだにCa<sup>2+</sup>がみられた．Ca<sup>2+</sup>はシトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素の同じ位置にもみられ配位構造もよく一致していた<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．Ca<sup>2+</sup>に配位しているアミノ酸残基を変異させると，Ca<sup>2+</sup>含量の低下とともに酵素活性の著しい減少がみられ，Ca<sup>2+</sup>が一酸化窒素還元酵素の酵素機能に必須であることが示された．興味深いことに，Ca<sup>2+</sup>は低酸素濃度において機能する<em>cbb</em><sub>3</sub>型呼吸鎖末端酸化酵素においても同じ位置に存在する<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．しかし，好気条件においてはたらくほかの呼吸鎖末端酸化酵素ではCa<sup>2+</sup>は存在せず，その代わり，対応する位置に正電荷を持つArg残基が配置されている<a href="#R3"><sup>3,4)</sup></a>．呼吸酵素におけるCa<sup>2+</sup>やArg残基の正電荷の役割として，ヘムのあいだでの電子伝達に関与していることが推測されている．</p>
<h2>5．呼吸酵素の分子進化</h2>
<p>　1994年に，一酸化窒素還元酵素が呼吸鎖末端酸化酵素と進化的な類縁関係にあると提案されてから<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>，長きにわたりアミノ酸配列の系統解析をもとに呼吸酵素の分子進化が論じられてきた<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．キノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造が解明されたことで，系統解析により区別されるすべてのタイプの呼吸酵素の立体構造がでそろったことになる．つまり，呼吸酵素が地球環境の変化にあわせてそれ自体の構造および機能を変化させてきたその道筋を，立体構造を基盤に追跡することが可能になったといえる．<br />
　一酸化窒素還元酵素と呼吸鎖末端酸化酵素の親水性ドメインの立体構造を比較すると，2種類の一酸化窒素還元酵素および<em>cbb</em><sub>3</sub>型呼吸鎖末端酸化酵素がシトクロム<em>c</em>型の構造をもち，そのほかの呼吸鎖末端酸化酵素は銅タンパク質型の構造をもつことがわかった．また，さきに述べたように，一酸化窒素還元酵素と<em>cbb</em><sub>3</sub>型呼吸鎖末端酸化酵素のみが2つのヘムのプロピオン酸のあいだにCa<sup>2+</sup>をもつことも，親水性ドメインの構造を指標とした呼吸酵素のグループ分けと同じ結果をあたえた．このような結果は従来のアミノ酸配列を利用した系統解析からも推測されており，複数の事象が一酸化窒素還元酵素と<em>cbb</em><sub>3</sub>型呼吸鎖末端酸化酵素は進化において関連の深いことを示唆していた．<br />
　一酸化窒素還元酵素と<em>cbb</em><sub>3</sub>型呼吸鎖末端酸化酵素とが進化上の近縁種であることが示唆されたが，一酸化窒素還元酵素から<em>cbb</em><sub>3</sub>型呼吸鎖末端酸化酵素への分子進化を考えると，呼吸酵素はNO還元からO<sub>2</sub>還元へと触媒反応を変換するとともに，プロトンポンプ機能を獲得するという劇的な機能変換が起こっている．過去のプロトンポンプに関する研究から，呼吸鎖末端酸化酵素において細胞内のプロトンは活性部位である複核中心を経由して細胞外へと汲み出されるという経路（Kチャネル）が提案されている<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>（<a href="#F2">図2</a>）．一酸化窒素還元酵素はプロトンポンプ機能をもたないことが示されており，シトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造はこの通説を支持するものであった．今回，明らかにされたキノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造においても，細胞の内側と外側とをつなぐプロトンポンプ経路は確認できなかった．しかし，たいへん興味深いことに，キノール依存型一酸化窒素還元酵素で発見された水チャネルの位置は<em>cbb</em><sub>3</sub>型呼吸鎖末端酸化酵素におけるKチャネルとよく対応していた（<a href="#F2">図2</a>）．キノール依存型一酸化窒素還元酵素の水チャネルはプロトンを細胞内から活性部位へと輸送する機能をもっており，いわば，プロトンポンプの“試作品”のような機能をもっているといえた．このことは，呼吸酵素がどのようにしてプロトンポンプ機能を獲得するにいたったのか考えるうえで重要な手がかりになるだろう．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　キノール依存型一酸化窒素還元酵素の結晶構造が決定されたことで呼吸酵素の立体構造が勢ぞろいし，立体構造を基盤とした分子進化に関する議論が可能になった．とくに，キノール依存型一酸化窒素還元酵素において細胞内側から活性部位へとつづく水チャネルが発見され，呼吸酵素におけるプロトンポンプ機能の獲得機構に関する新たな知見を得た意義は大きい．今後，結晶構造から得られた情報をもとに，さまざまな実験手法や解析手段を駆使することで呼吸酵素の分子進化のさらなる理解につながっていくであろう．呼吸酵素の分子進化に関する研究は，いま，新たな幕開けをむかえようとしている．<br />
　また，筆者らは，呼吸酵素の分子進化という点に着目して一酸化窒素還元酵素に関する研究を展開してきたが，シトクロム<em>c</em>依存型一酸化窒素還元酵素およびキノール依存型一酸化窒素還元酵素と2つの一酸化窒素還元酵素の立体構造が明らかになったことは多方面の分野への貢献が期待できる．たとえば，一酸化窒素還元酵素は脱窒細菌だけではなくいくつかの病原細菌にもみられ，マクロファージなど哺乳類の免疫系が産生するNOを分解することで病原細菌の生存に必須である<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>．このことは，一酸化窒素還元酵素の阻害剤が薬剤として有効な可能性を示唆しており，その立体構造を利用した薬剤の分子設計に期待がかかる．また，一酸化窒素還元酵素の触媒反応はN-N結合の形成やN-O結合の開裂といった基礎化学にとって興味深い要素を含んでいる．これまでに明らかにされた休止状態の立体構造にくわえて，配位子結合型などの構造解析を進めることで一酸化窒素還元酵素により行われる化学反応の詳細が明らかになるであろう．さらに，一酸化窒素還元酵素の反応生成物であるN<sub>2</sub>Oはオゾン層破壊物質であるとともに強力な温室効果ガスであり<a href="#R9"><sup>9)</sup></a>，環境科学の観点からも一酸化窒素還元酵素は注目をあつめている．地球上でのN<sub>2</sub>Oの生成量の約70％が微生物による窒素酸化物の分解，つまりは，一酸化窒素還元酵素のはたらきに由来しており，この酵素が行う触媒反応の詳細を理解することは今後の地球環境を考えていくうえでも重要な課題である．このように，一酸化窒素還元酵素の立体構造が解明されたことは呼吸酵素の分子進化の解明に一石を投じただけでなく，さまざまな分野における研究の進展に役立つものであると信じている．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Saraste, M. &#038; Castresana, J.</span>: <span class="ti">Cytochrome oxidase evolved by tinkering with denitrification enzymes.</span> <span class='so'>FEBS Lett., 341, 1-4 (1994)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8137905" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Ducluzeau, A. L., van Lis, R., Duval, S. et al.</span>: <span class="ti">Was nitric oxide the first deep electron sink?</span> <span class='so'>Trends. Biochem. Sci., 34, 9-15 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19008107" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Tsukihara, T., Aoyama, H., Yamashita, E. et al.</span>: <span class="ti">The whole structure of the 13-subunit oxidized cytochrome c oxidase at 2.8Å.</span> <span class='so'>Science, 272, 1136-1144 (1996)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8638158" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Soulimane, T., Buse, G., Bourenkov, G. P. et al.</span>: <span class="ti">Structure and mechanism of the aberrant <em>ba</em><sub>3</sub>-cytochrome <em>c</em> oxidase from <em>Thermus thermophilus</em>.</span> <span class='so'>EMBO J., 19, 1766-1776 (2000)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10775261" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Buschmann, S., Warkentin, E., Xie, H. et al.</span>: <span class="ti">The structure of <em>cbb</em><sub>3</sub> cytochrome oxidase provides insights into proton pumping.</span> <span class='so'>Science, 329, 327-330 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20576851" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Hino, T., Matsumoto, Y., Nagano, S. et al.</span>: <span class="ti">Structural basis of biological N<sub>2</sub>O generation by bacterial nitric oxide reductase.</span> <span class='so'>Science, 330, 1666-1670 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21109633" target="_blank">PubMed</a>] [<a href="http://first.lifesciencedb.jp/archives/1706" target="_blank">新刊論文レビュー</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Reimann, J., Flock, U., Lepp, H. et al.</span>: <span class="ti">A pathway for protons in nitric oxide reductase from <em>Paracoccus denitrificans</em>.</span> <span class='so'>Biochim. Biophys. Acta, 1767, 362-373 (2007)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17466934" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R8"><span class='au'>Stevanin, T. M., Moir, J. W. &#038; Read, R. C.</span>: <span class="ti">Nitric oxide detoxification systems enhance survival of <em>Neisseria meningitidis</em> in human macrophages and in nasopharyngeal mucosa.</span> <span class='so'>Infect. Immun., 73, 3322-3329 (2005)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15908358" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R9"><span class='au'>Ravishankara, A. R., Daniel, J. S. &#038; Portmann, R. W.</span>: <span class="ti">Nitrous oxide (N<sub>2</sub>O): the dominant ozone-depleting substance emitted in the 21st century.</span> <span class='so'>Science, 326, 123-125 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19713491" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">松本 悠史（Yushi Matsumoto）</span><br />
九州大学生体防御医学研究所 研究員．</p>
<p><strong>當舎 武彦（Takehiko Tosha）</strong><br />
理化学研究所放射光科学総合研究センター 研究員．</p>
<p><strong>城  宜嗣（Yoshitsugu Shiro）</strong><br />
略歴：1985年 京都大学大学院工学研究科 修了，1987年 理化学研究所 研究員を経て，2000年より同 主任研究員．<br />
研究テーマ：金属酵素・金属タンパク質の構造生物化学．<br />
抱負：生体内の微量金属のセンシング・輸送などを，タンパク質構造を基盤に分子レベルで理解したい．金属酵素の分子機構の化学的な理解を深めたい．<br />
研究室URL：<a href="http://www.riken.jp/biometal/index.htm" target="_blank">http://www.riken.jp/biometal/index.htm</a>
</div>
<p>© 2012 松本悠史・當舎武彦・城 宜嗣 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		<title>6-硫酸化コンドロイチンの過剰な発現により大脳皮質の可塑性が維持される</title>
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		<pubDate>Tue, 07 Feb 2012 01:00:54 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Nature Neuroscience]]></category>
		<category><![CDATA[可塑性]]></category>
		<category><![CDATA[神経科学]]></category>
		<category><![CDATA[糖鎖]]></category>
		<category><![CDATA[細胞外マトリックス]]></category>

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		<description><![CDATA[宮田真路・北川裕之 （神戸薬科大学 生化学研究室） email：北川裕之 Persistent cortical plasticity by upregulation of chondroitin 6-sulfation. Shinji Miyata, Yukio Komatsu, Yumiko Yoshimura, Choji Taya, Hiroshi Kitagawa Nature Neuroscience, DOI: 10.1038/nn.3023 要 約 　可塑性は臨界期とよばれる生後初期の一定期間にのみ強くみられるが，成体になると可塑性の低下する機構はよくわかっていない．筆者らは，脳の主要な細胞外マトリックスの成分であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのもつコンドロイチン硫酸鎖における6-硫酸化に対する4-硫酸化の比率が生後に増加することで臨界期の終了がもたらされることを見い出した．6-硫酸化コンドロイチンを過剰に発現することで4-硫酸化コンドロイチンの比率を低く保ったトランスジェニックマウスは，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲に形成されるペリニューロナルネットに異常がみられた．パルブアルブミン陽性抑制性ニューロン自体が生合成する4-硫酸化コンドロイチンの増加は，その成熟を促進させるホメオタンパク質Otx2の蓄積に必要であることがわかった．さらに，6-硫酸化コンドロイチンを過剰に発現するトランスジェニックマウスのパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは電気生理学的な性質において未熟であることを示した．以上のことから，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンによりパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの成熟が制御され，その結果，臨界期の時期が制御されていることが明らかになった． はじめに 　一般に，子どもの脳は大人の脳に比べ柔軟だといわれる．言語の習得が好例で，幼少期での外国語の学習は大人に比べ容易である．可塑性とは外界の刺激や経験により神経回路が構造的および機能的に再編成される性質をさすが，この可塑性は臨界期とよばれる生後初期の一定期間にのみ高くそののちには低下する．大脳皮質の視覚野における眼優位性の可塑性はこのような臨界期における可塑性の代表例として研究が進んでいる1)．視覚野の両眼性の領域に存在するニューロンは両方の眼から視覚入力を受け取っている．しかし，短期間のあいだ片眼を遮蔽するとニューロンは遮蔽されたほうの眼への応答性を低下させ開いているほうの眼への応答性を上昇させる．この可塑性はマウスでは生後19～32日の期間にのみ顕著にみられるが成体では低下する2)．多くの研究から，興奮性と抑制性の神経回路のバランスにより眼優位性の可塑性の臨界期の時期が制御されていることが示されている．最近ではとくに，抑制性ニューロンの一種であるパルブアルブミン陽性ニューロンの成熟が眼優位性の可塑性の制御に重要であると考えられている1)． 　コンドロイチン硫酸プロテオグリカンはコアタンパク質にグリコサミノグリカンのひとつであるコンドロイチン硫酸鎖が1本以上共有結合した糖タンパク質で，中枢神経系の主要な細胞外マトリックスの成分である．大脳皮質の発生にともないコンドロイチン硫酸プロテオグリカンはパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲に濃縮し，ペリニューロナルネットとよばれるシナプスをとりかこむ特殊な細胞外マトリックスを形成する．興味深いことに，臨界期の終了した成体の脳にコンドロイチナーゼを注入しコンドロイチン硫酸鎖を分解すると眼優位性の可塑性が回復する3)．コンドロイチン硫酸鎖は損傷した神経軸索の再生をさまたげることも知られており，これまで，コンドロイチン硫酸鎖は可塑性を非特異的に阻害する物理的な障壁であるものと認識されていた4)．しかし，コンドロイチン硫酸鎖は可塑性の高い臨界期の脳にも豊富に存在しており，すべてのコンドロイチン硫酸鎖が可塑性を阻害しているとは考えにくい． 　最近の研究から，コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの機能はコンドロイチン硫酸鎖の特異的な硫酸化修飾により特徴づけられる“硫酸化コード”に書き込まれていると提唱されている．コンドロイチン硫酸鎖はグルクロン酸とN-アセチルガラクトサミンの二糖が数十回も交互にくり返し重合した直鎖状の糖鎖を基本骨格にもつ．生合成の過程で，N-アセチルガラクトサミン残基の大部分はコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1もしくはコンドロイチン4-O-硫酸基転移酵素-1により硫酸化され6-硫酸化コンドロイチンもしくは4-硫酸化コンドロイチンとなる（図1）．筆者らの研究室では，以前に，特定の硫酸化パターンをもつコンドロイチン硫酸鎖がニューロンの表面にあるコンタクチン-1受容体との特異的な相互作用を介して神経突起の伸長を促進することを明らかにしている5)．これまで，おもにin vitroでの研究からコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンの重要性が示されてきたが，生体における機能はよくわかっていない．コンドロイチナーゼを用いたこれまでの実験では硫酸化パターンにかかわらずすべてのコンドロイチン硫酸鎖を分解しているので，特定の硫酸化パターンの機能はみすごされてきた可能性もある．筆者らは，脳の発生にともないコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンが変動することに着目し6)，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンにより臨界期の可塑性が制御されているのではないかと考えた．そこで，この仮説を検証するため，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1を過剰に発現するトランスジェニックマウスを作製した． 図1　コンドロイチン硫酸鎖の構造 コンドロイチン硫酸鎖はコアタンパク質と結合しコンドロイチン硫酸プロテオグリカンとして存在する．コンドロイチン硫酸鎖を構成するN-アセチルガラクトサミン残基の6位と4位がそれぞれコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1とコンドロイチン4-O-硫酸基転移酵素-1により硫酸化修飾をうけることで，6-硫酸化コンドロイチンと4-硫酸化コンドロイチンが合成される． [Download] 1．マウスの脳の発生にともなうコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンの変動 　まず，マウスの脳の発生にともないコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンがどのように変化するのかを解析した．野生型マウスでは6-硫酸化コンドロイチンは発生の初期に多く存在し発生の進行にともない減少した．一方，4-硫酸化コンドロイチンは発生の進行にともない増加し，成体ではコンドロイチン硫酸鎖の全体の90％以上が4-硫酸化コンドロイチンであった．その結果，6-硫酸化コンドロイチンに対する4-硫酸化コンドロイチンの比率は臨界期をはさんで顕著に増加することがわかった．コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスの脳では野生型マウスと比べ6-硫酸化コンドロイチンが増加し4-硫酸化コンドロイチンが減少していた．その結果，野生型マウスと比べ6-硫酸化コンドロイチンに対する4-硫酸化コンドロイチンの割合が顕著に低下しており成体でも未熟な硫酸化パターンを維持していた．コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンの変動に対しコンドロイチン硫酸鎖の総量は発生の進行にともない一定に保たれており，野生型マウスとコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスとで差はなかった． 2．コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスは成体でも眼優位の可塑性が維持される 　そこで，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンが眼優位性の可塑性に影響するのかどうか検討した．視覚野の両眼視領域において視覚刺激により誘発される電位を記録すると，同側眼からの視覚入力に比べ対側眼からの視覚入力に2倍ほど強く応答する．生後24～26日の臨界期のあいだに対側眼を3～6日間にわたり遮蔽すると対側眼と同側眼との視覚誘発電位の比率は約1にまで低下する．この低下は2つの時間的に異なった機構によりもたらされていた．まず，遮蔽ののち3日までに遮蔽された対側眼への応答が減弱し，遮蔽ののち6日までに遮蔽されていない同側眼への応答が増強した．臨界期における眼優位性の可塑性は野生型マウスとコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスとで同様にみられた． 　つぎに，臨界期の終了した成体（生後60～90日）における単眼の遮蔽の影響を調べた．野生型マウスでは可塑性が低下しており3日間の単眼の遮蔽により対側眼と同側眼との視覚誘発電位の比率は変化しなかったが，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスは有意な低下を示した．成体の野生型マウスでも6日間にわたり単眼を遮蔽すると対側眼と同側眼との視覚誘発電位の比率がわずかに低下したが，この反応は遮蔽されていない同側眼への応答の増強によりもたらされていた．つまり，遮蔽された眼への応答性の低下は臨界期に限定しており成体ではみられなかった．一方，成体のコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでは6日間の単眼の遮蔽により同側眼への応答が増強したことにくわえ，遮蔽された対側眼への応答の減弱もみられた．よって，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスは通常の臨界期が終了した成体においても臨界期と同様の眼優位性の可塑性を維持していることが明らかになった． 3．コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスにおけるペリニューロナルネットの形成 　つぎに，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンがパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲に形成されるペリニューロナルネットにあたえる影響を検討した．ペリニューロナルネットは古典的なマーカーであるWFAレクチンにより染色され，成体の野生型マウスの視覚野では約90％のパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンがWFAレクチン陽性を示すペリニューロナルネットによりおおわれていた．一方，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではWFAレクチン陽性を示すペリニューロナルネットの数は有意に減少していたが，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの数自体は野生型マウスと同じ程度であった．さらに，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲にペリニューロナルネットが形成されないわけではなく，WFAレクチン陽性のペリニューロナルネットとは異なるペリニューロナルネットが形成されていることがわかった．つまり，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスの一部のパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲には6-硫酸化コンドロイチンを認識するCS56抗体により染色されるペリニューロナルネットが形成されており，このCS56抗体陽性を示すペリニューロナルネットはWFAレクチン陽性を示すペリニューロナルネットとは共局在しなかった．以上の結果から，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1を過剰に発現させることによりパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲のWFAレクチン陽性のペリニューロナルネットの形成は低下し，6-硫酸化コンドロイチンに富むCS56抗体陽性のペリニューロナルネットが形成されることがわかった． 4．ペリニューロナルネットの硫酸化パターンによりホメオタンパク質Otx2の蓄積が制御されている 　それでは，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲のペリニューロナルネットの硫酸化パターンが変化することで，なぜ，臨界期の可塑性が影響をうけるのであろうか？　パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの成熟には網膜と外側膝状体で合成されたホメオタンパク質Otx2が軸索内を輸送されて視覚野まで到達し，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンに選択的に蓄積されることが必要である7)．しかし，外側膝状体から視覚野に投射する軸索の末端のうち，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンを含めた抑制性ニューロンとシナプスを形成するのはわずか20％であり，どのようにしてOtx2がパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンに選択的に蓄積するかは不明であった．そこで，ペリニューロナルネットの硫酸化パターンがOtx2の取り込みに関与しているのではないかと考えた．これまでの報告どおり，Otx2遺伝子をコードするmRNAは網膜と外側膝状体に発現しており，その発現量は野生型マウスとコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスとで違いはなかったが，視覚野における発現は遺伝子型にかかわらず検出限界以下であった．特異的な抗体を用いて視覚野におけるOtx2タンパク質の局在を解析したところ，野生型マウスでは多くのパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンにOtx2の蓄積がみられたが，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではOtx2に陽性の細胞数が顕著に減少していた．さらに，野生型マウスではOtx2の蓄積がみられたパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンのほとんどはWFAレクチン陽性のペリニューロナルネットによりおおわれていたが，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでみられたCS56抗体陽性のペリニューロナルネットにおおわれたパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンにはOtx2は蓄積していないことがわかった．詳細な形態解析の結果，WFAレクチン陽性のペリニューロナルネットは網目状の構造をもつのに対し，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスに存在するCS56抗体陽性のペリニューロナルネットはしっかりとした網目構造を形成できないことが示された．野生型マウスでは外側膝状体から視覚野のパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンに投射するシナプスはWFAレクチン陽性のペリニューロナルネットの形成する網目構造により強固におおわれているのに対し，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではこれらのシナプスは網目構造におおわれてはいなかった．この結果から，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでは6-硫酸化コンドロイチンに富むCS56抗体陽性のペリニューロナルネットが形成されるが，このペリニューロナルネットはパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲のシナプスを強固におおいかこむことはできず，軸索の末端から分泌されたOtx2は拡散してしまいパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンへの蓄積は低下してしまうものと考えられた（図2）． 図2　6-硫酸化コンドロイチンの増加により成体でも可塑性が維持される （a）成体の野生型マウスでは4-硫酸化コンドロイチンが増加し，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンのシナプスの周囲にWFAレクチン陽性のペリニューロナルネットが形成される．シナプスがペリニューロナルネットにおおわれることでOtx2の蓄積が促進され，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは成熟する．その結果，臨界期は終了し可塑性は失われる． （b）コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでは6-硫酸化コンドロイチンを含むCS56抗体陽性のペリニューロナルネットはシナプスを強固にとりかこむことができず，Otx2は拡散してしまいパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは未熟なままとなる．その結果，成体でも可塑性は維持される． 青色の丸印：4-硫酸化コンドロイチン，黄色の丸印：6-硫酸化コンドロイチン． [Download] 5．パルブアルブミン陽性抑制性ニューロン自体が生合成する6-硫酸化コンドロイチンによりペリニューロナルネットの構造は変化する 　コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスはβアクチン遺伝子プロモーターの下流においてコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1遺伝子を発現しているので，すべての細胞においてコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1が過剰に発現している．そのため，どの細胞が生合成するコンドロイチン硫酸鎖によりペリニューロナルネットの構造が変化しているのかは不明であった．そこで，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンにおいて選択的にコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンを改変することを試みた．大脳皮質の興奮性細胞は大脳皮質の脳室帯で誕生し放射状に移動するのに対し，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンを含めた抑制性ニューロンは大脳の基底核原基で誕生し接線の方向に長い距離を移動して大脳皮質に進入する8)．そこで，子宮内エレクトロポレーション法を用いて9)，胎生12日目の野生型マウスの大脳の基底核原基にコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1遺伝子の発現プラスミドを導入した．そののち，生後30日において視覚野の免疫染色を行ったところ，予想どおり，一部のパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンに選択的にコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1遺伝子が導入されていることがわかった．さらに，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1遺伝子が導入されたパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲にのみCS56抗体陽性のペリニューロナルネットが形成されており，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1遺伝子の導入されていないパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲にはCS56抗体陽性のペリニューロナルネットは形成されなかった．また，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1遺伝子が導入されCS56抗体陽性のペリニューロナルネットでおおわれたパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンにはOtx2は蓄積していなかった．以上の結果から，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロン自体が生合成するコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンによりペリニューロナルネットの構造とOtx2の取り込みとが制御されていることがわかった． 6．コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスにおけるパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの電気生理学的な性質 　最後に，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンがパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの電気生理学的な性質にどのような影響をあたえているのか解析した．パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは電気生理学的な性質からfast-spiking細胞ともよばれ，電流の注入によりスパイク幅の短い活動電位を高頻度で発生させる．この特徴的な性質はパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの生後の成熟にともない獲得される．コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスのパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンでは発火の頻度は正常だがスパイク幅が野生型マウスに比べ有意に長かった．また，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの静止膜の電位も野生型マウスに比べ脱分極側に変化しており，これらの電気生理学的な特性は未熟なパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの性質と類似していた．そこで，コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでは実際に抑制性の神経回路の効果が低下しているのかどうか視覚野ニューロンにおける視覚応答性を比較することで検討した．通常，視覚野ニューロンは視覚刺激の提示ののちすみやかに発火を停止するが，抑制性の神経回路の効果が弱いと視覚刺激の提示ののちも発火が持続することが知られている．コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスは野生型マウスに比べ視覚刺激の提示ののちの発火が持続していた．以上の結果から，6-硫酸化コンドロイチンの過剰な発現によりパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは電気生理学的な性質について成熟できず，抑制性の神経回路の効果が低下していることがわかった． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>宮田真路・北川裕之</strong><br />
（神戸薬科大学 生化学研究室）<br />
email：<a href="mailto:kitagawa@kobepharma-u.ac.jp">北川裕之</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Persistent cortical plasticity by upregulation of chondroitin 6-sulfation.</span><br />
<span class="au">Shinji Miyata, Yukio Komatsu, Yumiko Yoshimura, Choji Taya, Hiroshi Kitagawa</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22246436" target="_blank"><em>Nature Neuroscience</em>, DOI: 10.1038/nn.3023</a></span></div>
<p><span id="more-4319"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　可塑性は臨界期とよばれる生後初期の一定期間にのみ強くみられるが，成体になると可塑性の低下する機構はよくわかっていない．筆者らは，脳の主要な細胞外マトリックスの成分であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのもつコンドロイチン硫酸鎖における6-硫酸化に対する4-硫酸化の比率が生後に増加することで臨界期の終了がもたらされることを見い出した．6-硫酸化コンドロイチンを過剰に発現することで4-硫酸化コンドロイチンの比率を低く保ったトランスジェニックマウスは，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲に形成されるペリニューロナルネットに異常がみられた．パルブアルブミン陽性抑制性ニューロン自体が生合成する4-硫酸化コンドロイチンの増加は，その成熟を促進させるホメオタンパク質Otx2の蓄積に必要であることがわかった．さらに，6-硫酸化コンドロイチンを過剰に発現するトランスジェニックマウスのパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは電気生理学的な性質において未熟であることを示した．以上のことから，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンによりパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの成熟が制御され，その結果，臨界期の時期が制御されていることが明らかになった．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　一般に，子どもの脳は大人の脳に比べ柔軟だといわれる．言語の習得が好例で，幼少期での外国語の学習は大人に比べ容易である．可塑性とは外界の刺激や経験により神経回路が構造的および機能的に再編成される性質をさすが，この可塑性は臨界期とよばれる生後初期の一定期間にのみ高くそののちには低下する．大脳皮質の視覚野における眼優位性の可塑性はこのような臨界期における可塑性の代表例として研究が進んでいる<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．視覚野の両眼性の領域に存在するニューロンは両方の眼から視覚入力を受け取っている．しかし，短期間のあいだ片眼を遮蔽するとニューロンは遮蔽されたほうの眼への応答性を低下させ開いているほうの眼への応答性を上昇させる．この可塑性はマウスでは生後19～32日の期間にのみ顕著にみられるが成体では低下する<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．多くの研究から，興奮性と抑制性の神経回路のバランスにより眼優位性の可塑性の臨界期の時期が制御されていることが示されている．最近ではとくに，抑制性ニューロンの一種であるパルブアルブミン陽性ニューロンの成熟が眼優位性の可塑性の制御に重要であると考えられている<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．<br />
　コンドロイチン硫酸プロテオグリカンはコアタンパク質にグリコサミノグリカンのひとつであるコンドロイチン硫酸鎖が1本以上共有結合した糖タンパク質で，中枢神経系の主要な細胞外マトリックスの成分である．大脳皮質の発生にともないコンドロイチン硫酸プロテオグリカンはパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲に濃縮し，ペリニューロナルネットとよばれるシナプスをとりかこむ特殊な細胞外マトリックスを形成する．興味深いことに，臨界期の終了した成体の脳にコンドロイチナーゼを注入しコンドロイチン硫酸鎖を分解すると眼優位性の可塑性が回復する<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>．コンドロイチン硫酸鎖は損傷した神経軸索の再生をさまたげることも知られており，これまで，コンドロイチン硫酸鎖は可塑性を非特異的に阻害する物理的な障壁であるものと認識されていた<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>．しかし，コンドロイチン硫酸鎖は可塑性の高い臨界期の脳にも豊富に存在しており，すべてのコンドロイチン硫酸鎖が可塑性を阻害しているとは考えにくい．<br />
　最近の研究から，コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの機能はコンドロイチン硫酸鎖の特異的な硫酸化修飾により特徴づけられる“硫酸化コード”に書き込まれていると提唱されている．コンドロイチン硫酸鎖はグルクロン酸と<em>N</em>-アセチルガラクトサミンの二糖が数十回も交互にくり返し重合した直鎖状の糖鎖を基本骨格にもつ．生合成の過程で，<em>N</em>-アセチルガラクトサミン残基の大部分はコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1もしくはコンドロイチン4-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1により硫酸化され6-硫酸化コンドロイチンもしくは4-硫酸化コンドロイチンとなる（<a href="#F1">図1</a>）．筆者らの研究室では，以前に，特定の硫酸化パターンをもつコンドロイチン硫酸鎖がニューロンの表面にあるコンタクチン-1受容体との特異的な相互作用を介して神経突起の伸長を促進することを明らかにしている<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．これまで，おもに<em>in vitro</em>での研究からコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンの重要性が示されてきたが，生体における機能はよくわかっていない．コンドロイチナーゼを用いたこれまでの実験では硫酸化パターンにかかわらずすべてのコンドロイチン硫酸鎖を分解しているので，特定の硫酸化パターンの機能はみすごされてきた可能性もある．筆者らは，脳の発生にともないコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンが変動することに着目し<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンにより臨界期の可塑性が制御されているのではないかと考えた．そこで，この仮説を検証するため，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1を過剰に発現するトランスジェニックマウスを作製した．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　コンドロイチン硫酸鎖の構造</strong><br />
コンドロイチン硫酸鎖はコアタンパク質と結合しコンドロイチン硫酸プロテオグリカンとして存在する．コンドロイチン硫酸鎖を構成する<em>N</em>-アセチルガラクトサミン残基の6位と4位がそれぞれコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1とコンドロイチン4-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1により硫酸化修飾をうけることで，6-硫酸化コンドロイチンと4-硫酸化コンドロイチンが合成される．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kitagawa-Nature-Neuroscience-12.2.28-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kitagawa-Nature-Neuroscience-12.2.28-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kitagawa-Nature-Neuroscience-12.2.28-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>1．マウスの脳の発生にともなうコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンの変動</h2>
<p>　まず，マウスの脳の発生にともないコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンがどのように変化するのかを解析した．野生型マウスでは6-硫酸化コンドロイチンは発生の初期に多く存在し発生の進行にともない減少した．一方，4-硫酸化コンドロイチンは発生の進行にともない増加し，成体ではコンドロイチン硫酸鎖の全体の90％以上が4-硫酸化コンドロイチンであった．その結果，6-硫酸化コンドロイチンに対する4-硫酸化コンドロイチンの比率は臨界期をはさんで顕著に増加することがわかった．コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスの脳では野生型マウスと比べ6-硫酸化コンドロイチンが増加し4-硫酸化コンドロイチンが減少していた．その結果，野生型マウスと比べ6-硫酸化コンドロイチンに対する4-硫酸化コンドロイチンの割合が顕著に低下しており成体でも未熟な硫酸化パターンを維持していた．コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンの変動に対しコンドロイチン硫酸鎖の総量は発生の進行にともない一定に保たれており，野生型マウスとコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスとで差はなかった．</p>
<h2>2．コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスは成体でも眼優位の可塑性が維持される</h2>
<p>　そこで，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンが眼優位性の可塑性に影響するのかどうか検討した．視覚野の両眼視領域において視覚刺激により誘発される電位を記録すると，同側眼からの視覚入力に比べ対側眼からの視覚入力に2倍ほど強く応答する．生後24～26日の臨界期のあいだに対側眼を3～6日間にわたり遮蔽すると対側眼と同側眼との視覚誘発電位の比率は約1にまで低下する．この低下は2つの時間的に異なった機構によりもたらされていた．まず，遮蔽ののち3日までに遮蔽された対側眼への応答が減弱し，遮蔽ののち6日までに遮蔽されていない同側眼への応答が増強した．臨界期における眼優位性の可塑性は野生型マウスとコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスとで同様にみられた．<br />
　つぎに，臨界期の終了した成体（生後60～90日）における単眼の遮蔽の影響を調べた．野生型マウスでは可塑性が低下しており3日間の単眼の遮蔽により対側眼と同側眼との視覚誘発電位の比率は変化しなかったが，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスは有意な低下を示した．成体の野生型マウスでも6日間にわたり単眼を遮蔽すると対側眼と同側眼との視覚誘発電位の比率がわずかに低下したが，この反応は遮蔽されていない同側眼への応答の増強によりもたらされていた．つまり，遮蔽された眼への応答性の低下は臨界期に限定しており成体ではみられなかった．一方，成体のコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでは6日間の単眼の遮蔽により同側眼への応答が増強したことにくわえ，遮蔽された対側眼への応答の減弱もみられた．よって，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスは通常の臨界期が終了した成体においても臨界期と同様の眼優位性の可塑性を維持していることが明らかになった．</p>
<h2>3．コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスにおけるペリニューロナルネットの形成</h2>
<p>　つぎに，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンがパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲に形成されるペリニューロナルネットにあたえる影響を検討した．ペリニューロナルネットは古典的なマーカーであるWFAレクチンにより染色され，成体の野生型マウスの視覚野では約90％のパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンがWFAレクチン陽性を示すペリニューロナルネットによりおおわれていた．一方，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではWFAレクチン陽性を示すペリニューロナルネットの数は有意に減少していたが，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの数自体は野生型マウスと同じ程度であった．さらに，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲にペリニューロナルネットが形成されないわけではなく，WFAレクチン陽性のペリニューロナルネットとは異なるペリニューロナルネットが形成されていることがわかった．つまり，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスの一部のパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲には6-硫酸化コンドロイチンを認識するCS56抗体により染色されるペリニューロナルネットが形成されており，このCS56抗体陽性を示すペリニューロナルネットはWFAレクチン陽性を示すペリニューロナルネットとは共局在しなかった．以上の結果から，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1を過剰に発現させることによりパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲のWFAレクチン陽性のペリニューロナルネットの形成は低下し，6-硫酸化コンドロイチンに富むCS56抗体陽性のペリニューロナルネットが形成されることがわかった．</p>
<h2>4．ペリニューロナルネットの硫酸化パターンによりホメオタンパク質Otx2の蓄積が制御されている</h2>
<p>　それでは，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲のペリニューロナルネットの硫酸化パターンが変化することで，なぜ，臨界期の可塑性が影響をうけるのであろうか？　パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの成熟には網膜と外側膝状体で合成されたホメオタンパク質Otx2が軸索内を輸送されて視覚野まで到達し，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンに選択的に蓄積されることが必要である<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．しかし，外側膝状体から視覚野に投射する軸索の末端のうち，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンを含めた抑制性ニューロンとシナプスを形成するのはわずか20％であり，どのようにしてOtx2がパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンに選択的に蓄積するかは不明であった．そこで，ペリニューロナルネットの硫酸化パターンがOtx2の取り込みに関与しているのではないかと考えた．これまでの報告どおり，<em>Otx2</em>遺伝子をコードするmRNAは網膜と外側膝状体に発現しており，その発現量は野生型マウスとコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスとで違いはなかったが，視覚野における発現は遺伝子型にかかわらず検出限界以下であった．特異的な抗体を用いて視覚野におけるOtx2タンパク質の局在を解析したところ，野生型マウスでは多くのパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンにOtx2の蓄積がみられたが，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではOtx2に陽性の細胞数が顕著に減少していた．さらに，野生型マウスではOtx2の蓄積がみられたパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンのほとんどはWFAレクチン陽性のペリニューロナルネットによりおおわれていたが，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでみられたCS56抗体陽性のペリニューロナルネットにおおわれたパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンにはOtx2は蓄積していないことがわかった．詳細な形態解析の結果，WFAレクチン陽性のペリニューロナルネットは網目状の構造をもつのに対し，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスに存在するCS56抗体陽性のペリニューロナルネットはしっかりとした網目構造を形成できないことが示された．野生型マウスでは外側膝状体から視覚野のパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンに投射するシナプスはWFAレクチン陽性のペリニューロナルネットの形成する網目構造により強固におおわれているのに対し，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではこれらのシナプスは網目構造におおわれてはいなかった．この結果から，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでは6-硫酸化コンドロイチンに富むCS56抗体陽性のペリニューロナルネットが形成されるが，このペリニューロナルネットはパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲のシナプスを強固におおいかこむことはできず，軸索の末端から分泌されたOtx2は拡散してしまいパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンへの蓄積は低下してしまうものと考えられた（<a href="#F2">図2</a>）．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　6-硫酸化コンドロイチンの増加により成体でも可塑性が維持される</strong><br />
（a）成体の野生型マウスでは4-硫酸化コンドロイチンが増加し，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンのシナプスの周囲にWFAレクチン陽性のペリニューロナルネットが形成される．シナプスがペリニューロナルネットにおおわれることでOtx2の蓄積が促進され，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは成熟する．その結果，臨界期は終了し可塑性は失われる．<br />
（b）コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでは6-硫酸化コンドロイチンを含むCS56抗体陽性のペリニューロナルネットはシナプスを強固にとりかこむことができず，Otx2は拡散してしまいパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは未熟なままとなる．その結果，成体でも可塑性は維持される．<br />
青色の丸印：4-硫酸化コンドロイチン，黄色の丸印：6-硫酸化コンドロイチン．<br />
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<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kitagawa-Nature-Neuroscience-12.2.28-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kitagawa-Nature-Neuroscience-12.2.28-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>5．パルブアルブミン陽性抑制性ニューロン自体が生合成する6-硫酸化コンドロイチンによりペリニューロナルネットの構造は変化する</h2>
<p>　コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスはβアクチン遺伝子プロモーターの下流においてコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1遺伝子を発現しているので，すべての細胞においてコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1が過剰に発現している．そのため，どの細胞が生合成するコンドロイチン硫酸鎖によりペリニューロナルネットの構造が変化しているのかは不明であった．そこで，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンにおいて選択的にコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンを改変することを試みた．大脳皮質の興奮性細胞は大脳皮質の脳室帯で誕生し放射状に移動するのに対し，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンを含めた抑制性ニューロンは大脳の基底核原基で誕生し接線の方向に長い距離を移動して大脳皮質に進入する<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>．そこで，子宮内エレクトロポレーション法を用いて<a href="#R9"><sup>9)</sup></a>，胎生12日目の野生型マウスの大脳の基底核原基にコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1遺伝子の発現プラスミドを導入した．そののち，生後30日において視覚野の免疫染色を行ったところ，予想どおり，一部のパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンに選択的にコンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1遺伝子が導入されていることがわかった．さらに，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1遺伝子が導入されたパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲にのみCS56抗体陽性のペリニューロナルネットが形成されており，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1遺伝子の導入されていないパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの周囲にはCS56抗体陽性のペリニューロナルネットは形成されなかった．また，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1遺伝子が導入されCS56抗体陽性のペリニューロナルネットでおおわれたパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンにはOtx2は蓄積していなかった．以上の結果から，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロン自体が生合成するコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンによりペリニューロナルネットの構造とOtx2の取り込みとが制御されていることがわかった．</p>
<h2>6．コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスにおけるパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの電気生理学的な性質</h2>
<p>　最後に，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンがパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの電気生理学的な性質にどのような影響をあたえているのか解析した．パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは電気生理学的な性質からfast-spiking細胞ともよばれ，電流の注入によりスパイク幅の短い活動電位を高頻度で発生させる．この特徴的な性質はパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの生後の成熟にともない獲得される．コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスのパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンでは発火の頻度は正常だがスパイク幅が野生型マウスに比べ有意に長かった．また，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスではパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの静止膜の電位も野生型マウスに比べ脱分極側に変化しており，これらの電気生理学的な特性は未熟なパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの性質と類似していた．そこで，コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスでは実際に抑制性の神経回路の効果が低下しているのかどうか視覚野ニューロンにおける視覚応答性を比較することで検討した．通常，視覚野ニューロンは視覚刺激の提示ののちすみやかに発火を停止するが，抑制性の神経回路の効果が弱いと視覚刺激の提示ののちも発火が持続することが知られている．コンドロイチン6-<em>O</em>-硫酸基転移酵素-1トランスジェニックマウスは野生型マウスに比べ視覚刺激の提示ののちの発火が持続していた．以上の結果から，6-硫酸化コンドロイチンの過剰な発現によりパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンは電気生理学的な性質について成熟できず，抑制性の神経回路の効果が低下していることがわかった．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　これまでの研究から，臨界期の終了をもたらす分子ブレーキには機能的なブレーキと構造的なブレーキの2種類が存在することが知られている<a href="#R10"><sup>10)</sup></a>．機能的なブレーキは興奮性と抑制性の神経回路のバランスを制御することで可塑性を制御する．一方，コンドロイチン硫酸鎖のような構造的なブレーキは軸索の伸長に対する物理的な障壁となることで非特異的に可塑性を阻害するものと考えられてきた．しかし，今回の筆者らの研究により，コンドロイチン硫酸鎖は単なる物理的な障壁ではなく，コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンに依存的にパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの機能を制御することで臨界期の時期を制御していることが明らかになった．脊椎の損傷ののちコンドロイチナーゼを注入することで軸索は再生し機能的に回復することから，コンドロイチン硫酸鎖は軸索の再生に対しても物理的な障壁となるものと認識されている．筆者らの研究は，損傷した神経の再生においてもコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンが重要である可能性を示しており，臨界期の可塑性と神経の再生とに共通の機構が存在するかもしれない．また，パルブアルブミン陽性抑制性ニューロンの成熟は臨界期の可塑性だけでなく統合失調症など精神疾患にも大きく関与することが知られている．最近では，統合失調症の患者の脳ではペリニューロナルネットの形成が減少していることも報告された．今後，コンドロイチン硫酸鎖の機能を制御することがこれら疾患に対する創薬開発の手がかりとなることが期待される．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Hensch, T. K.</span>: <span class="ti">Critical period plasticity in local cortical circuits.</span> <span class='so'>Nat. Rev. Neurosci., 6, 877-888 (2005)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16261181" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Gordon, J. A. &#038; Stryker, M. P.</span>: <span class="ti">Experience-dependent plasticity of binocular responses in the primary visual cortex of the mouse.</span> <span class='so'>J. Neurosci., 16, 3274-3286 (1996)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8627365" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Pizzorusso, T., Medini, P., Berardi, N. et al.</span>: <span class="ti">Reactivation of ocular dominance plasticity in the adult visual cortex.</span> <span class='so'>Science, 298, 1248-1251 (2002)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12424383" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Bradbury, E. J., Moon, L. D., Popat, R. J. et al.</span>: <span class="ti">Chondroitinase ABC promotes functional recovery after spinal cord injury.</span> <span class='so'>Nature, 416, 636-640 (2002)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11948352" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Mikami, T., Yasunaga, D. &#038; Kitagawa, H.</span>: <span class="ti">Contactin-1 is a functional receptor for neuroregulatory chondroitin sulfate-E.</span> <span class='so'>J. Biol. Chem., 284, 4494-4499 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19075012" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Kitagawa, H., Tsutsumi, K., Tone, Y. et al.</span>: <span class="ti">Developmental regulation of the sulfation profile of chondroitin sulfate chains in the chicken embryo brain.</span> <span class='so'>J. Biol. Chem., 272, 31377-31381 (1997)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9395468" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Sugiyama, S., Di Nardo, A. A., Aizawa, S. et al.</span>: <span class="ti">Experience-dependent transfer of Otx2 homeoprotein into the visual cortex activates postnatal plasticity.</span> <span class='so'>Cell, 134, 508-520 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18692473" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R8"><span class='au'>Marin, O. &#038; Rubenstein, J. L.</span>: <span class="ti">A long, remarkable journey: tangential migration in the telencephalon.</span> <span class='so'>Nat. Rev. Neurosci., 2, 780-790 (2001)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11715055" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R9"><span class='au'>Tanaka, D. H., Yanagida, M., Zhu, Y. et al.</span>: <span class="ti">Random walk behavior of migrating cortical interneurons in the marginal zone: time-lapse analysis in flat-mount cortex.</span> <span class='so'>J. Neurosci., 29, 1300-1311 (2009)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19193877" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R10"><span class='au'>Bavelier, D., Levi, D. M., Li, R. W. et al.</span>: <span class="ti">Removing brakes on adult brain plasticity: from molecular to behavioral interventions.</span> <span class='so'>J. Neurosci., 30, 14964-14971 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21068299" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">宮田 真路（Shinji Miyata）</span><br />
略歴：2006年 名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程 修了，同年 米国California大学San Diego校 ポストドクトラルフェローを経て，2007年より神戸薬科大学 特別契約研究員，2008年より神戸大学医学部 グローバルCOEプログラム研究員を兼務．<br />
研究テーマ：コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化コードによる神経機能の制御．<br />
抱負：第三の生命鎖である糖鎖による生命現象の制御の基本原理の解明．</p>
<p><strong>北川 裕之（Hiroshi Kitagawa）</strong><br />
神戸薬科大学 教授．<br />
研究室URL：<a href="http://www.kobepharma-u.ac.jp/~biochem/" target="_blank">http://www.kobepharma-u.ac.jp/~biochem/</a>
</div>
<p>© 2012 宮田真路・北川裕之 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		<title>光駆動性の陽イオンチャネルであるチャネルロドプシンの結晶構造からその陽イオンの輸送経路と分子機構の一端を解明</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4321</link>
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		<pubDate>Mon, 06 Feb 2012 05:05:07 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Nature]]></category>
		<category><![CDATA[イオンチャネル]]></category>
		<category><![CDATA[光受容体]]></category>
		<category><![CDATA[構造生物学]]></category>
		<category><![CDATA[膜タンパク質]]></category>

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		<description><![CDATA[加藤英明・石谷隆一郎・濡木 理 （東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻） email：加藤英明，石谷隆一郎，濡木 理 Crystal structure of the channelrhodopsin light-gated cation channel. Hideaki E. Kato, Feng Zhang, Ofer Yizhar, Charu Ramakrishnan, Tomohiro Nishizawa, Kunio Hirata, Jumpei Ito, Yusuke Aita, Tomoya Tsukazaki, Shigehiko Hayashi, Peter Hegemann, Andrés D. Maturana, Ryuichiro Ishitani, Karl Deisseroth, Osamu Nureki Nature, 482, 369-374 (2012) 要 約 　緑藻類から単離された光駆動性の陽イオンチャネルであるチャネルロドプシンは，青色光を吸収すると陽イオン，とくにNa+を取り込むという性質をもつ．そのため，このタンパク質をニューロンに発現させ青色光を照射するとおもにNa+が細胞内に流入する結果，脱分極が生じニューロンは興奮する．この性質に着目することで，チャネルロドプシンは自由行動を行っている生物においてニューロンの集団を非常に高い時間分解能および空間分解能で興奮させることのできる有用なツールとして，2005年以降，利用されつづけてきた．しかし，その有用性の認知と応用例の増加とは裏腹に，チャネルロドプシンの分子機構については現在まで驚くほどその知見が不足していた．今回，筆者らは，チャネルロドプシンの結晶構造を2.3Åという高分解能で決定した．さらに，この結晶構造と電気生理学的な解析の結果，発色団であるレチナールの結合部位の詳細な構造や長らく論争となってきたチャネルロドプシンのイオン輸送経路を解明し，同時に，チャネルロドプシンの初期反応を明らかにすることに成功した．今回の結果は，光エネルギーを陽イオンの輸送に変換する分子機構の一端を明らかにしたというだけでなく，神経生物学のツールとしてより有用な変異型チャネルロドプシンをデザインするため必要な構造情報を提供したという点にも大きな意義がある． はじめに 　ヒトから微生物まであらゆる生物は光を受容し，その光情報に応じた行動をとる．多くの場合，この光情報の受容は発色団としてレチナールとよばれる低分子化合物を結合したロドプシンファミリータンパク質により担われている．たとえば，ヒトの眼のなかにある動物型ロドプシン（ロドプシン）は光を吸収するとセカンドメッセンジャーである三量体Gタンパク質を活性化することでヒトの視覚の形成に重要な役割をはたす．また，一部の微生物がもつ微生物型ロドプシン（バクテリオロドプシンなど）は光を吸収すると細胞外へプロトンを汲み出しプロトン濃度勾配を形成することで，とくに嫌気性条件でのエネルギーの獲得に重要なはたらきを示す．このように，ひとくちにロドプシンファミリータンパク質といってもその機能は多岐にわたることが知られていたが，イオンチャネル，とくに，陽イオンチャネルとしてはたらくロドプシンファミリータンパク質は発見されておらず，また，すでに構造が明らかになっていたロドプシンファミリータンパク質からの演繹から，陽イオンチャネルとしてはたらくロドプシンファミリータンパク質というのは原理的にむずかしいのではないかと考える研究者も少なからず存在していた．しかし，1995年，ドイツの研究グループが緑藻類の走光性にかかわる新規の微生物型ロドプシンを発見し，2002年に，電気生理学的な解析によりこのタンパク質が陽イオンチャネルとしてはたらくことを示したことにより，陽イオンチャネル型ロドプシンファミリータンパク質が実際に存在することが明らかになった1)．これがチャネルロドプシンである． [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>加藤英明・石谷隆一郎・濡木 理</strong><br />
（東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻）<br />
email：<a href="mailto:emekato@biochem.s.u-tokyo.ac.jp">加藤英明</a>，<a href="mailto:ishitani@biochem.s.u-tokyo.ac.jp">石谷隆一郎</a>，<a href="mailto:nureki@biochem.s.u-tokyo.ac.jp">濡木 理</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Crystal structure of the channelrhodopsin light-gated cation channel.</span><br />
<span class="au">Hideaki E. Kato, Feng Zhang, Ofer Yizhar, Charu Ramakrishnan, Tomohiro Nishizawa, Kunio Hirata, Jumpei Ito, Yusuke Aita, Tomoya Tsukazaki, Shigehiko Hayashi, Peter Hegemann, Andrés D. Maturana, Ryuichiro Ishitani, Karl Deisseroth, Osamu Nureki</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22266941" target="_blank"><em>Nature</em>, <strong>482</strong>, 369-374 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4321"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　緑藻類から単離された光駆動性の陽イオンチャネルであるチャネルロドプシンは，青色光を吸収すると陽イオン，とくにNa<sup>+</sup>を取り込むという性質をもつ．そのため，このタンパク質をニューロンに発現させ青色光を照射するとおもにNa<sup>+</sup>が細胞内に流入する結果，脱分極が生じニューロンは興奮する．この性質に着目することで，チャネルロドプシンは自由行動を行っている生物においてニューロンの集団を非常に高い時間分解能および空間分解能で興奮させることのできる有用なツールとして，2005年以降，利用されつづけてきた．しかし，その有用性の認知と応用例の増加とは裏腹に，チャネルロドプシンの分子機構については現在まで驚くほどその知見が不足していた．今回，筆者らは，チャネルロドプシンの結晶構造を2.3Åという高分解能で決定した．さらに，この結晶構造と電気生理学的な解析の結果，発色団であるレチナールの結合部位の詳細な構造や長らく論争となってきたチャネルロドプシンのイオン輸送経路を解明し，同時に，チャネルロドプシンの初期反応を明らかにすることに成功した．今回の結果は，光エネルギーを陽イオンの輸送に変換する分子機構の一端を明らかにしたというだけでなく，神経生物学のツールとしてより有用な変異型チャネルロドプシンをデザインするため必要な構造情報を提供したという点にも大きな意義がある．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　ヒトから微生物まであらゆる生物は光を受容し，その光情報に応じた行動をとる．多くの場合，この光情報の受容は発色団としてレチナールとよばれる低分子化合物を結合したロドプシンファミリータンパク質により担われている．たとえば，ヒトの眼のなかにある動物型ロドプシン（ロドプシン）は光を吸収するとセカンドメッセンジャーである三量体Gタンパク質を活性化することでヒトの視覚の形成に重要な役割をはたす．また，一部の微生物がもつ微生物型ロドプシン（バクテリオロドプシンなど）は光を吸収すると細胞外へプロトンを汲み出しプロトン濃度勾配を形成することで，とくに嫌気性条件でのエネルギーの獲得に重要なはたらきを示す．このように，ひとくちにロドプシンファミリータンパク質といってもその機能は多岐にわたることが知られていたが，イオンチャネル，とくに，陽イオンチャネルとしてはたらくロドプシンファミリータンパク質は発見されておらず，また，すでに構造が明らかになっていたロドプシンファミリータンパク質からの演繹から，陽イオンチャネルとしてはたらくロドプシンファミリータンパク質というのは原理的にむずかしいのではないかと考える研究者も少なからず存在していた．しかし，1995年，ドイツの研究グループが緑藻類の走光性にかかわる新規の微生物型ロドプシンを発見し，2002年に，電気生理学的な解析によりこのタンパク質が陽イオンチャネルとしてはたらくことを示したことにより，陽イオンチャネル型ロドプシンファミリータンパク質が実際に存在することが明らかになった<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．これがチャネルロドプシンである．<br />
　青色光を照射すると細胞内に陽イオンを取り込むという性質から，チャネルロドプシンはロドプシン研究者からのみならず神経科学者からの注目も集めることになる．2005年から2006年にかけて，3つの研究グループが，チャネルロドプシンを発現させたニューロンに青色光を照射してこれを興奮させることに成功した．2007年には，生きたマウスのニューロンにチャネルロドプシンを発現させ，光ファイバーを脳内に挿入することでこれを興奮させてマウスの行動を制御することに成功した<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．これ以降，チャネルロドプシンを用いた神経科学分野における光遺伝学（optogenetics，オプトジェネティクス）の研究例は現在まで飛躍的に増加しつづけてきた．しかし，こうした研究例の増加とは裏腹に，チャネルロドプシンの分子機構，すなわち，このタンパク質がどうして光を吸収すると陽イオンを透過させるようになるのか，また，そもそも陽イオンはこのタンパク質のどこを透過するのかといった問題には不明な点が多く，ほとんど知見は得られていなかった．また，チャネルロドプシンが神経科学における有用なツールとして認識されはじめて以降，チャネルロドプシンの性質を改善しより使いやすい変異型チャネルロドプシンを創出しようという研究の流れが生まれたが<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>，構造が既知である微生物型ロドプシンから得られる情報だけでは変異体のデザインには限界があり，チャネルロドプシンそのものの構造情報が待ち望まれていた．</p>
<h2>1．チャネルロドプシンの発現と構造決定</h2>
<p>　膜タンパク質，とくに真核生物に由来する膜タンパク質は，一般に高品質のタンパク質を大量に調製することが困難である．緑藻類から単離された野生型のチャネルロドプシンは発現量が低くその性質も良好ではなかったため，筆者らは，既知の4種のチャネルロドプシンに関して多数のキメラ体を作製し，その発現量と性質をC末端側に融合させた蛍光タンパク質EGFPの蛍光により評価した（FSEC法<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>)．発現量および性質においてもっとも良好であったキメラ体に関して，三次元的に連続した脂質膜のなかに膜タンパク質を再構成してから結晶化する脂質キュービック法を適用して結晶化を行ったところ，X線結晶構造解析に適した良質な結晶を得ることに成功した．そののち，水銀化合物との共結晶に関し多波長異常分散法を用いて位相決定を行い，最終的には2.3Åという高分解能で結晶構造を決定することに成功した（PDB ID：<a href="http://service.pdbj.org/mine/Detail2?PDBID=3ug9&#038;PAGEID=Summary" target="_blank">3UG9</a>）．</p>
<h2>2．チャネルロドプシンの全体構造とバクテリオロドプシンとの比較</h2>
<p>　チャネルロドプシンはN末端側の細胞外ドメイン（Nドメイン），7回膜貫通領域，C末端側の細胞内ドメイン（Cドメイン）により構成されており，ほかの微生物型ロドプシンが三量体構造や四量体構造を形成しているのと対照的に，二量体構造を形成していた（<a href="#F1">図1a</a>）．また，二量体のあいだには3箇所のジスルフィド結合が形成されていたため，この二量体構造は結晶化によるアーティファクトではないと考えられた．また，このチャネルロドプシンの構造をこれまでもっともよく研究されている微生物型ロドプシンであるバクテリオロドプシンと比較したところ，両者の構造はレチナールの位置を含め非常によく一致していることがわかった．しかし，チャネルロドプシンにはバクテリオロドプシンに存在しない細胞外ドメインおよび細胞内ドメインが存在していた点，2本のαヘリックスがバクテリオロドプシンと比較して外側に大きく傾いていた点などが異なっていた．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　チャネルロドプシンの全体構造と初期反応に重要なアミノ酸残基の環境</strong><br />
（a）二量体を構成する単量体をそれぞれ紫色と緑色とで示し，全<em>trans</em>型レチナール（ATR）をスティックモデルで示す．<br />
（b）光サイクルの初期反応において重要な役割をはたすアミノ酸残基の位置関係について，チャネルロドプシンとバクテリオロドプシンとを比較して示す．数字は残基のあいだの距離．<br />
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<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Nureki-Nature-12.2.9-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Nureki-Nature-12.2.9-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>3．初期反応に重要な役割をはたすプロトン受容基の同定</h2>
<p>　あらゆる微生物型ロドプシンにおいて，発色団である全<em>trans</em>型レチナールはタンパク質部分のもつ特定のLys残基とシッフ塩基結合を形成しており，暗状態ではこのシッフ塩基の窒素原子がプロトン化されていることが知られている．青色光が全<em>trans</em>型レチナールに照射されると全<em>trans</em>型レチナールは13-<em>cis</em>-型レチナールに異性化され，シッフ塩基のプロトンはプロトン受容基としてはたらく酸性アミノ酸残基へと移動する．これがチャネルロドプシンをはじめ多くの微生物型ロドプシンで起こる光サイクルの初期反応である．バクテリオロドプシンの場合，シッフ塩基の近傍にはAsp85とAsp212の2つの酸性アミノ酸残基が存在しているが，主たるプロトン受容基としてはたらくのはAsp85であることが知られている<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．この理由には，Asp85がAsp212よりシッフ塩基に近い点，Asp212が2つのTyr残基（Tyr57，Tyr185）により位置を固定されているため光サイクルにおいて<em>pK</em><sub>a</sub>を変化させてプロトンを受け取ったり離したりすることができない点，などがあげられる．しかし，チャネルロドプシンではAsp85に対応するGlu162よりもAsp212に対応するAsp292のほうがわずかにシッフ塩基との距離が近く，また，2つのTyr残基はPhe残基（Phe133，Phe265）に置換されていた（<a href="#F1">図1b</a>）．そのため，Asp292は光サイクルにおいて比較的自由にその位置を変え，<em>pK</em><sub>a</sub>を変化させることでシッフ塩基のプロトン受容基としてはたらいている可能性が考えられた．Glu162およびAsp292をそれぞれAla残基に置換した変異体を作製しその性質を調べたところ，Asp292をAla残基に置換した変異体ではイオン電流が著しく低下し光照射からチャネル孔が開くまでの時間も長くなることがわかった．これらの実験結果は，バクテリオロドプシンにおいてプロトン受容基としてはたらくAsp85に対応するGlu162ではなく，Asp212に対応するAsp292こそがチャネルロドプシンのプロトン受容基だろう，という筆者らの仮説を強く支持するものであった．</p>
<h2>4．イオン輸送経路の解明</h2>
<p>　チャネルロドプシンの分子機構を理解するためには，実際にイオンがどこを透過するのか，その輸送経路を解明することが必要不可欠である．先行研究ではチャネルロドプシンのイオン輸送経路は二量体の境界面にあるという説と単量体のなかに存在しているという説が入り乱れていたが，どちらの説が正しいのか決定的なデータは得られていなかった<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．得られた結晶構造をもとにチャネルロドプシンの分子表面を描いたところ，二量体の境界面にはイオンの透過できそうな空間は存在せず，また，その境界面に並んでいる残基はどれも疎水性の残基であった一方で，単量体の内部の4つのαヘリックスにより囲まれた領域には強い負電荷を帯びた空間が存在していることがわかった（<a href="#F2">図2</a>）．この空間はバクテリオロドプシンと比較して外側に傾いている2本のαヘリックスにより形成されていたため，この空間はチャネルロドプシンに特有のものであり，イオンの透過に重要である可能性が高いものと考えられた．実際，この経路に存在する4つのアミノ酸残基をAla残基に置換した変異体を作製しそのNa<sup>+</sup>電流を測定したところ，酸性アミノ酸残基をAla残基に置換した3つの変異体ではどれもNa<sup>+</sup>電流が低下した．また，4つの残基のうち3つの残基についてはAla残基に置換したことによりイオンの選択性が大きく変化した．これらの結果から，チャネルロドプシンのイオン輸送経路はこの4本のαヘリックスにより囲まれた領域，つまり，二量体の境界面ではなく単量体の内部に存在している可能性が強く示唆された．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　チャネルロドプシンのイオン輸送経路</strong><br />
イオン輸送経路はチャネル孔可視化用ソフトCAVERを用いて描画した．赤色ほど強い負電荷，青色ほど強い正電荷を示す．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Nureki-Nature-12.2.9-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Nureki-Nature-12.2.9-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Nureki-Nature-12.2.9-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>5．輸送経路に存在する2つの狭窄部位とその役割</h2>
<p>　今回の研究で明らかにされたのはチャネルロドプシンの暗状態，つまり，閉状態の構造であった．そのため，チャネルロドプシンのイオン輸送経路は細胞の外側には開いていたが，細胞の内側では2つの狭窄部位により閉じていた．ひとつ目の狭窄部位は輸送経路の中央付近に存在しており，保存されたGlu129が孔をふさぐかたちで突き出すことにより形成されていた．もうひとつの狭窄部位は細胞の内側に存在しており，Glu129と同様に高度に保存されたTyr109が孔にはまり込むことにより形成されていた．これら2つの狭窄部位がどのように動くことでチャネル孔が開くのかについては不明な点が多い．しかし，Tyr109の存在するαヘリックスは非常に温度因子が高く，生体においてこのヘリックスが動くことによりTyr109が孔から外れることが予想された．また，Glu129は暗状態ではプロトン化されていることが報告されており全<em>trans</em>型レチナールとの距離も比較的近いため，全<em>trans</em>型レチナールへのプロトン供与基としてはたらいている可能性が考えられた．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　筆者のまわりから実際に構造が解けるまでの苦労話をくわしく聞きたい！　という声を多数いただいたので，せっかくなので期待に応えてみたい．いま思い返せば，苦労は大別して3段階ほどあった気がする．発現系の構築，結晶化法の導入，位相決定，である．<br />
　1つ目は発現系の構築．そもそも，筆者が修士課程の大学院生として研究室に所属した3年前，真核生物の膜タンパク質の構造を解いたことのある人は研究室には誰もおらず，大腸菌以外の宿主で膜タンパク質を発現させたことのある人もいなかった．そのため，まずは大腸菌を用いてチャネルロドプシンを発現させようとしたのだが，数百以上の条件を試してみてもさっぱりうまくいかない．結局，培養細胞や昆虫細胞を試すことになったのだが，当時，培養細胞を培養するシェイカーすら研究室にはない状態だったので，ちょうど同じ年に研究室に移ってきたポスドクの方にひとつひとつ教えていただきながら系を立ち上げることになった．当時は，同期の修士課程の大学院生が構造を解いていくなか，目的のタンパク質を発現させることすらできずに1年近くも時間を浪費している自分が本当に嫌になったものである．<br />
　チャネルロドプシンの発現系の構築に成功し，精製もうまくいった．さぁ，これで結晶化だ，というところで再び問題が起こった．蒸気拡散法を用いて得られた結晶はX線を当てても当てても反射が出なかったのである．結晶化の条件の最適化や界面活性剤の交換をしてみてもまったくだめだった．15Åとか10Åとかいうレベルではない．No diff.である．そのため，もともと微生物型ロドプシンの結晶化法として考案されGタンパク質共役受容体の結晶化法として再評価されつつあった脂質キュービック法の導入を決意することになった．いまにしてみると，蒸気拡散法で得た結晶からまったく反射が出なかったのが，かえって脂質キュービック法を導入する決断を早めてくれたように思う．京都大学大学院医学研究科の岩田研究室に直接実験を教わりに行き，米国Scripps Research Instituteの研究グループにメールで疑問点をたずね，試行錯誤でこの結晶化法を立ち上げたが，はじめてチャネルロドプシンのオレンジ色の結晶を見たときは手が震えてプレートの焦点がうまく合わせられなかった．そして，当時，立ち上がったばかりの大型放射光施設SPring-8のBL32XUビームラインで測定を行った際，最初の結晶で一面に反射が見えたとき（3Åくらいは出ていた）は一瞬息が止まったのを覚えている．それ以来，筆者はBL32XUビームラインの虜である．<br />
　最後のハードルは位相決定の段階で待ち構えていた．無事，ネイティブ結晶のデータセットをとることはできたのだが，分子置換により位相を決定することができなかったのである．当然ながら，重原子を利用して位相を決めようということになったが，脂質キュービック法で得られた結晶について分子置換以外の方法で位相を決定した例はそれまでなかった．脂質キュービック法で得られた結晶はしばしば脂質に由来する反射が4.4Å～4.6Åの範囲に現われてタンパク質に由来する反射を埋もれさせてしまうことがあり，重原子による異常分散を利用した位相決定が本当に可能なのだろうかという疑問は筆者を悩ませた．そもそも，セレノメチオニンが効率よくチャネルロドプシンに導入できなかったという問題もあった．結局，この問題には半年以上も悩まされることになったわけだが，現状打破のきっかけは，いろいろな重原子化合物とチャネルロドプシンとを混ぜ合わせたとき，いくつかの水銀化合物を混ぜたときだけ試料の色がオレンジから赤に変わったことであった．試料の色が変わったということは水銀がレチナールの近くに結合しているせいではないだろうか．水銀ならいけるのではないか．最終的にこの判断が功を奏し，水銀を利用した多波長異常分散法により位相を決定することができたのだが，得られた構造をみるとレチナールのπ電子系と相互作用するCys残基に確かに水銀が結合しているのを確認することができた．また，いま思えば，BL32XUビームラインのマイクロビームを使うことでひとつの結晶から十分な冗長性をもつデータセットをとることができたことも重要な要因であった．<br />
　筆者の苦労話はせいぜいこの3つ，あとは，フランスやドイツ，米国や日本など，各地に競争相手がいると聞いていたため，しばしば胃がキリキリと痛んだことくらいである．しかし，蓋を開けてみれば，スタートしてから3年でチャネルロドプシンの構造を決定することができた．ひとえに研究室のメンバーやビームラインのスタッフの方々の厚意と協力があったからこそだと思い深く感謝している．<br />
　さて，実は，原著論文の初期の草稿にはゲート機構に関するつづきの記述があった．リバイスの過程でレフリーに“speculativeなので削除しなさい”といわれ泣く泣く削ったのだが，ちょうど原著論文がオンラインで出版される2週間前に，別のグループが同じ予測を打ち立てて<em>Jornal of Biological Chemistry</em>誌に論文を掲載してしまった<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．筆者としては少し悔しい想いであったが，予測されたゲート機構を実証するにはまださまざまな実験が必要となるので，今後はゲート機構の実証へと歩を進ませたいと考えている．また，明らかになった構造をもとに性質を改善させた変異型チャネルロドプシンも実際に作製したい．やるべきことはまだまだ山積みである．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Nagel, G., Ollig, D., Fuhrmann, M. et al.</span>: <span class="ti">Channelrhodopsin-1: a light-gated proton channel in green algae.</span> <span class='so'>Science, 296, 2395-2398 (2002)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12089443" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Adamantidis, A. R., Zhang, F., Aravanis, A. M. et al.</span>: <span class="ti">Neural substrates of awakening probed with optogenetic control of hypocretin neurons.</span> <span class='so'>Nature, 450, 420-424 (2007)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17943086" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Zhang, F., Vierock, J., Yizhar, O. et al.</span>: <span class="ti">The microbial opsin family of optogenetic tools.</span> <span class='so'>Cell, 147, 1446-1457 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22196724" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Kawate, T. &#038; Gouaux, E.</span>: <span class="ti">Fluorescence-detection size-exclusion chromatography for precrystallization screening of integral membrane proteins.</span> <span class='so'>Structure, 14, 673-681 (2006)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16615909" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Lanyi, J. K.</span>: <span class="ti">Proton transfers in the bacteriorhodopsin photocycle.</span> <span class='so'>Biochim. Biophys. Acta, 1757, 1012-1018 (2006)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16376293" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Muller, M., Bamann, C., Bamberg, E. et al.</span>: <span class="ti">Projection structure of channelrhodopsin-2 at 6Å resolution by electron crystallography.</span> <span class='so'>J. Mol. Biol., 414, 86-95 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22001017" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Eisenhauer, K., Uhne. J., Ritter. E. et al.</span>: <span class="ti">In channelrhodopsin-2 E90 is crucial for ion selectivity and is deprotonated during the photocycle.</span> <span class='so'>J. Biol. Chem., DOI: 10.1074/jbc.M111.327700[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22219197" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">加藤 英明（Hideaki Kato）</span><br />
略歴：東京大学理学系研究科博士課程 在学中．<br />
研究テーマ：膜タンパク質の立体構造解析．<br />
抱負：結晶構造解析を主眼におきつつも，幅広い手法を身につけながら複雑な分子機械である膜タンパク質を静的および動的にとらえ，その分子機構にせまっていきたい．</p>
<p><strong>石谷 隆一郎（Ryuichiro Ishitani）</strong><br />
東京大学大学院理学系研究科 准教授．</p>
<p><strong>濡木  理（Osamu Nureki）</strong><br />
東京大学大学院理学系研究科 教授．<br />
研究室URL：<a href="http://www.nurekilab.net/" target="_blank">http://www.nurekilab.net/</a>
</div>
<p>© 2012 加藤英明・石谷隆一郎・濡木 理 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		<item>
		<title>ヒトのムスカリン性アセチルコリン受容体M2サブタイプのX線結晶構造解析</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4299</link>
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		<pubDate>Fri, 03 Feb 2012 06:22:57 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Nature]]></category>
		<category><![CDATA[Gタンパク質共役受容体]]></category>
		<category><![CDATA[アセチルコリン]]></category>
		<category><![CDATA[構造生物学]]></category>
		<category><![CDATA[膜タンパク質]]></category>

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		<description><![CDATA[芳賀達也1・Brian K. Kobilka 2・小林拓也3 （1学習院大学理学部 生命科学研究科，2米国Stanford大学School of Medicine，Department of Molecular and Cellular Physiology，3京都大学大学院医学研究科 分子細胞情報学） email：小林拓也 Structure of the human M2 muscarinic acetylcholine receptor bound to an antagonist. Kazuko Haga, Andrew C. Kruse, Hidetsugu Asada, Takami Yurugi-Kobayashi, Mitsunori Shiroishi, Cheng Zhang, William I. Weis, Tetsuji Okada, Brian K. Kobilka, Tatsuya Haga, Takuya Kobayashi Nature, DOI: 10.1038/nature10753 [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>芳賀達也<sup>1</sup>・Brian K. Kobilka <sup>2</sup>・小林拓也<sup>3</sup></strong><br />
（<sup>1</sup>学習院大学理学部 生命科学研究科，<sup>2</sup>米国Stanford大学School of Medicine，Department of Molecular and Cellular Physiology，<sup>3</sup>京都大学大学院医学研究科 分子細胞情報学）<br />
email：<a href="mailto:t-coba@mfour.med.kyoto-u.ac.jp">小林拓也</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Structure of the human M2 muscarinic acetylcholine receptor bound to an antagonist.</span><br />
<span class="au">Kazuko Haga, Andrew C. Kruse, Hidetsugu Asada, Takami Yurugi-Kobayashi, Mitsunori Shiroishi, Cheng Zhang, William I. Weis, Tetsuji Okada, Brian K. Kobilka, Tatsuya Haga, Takuya Kobayashi</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22278061" target="_blank"><em>Nature</em>, DOI: 10.1038/nature10753</a></span></div>
<p><span id="more-4299"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　Gタンパク質共役受容体はヒトのゲノムにおいて非常に大きなファミリーを形成している．また，市販の医薬品の作用点の約40％をしめるともいわれており，創薬において重要なターゲットと位置づけられている．数多いGタンパク質共役受容体ファミリーのなかでも，ムスカリン受容体はオルソステリック部位とアロステリック部位とをもつといわれ，おのおのの部位を区別して結合する低分子化合物が報告されている．筆者らは，ヒトのムスカリン性アセチルコリン受容体M2サブタイプのオルソステリック部位にアンタゴニストが結合した複合体のX線結晶構造を解明した．ムスカリンM2受容体の立体構造が明らかになり，抗コリン薬の結合部位の詳細な情報を得ることができた．これらの立体構造の情報をもとに，今後，より効果的で副作用のないサブタイプに選択的な薬の探索および設計が可能になるものと考えられる．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　アセチルコリンは世界で最初に神経伝達物質のひとつであることが証明された物質である．アセチルコリンにはニコチン作用とムスカリン作用とが存在することが古くから知られており，おのおのに特異的なアセチルコリン受容体（ニコチン受容体とムスカリン受容体）が同定されている．副交感神経や運動神経の末端から分泌されたアセチルコリンは骨格筋や内臓平滑筋などに存在するアセチルコリン受容体にはたらき，筋収縮を促進するほか副交感神経を刺激し，心拍数の減少，脈拍数の減少，唾液の分泌を促進する．このように，アセチルコリンは基本的な生命現象に深く関与している．とくに，脳内のアセチルコリンのバランスがくずれるとさまざまな疾患が生じる．たとえば，アセチルコリンが減少すると自律神経失調症やアルツハイマー病につながるといわれている．また，パーキンソン病の患者ではアセチルコリンの相対的な増加が認められている．アセチルコリンのムスカリン受容体への結合を遮断することでパーキンソン病の症状が緩和することが知られており，古くから治療薬として使われている．一方で，副作用として統合失調症や認知症の症状を悪化させることも知られている．<br />
　ムスカリン受容体にはM1からM5までの5種類のサブタイプが存在する<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．たとえば，M1受容体は大脳皮質や海馬に多く存在し記憶や学習に関与していると考えられている．また，M2受容体はおもに中枢神経や心臓に分布しその機能を抑制的に制御している．このように，おのおののサブタイプは固有の分布と薬理作用をもっており，構造にもとづいたサブタイプに選択的な創薬が期待されている．</p>
<h2>1．Gタンパク質共役受容体のX線結晶構造解析のむずかしい点</h2>
<p>　膜タンパク質は市販の医薬品の作用点の50％以上をしめるといわれており，創薬において重要なターゲットと位置づけられている．そのなかでもGタンパク質共役型受容体は創薬の標的として注目されている．“構造にもとづく創薬戦略”によりGタンパク質共役受容体の立体構造を体系的かつ網羅的に解明していくことは，候補化合物を迅速に探索する手法の開発，候補化合物の最適化，副作用の少ない化合物の分子設計につながる．しかし，Gタンパク質共役受容体の構造解析は非常にむずかしく，長いあいだ，その構造は解かれていなかった．その理由として，非常に疎水性領域が多いため（全体の70～80％）界面活性剤で可溶化するとそのほとんどがミセルでおおわれてしまい結晶格子が形成されにくいこと，そして，活性型と不活性型の構造をとりうる柔軟性の高い膜タンパク質であることが考えられていた．</p>
<h2>2．X線結晶構造解析に適したGタンパク質共役受容体の生産</h2>
<p>　筆者らは2000年から，ヒトをターゲットとしたGタンパク質共役受容体のX線結晶構造解析を目的として結晶化に適した試料の調製を試みてきた．その結果，ヒトGタンパク質共役受容体のうちの3つ，アデノシンA2a受容体，ヒスタミンH1受容体，ムスカリンM2受容体の結晶構造を高分解能で解明することに成功した．アデノシンA2a受容体についてはその立体構造を認識する抗体を作製して抗体との複合体の結晶構造を3.1Åで決定した<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．さらに，ヒスタミンH1受容体についてはリゾチームを融合したうえで脂質キュービック相に結晶化し高分解能（3.1Å）でその構造を解いた<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>．今回，ムスカリンM2受容体についても同様な方法を使い分解能3.0Åで結晶構造を決定した．ヒスタミンH1受容体およびアデノシンA2a受容体はメタノール資化酵母を用い発現させたのち精製したが，ムスカリンM2受容体は昆虫細胞を用いて調製した．よい結晶を生産するには，いずれの場合も培地1リットルあたり1 mg以上の生産量が必要となった．Gタンパク質共役受容体の高発現を実現するためには，柔軟性の高いGタンパク質共役受容体を安定化する必要があった．従来は，多くの変異体を地道に作製しそのリガンド結合活性を測定していたが，相同組換え活性の高い出芽酵母を用いC末端にGFPを融合させることにより短時間に安定性を向上させる系を確立した．現在，1カ月で50～100種類以上の変異体をハイスループットでスクリーニングしている．この技術により，まさに“解けるものを解く研究”から“解きたいものを解く研究”が可能になったといえる．</p>
<h2>3．ヒトのムスカリン性アセチルコリン受容体M2サブタイプの結晶構造</h2>
<p>　Gタンパク質共役受容体ファミリーのなかでも，ムスカリン性アセチルコリン受容体は2つのリガンド結合部位（オルソステリック部位およびアロステリック部位）をかねそなえた特徴的な受容体である．Gタンパク質共役受容体のアロステリック制御についてはじめて報告されたのは比較的最近であり<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>，アロステリック部位の立体構造はこれまで明らかにされていなかった．筆者らは，今回，ヒトのムスカリン受容体M2サブタイプのオルソステリック部位にアンタゴニストが結合した複合体の結晶構造を世界ではじめて高分解能（3.0Å）で解くことに成功した（PDB ID：<a href="http://service.pdbj.org/mine/Detail2?PDBID=3uon&#038;PAGEID=Summary" target="_blank">3UON</a>）．その結果，神経伝達物質であるアセチルコリンが結合するオルソステリック部位を構成する19個のアミノ酸残基がアンタゴニストであるキヌクリジニルベンジレートと作用しており（<a href="#F1">図1</a>），そのうち18個のアミノ酸残基はすべてのムスカリン受容体サブタイプ（M1～M5）において保存されていた．このことより，ムスカリン受容体においてサブタイプに選択的に作用するリガンドの開発が非常にむずかしかったことを原子分解能レベルではじめて証明することができた．一方，アロステリック部位はオルソステリック部位の上部にある比較的広い空洞として細胞の外側に広がっていた（<a href="#F1">図2</a>）．アロステリック部位を構成するいくつかのアミノ酸残基は，アミノ酸変異実験によりアロステリックリガンドの結合親和性を低下させるアミノ酸残基と一致していた．アロステリック部位にはそれぞれのサブタイプにおいて特徴的なアミノ酸残基が存在していた．したがって，それぞれのサブタイプに特徴的なアミノ酸残基の側鎖とリガンドの官能基とのあいだに相互作用（水素結合など）を生み出すことができ，これはサブタイプに選択的なリガンドの開発につながると考えられた．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　ムスカリンM2受容体のX線結晶構造</strong><br />
（a）アンタゴニストの結合したムスカリンM2受容体の全体構造．アンタゴニストであるキヌクリジニルベンジレート（オレンジ色）の結合するオルソステリック部位の上部の比較的広い空洞にアロステリック部位は存在した．<br />
（b）オルソステリック部位の拡大．キヌクリジニルベンジレート（オレンジ色）はAsp残基（D103）と塩橋を形成し，Asn残基（N404）と水素結合をしていた．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kobayashi-Nature-12.2.9-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kobayashi-Nature-12.2.9-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kobayashi-Nature-12.2.9-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　ムスカリンM2受容体のアロステリック部位</strong><br />
（a）アンタゴニストであるキヌクリジニルベンジレート（オレンジ色）の結合するオルソステリック部位の上部にアロステリック部位が存在した．アミノ酸残基変異実験によりアロステリックリガンドの結合親和性を低下させるアミノ酸残基と，アロステリックリガンドの結合に関与するアミノ酸残基（黄色）とは一致した．<br />
（b）アロステリック部位にはムスカリンM3受容体とは異なるアミノ酸残基（緑色）が多く存在した．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kobayashi-Nature-12.2.9-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kobayashi-Nature-12.2.9-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/02/Kobayashi-Nature-12.2.9-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>おわりに</h2>
<p>　筆者らはこれまでに，Gタンパク質共役受容体のひとつであるプロスタノイド受容体のキメラ受容体やアミノ酸変異受容体を作製してリガンド結合部位を同定してきた<a href="#R5"><sup>5,6)</sup></a>．また，生体におけるプロスタノイドの役割を解明するためプロスタノイド受容体ノックアウトマウスに動脈硬化モデルマウスを掛け合わせてダブルノックアウトマウスを作出し，プロスタノイド受容体には動脈硬化の発症や進展を促進させる受容体と抑制させる受容体とがべつべつに存在することを明らかにした<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．このことから，より効果的な治療を行うためには受容体に対する選択性の高いアゴニストやアンタゴニストを探索および開発する必要があった．そこで，おのおののGタンパク質共役受容体に選択的なリガンドをデザインしたいと考え，2000年から，Gタンパク質共役受容体のX線結晶構造解析を試みてきた．構造生物学的なアプローチにより，これまで分子生物学的，生化学的，薬理学的なアプローチでは得ることのできなかった新しい知見を得て創薬や生命現象の理解に供したいと考えている．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Hulme, E. C., Birdsall, N. J. &#038; Buckley, N. J.</span>: <span class="ti">Muscarinic receptor subtypes.</span> <span class='so'>Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol., 30, 633-673 (1990)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2188581" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Hino, T., Arakawa, T., Iwanari, H. et al.</span>: <span class="ti">G-protein-coupled receptor inactivation by an allosteric inverse-agonist antibody.</span> <span class='so'>Nature, 482, 237-240 (2012)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22286059" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Shimamura, T., Shiroishi, M., Weyand, S. et al.</span>: <span class="ti">Structure of the human histamine H1 receptor complex with doxepin.</span> <span class='so'>Nature, 475, 65-70 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21697825" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Jensen, A. A. &#038; Spalding, T. A.</span>: <span class="ti">Allosteric modulation of G-protein coupled receptors.</span> <span class='so'>Eur. J. Pharm. Sci., 21, 407-420 (2004)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14998571" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Kobayashi, T., Kiriyama, M., Hirata, T. et al.</span>: <span class="ti">Identification of domains conferring ligand binding specificity to the prostanoid receptor. Studies on chimeric prostacyclin/prostaglandin D receptors.</span> <span class='so'>J. Biol. Chem., 272, 15154-15160 (1997)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9182536" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Kobayashi, T., Ushikubi, F. &#038; Narumiya, S.</span>: <span class="ti">Amino acid residues conferring ligand binding properties of prostaglandin I and prostaglandin D receptors. Identification by site-directed mutagenesis.</span> <span class='so'>J. Biol. Chem., 275, 24294-242303 (2000)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10827082" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Kobayashi, T., Tahara, Y., Matsumoto, M. et al.</span>: <span class="ti">Roles of thromboxane A<sub>2</sub> and prostacyclin in the development of atheroscrelosis in apoE-deficient mice.</span> <span class='so'>J. Clin. Invest., 114, 784-794 (2004)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15372102" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">芳賀 達也（Tatsuya Haga）</span><br />
学習院大学理学部 元 教授．</p>
<p><strong>Brian K. Kobilka</strong><br />
米国Stanford大学School of Medicine教授．</p>
<p><strong>小林 拓也（Takuya Kobayashi）</strong><br />
略歴：1998年 京都大学大学院医学研究科博士課程 修了，同年 同 助手，2004年 英国Imperial College London博士研究員，2006年 科学技術振興機構ERATO岩田ヒト膜受容体構造プロジェクト グループリーダーを経て，2007年より京都大学大学院医学研究科 講師．<br />
研究テーマ：Gタンパク質共役受容体の薬理学から構造生物学．<br />
関心事：自分で解いたGタンパク質共役受容体の構造をもとに新しい薬をデザインし，いつの日か<em>in vivo</em>モデルで評価したい．
</div>
<p>© 2012 芳賀達也・Brian K. Kobilka・小林拓也 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
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		<title>ジストログリカンの機能に必要なLARGEの糖転移活性</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4259</link>
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		<pubDate>Tue, 31 Jan 2012 01:00:18 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Science]]></category>
		<category><![CDATA[生化学]]></category>
		<category><![CDATA[糖転移酵素]]></category>
		<category><![CDATA[糖鎖]]></category>
		<category><![CDATA[細胞外マトリックス]]></category>

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		<description><![CDATA[稲森啓一郎・吉田-森口貴子・Kevin P. Campbell （米国Iowa大学Roy J. and Lucille A. Carver College of Medicine，Department of Molecular Physiology and Biophysics） email：稲森啓一郎，吉田-森口貴子 Dystroglycan function requires xylosyl- and glucuronyltransferase activities of LARGE. Kei-ichiro Inamori, Takako Yoshida-Moriguchi, Yuji Hara, Mary E. Anderson, Liping Yu, Kevin P. Campbell Science, 335, 93-96 (2012) 要 約 　糖転移酵素様タンパク質LARGEによるαジストログリカンの翻訳後修飾はその細胞外マトリックスリガンドとの結合に必要である．これまで，脳に異常をともなう先天性筋ジストロフィーの患者においてLARGE遺伝子の変異が報告されている．しかし，推定されるLARGEの糖転移活性はいまだ同定されておらず，その詳細な機能については不明であった．この研究では，LARGEがキシロース転移活性とグルクロン酸転移活性の2つの酵素活性をもち，キシロースとグルクロン酸のくり返し単位からなる多糖構造を形成することを明らかにした．さらに，この糖鎖修飾がαジストログリカンにLGドメインをもつ細胞外マトリックスリガンドに対する結合能をあたえることを示した． はじめに 　ジストログリカンは筋細胞の外部と内部とを連結するジストロフィン-糖タンパク質複合体の重要な構成タンパク質で，細胞の表面に存在するαサブユニットと膜貫通型の構造をとるβサブユニットからなる（図1）．ジストログリカンは筋細胞の細胞膜の恒常性の維持，また，中枢神経系においてその構造と機能の維持に重要な役割をもつ．さらには，出血熱をひき起こすラッサウイルスなどある種のアレナウイルスの受容体ともなっている．αジストログリカンは翻訳後修飾により糖鎖の高度な付加をうけており，なかでもO-マンノース型糖鎖が，ラミニンをはじめ，パールカン，アグリン，ニューレキシンなどLGドメインを含む細胞外マトリックスリガンドとの結合に必要である．O-マンノース型糖鎖の生合成の異常はαジストログリカンのリガンド結合能の低下をもたらし，αジストログリカノパチーとよばれる一連の先天性筋ジストロフィー，あるいは，肢帯型筋ジストロフィーをひき起こす1)． 図1　ジストロフィン-糖タンパク質複合体の構造 ジストログリカンは，αサブユニットが細胞外マトリックスのラミニンなどがもつLGドメイン，βサブユニットが細胞内のジストロフィンと結合することで，筋細胞の外部と内部を連結するジストロフィン-糖タンパク質複合体の重要な構成タンパク質として機能している．αジストログリカンのもつO-マンノース型糖鎖がLGドメインとの結合に必要である． [Download] 　糖転移酵素様タンパク質であるLARGE（like-acetylglucosaminyltransferase）を細胞内で過剰に発現させるとαジストログリカンの糖鎖修飾とリガンド結合能が増大する2)．さらには，数種類の遺伝的に異なる型の先天性筋ジストロフィーの患者に由来する細胞において，LARGEの過剰な発現がαジストログリカンの糖鎖修飾およびリガンド結合能を回復させることが示されている3)．しかし，LARGEの推定される糖転移活性およびLGドメイン結合性糖鎖の構造については不明であった．今回，筆者らは，LARGEの糖転移活性とその産物である糖鎖の構造を明らかにした．さらに，そのキシロースとグルクロン酸のくり返し単位からなる糖鎖がαジストログリカンにリガンド結合能をあたえることを示した． 1．キシロースの付加がαジストログリカンのリガンド結合能に必要である [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>稲森啓一郎・吉田-森口貴子・Kevin P. Campbell</strong><br />
（米国Iowa大学Roy J. and Lucille A. Carver College of Medicine，Department of Molecular Physiology and Biophysics）<br />
email：<a href="mailto:keiichiro-inamori@uiowa.edu">稲森啓一郎</a>，<a href="mailto:takako-moriguchi@uiowa.edu">吉田-森口貴子</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Dystroglycan function requires xylosyl- and glucuronyltransferase activities of LARGE.</span><br />
<span class="au">Kei-ichiro Inamori, Takako Yoshida-Moriguchi, Yuji Hara, Mary E. Anderson, Liping Yu, Kevin P. Campbell</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22223806" target="_blank"><em>Science</em>, <strong>335</strong>, 93-96 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4259"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　糖転移酵素様タンパク質LARGEによるαジストログリカンの翻訳後修飾はその細胞外マトリックスリガンドとの結合に必要である．これまで，脳に異常をともなう先天性筋ジストロフィーの患者において<em>LARGE</em>遺伝子の変異が報告されている．しかし，推定されるLARGEの糖転移活性はいまだ同定されておらず，その詳細な機能については不明であった．この研究では，LARGEがキシロース転移活性とグルクロン酸転移活性の2つの酵素活性をもち，キシロースとグルクロン酸のくり返し単位からなる多糖構造を形成することを明らかにした．さらに，この糖鎖修飾がαジストログリカンにLGドメインをもつ細胞外マトリックスリガンドに対する結合能をあたえることを示した．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　ジストログリカンは筋細胞の外部と内部とを連結するジストロフィン-糖タンパク質複合体の重要な構成タンパク質で，細胞の表面に存在するαサブユニットと膜貫通型の構造をとるβサブユニットからなる（<a href="#F1">図1</a>）．ジストログリカンは筋細胞の細胞膜の恒常性の維持，また，中枢神経系においてその構造と機能の維持に重要な役割をもつ．さらには，出血熱をひき起こすラッサウイルスなどある種のアレナウイルスの受容体ともなっている．αジストログリカンは翻訳後修飾により糖鎖の高度な付加をうけており，なかでも<em>O</em>-マンノース型糖鎖が，ラミニンをはじめ，パールカン，アグリン，ニューレキシンなどLGドメインを含む細胞外マトリックスリガンドとの結合に必要である．<em>O</em>-マンノース型糖鎖の生合成の異常はαジストログリカンのリガンド結合能の低下をもたらし，αジストログリカノパチーとよばれる一連の先天性筋ジストロフィー，あるいは，肢帯型筋ジストロフィーをひき起こす<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　ジストロフィン-糖タンパク質複合体の構造</strong><br />
ジストログリカンは，αサブユニットが細胞外マトリックスのラミニンなどがもつLGドメイン，βサブユニットが細胞内のジストロフィンと結合することで，筋細胞の外部と内部を連結するジストロフィン-糖タンパク質複合体の重要な構成タンパク質として機能している．αジストログリカンのもつ<em>O</em>-マンノース型糖鎖がLGドメインとの結合に必要である．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Inamori-Science-12.1.6-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Inamori-Science-12.1.6-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Inamori-Science-12.1.6-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　糖転移酵素様タンパク質であるLARGE（like-acetylglucosaminyltransferase）を細胞内で過剰に発現させるとαジストログリカンの糖鎖修飾とリガンド結合能が増大する<a href="#R2"><sup>2)</sup></a>．さらには，数種類の遺伝的に異なる型の先天性筋ジストロフィーの患者に由来する細胞において，LARGEの過剰な発現がαジストログリカンの糖鎖修飾およびリガンド結合能を回復させることが示されている<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>．しかし，LARGEの推定される糖転移活性およびLGドメイン結合性糖鎖の構造については不明であった．今回，筆者らは，LARGEの糖転移活性とその産物である糖鎖の構造を明らかにした．さらに，そのキシロースとグルクロン酸のくり返し単位からなる糖鎖がαジストログリカンにリガンド結合能をあたえることを示した．</p>
<h2>1．キシロースの付加がαジストログリカンのリガンド結合能に必要である</h2>
<p>　αジストログリカンのもつ<em>O</em>-マンノース型糖鎖は，おもにSiaα2,3-Galβ1,4-GlcNAcβ1,2-Manα1-（Sia：シアル酸，Gal：ガラクトース，GlcNAc：<em>N</em>-アセチルグルコサミン，Man：マンノース）の構造を含むことが知られている<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>．しかし，グリコシダーゼおよび化学的な処理により骨格筋から精製されたαジストログリカンから，シアル酸，ガラクトース，<em>N</em>-アセチルグルコサミンを除去してもそのリガンド結合能は失われず，かえって増強されることが報告されている<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．また，αジストログリカンは<em>O</em>-マンノース型糖鎖のほかにも<em>N</em>-結合型糖鎖と<em>O</em>-結合型（ムチン型）糖鎖を含んでいる．まず，LARGEに依存的な糖鎖修飾について調べるため，LARGEとαジストログリカンをともに過剰発現させたHEK293細胞の培養液よりαジストログリカンを精製し，それに付加されている糖の組成分析を行った．分析にさきだって，精製されたαジストログリカンを各種のグリコシダーゼにより処理することでLGドメイン結合性糖鎖に直接に関与しない糖を除外した．トリメチルシリル化糖誘導体のガスクロマトグラフィーによる分析から，αジストログリカンのもつ<em>O</em>-マンノース型糖鎖としてすでに知られている糖にくわえ，新たにキシロースとグルクロン酸が同定された．キシロースとグルクロン酸はプロテオグリカンのもつヘパラン硫酸およびコンドロイチン-デルマタン硫酸グリコサミノグリカンの合成においても重要であるが，グリコサミノグリカンはαジストログリカンのリガンド結合能には必要ではないことが以前の報告<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>，および，今回の筆者らの結果から示されている．<br />
　そこで，αジストログリカンのリガンド結合能にグリコサミノグリカン合成とは別の経路のキシロース付加が必要であるのかどうかを，UDP-キシロース合成酵素であるUXS1を欠損したCHO細胞株を用いて解析した．UDP-キシロースはキシロース転移酵素の酵素反応に必須で，UXS1欠損細胞では基質タンパク質へのキシロースの付加はみられない<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．フローサイトメトリーおよびウェスタンブロット法による解析から，UXS1欠損細胞のαジストログリカンはLGドメイン結合性糖鎖を欠いており，<em>UXS1</em>遺伝子を過剰発現させることでその糖鎖修飾は回復することが示された．一方，LARGEの過剰発現ではそのような回復はみられず，これらの結果から，LARGEが作用する基質がキシロースを含んでいるか，あるいは，LARGE自体がキシロース転移酵素であることが示唆された．</p>
<h2>2．LARGEはキシロース転移活性とグルクロン酸転移活性をもつ糖転移酵素である</h2>
<p>　キシロースがグリコシド結合を介し疎水基をもつキシロシドは細胞膜を通過でき，細胞内のキシロースに作用する糖転移酵素を競争的に阻害することが知られている．たとえば，βグリコシド結合をもつβキシロシドは培地に添加するとプロテオグリカンのグリコサミノグリカン鎖の合成を阻害する．これは，グリコサミノグリカンの合成はコアタンパク質の特定のセリン残基にキシロースを付加することで開始されるが，そのβグリコシド結合のキシロースに作用する酵素（ガラクトース転移酵素）が競争的に阻害されるためである．LARGEが2つの異なる糖転移酵素様ドメインからなり（<a href="#F2">図2</a>），そのひとつがおもにαグリコシド結合でいずれかの糖を転移する糖転移酵素ファミリーと相同性をもつことに着目し，αグリコシド結合をもつαキシロシドがαジストログリカンの糖鎖修飾を阻害するかどうかを調べた．LARGEを過剰発現する細胞の培地にαキシロシドを添加したところ，αジストログリカンのもつLGドメイン結合性糖鎖の減少と，それにともなうコアタンパク質の電気泳動における移動度の変化がみられた．この結果から，αジストログリカンがαグリコシド結合のキシロースをもっており，そこにLARGEが作用するのをαキシロシドが競争的に阻害した可能性が考えられた．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　LARGEのドメイン構造</strong><br />
TM：膜貫通領域，CC：コイルドコイルドメイン，Xyl-T：キシロース転移酵素ドメイン，GlcA-T：グルクロン酸転移酵素ドメイン．DXDモチーフの位置を星印で示した．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Inamori-Science-12.1.6-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Inamori-Science-12.1.6-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Inamori-Science-12.1.6-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　そこで，αキシロシドを酵素反応の受容体基質として用いることでLARGEの糖転移活性の検出を試みた．膜貫通領域を除いて可溶性とした組換えLARGEを発現精製し，さまざまな供与体基質とαキシロシドとともに酵素反応させたのち，高速液体クロマトグラフィー（HPLC）にて酵素反応物を分離し新たな酵素反応物が生成されたかどうかを調べた．すると，UDP-グルクロン酸を供与体基質として用いたときのみ特有のピークが現れ，質量分析によりそれがαキシロシドにグルクロン酸が付加されたものであることが確認された．βキシロシドを用いた場合にはそのようなピークは検出されず，LARGEがαグリコシド結合のキシロースに対しグルクロン酸転移活性をもつことが示された．さきに述べたように，LARGEは2つの糖転移酵素様ドメインをもつことから，LARGEがさらにグルクロン酸を末端にもつ基質にも作用するのではと仮定し，同様に，グルクロン酸がグリコシド結合を介し疎水基をもつグルクロニドを酵素反応の受容体基質に用いて糖転移活性の検出を試みた．その結果，βグリコシド結合をもつβグルクロニドに対してUDP-キシロースを用いたときのみ糖転移活性が検出され，LARGEがβグリコシド結合のグルクロン酸に対しキシロース転移活性をもつことが示された．</p>
<h2>3．変異体を用いたLARGEの糖転移活性の解析</h2>
<p>　多くの糖転移酵素に保存されているDXDモチーフ（Asp-X-Asp，Xは任意のアミノ酸残基）はその糖転移活性に重要であることが知られている．LARGEは3つの保存されたDXDモチーフをもつが，それぞれのDXDモチーフを別のアミノ酸残基に置換した変異体はいずれもαジストログリカンの糖鎖修飾を増強できなくなることが報告されている<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>．それらの変異体LARGEはいずれかの糖転移活性を失っているのではないかと仮定し，2つの糖転移酵素様ドメインのそれぞれのDXDモチーフをAsn-X-Asnに置換した変異体を用いてグルクロン酸転移活性とキシロース転移活性を比較した（<a href="#F2">図2</a>）．おもしろいことに，1つ目のドメインにおける変異体はグルクロン酸転移活性のみ，2つ目のドメインにおける変異体はキシロース転移活性のみをもっていた．この結果から，LARGEは1つ目のドメインがキシロース転移活性，2つ目のドメインがグルクロン酸転移活性をもつ二元機能酵素であることが示された．</p>
<h2>4．LARGEの形成する多糖構造がαジストログリカンにリガンド結合能をあたえる</h2>
<p>　αジストログリカンとLGドメインとの結合には負に荷電した多糖の関与が示唆されている<a href="#R9"><sup>9)</sup></a>．そこで，LARGEがαジストログリカンにキシロースと負の荷電をもつグルクロン酸を交互に転移することでLGドメイン結合性糖鎖をつくりうるかどうか調べた．まず，αキシロシドまたはβグルクロニドを受容体基質として用い，UDP-グルクロン酸とUDP-キシロースの共存のもとそれぞれ酵素反応を行い同様にHPLCにて解析したところ，いずれの基質に対してもキシロースとグルクロン酸の交互の転移を示すような多数のピークが検出された．そこでつぎに，この活性が<em>in vitro</em>での酵素反応においてαジストログリカンにリガンド結合能をあたえるのかどうか検討した．筋ジストロフィーのモデルマウスであるmydマウス<a href="#R10"><sup>10)</sup></a>（<em>LARGE</em>遺伝子に変異をもちαジストログリカンのLGドメイン結合性糖鎖の修飾異常をともなう）の筋肉からαジストログリカンを含む糖タンパク質抽出物を調製し，これを受容体基質とし，膜貫通領域を除いて可溶性とした組換えLARGEとUDP-グルクロン酸およびUDP-キシロースとともに酵素反応を行った．酵素反応物をウェスタンブロット法およびリガンドオーバーレイ法にて解析したところ，<em>in vitro</em>での酵素反応においてもLARGEのもつ糖転移活性がαジストログリカンにLGドメインをもつ細胞外マトリックスリガンド（ラミニン，アグリン，ニューレキシン）に対する結合能をあたえうることが示された．<br />
　さらに，LARGEがつくりだす糖鎖の詳細な構造を知るため，βグルクロニドを受容体基質とし，UDP-グルクロン酸とUDP-キシロースをくわえて酵素反応させたのち得られる多数のピークをそれぞれ分離精製し，質量分析とNMRを用いて構造解析を行った．これにより，LARGEが [-3-Xyl-α1,3-GlcA-β1-]（Xyl：キシロース，GlcA：グルクロン酸）の2糖単位のくり返しからなる多糖を合成することが明らかになった．<br />
　以上の結果から，LARGEがキシロース転移酵素ドメインとグルクロン酸転移酵素ドメインからなる糖転移酵素で，キシロースとグルクロン酸を交互に転移することでαジストログリカンにリガンド結合能をあたえることが示された．LARGEはリン酸化をうけた<em>O</em>-マンノース型糖鎖を修飾する経路に関与することが示唆されており<a href="#R11"><sup>11)</sup></a>，<em>O</em>-マンノース型糖鎖の合成にかかわるほかのタンパク質とともに，LARGEがαジストログリカンの機能的な糖鎖修飾において中心的な役割をはたしていることが示された．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　今回の結果は，αジストログリカンの糖鎖修飾とその細胞外マトリックスリガンドとの相互作用の分子機構についてその理解を助け，さらには，LARGEを利用したαジストログリカノパチーの治療法の開発にも役立てられていく可能性が期待できる．また，1つの酵素タンパク質が2つの糖転移活性をもち，2糖単位のくり返しからなる多糖を形成するという点でグリコサミノグリカンの合成とよく類似しており，このたび同定した糖鎖構造が新たなタイプのグリコサミノグリカン様糖鎖であることも糖鎖生物学上とても興味深い．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>Barresi, R. &#038; Campbell, K. P.</span>: <span class="ti">Dystroglycan: from biosynthesis to pathogenesis of human disease.</span> <span class='so'>J. Cell Sci., 119, 199-207 (2006)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16410545" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
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</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">稲森 啓一郎（Kei-ichiro Inamori）</span><br />
略歴：2001年 九州大学大学院医学系研究科 修了，同年 大阪大学大学院医学系研究科 博士研究員，2004年 同 特任助手を経て，2006年より米国Iowa大学Roy J. and Lucille A. Carver College of Medicineポストドクトラルフェロー．<br />
研究テーマ：αジストログリカンの糖鎖修飾機構．</p>
<p><strong>吉田-森口貴子（Takako Yoshida-Moriguchi）</strong><br />
米国Iowa大学Roy J. and Lucille A. Carver College of MedicineにてAssociate．</p>
<p><strong>Kevin P. Campbell</strong><br />
米国Iowa大学Roy J. and Lucille A. Carver College of MedicineにてProfessor．<br />
研究室URL：<a href="http://www.physiology.uiowa.edu/Campbell/" target="_blank">http://www.physiology.uiowa.edu/Campbell/</a>
</div>
<p>© 2012 稲森啓一郎・吉田-森口貴子・Kevin P. Campbell Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		</item>
		<item>
		<title>シナプス後膜におけるホスファチジルイノシトール-4-リン酸-5-キナーゼによる長期抑圧の誘導の制御</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4261</link>
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		<pubDate>Mon, 30 Jan 2012 07:38:45 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Neuron]]></category>
		<category><![CDATA[シナプス]]></category>
		<category><![CDATA[リン脂質]]></category>
		<category><![CDATA[可塑性]]></category>
		<category><![CDATA[神経科学]]></category>

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		<description><![CDATA[柚崎通介1・金保安則2 （1慶應義塾大学医学部 生理学教室，2筑波大学大学院人間総合科学研究科 生命システム医学専攻生理化学教室） email：柚崎通介，金保安則 NMDA receptor-mediated PIP5K activation to produce PI(4,5)P2 is essential for AMPA receptor endocytosis during LTD. Takamitsu Unoki, Shinji Matsuda, Wataru Kakegawa, Ngo Thai Bich Van, Kazuhisa Kohda, Atsushi Suzuki, Yuji Funakoshi, Hiroshi Hasegawa, Michisuke Yuzaki, Yasunori Kanaho Neuron, 73, 135-148 (2012) 要 約 　脳の記憶および学習の機能はニューロンのあいだのシナプス伝達効率の動的な変化，すなわち，シナプス可塑性によりささえられている．シナプス伝達効率を持続的に低下させるシナプス可塑性として長期抑圧があるが，それをもたらす分子機構には不明な点が多く残されている．長期抑圧を発現する分子機構のひとつとしてシナプス後膜におけるクラスリン依存性エンドサイトーシスによるAMPA受容体の除去がよく知られているが，神経活動の変化がどのようにしてこの機構を制御しているのかは不明であった．この研究では，NMDA受容体の活性化がホスファチジルイノシトール-4-リン酸-5-キナーゼのアイソザイムのひとつPIP5Kγ661の酵素活性を上昇させること，これにより産生されるホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸がAMPA受容体のクラスリン依存性エンドサイトーシスを亢進することが，海馬のニューロンにおける長期抑圧の発揮に必須であることを明らかにした． はじめに 　中枢神経系のニューロンにおいてシナプス伝達強度は動的に変化し可塑性を発揮する．脳の記憶および学習の基盤となる機構はシナプス可塑性により実現されていると考えられているため，その発現機構の解明は非常に興味深い課題である．シナプス伝達効率を持続的に低下させるシナプス可塑性としては長期抑圧（long-term depression：LTD）があり，その発現機構の一翼は，速い興奮性のシナプス伝達を担うグルタミン酸受容体であるAMPA受容体がクラスリン依存性エンドサイトーシスをうけシナプス後膜から除去されることによる1-3)（図1）．この引き金となるのはほかのグルタミン酸受容体であるNMDA受容体の活性化とそれにつづく細胞へのCa2+の流入であるが，NMDA受容体の活性化がいかにしてAMPA受容体のクラスリン依存性エンドサイトーシスを誘導するのか，その機序は不明であった． 図1　NMDA受容体の活性化はAMPA受容体のエンドサイトーシスをもたらす シナプス後部における主たるグルタミン酸受容体はAMPA受容体であり，その細胞膜における局在量の増減はシナプス伝達効率を変化させる．ほかのグルタミン酸受容体であるNMDA受容体の活性化はAMPA受容体のクラスリン依存性エンドサイトーシスを誘導し，シナプス後膜におけるAMPA受容体の数が減少することで長期抑圧がもたらされ，シナプス伝達効率が持続的に低下する． [Download] [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>柚崎通介<sup>1</sup>・金保安則<sup>2</sup></strong><br />
（<sup>1</sup>慶應義塾大学医学部 生理学教室，<sup>2</sup>筑波大学大学院人間総合科学研究科 生命システム医学専攻生理化学教室）<br />
email：<a href="mailto:myuzaki@a5.keio.jp">柚崎通介</a>，<a href="mailto:ykanaho@md.tsukuba.ac.jp">金保安則</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">NMDA receptor-mediated PIP5K activation to produce PI(4,5)P<sub>2</sub> is essential for AMPA receptor endocytosis during LTD.</span><br />
<span class="au">Takamitsu Unoki, Shinji Matsuda, Wataru Kakegawa, Ngo Thai Bich Van, Kazuhisa Kohda, Atsushi Suzuki, Yuji Funakoshi, Hiroshi Hasegawa, Michisuke Yuzaki, Yasunori Kanaho</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22243752" target="_blank"><em>Neuron</em>, <strong>73</strong>, 135-148 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4261"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　脳の記憶および学習の機能はニューロンのあいだのシナプス伝達効率の動的な変化，すなわち，シナプス可塑性によりささえられている．シナプス伝達効率を持続的に低下させるシナプス可塑性として長期抑圧があるが，それをもたらす分子機構には不明な点が多く残されている．長期抑圧を発現する分子機構のひとつとしてシナプス後膜におけるクラスリン依存性エンドサイトーシスによるAMPA受容体の除去がよく知られているが，神経活動の変化がどのようにしてこの機構を制御しているのかは不明であった．この研究では，NMDA受容体の活性化がホスファチジルイノシトール-4-リン酸-5-キナーゼのアイソザイムのひとつPIP5Kγ661の酵素活性を上昇させること，これにより産生されるホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸がAMPA受容体のクラスリン依存性エンドサイトーシスを亢進することが，海馬のニューロンにおける長期抑圧の発揮に必須であることを明らかにした．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　中枢神経系のニューロンにおいてシナプス伝達強度は動的に変化し可塑性を発揮する．脳の記憶および学習の基盤となる機構はシナプス可塑性により実現されていると考えられているため，その発現機構の解明は非常に興味深い課題である．シナプス伝達効率を持続的に低下させるシナプス可塑性としては長期抑圧（long-term depression：LTD）があり，その発現機構の一翼は，速い興奮性のシナプス伝達を担うグルタミン酸受容体であるAMPA受容体がクラスリン依存性エンドサイトーシスをうけシナプス後膜から除去されることによる<a href="#R1"><sup>1-3)</sup></a>（<a href="#F1">図1</a>）．この引き金となるのはほかのグルタミン酸受容体であるNMDA受容体の活性化とそれにつづく細胞へのCa<sup>2+</sup>の流入であるが，NMDA受容体の活性化がいかにしてAMPA受容体のクラスリン依存性エンドサイトーシスを誘導するのか，その機序は不明であった．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　NMDA受容体の活性化はAMPA受容体のエンドサイトーシスをもたらす</strong><br />
シナプス後部における主たるグルタミン酸受容体はAMPA受容体であり，その細胞膜における局在量の増減はシナプス伝達効率を変化させる．ほかのグルタミン酸受容体であるNMDA受容体の活性化はAMPA受容体のクラスリン依存性エンドサイトーシスを誘導し，シナプス後膜におけるAMPA受容体の数が減少することで長期抑圧がもたらされ，シナプス伝達効率が持続的に低下する．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Kanaho-Neuron-12.1.11-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Kanaho-Neuron-12.1.11-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Kanaho-Neuron-12.1.11-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　クラスリン依存性エンドサイトーシスには多くの分子が関与する．その初期の過程において細胞膜の微量構成リン脂質であるホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸（PI(4,5)P<sub>2</sub>）がアダプタータンパク質であるAP-2などを細胞膜に集積させることがクラスリン被覆小胞の形成に重要だと考えられている．また，哺乳動物においてホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸を産生する主要な代謝酵素はホスファチジルイノシトール-4-リン酸-5-キナーゼ（PIP5K）であり，とりわけ，脳においてはそのアイソザイムのひとつであるPIP5Kγ661がホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸の産生に必須であることが知られている<a href="#R4"><sup>4,5)</sup></a>．このことから，NMDA受容体の活性化による長期抑圧の誘導に際しこのPIP5Kγ661がなんらかの積極的な酵素活性の制御をうけてホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸を産生し，AMPA受容体のエンドサイトーシスを制御しうるのではないかと想定された．</p>
<h2>1．NMDA受容体の活性化はPIP5Kγ661の脱リン酸化をもたらす</h2>
<p>　長期抑圧の誘導の際にはNMDA受容体の活性化にともなう細胞へのCa<sup>2+</sup>の流入によりセリン/スレオニンホスファターゼであるカルシニューリンおよびプロテインホスファターゼ1が活性化され，AMPA受容体のサブユニットであるGluA1やエンドサイトーシスの後期の過程に関与するダイナミンなどさまざまなタンパク質を脱リン酸化することが知られている<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．海馬に由来する培養ニューロンをNMDA受容体に特異的なアゴニストであるNMDAにより刺激したのち，PIP5Kγ661のリン酸化の状態を解析したところ，定常状態においてはそのほとんどがリン酸化型であったPIP5Kγ661の顕著な脱リン酸化が観察された．さらに，種々の阻害剤を用いた解析から，この脱リン酸化もまたNMDA受容体からのCa<sup>2+</sup>の流入をうけカルシニューリンおよびプロテインホスファターゼ1を介して行われていることが明らかとなり，PIP5Kγ661がNMDA受容体の活性化に依存して脱リン酸化をうける新規の基質であることが明らかになった．</p>
<h2>2．NMDA受容体の活性化はシナプス後膜におけるPIP5Kγ661とAP-2との結合をひき起こす</h2>
<p>　以前に筆者らは，ホスファチジルイノシトール-4-リン酸-5-キナーゼのアイソザイムのうちPIP5Kγ661に特異的に存在するSer645の脱リン酸化により，PIP5Kγ661とAP-2のサブユニットであるβ2 adaptinのearドメインとの直接の結合がひき起こされることを見い出している<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．そこで，海馬に由来する培養ニューロンをNMDAにより刺激したのち，その細胞抽出液を標品として抗PIP5Kγ抗体を用いた免疫沈降実験を行ったところ，内在性のPIP5Kγ661とβ2 adaptinとの結合が見い出された．さらに，BiFC（bimolecular fluorescent complementation）法を用いて，この結合がニューロンのいかなる部位で生じたのかを空間的に解析した<a href="#R8"><sup>8)</sup></a>．具体的には，蛍光タンパク質VenusをN末端領域とC末端領域とに二分し，それぞれのサブフラグメントをβ2 adaptinのearドメインおよびPIP5Kγ661に融合させたタンパク質を用いた．これにより，PIP5Kγ661とβ2 adaptinのearドメインとの結合がひき起こされた場合のみVenusの立体構造が再構築され二者の結合を蛍光シグナルとして可視化できる．この融合タンパク質を海馬のニューロンに発現させてNMDAにより刺激したところ，刺激の2～3分のちにVenusの点状の蛍光シグナルがMAP-2陽性として観察される樹状突起にそって急速に出現した．さらに，この蛍光シグナルはシナプス後部に集積するPSD-95およびFアクチンと共局在した．このことより，NMDA受容体の活性化により脱リン酸化されたPIP5Kγ661はシナプス後部においてAP-2と結合することが示され，これはAMPA受容体がエンドサイトーシスをうける場と一致することが明らかになった．</p>
<h2>3．PIP5Kγ661とAP-2との結合はNMDA受容体に依存した長期抑圧の発揮に必須である</h2>
<p>　NMDA受容体の活性化に依存してひき起こされるシナプス後部でのPIP5Kγ661とAP-2との結合はどのような生理的な意義をもつのだろうか？　以前に筆者らは，PIP5Kγ661のSer645の脱リン酸化に依存してもたらされるPIP5Kγ661とAP-2との結合がPIP5Kγ661の酵素活性を上昇させること，この過程がシナプス前部におけるクラスリン依存性エンドサイトーシスによるシナプス小胞の再回収に必須であることを報告している<a href="#R7"><sup>7)</sup></a>．そこで，Ser645をAlaに置換することでこの残基の脱リン酸化状態を疑似したPIP5Kγ661のC末端領域の断片を海馬のニューロンに過剰発現させ内在性のPIP5Kγ661とAP-2との結合阻害を行ったところ，NMDAの刺激によるAMPA受容体のエンドサイトーシスは顕著に阻害された．また，マウス海馬の急速切片においてCA1領域の錐体細胞にこのSer645の脱リン酸化状態を疑似したPIP5Kγ661のC末端領域の断片を導入して電気生理学的な解析を試みたところ，PIP5Kγ661とAP-2との結合阻害は定常状態におけるシナプス伝達には顕著な影響を及ぼさなかったが，Schaffer側枝を低頻度で刺激することでNMDA受容体に依存的に誘導されるCA1領域の錐体細胞における長期抑圧は顕著に阻害された．このことから，NMDA受容体の活性化に依存したPIP5Kγ661とAP-2との結合はAMPA受容体のエンドサイトーシスおよび長期抑圧の発揮に必須であることが明らかになった．</p>
<h2>4．PIP5Kγ661の活性化によるホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸の産生はNMDA受容体に依存した長期抑圧の誘導に必須である</h2>
<p>　さきに述べたとおり，PIP5Kγ661とAP-2との結合はPIP5Kγ661の酵素活性を顕著に上昇させる．したがって，AP-2との結合により活性化されたPIP5Kγ661がシナプス後部の局所におけるホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸の量の上昇をもたらし，これがAMPA受容体のエンドサイトーシスを誘導する引き金となることが想定された．そこで，PIP5Kγ661の酵素活性がAMPA受容体のエンドサイトーシスに必要であるかどうかを検討するため，海馬に由来する培養ニューロンに酵素活性を欠失したPIP5Kγ661変異体を過剰発現させNMDAにより刺激したところ，AMPA受容体のエンドサイトーシスは顕著に阻害された．同様に，shRNAの発現によりPIP5Kγ661をノックダウンした際にもNMDA依存性のAMPA受容体のエンドサイトーシスは阻害された．また，CA1領域の錐体細胞に組換え型シンドビスウイルスを感染させることにより酵素活性を欠失したPIP5Kγ661変異体を過剰発現させた海馬の急速切片を用いて電気生理学的な解析を行ったところ，CA1領域の錐体細胞における長期抑圧の誘導は顕著に阻害された．このことより，PIP5Kγ661の活性化によるホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸の産生がNMDA受容体に依存性のAMPA受容体のエンドサイトーシスならびに長期抑圧の誘導に必須であることが示された．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　以上の知見を考え合わせ，NMDA受容体に依存性のAMPA受容体のエンドサイトーシスをもたらす新規の分子機構を提唱した（<a href="#F2">図2</a>）．すなわち，1）NMDA受容体を介したCa<sup>2+</sup>の流入により活性化されたカルシニューリンおよびプロテインホスファターゼ1がPIP5Kγ661を脱リン酸化する．2）脱リン酸化されたPIP5Kγ661はシナプス後部においてAP-2と結合する．3）AP-2との結合によりPIP5Kγ661は活性化され細胞膜において局所的なホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸の産生をもたらす．4）産生されたホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸はAP-2などを集積させクラスリン依存性エンドサイトーシスによるAMPA受容体の細胞内への取り込みを亢進させる．その結果，シナプス後膜のAMPA受容体の数が減少し，シナプス伝達効率が低下するため長期抑圧がもたらされる．これは，神経活動の変化がAMPA受容体の局在を変化させるために，その取り込み機構自体を積極的に制御するという新たなモデルである．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　長期抑圧の誘導においてAMPA受容体のエンドサイトーシスをもたらす分子機構のモデル</strong><br />
1）カルシニューリンおよびプロテインホスファターゼ1（PP1）はPIP5Kγ661を脱リン酸化する．2）脱リン酸化されたPIP5Kγ661はシナプス後部においてAP-2と結合する．3）活性化したPIP5Kγ661はホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸（PI(4,5)P<sub>2</sub>）を産生する．4）ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸はクラスリン依存性エンドサイトーシスによるAMPA受容体の細胞内への取り込みを亢進させる．P：リン酸化．<br />
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<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Kanaho-Neuron-12.1.11-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Kanaho-Neuron-12.1.11-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>文 献</h2>
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<li id="R8"><span class='au'>Kerppola, T. K.</span>: <span class="ti">Design and implementation of bimolecular fluorescence complementation (BiFC) assays for the visualization of protein interactions in living cells.</span> <span class='so'>Nat. Protoc., 1, 1278-1286 (2006)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17406412" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">柚崎 通介（Michisuke Yuzaki）</span><br />
慶應義塾大学医学部 教授．</p>
<p><strong>金保 安則（Yasunori Kanaho）</strong><br />
筑波大学大学院人間総合科学研究科 教授．
</div>
<p>© 2012 柚崎通介・金保安則 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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		<title>局所において同期したシナプス入力</title>
		<link>http://first.lifesciencedb.jp/archives/4263</link>
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		<pubDate>Mon, 30 Jan 2012 05:16:37 +0000</pubDate>
		<dc:creator>iida</dc:creator>
				<category><![CDATA[Science]]></category>
		<category><![CDATA[イメージング]]></category>
		<category><![CDATA[シナプス]]></category>
		<category><![CDATA[可塑性]]></category>
		<category><![CDATA[神経科学]]></category>

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		<description><![CDATA[池谷裕二・高橋直矢 （東京大学大学院薬学系研究科 薬品作用学教室） email：池谷裕二 Locally synchronized synaptic inputs. Naoya Takahashi, Kazuo Kitamura, Naoki Matsuo, Mark Mayford, Masanobu Kano, Norio Matsuki, Yuji Ikegaya Science, 335, 353-356 (2012) 要 約 　脳のはたらきの基本には，ニューロンどうしが巧みにつながり“配線”された神経回路のあることが知られている．しかし，どこまで微細な構造のレベルまで機能的な配線がなされているのかについては知られていない．筆者らは，多くのシナプス活動を観察できる新しい撮影技術“大規模スパインイメージング法”を開発した．この手法によりニューロンが1/1000ミリレベルで局所に集中した回路を正確に編んでいることを証明し，数十年に及んだ神経科学界の重要な議論にひとつのめどをつけた．また，いくつかの状況証拠から，長期増強という学習プロセスにより精度の高い配線が実現することを示した．以上の結果は，脳が精細な配線機構にもとづき回路を編成していることを示唆しており，脳がどう機能を発揮しているのかについて基本的な知見をあたえるものである．今後，この方法の活用が記憶や学習の分子機構，神経疾患の原因の解明に役立つことが期待される． はじめに 　細胞体より伸びる樹状突起にはスパインとよばれる多数の後シナプス構造が存在する．上流のニューロンからの情報はシナプス入力としてスパインを介し受容され，樹状突起において統合される．このとき，入力は単調に加算されるわけではない．複雑に分岐した突起の形態や，そこに発現する種々のイオンチャネルや受容体により加算様式は非線形となる1)．すなわち“どのスパインが，いつ，どこで入力をうけたか”という入力の時空間パターンがニューロンの発火活動のパターンに大きく影響する2,3)．しかし，実際のニューロンがどのようなパターンのシナプス入力をうけているのかについてはほとんどわかっていない． 　現在，統合の過程を大きく左右する同期したシナプス入力の空間パターンについて2つのモデルが提唱されている．1つ目は，同期した入力は樹状突起において局所に収束するというクラスター入力モデルである（図1a）．2つ目は，同期した入力は樹状突起において全体に分布するという分散型入力モデルである（図1b）．クラスター入力モデルはニューロンの一部を強く活動させるのに有利とされ，一方，分散型入力モデルは情報のロスが少ないという利点のあるものと考えられている．いずれのモデルが正しいのかについては数十年来の議論の的となっているものの，これを検証するための実験技術がなかったためこれまでに明確な解答は得られていなかった． 図1　同期したシナプス入力の空間パターンについての2つの仮説 （a）クラスター入力モデル．同期するニューロン群が相手のニューロンの線維の近くに集中的に投射している． （b）分散型入力モデル．同期するニューロン群に秩序はみられない． [Download] 1．大規模スパインイメージング法の確立 　現在，活動しているニューロンの観測にはCa2+イメージング法が広く利用されており，この手法では発火したニューロンを検出するのに活動時に上昇する細胞内Ca2+により蛍光を発する色素（Ca2+蛍光指示薬）を用いる．しかし，この蛍光は微弱なため，従来の手法では強いレーザー光が当たることにより観察中に細胞が死んでしまうことを回避できなかった．今回，筆者らは，光透過性の高い光学レンズと超高感度のデジタルカメラを用いることなど多くの改良を行い“大規模スパインイメージング法”を開発した．その結果，多数のシナプスから一斉にCa2+活動を計測することができるようになった． 　まず，海馬CA3野の自発的なシナプス入力に着目しその時空間パターンの解明に取り組んだ．生理学的な研究で汎用される急性脳切片では，切片を作製する過程で大部分の神経投射が切断されるため自発的な入力はほとんど観察されない．そこで，海馬切片を一定の期間（12～19日間）培養し神経投射が修復された培養切片を用いて実験を行った．このような培養切片の海馬CA3野では豊富な再帰性のシナプスが保持され，生体の脳で観測される同期性のシナプス入力がin vitroにおいても再現されている4)． 　海馬CA3野の錐体細胞からパッチクランプ記録を行い，ガラス電極をつうじ細胞体にCa2+蛍光指示薬Fluo-5Fを注入した（図2，ステップ1）．シナプス入力をうけたスパインではNMDA受容体を介したCa2+流入が生じ，それをスパインに限局した蛍光の上昇としてとらえることができる．そして，複数のスパインについて同時にその蛍光の変化を参照することで，どのスパインが，いつ，どこで入力をうけたのかというシナプス入力のパターンがわかる．この研究では，同時に数百個ものスパインから個別にシナプスの活動パターンを計測することに成功した．観測されたスパインの配置は，実験ののち再構築された樹状突起の形態にもとづいて三次元的に同定し（図2，ステップ2），それぞれのスパインでの入力の時系列パターンはラスタープロットとして表記した（図2，ステップ3）． 図2　大規模スパインイメージング法 ステップ1：シナプス入力をスパインのCa2+活動として撮影する．ステップ2：スパインの位置を三次元的に再構築しそれぞれのシナプスのあいだの距離を測定する．ステップ3：活動パターンの時空間構造（とくに，同期活動）を解析する．ステップ4：同期活動したシナプスを空間プロットする． [Download] 　まず，それぞれのスパインの空間位置と入力頻度との関係を検討した．細胞体より尖端側および基底側，もしくは，近位および遠位でのそれぞれのスパインの入力頻度を比較したが，それらに有意な違いは観察されなかった．興味深いことに，スパインのあいだでの入力頻度の偏りは大きく，20％のスパインが全体の入力数のうち80％程度をしめていることがわかった．一部のシナプスが大部分の情報を伝達しているものと考察された． 2．同期した入力の空間特性 　大規模スパインイメージング法により海馬CA3野におけるニューロンのシナプス活動を観察していると，しばしば同期したシナプス入力にともなって複数のスパインが同時に活動するようすがみられた（図2，ステップ4）．ここでは，それら同時に入力をうけたスパインの空間分布を検討した．100ミリ秒以内に同期したスパインの対の樹状突起にそった距離を測定したところ，8μm以内に近接したスパインのあいだでは有意に高い頻度で同期した入力をうけていることを見い出した．同様の結果は，生体のマウスの皮質ニューロンの樹状突起においても確認された．すなわち，麻酔をしたマウスのバレル皮質2/3層の錐体細胞からパッチクランプ記録を行い自発的なシナプス活動を観察したところ，6μm以内の近傍のスパインのあいだで同期した入力が多くみられた． 　以上の結果はクラスター入力モデル（図1a）を支持していた．そこで，以下では，同期した入力をうけて活動する近傍（10μm以内）のスパイン群をアセンブレット（assemblet）と定義し，その特性についてより詳細な検討を行った． 　まず，局在化した同期入力の成因を探った．クラスター入力が観察される理由として，つぎの3つの可能性が考えられた．1）同期発火したニューロンからの投射が近傍のスパインのあいだで収束している，2）同一の軸索が近傍のスパイン群に対し複数のシナプスを形成している，3）単一のシナプスから放出されたグルタミン酸があふれ出ることにより近傍のスパインが同時に活性化される．まず，2）および3）の妥当性を検証するため，電気刺激により同時に活動させたスパインの空間分布を計測した．2）および3）が正しいのならば，海馬CA3野のニューロンの入力層である放線層を刺激した場合にも同期入力の局在化がみられるはずである．ところが，刺激により同期したスパインの局在化は観測されなかった．さらに，2）については，シナプス結合したニューロン対の形態を可視化することにより結合構造を精査したが，同一の軸索が複数の近傍スパインに連続して投射することはまれであった．以上の結果から，自発入力でみられた局在性は2）や3）に起因するとは考えにくく，1）同期発火するニューロン群からの収束性のシナプス投射を反映しているものと考えられた． 　アセンブレットの統計値を以下にまとめる．観測した全スパインのうちアセンブレットに参加したのは31.5％であり，全スパイン活動のうちアセンブレットを形成した活動は29.5％であった．それぞれのアセンブレットには3.6±0.7個のスパインが含まれており，樹状突起は4.7±3.3μmの広がりをもっていた．アセンブレットの28.0％は2～3分間の観察時間においてくり返し発生した．特定のアセンブレットに参加したスパインのうち58.9％は別のアセンブレットにも参加した．こうした挙動はスパインの活動をランダム化した疑似データにおいては観察されなかったことから，自発的なシナプスの活動に特有の現象であるものと考えられた． 3．クラスター入力の分子機構 　では，同期した入力を樹状突起において局在化させるようなシナプス回路はどのように形成されるのであろうか？　観測したスパインのサイズを定量化したところ，アセンブレットに参加するスパインはほかのスパインと比較して有意に大きいことが見い出された．スパインの大きさはそのシナプスがうける入力強度と相関し，その変化は長期増強（long term potentiation：LTP，NMDA受容体に依存したシナプス可塑性の一種で，記憶の素過程と考えられている）と関連することが知られている5)．そこで，海馬の切片をNMDA受容体の遮断薬であるAP5の存在下で培養したところクラスター入力は観察されなかった．同様に，培養日数の短い標本（3～4日間）を用いた場合にもクラスター入力は観察されなかったことから，クラスター入力の形成にはNMDA受容体に依存したシナプス回路の編成が関与していることが推察された． 4．局所的なシナプス可塑性 [...]]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><strong>池谷裕二・高橋直矢</strong><br />
（東京大学大学院薬学系研究科 薬品作用学教室）<br />
email：<a href="mailto:ikegaya@mol.f.u-tokyo.ac.jp">池谷裕二</a></p>
<div class="reference">
<span class="ti">Locally synchronized synaptic inputs.</span><br />
<span class="au">Naoya Takahashi, Kazuo Kitamura, Naoki Matsuo, Mark Mayford, Masanobu Kano, Norio Matsuki, Yuji Ikegaya</span><br />
<span class="so"><a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22267814" target="_blank"><em>Science</em>, <strong>335</strong>, 353-356 (2012)</a></span></div>
<p><span id="more-4263"></span></p>
<h2>要 約</h2>
<p>　脳のはたらきの基本には，ニューロンどうしが巧みにつながり“配線”された神経回路のあることが知られている．しかし，どこまで微細な構造のレベルまで機能的な配線がなされているのかについては知られていない．筆者らは，多くのシナプス活動を観察できる新しい撮影技術“大規模スパインイメージング法”を開発した．この手法によりニューロンが1/1000ミリレベルで局所に集中した回路を正確に編んでいることを証明し，数十年に及んだ神経科学界の重要な議論にひとつのめどをつけた．また，いくつかの状況証拠から，長期増強という学習プロセスにより精度の高い配線が実現することを示した．以上の結果は，脳が精細な配線機構にもとづき回路を編成していることを示唆しており，脳がどう機能を発揮しているのかについて基本的な知見をあたえるものである．今後，この方法の活用が記憶や学習の分子機構，神経疾患の原因の解明に役立つことが期待される．</p>
<h2>はじめに</h2>
<p>　細胞体より伸びる樹状突起にはスパインとよばれる多数の後シナプス構造が存在する．上流のニューロンからの情報はシナプス入力としてスパインを介し受容され，樹状突起において統合される．このとき，入力は単調に加算されるわけではない．複雑に分岐した突起の形態や，そこに発現する種々のイオンチャネルや受容体により加算様式は非線形となる<a href="#R1"><sup>1)</sup></a>．すなわち“どのスパインが，いつ，どこで入力をうけたか”という入力の時空間パターンがニューロンの発火活動のパターンに大きく影響する<a href="#R2"><sup>2,3)</sup></a>．しかし，実際のニューロンがどのようなパターンのシナプス入力をうけているのかについてはほとんどわかっていない．<br />
　現在，統合の過程を大きく左右する同期したシナプス入力の空間パターンについて2つのモデルが提唱されている．1つ目は，同期した入力は樹状突起において局所に収束するというクラスター入力モデルである（<a href="#F1">図1a</a>）．2つ目は，同期した入力は樹状突起において全体に分布するという分散型入力モデルである（<a href="#F1">図1b</a>）．クラスター入力モデルはニューロンの一部を強く活動させるのに有利とされ，一方，分散型入力モデルは情報のロスが少ないという利点のあるものと考えられている．いずれのモデルが正しいのかについては数十年来の議論の的となっているものの，これを検証するための実験技術がなかったためこれまでに明確な解答は得られていなかった．</p>
<p><a name="F1"></a>
<div id="fig1-caption-text" style="display: none;"><strong>図1　同期したシナプス入力の空間パターンについての2つの仮説</strong><br />
（a）クラスター入力モデル．同期するニューロン群が相手のニューロンの線維の近くに集中的に投射している．<br />
（b）分散型入力モデル．同期するニューロン群に秩序はみられない．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Ikegaya-Science-12.1.20-Fig.1.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure1" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig1-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig1-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Ikegaya-Science-12.1.20-Fig.1.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Ikegaya-Science-12.1.20-Fig.1.png" alt="figure1" width="200px" /></a></div><div id="fig1-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig1-caption').innerHTML = $('fig1-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<h2>1．大規模スパインイメージング法の確立</h2>
<p>　現在，活動しているニューロンの観測にはCa<sup>2+</sup>イメージング法が広く利用されており，この手法では発火したニューロンを検出するのに活動時に上昇する細胞内Ca<sup>2+</sup>により蛍光を発する色素（Ca<sup>2+</sup>蛍光指示薬）を用いる．しかし，この蛍光は微弱なため，従来の手法では強いレーザー光が当たることにより観察中に細胞が死んでしまうことを回避できなかった．今回，筆者らは，光透過性の高い光学レンズと超高感度のデジタルカメラを用いることなど多くの改良を行い“大規模スパインイメージング法”を開発した．その結果，多数のシナプスから一斉にCa<sup>2+</sup>活動を計測することができるようになった．<br />
　まず，海馬CA3野の自発的なシナプス入力に着目しその時空間パターンの解明に取り組んだ．生理学的な研究で汎用される急性脳切片では，切片を作製する過程で大部分の神経投射が切断されるため自発的な入力はほとんど観察されない．そこで，海馬切片を一定の期間（12～19日間）培養し神経投射が修復された培養切片を用いて実験を行った．このような培養切片の海馬CA3野では豊富な再帰性のシナプスが保持され，生体の脳で観測される同期性のシナプス入力が<em>in vitro</em>においても再現されている<a href="#R4"><sup>4)</sup></a>．<br />
　海馬CA3野の錐体細胞からパッチクランプ記録を行い，ガラス電極をつうじ細胞体にCa<sup>2+</sup>蛍光指示薬Fluo-5Fを注入した（<a href="#F2">図2</a>，ステップ1）．シナプス入力をうけたスパインではNMDA受容体を介したCa<sup>2+</sup>流入が生じ，それをスパインに限局した蛍光の上昇としてとらえることができる．そして，複数のスパインについて同時にその蛍光の変化を参照することで，どのスパインが，いつ，どこで入力をうけたのかというシナプス入力のパターンがわかる．この研究では，同時に数百個ものスパインから個別にシナプスの活動パターンを計測することに成功した．観測されたスパインの配置は，実験ののち再構築された樹状突起の形態にもとづいて三次元的に同定し（<a href="#F2">図2</a>，ステップ2），それぞれのスパインでの入力の時系列パターンはラスタープロットとして表記した（<a href="#F2">図2</a>，ステップ3）．</p>
<p><a name="F2"></a>
<div id="fig2-caption-text" style="display: none;"><strong>図2　大規模スパインイメージング法</strong><br />
ステップ1：シナプス入力をスパインのCa<sup>2+</sup>活動として撮影する．ステップ2：スパインの位置を三次元的に再構築しそれぞれのシナプスのあいだの距離を測定する．ステップ3：活動パターンの時空間構造（とくに，同期活動）を解析する．ステップ4：同期活動したシナプスを空間プロットする．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Ikegaya-Science-12.1.20-Fig.2.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure2" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig2-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig2-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Ikegaya-Science-12.1.20-Fig.2.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Ikegaya-Science-12.1.20-Fig.2.png" alt="figure2" width="200px" /></a></div><div id="fig2-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig2-caption').innerHTML = $('fig2-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　まず，それぞれのスパインの空間位置と入力頻度との関係を検討した．細胞体より尖端側および基底側，もしくは，近位および遠位でのそれぞれのスパインの入力頻度を比較したが，それらに有意な違いは観察されなかった．興味深いことに，スパインのあいだでの入力頻度の偏りは大きく，20％のスパインが全体の入力数のうち80％程度をしめていることがわかった．一部のシナプスが大部分の情報を伝達しているものと考察された．</p>
<h2>2．同期した入力の空間特性</h2>
<p>　大規模スパインイメージング法により海馬CA3野におけるニューロンのシナプス活動を観察していると，しばしば同期したシナプス入力にともなって複数のスパインが同時に活動するようすがみられた（<a href="#F2">図2</a>，ステップ4）．ここでは，それら同時に入力をうけたスパインの空間分布を検討した．100ミリ秒以内に同期したスパインの対の樹状突起にそった距離を測定したところ，8μm以内に近接したスパインのあいだでは有意に高い頻度で同期した入力をうけていることを見い出した．同様の結果は，生体のマウスの皮質ニューロンの樹状突起においても確認された．すなわち，麻酔をしたマウスのバレル皮質2/3層の錐体細胞からパッチクランプ記録を行い自発的なシナプス活動を観察したところ，6μm以内の近傍のスパインのあいだで同期した入力が多くみられた．<br />
　以上の結果はクラスター入力モデル（<a href="#F1">図1a</a>）を支持していた．そこで，以下では，同期した入力をうけて活動する近傍（10μm以内）のスパイン群をアセンブレット（assemblet）と定義し，その特性についてより詳細な検討を行った．<br />
　まず，局在化した同期入力の成因を探った．クラスター入力が観察される理由として，つぎの3つの可能性が考えられた．1）同期発火したニューロンからの投射が近傍のスパインのあいだで収束している，2）同一の軸索が近傍のスパイン群に対し複数のシナプスを形成している，3）単一のシナプスから放出されたグルタミン酸があふれ出ることにより近傍のスパインが同時に活性化される．まず，2）および3）の妥当性を検証するため，電気刺激により同時に活動させたスパインの空間分布を計測した．2）および3）が正しいのならば，海馬CA3野のニューロンの入力層である放線層を刺激した場合にも同期入力の局在化がみられるはずである．ところが，刺激により同期したスパインの局在化は観測されなかった．さらに，2）については，シナプス結合したニューロン対の形態を可視化することにより結合構造を精査したが，同一の軸索が複数の近傍スパインに連続して投射することはまれであった．以上の結果から，自発入力でみられた局在性は2）や3）に起因するとは考えにくく，1）同期発火するニューロン群からの収束性のシナプス投射を反映しているものと考えられた．<br />
　アセンブレットの統計値を以下にまとめる．観測した全スパインのうちアセンブレットに参加したのは31.5％であり，全スパイン活動のうちアセンブレットを形成した活動は29.5％であった．それぞれのアセンブレットには3.6±0.7個のスパインが含まれており，樹状突起は4.7±3.3μmの広がりをもっていた．アセンブレットの28.0％は2～3分間の観察時間においてくり返し発生した．特定のアセンブレットに参加したスパインのうち58.9％は別のアセンブレットにも参加した．こうした挙動はスパインの活動をランダム化した疑似データにおいては観察されなかったことから，自発的なシナプスの活動に特有の現象であるものと考えられた．</p>
<h2>3．クラスター入力の分子機構</h2>
<p>　では，同期した入力を樹状突起において局在化させるようなシナプス回路はどのように形成されるのであろうか？　観測したスパインのサイズを定量化したところ，アセンブレットに参加するスパインはほかのスパインと比較して有意に大きいことが見い出された．スパインの大きさはそのシナプスがうける入力強度と相関し，その変化は長期増強（long term potentiation：LTP，NMDA受容体に依存したシナプス可塑性の一種で，記憶の素過程と考えられている）と関連することが知られている<a href="#R5"><sup>5)</sup></a>．そこで，海馬の切片をNMDA受容体の遮断薬であるAP5の存在下で培養したところクラスター入力は観察されなかった．同様に，培養日数の短い標本（3～4日間）を用いた場合にもクラスター入力は観察されなかったことから，クラスター入力の形成にはNMDA受容体に依存したシナプス回路の編成が関与していることが推察された．</p>
<h2>4．局所的なシナプス可塑性</h2>
<p>　最後に，シナプス可塑性の樹状突起における空間パターンについての検討を行った．経験や学習にともない新規に合成されるAMPA受容体は直前に活性化されたスパインに輸送され長期増強を導くことが知られている．そこで，AMPA受容体のGluR1サブユニットにGFPを結合した遺伝子改変マウスを用いてその空間局在パターンの検討を行った<a href="#R6"><sup>6)</sup></a>．この遺伝子改変マウスはTet-On/Off系により時期特異的にc-<em>fos</em>遺伝子プロモーターのもとGFP-GluR1融合タンパク質の発現を制御することでき，特定の行動課題において活動したニューロンにおけるGluR1の細胞内局在を観察することが可能である．この遺伝子改変マウスを新しい環境において500秒間のあいだ自由に探索させたところ，約25％のニューロンにおいてGluR1の発現が確認された．そして，ニューロンの樹状突起においてGluR1をもつスパインの空間配置を検討した結果，8μm以内に局在化していることを見い出した．つまり，長期増強は近傍のスパインのあいだで生じやすいことがわかった．局所的な長期増強の分子機構についてはいくつかの<em>in vitro</em>での研究により局所的な脱分極や可塑性に関連する分子の拡散が寄与するというモデルが提唱されている<a href="#R7"><sup>7-9)</sup></a>．今回，得られた結果にもこうした分子機構が関与しているものと解釈された．</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>　筆者らは，同期した入力が近傍のスパインのあいだで選択的に集束することを明らかにした．これは，クラスター入力モデル（<a href="#F1">図1a</a>）を支持する結果であった．培養切片標本という外部入力から単離された系において観察されたことや薬理学的な実験の結果から，クラスター入力はNMDA受容体に依存した活動の履歴により獲得され，ニューロンの情報処理のプロセスに備わった本質的な特性であるものと考えられた．また，遺伝子改変マウスにより示された局所的なシナプス可塑性の機構の存在から，神経回路は自律的にクラスター入力を形成するのに寄与しているものと推測された．筆者らが提案する，クラスター入力の形成過程を示す（<a href="#F3">図3</a>）．初期過程ではランダムに結合したシナプスは，しだいに刈り込まれていく．その際，局所的な長期増強がはたらくことで近傍に投射する同期性のシナプスがより選択的に保持され，そのほかのシナプスは刈り込まれる．この一連のプロセスをくり返すことで最終的にクラスター入力が形成される．</p>
<p><a name="F3"></a>
<div id="fig3-caption-text" style="display: none;"><strong>図3　クラスター入力を生じさせるため想定される3つのステップ</strong><br />
ステップ1：初期のニューロン回路では結合の相手の選定は無秩序である．ステップ2：たまたま近くに同期した入力をあたえるような結合ができると長期増強が生じ強化される．ステップ3：強化されなかったシナプスが消えることでクラスター入力をもつ回路が残存する．<br />
<a href="http://first.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Ikegaya-Science-12.1.20-Fig.3.jpg" target="_blank">[Download]</a></div>
<div id="figure3" class="hs-figure"><div class="hs-figure-box"><a class="highslide" title="$(fig3-caption-text)" onclick="return hs.expand(this, {captionText: $('fig3-caption-text').innerHTML})" href="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Ikegaya-Science-12.1.20-Fig.3.png" target="_blank"><img src="/wordpress/wp-content/uploads/2012/01/Ikegaya-Science-12.1.20-Fig.3.png" alt="figure3" width="200px" /></a></div><div id="fig3-caption" class="hs-figure-caption"></div></div><script type='text/javascript'>$('fig3-caption').innerHTML = $('fig3-caption-text').innerHTML;</script><div style='clear:both;'></div>
<p>　今回，見い出されたクラスター入力は樹状突起における非線形的な入力の加算を促し，個々のニューロンがもつ演算能力を高めているものと考えられる．また，近年，近接したスパインが異なる情報を中継しているという報告がなされており<a href="#R10"><sup>10,11)</sup></a>，局所での同期がそれらの情報を統合するような関連学習に寄与している可能性もある．この研究では，スパインのイメージングでの時間解像度が20 Hz程度に制限されていたため，アセンブレットのより詳細な内部構造，すなわち，スパインが活性化される順番を決定することはできなかった．海馬で観測されるリップル波では一部のニューロンが特定の順番で一斉に発火することが知られている．これらはミリ秒オーダーの時間精度で生じており，事実，このレベルでの入力の時間差が樹状突起における入力の加算に大きく影響することが報告されている<a href="#R3"><sup>3)</sup></a>．現在，筆者らは，このイメージング技術の時間分解能の向上に取り組んでおり，今後は，より詳細なシナプス入力の時空間特性にせまっていきたい．</p>
<h2>文 献</h2>
<ol>
<li id="R1"><span class='au'>London, M. &#038; Hausser, M.</span>: <span class="ti">Dendritic computation.</span> <span class='so'>Annu. Rev. Neurosci., 28, 503-532 (2005)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16033324" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R2"><span class='au'>Larkum, M. E., Zhu, J. J. &#038; Sakmann, B.</span>: <span class="ti">A new cellular mechanism for coupling inputs arriving at different cortical layers.</span> <span class='so'>Nature, 398, 338-341 (1999)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10192334" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R3"><span class='au'>Branco, T., Clark, B. A. &#038; Hausser, M.</span>: <span class="ti">Dendritic discrimination of temporal input sequences in cortical neurons.</span> <span class='so'>Science, 329, 1671-1675 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20705816" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R4"><span class='au'>Takahashi, N., Sasaki, T., Matsumoto, W. et al.</span>: <span class="ti">Circuit topology for synchronizing neurons in spontaneously active networks.</span> <span class='so'>Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 107, 10244-10249 (2010)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20479225" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R5"><span class='au'>Matsuzaki, M., Honkura, N., Ellis-Davies, G. C. et al.</span>: <span class="ti">Structural basis of long-term potentiation in single dendritic spines.</span> <span class='so'>Nature, 429, 761-766 (2004)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15190253" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R6"><span class='au'>Matsuo, N., Reijmers, L. &#038; Mayford, M.</span>: <span class="ti">Spine-type-specific recruitment of newly synthesized AMPA receptors with learning.</span> <span class='so'>Science, 319, 1104-1107 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18292343" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R7"><span class='au'>Harvey, C. D. &#038; Svoboda, K.</span>: <span class="ti">Locally dynamic synaptic learning rules in pyramidal neuron dendrites.</span> <span class='so'>Nature, 450, 1195-1200 (2007)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18097401" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R8"><span class='au'>Losonczy, A., Makara, J. K. &#038; Magee, J. C.</span>: <span class="ti">Compartmentalized dendritic plasticity and input feature storage in neurons.</span> <span class='so'>Nature, 452, 436-441 (2008)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18368112" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R9"><span class='au'>Govindarajan, A., Israely, I., Huang, S. Y. et al.</span>: <span class="ti">The dendritic branch is the preferred integrative unit for protein synthesis-dependent LTP.</span> <span class='so'>Neuron, 69, 132-146 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21220104" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R10"><span class='au'>Chen, X., Leischner, U., Rochefort, N. L. et al.</span>: <span class="ti">Functional mapping of single spines in cortical neurons <em>in vivo</em>.</span> <span class='so'>Nature, 475, 501-505 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21706031" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
<li id="R11"><span class='au'>Varga, Z., Jia, H., Sakmann, B. et al.</span>: <span class="ti">Dendritic coding of multiple sensory inputs in single cortical neurons in vivo.</span> <span class='so'>Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 108, 15420-15425 (2011)[<a href="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21876170" target="_blank">PubMed</a>]</span></li>
</ol>
<div class="au-profile">
<h2>著者プロフィール</h2>
<p><span class="author">池谷 裕二（Yuji Ikegaya）</span><br />
略歴：1998年 東京大学大学院薬学系研究科博士課程 修了，同年 同 助手，2002年 米国Columbia大学 客員研究員，2006年 東京大学大学院薬学系研究科 講師を経て，2007年より同 准教授．<br />
研究テーマ：システム薬理学，脳回路学．<br />
抱負：大脳皮質や海馬の研究をつうじて脳の健康や老化について探求したい．</p>
<p><strong>高橋 直矢（Naoya Takahashi）</strong><br />
東京大学大学院薬学系研究科 助教．
</div>
<p>© 2012 池谷裕二・高橋直矢 Licensed under <a href="http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/" target="_blank">CC 表示 2.1 日本</a>
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