ライフサイエンス 新着論文レビュー

First author's

ケモカイン受容体CXCR6は自然リンパ球の組織における分布を制御する

2014年12月5日

佐藤 (高山) 尚子
(フランスPasteur Institute,Department of Immunology,Unit of Innate Immunity)
email:佐藤 (高山) 尚子
DOI: 10.7875/first.author.2014.147

The chemokine receptor CXCR6 controls the functional topography of interleukin-22 producing intestinal innate lymphoid cells.
Naoko Satoh-Takayama, Nicolas Serafini, Thomas Verrier, Abdessalem Rekiki, Jean-Christophe Renauld, Gad Frankel, James P. Di Santo
Immunity, 41, 776-788 (2014)

要 約

 近年,インターロイキン22が腸管上皮の保護に重要な役割をはたすことが知られてきたが,インターロイキン22を産生する細胞がどのように制御されているのかについては不明な点が多かった.今回,筆者らは,3型自然リンパ球およびケモカイン受容体であるCX3CR1を発現する樹状細胞が,ケモカインCXCL16とケモカイン受容体CXCR6とのクロストークを介し制御されていることをつきとめた.さらに,このCX3CR1陽性の樹状細胞はCitrobacter rodentiumに感染した際にインターロイキン23を産生し,NKp46陽性3型自然リンパ球を活性化しインターロイキン22の産生を誘導していることが明らかにされた.これらの知見により,NKp46陽性3型自然リンパ球によるインターロイキン22の産生は病原性細菌に感染したのちCX3CR1陽性の樹状細胞により誘導され,腸管上皮の保護に重要な役割をはたしその恒常性の維持に寄与していることが明らかになり,不明な点の多かった自然リンパ球の制御の解明に一石が投じられた.

はじめに

 近年,まったく新しい免疫細胞として自然リンパ球が同定された.自然リンパ球は発現する転写因子およびサイトカインの産生能などにより3つに分類され,1型自然リンパ球はインターフェロンγを産生する自然リンパ球,2型自然リンパ球はインターロイキン5やインターロイキン13などの2型サイトカインを産生する自然リンパ球をさす.3型自然リンパ球は転写因子RORγtを発現する自然リンパ球をさし,CD4を発現するリンパ組織誘導細胞やナチュラルキラー細胞に発現するNKp46に陽性の自然リンパ球だけでなく,それ以外の未知の自然リンパ球をも含む1).3型自然リンパ球のなかでも,NKp46陽性の3型自然リンパ球はインターロイキン22を大量に産生し病原性細菌の感染から腸管を防御するはたらきをもつ細胞としてその役割が注目されている2)
 樹状細胞やマクロファージを含めた抗原提示細胞は獲得免疫の誘導において重要であるが,同時に,自然免疫とも深く関連することが知られている.とくに,腸管に存在するユニークな抗原提示細胞としてCD103やCD11bなどの細胞表面マーカーを発現する樹状細胞およびマクロファージが存在し,これらの細胞による自然免疫と獲得免疫との相互作用が腸管における恒常性の維持に重要な役割をはたすことが明らかにされている3).この研究は,ケモカイン受容体CX3CR1を発現するCD103陰性CD11b陽性の樹状細胞がケモカインCXCL16とのクロストークにより3型自然リンパ球を制御し,病原性細菌の感染から腸管を防御し恒常性の維持にはたらいていることを明らかにした.

1.ケモカインCXCL16の腸管における発現はケモカイン受容体CX3CR1により制御されている

 3型自然リンパ球の機能や細胞分化については少しずつ明らかにされてきたが,細胞の遊走を含め,3型自然リンパ球がどのように制御されているかについては不明であった.そこで,樹状細胞の産生するインターロイキン23により3型自然リンパ球が活性化するという報告に着目し4,5),サイトカインだけではなくケモカインによる3型自然リンパ球の制御の可能性について検討した.まず,MHCクラスII分子およびCD11cを発現する抗原提示細胞をCD11bの発現の有無により分離したのち,CD11b陰性細胞およびCD11b陽性細胞におけるケモカインの発現を解析した.その結果,CD11b陽性細胞ではケモカインCXCL16を発現しており,さらに,CD11b陽性細胞からのインターロイキン23の産生を示唆する結果が得られた.また,このCD11b陽性細胞はケモカイン受容体CX3CR1を同時に発現していたことからさらに詳細に解析したところ,マクロファージや炎症性単核球とは異なるCX3CR1陽性CD11b陽性の樹状細胞であることも判明した.
 このCXCL16を発現するCX3CR1陽性の樹状細胞と細菌との関連について確認するため,Citrobacter rodentiumに感染したマウスの小腸の粘膜固有層に存在するMHCクラスII分子陽性CD11c陽性の樹状細胞をそれぞれのサブセットに分離し,おのおののサブセットにおけるCXCL16の発現の差について比較した.その結果,CD103陰性CD11b陽性の樹状細胞におけるCXCL16の発現はC. rodentiumに感染したのち上昇し,また,腸内細菌をもたないマウスにおいては,CX3CR1陽性の樹状細胞におけるCXCL16の発現は低下していた.以上により,細菌への感染および腸内細菌に対し,CD103陰性CD11b陽性の樹状細胞がケモカインCXCL16を介し関与していることが示唆された.

2.ケモカイン受容体CXCR6は腸管に存在する3型自然リンパ球の恒常性の維持に寄与する

 さきに述べた解析にくわえ,ケモカイン受容体CX3CR1を欠損したマウスの腸管においてケモカインCXCL16の発現が顕著に低下することが判明したことから,T細胞およびB細胞を欠損するRORγt-GFP発現レポーターマウスの小腸の粘膜固有層からナチュラルキラー細胞,NKp46陽性3型自然リンパ球,リンパ組織誘導細胞を分離し,ケモカイン受容体の発現を網羅的に比較した.その結果,3型自然リンパ球のなかでもとくにNKp46陽性3型自然リンパ球がケモカイン受容体CXCR6を強く発現していることが明らかになった.このCXCR6はCXCL16の受容体として知られており,CXCL16とCXCR6とのクロストークを介したCX3CR1陽性の樹状細胞とNKp46陽性3型自然リンパ球との直接的な関連を示唆するものであった.つぎに,CXCR6が3型自然リンパ球にどのように影響しているのかを検討するためCXCR6ノックアウトマウスを解析したところ,NKp46陽性3型自然リンパ球のみが顕著に減少していた.一方,リンパ組織誘導細胞を含むほかの3型自然リンパ球に大きな影響はなかった.同時に,CXCR6ノックアウトマウスにおいてはNKp46陽性3型自然リンパ球からのインターロイキン22の産生も大幅に減少しており,CXCR6はNKp46陽性3型自然リンパ球の機能にも影響していることが示唆された.
 小腸におけるリンパ球の局在にCXCR6が関与しているかどうかを明らかにするため,CXCR6ノックアウトマウスの腸管を免疫組織学的に解析した.小腸においてはおもに陰窩にリンパ組織誘導細胞などの集積が確認でき,粘膜固有層にはCXCR6陽性NKp46陽性の3型自然リンパ球の存在することが判明した.しかしながら,CXCR6ノックアウトマウスにおいてはリンパ組織誘導細胞などCD4陽性の3型自然リンパ球のリンパ節への集積は野生型のマウスと同じく陰窩に形成されていたが,粘膜固有層に存在する3型自然リンパ球(おもに,NKp46陽性3型自然リンパ球)の分布はみられなかった.以上より,ケモカイン受容体CXCR6がNKp46陽性3型自然リンパ球の遊走に関与し,さらに,その機能にも影響していることが明らかになった.

3.ケモカイン受容体CXCR6は細菌への感染からの腸管の防御にはたらく

 これまでの研究により,腸管上皮においてインターロイキン22がインターロイキン22受容体を介し抗菌タンパク質の産生に関与することが判明している.また,筆者らの以前の研究により,C. rodentiumへの感染により3型自然リンパ球からのインターロイキン22の産生が誘導されることも明らかにされていたので,ケモカイン受容体CXCR6を発現するNKp46陽性3型自然リンパ球と細菌への感染との直接的な関連を明らかにするため,T細胞およびB細胞を欠損するCXCR6ノックアウトマウスにC. rodentiumを感染させ,マウスへの影響を解析した.その結果,CXCR6をホモで欠損したマウスは約2週間で出血性腸炎により死亡したのに対し,対照となるCXCR6をヘテロで欠損したマウスは1カ月近くも生存した.また,CXCR6をホモで欠損したマウスの腸管ではC. rodentiumの数が増加していることも判明した.さらに,感染における抗菌タンパク質RegIIIの関与について検討したところ,CXCR6をホモで欠損したマウスではRegIIIの発現が低下しており,この結果はインターロイキン22の減少と対応するものであった.実際に,インターロイキン22が腸管上皮の保護に寄与しているのかどうかを検討するため,T細胞およびB細胞を欠損するCXCR6ホモノックアウトマウスにインターロイキン22を投与したところ,C. rodentiumの感染による腸炎の発症は抑制され生存率も飛躍的に上昇した.
 以上より,ケモカイン受容体CXCR6を発現するNKp46陽性3型自然リンパ球は,インターロイキン22の産生を介し病原性細菌からの腸管の防御にはたらくことが明らかにされた(図1).

figure1

おわりに

 近年,自然リンパ球の役割やその細胞分化について少しずつ明らかにされてきた.しかしながら,自然リンパ球がどのように制御されているかについては不明な点が多かった.今回,ケモカインCXCL16とケモカイン受容体CXCR6とのクロストークによる,樹状細胞および3型自然リンパ球の腸管における制御が明らかにされたことから,感染症に対する予防および治療への足がかりになることが期待されるが,細菌との直接の関係など不明な点は多く存在する.今後は,同じ3型自然リンパ球でも,リンパ組織誘導細胞とNKp46陽性3型自然リンパ球との機能や制御の相違,さらに,ほかの3型自然リンパ球についての詳細に関し,さらなる研究が待たれる.

文 献

  1. Spits, H., Artis, D., Colonna, M. et al.: Innate lymphoid cells: a proposal for uniform nomenclature. Nat. Rev. Immunol., 13, 145-149 (2013)[PubMed]
  2. Satoh-Takayama, N., Vosshenrich, C. A., Lesjean-Pottier, S. et al.: Microbial flora drives interleukin 22 production in intestinal NKp46+ cells that provide innate mucosal immune defense. Immunity, 29, 958-970 (2008)[PubMed]
  3. Varol, C., Zigmond, E. & Jung, S.: Securing the immune tightrope: mononuclear phagocytes in the intestinal lamina propria. Nat. Rev. Immunol., 10, 415-426 (2010)[PubMed]
  4. Kinnebrew, M. A., Buffie, C. G., Diehl, G. E. et al.: Interleukin 23 production by intestinal CD103+ CD11b+ dendritic cells in response to bacterial flagellin enhances mucosal innate immune defense. Immunity, 36, 276-287 (2012)[PubMed]
  5. Satpathy, A. T., Briseno, C. G., Lee, J. S. et al.: Notch2-dependent classical dendritic cells orchestrate intestinal immunity to attaching-and-effacing bacterial pathogens. Nat. Immunol., 14, 937-948 (2013)[PubMed]

生命科学の教科書における関連するセクションへのリンク

東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構自然科学教育高度化部門から公開されている生命科学の教科書 “A Comprehensive Approach To LIFE SCIENCE”(羊土社『理系総合のための生命科学 第2版』の英語版)における関連するセクションへのリンクです.

著者プロフィール

佐藤 (高山) 尚子(Naoko Satoh-Takayama)
略歴:2007年 東京大学大学院新領域創成科学研究にて博士号取得,フランスPasteur Institute博士研究員を経て,2011年より同Assistant Professor.
研究テーマ:粘膜免疫学.

© 2014 佐藤 (高山) 尚子 Licensed under CC 表示 2.1 日本


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この作品のライセンスはクリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本です。