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ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞の抗体産生刺激能をもつサブセットとそれらの自己免疫疾患における関与

2011年3月2日

森田林平1・上野英樹2
1慶應義塾大学医学部 微生物学教室,2米国Baylor Research Institute,Baylor Institute for Immunology Research)
email:森田林平上野英樹
DOI: 10.7875/first.author.2011.037

Human blood CXCR5+CD4+ T cells are counterparts of T follicular cells and contain specific subsets that differentially support antibody secretion.
Rimpei Morita, Nathalie Schmitt, Salah-Eddine Bentebibel, Rajaram Ranganathan, Laure Bourdery, Gerard Zurawski, Emile Foucat, Melissa Dullaers, SangKon Oh, Natalie Sabzghabaei, Elizabeth M. Lavecchio, Marilynn Punaro, Virginia Pascual, Jacques Banchereau, Hideki Ueno
Immunity, 34, 108-121 (2011)

要 約

 濾胞性ヘルパーT細胞は末梢リンパ組織の胚中心に存在し,胚中心のB細胞の分化やクラススイッチを誘導することにより抗体反応の誘導に必須の役割をはたすCD4陽性T細胞サブセットである.マウスの実験系において濾胞性ヘルパーT細胞が体内で過多に誘導されるとB細胞の抗体反応の制御ネットワークが崩壊し自己免疫疾患を誘導することが報告されている.濾胞性ヘルパーT細胞はケモカイン受容体であるCXCR5を発現し,B細胞の増殖,分化,クラススイッチを促すインターロイキン21を産生する.ヒト末梢血においてCXCR5を発現するメモリーCD4陽性T細胞の存在は長く知られていたが,ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞と濾胞性ヘルパーT細胞との関連はこれまで不明であった.今回,筆者らは,ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞が濾胞性ヘルパーT細胞と機能および表現型を共有し抗原特異的な細胞も存在することから,濾胞性ヘルパーT細胞の血液におけるメモリー細胞に相当する可能性の高いことを証明した.マウスの実験系において濾胞性ヘルパーT細胞が独立したT細胞集団であるかどうかは以前より議論が分かれていたが,ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞集団にはTh1細胞,Th2細胞,Th17細胞が混在しており,ナイーブB細胞をクラススイッチした抗体産生細胞に分化できるのはこのうちTh2細胞とTh17細胞にかぎられていることを明らかにした.さらに,従来のマウスを用いた所見とは異なり,ヒトのTh1細胞はCXCR5の発現にはかかわらずB細胞を抗体産生細胞に分化誘導することのできないことを発見した.最後に,自己免疫疾患である小児皮膚筋炎患者の末梢血のCD4陽性T細胞の解析により,この疾患ではCXCR5陽性Th2細胞およびCXCR5陽性Th17細胞が健常人に比べ多く誘導されていること,さらに,これらのCXCR5陽性CD4陽性T細胞サブセットでのかたよりは小児皮膚筋炎での活性度,末梢血での形質芽細胞の数と正の相関を示すことを明らかにした.この報告は,ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞が体内での濾胞性ヘルパーT細胞の誘導および活性化を反映することを示した最初の論文である.自己免疫疾患や感染症などにおいて血液試料を用いた体内での濾胞性ヘルパーT細胞の反応性の測定は臨床面から非常に意義のあるものと思われる.

はじめに

 CD4陽性T細胞はT細胞に依存性の抗体産生において重要な役割をはたす.近年,リンパ濾胞に存在する濾胞性ヘルパーT細胞がそこで中心的な役割をはたすことが認識されてきた1).この濾胞性ヘルパーT細胞はT細胞が末梢リンパ組織で活性化されたのち,ケモカイン受容体であるCXCR5を発現してリンパ濾胞に移動し胚中心の形成に参加する.胚中心において濾胞性ヘルパーT細胞は,インターロイキン4,インターロイキン10,インターロイキン21などのサイトカインや,ICOS,CD40リガンドなどの表面抗原を発現し,胚中心B細胞の選択,分化,増殖を行う.マウスの系で転写因子のひとつBcl6が濾胞性ヘルパーT細胞の体内での誘導に必須であることが証明され2),濾胞性ヘルパーT細胞はTh1細胞,Th2細胞,Th17細胞など,既知のCD4陽性T細胞サブセットとは異なる独立した集団であると考えられている.一方,生体ではほかのT細胞サブセットが濾胞性ヘルパーT細胞に分化している可能性もある.たとえば,寄生虫感染モデルでのTh2細胞3),また,自己免疫疾患マウスモデルでのTh17細胞が4),リンパ節濾胞に侵入し濾胞性ヘルパーT細胞に分化しうることが報告されている.したがって,依然として濾胞性ヘルパーT細胞とほかのCD4陽性T細胞集団との関係は不明である.
 これらの知見はおもに近交系マウスを用いることで得られてきたものである.一方,ヒトにおける濾胞性ヘルパーT細胞の機能にはさらに不明な点が多い.しかも,マウスとは異なるヒト独自のT細胞に依存性の抗体産生反応の存在する可能性もある.したがって,ヒトの濾胞性ヘルパーT細胞の解析はヒトの自己免疫疾患などの病態を考えるうえでも非常に大切であると考えられる.この研究では,ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞の表現型ならびに機能を中心に解析をした.

1.ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞はナイーブB細胞を抗体産生細胞に分化させる

 ヒト末梢血のCD4陽性T細胞はCD45RAとCXCR5の発現パターンにより,ナイーブT細胞,CXCR5陰性メモリーT細胞,CXCR5陽性メモリーT細胞の3つの集団に分類できる.これらをナイーブB細胞とスーパー抗原の存在のもとで共培養すると,CXCR5陽性T細胞のみがナイーブB細胞をCD38陽性の抗体産生細胞に分化誘導した.これらのB細胞は免疫グロブリンMのみならず免疫グロブリンGや免疫グロブリンAをも産生することから,CXCR5陽性T細胞はB細胞のクラススイッチをひき起こす機能をもつことが明らかになった.

2.ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞はインターロイキン21とICOSに依存的にナイーブB細胞の抗体産生細胞への分化を促す

 ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞はB細胞と会合することにより,インターロイキン21,インターロイキン10,および,CXCR5のリガンドであるCXCL13を特異的に産生することを見い出した.このサイトカインの産生パターンは濾胞性ヘルパーT細胞と非常に類似していた.さらに,機能面においてもCXCR5陽性CD4陽性T細胞はインターロイキン21とICOSを介してB細胞の抗体産生を誘導する機能を発揮することがわかり,濾胞性ヘルパーT細胞とB細胞の抗体産生を誘導する機能を共有していることが示された.さらに,サイトメガロウイルスやインフルエンザウイルスの抗原に特異的なCXCR5陽性CD4陽性T細胞がヒト末梢血に存在することがわかった.したがって,ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞はリンパ組織の濾胞性ヘルパーT細胞あるいは濾胞性ヘルパーT細胞に関連した細胞から生じたメモリー細胞であるものと考えられた.

3.ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞はTh1細胞,Th2細胞,Th17細胞から構成される

 ヒト末梢血を用いてCXCR5陽性CD4陽性T細胞集団が既知のT細胞集団とは異なる独立した集団であるかどうかを検討した.CXCR5陽性CD4陽性T細胞集団におけるケモカイン受容体,CXCR3(ヒトTh1細胞マーカー)とCCR6(ヒトTh17細胞マーカー)の発現パターンにより,CXCR5陽性CD4陽性T細胞はCXCR3陽性CCR6陰性細胞,CXCR3陰性CCR6陰性細胞,CXCR3陰性CCR6陽性細胞の3つのサブセットから構成されることがわかった.サイトカイン,および,Th1細胞,Th2細胞,Th17細胞のサブセットに特異的な転写因子の発現の解析により,CXCR5陽性CD4陽性T細胞のおのおののサブセットがTh1細胞,Th2細胞,Th17細胞に相当することが判明した.すなわち,ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞は独立した細胞集団ではなく,既知のT細胞サブセットから構成されていることが明らかになった.

4.B細胞の抗体産生を誘導する機能をもつCD4陽性T細胞はCXCR5陽性Th2細胞とCXCR5陽性Th17にかぎられる

 CXCR5陽性Th2細胞とCXCR5陽性Th17細胞はナイーブB細胞との共培養によりインターロイキン21を産生し効率よく免疫グロブリンの産生を誘導した.CXCR5陽性Th2細胞は免疫グロブリンGと免疫グロブリンE,CXCR5陽性Th17細胞は免疫グロブリンGと免疫グロブリンA(とくに,粘膜免疫にかかわる免疫グロブリンA2)の産生を強く誘導した.一方,CXCR5陽性Th1細胞はインターロイキン21を産生せず,ナイーブB細胞およびメモリーB細胞のいずれからも免疫グロブリンの産生を誘導することはできなかった.マウスではTh1細胞は免疫グロブリンG2aのクラススイッチを促すことで抗体反応に関与することが知られており,ヒトとマウスでの免疫制御の違いのひとつであると考えられた.ちなみに,濾胞性ヘルパーT細胞とは異なり,ヒト末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞集団はBcl6を高発現していなかった.しかし,Bcl6に拮抗作用をもつBlimp1の発現は,いずれのCXCR5陰性CD4陽性T細胞サブセットに比べてもCXCR5陽性CD4陽性T細胞サブセットでは低く,CXCR5陽性CD4陽性T細胞サブセットがBcl6とBlimp1との比をBcl6優位に保っていることが判明した.

5.小児皮膚筋炎では末梢血のCXCR5陽性CD4陽性T細胞の構成はTh2細胞とTh17細胞に偏向する

 小児皮膚筋炎は末梢血に形質細胞の増加と自己抗体を認める自己免疫疾患である.健常人や炎症性T細胞による乾癬性関節炎患者と比べ,小児皮膚筋炎患者の末梢血ではCXCR5陽性Th1細胞の減少とB細胞の抗体産生を誘導する機能をもつCXCR5陽性Th2細胞とCXCR5陽性Th17の有意な増加を認めた.この傾向はステロイドや免疫グロブリンの大量投与により変わることはなかったが,皮疹や筋力低下をともなう疾患の活動性の上昇にともない顕著となることが明らかになった.

6.小児皮膚筋炎でのCXCR5陽性CD4陽性T細胞の偏向は形質細胞の増加と相関する

 CXCR5陽性Th1細胞に対するCXCR5陽性Th2細胞とCXCR5陽性Th17細胞の割合,また,ヒト末梢血の形質細胞の数との相関性を調べたところ,無症状患者群では相関性は認められなかったが,皮疹や筋力低下のある患者群では有意な正の相関性を示した.一方,CXCR5陰性Th1細胞に対するCXCR5陰性Th2細胞とCXCR5陰性Th17細胞の割合は相関性を示さなかった.これらのことより,CXCR5陽性CD4陽性T細胞サブセット,すなわち,濾胞性ヘルパーT細胞でのサブセットのバランスの崩壊が小児皮膚筋炎の病態の形成に深く関与していることが示唆された.

おわりに

 この研究では,ヒト末梢血のCD4陽性T細胞の解析により,これまではあいまいであった濾胞性ヘルパーT細胞とTh1細胞,Th2細胞,Th17細胞との関連が明らかになった.CXCR5陽性Th2細胞とCXCR5陽性Th17細胞の2つのCD4陽性T細胞サブセットがB細胞の抗体産生を誘導する機能をもち,CXCR5陽性Th1細胞はこれをもたないことはヒト独自の免疫機構であると考えられた(図1).筆者らの報告は,これらの集団におけるバランスの崩壊がヒトにおいて自己免疫疾患の病態の形成に深く関与していることを示唆していた(図2).さらに,CXCR5陽性Th2細胞とCXCR5陽性Th17細胞はおのおの異なる免疫グロブリンのアイソタイプを誘導することを報告した.CXCR5陽性Th17細胞は免疫グロブリンAの誘導能をもつことから,粘膜免疫系を利用したワクチン開発において有用なターゲットとなるとも考えられる.

figure1

figure2

文 献

  1. King, C., Tangye, S. G. & Mackay, C. R.: T follicular helper (TFH) cells in normal and dysregulated immune responses. Annu. Rev. Immunol., 26, 741-766 (2008)[PubMed]
  2. Nurieva, R. I., Chung, Y., Martinez, G. J. et al.: Bcl6 mediates the development of T follicular helper cells. Science, 325, 1001-1005 (2009)[PubMed]
  3. Zaretsky, A. G., Taylor, J. J., King, I. L. et al.: T follicular helper cells differentiate from Th2 cells in response to helminth antigens. J. Exp. Med., 206, 991-999 (2009)[PubMed]
  4. Bauquet, A. T., Jin, H., Paterson, A. M. et al.: The costimulatory molecule ICOS regulates the expression of c-Maf and IL-21 in the development of follicular T helper cells and TH-17 cells. Nat. Immunol., 10, 167-175 (2009)[PubMed]

生命科学の教科書における関連するセクションへのリンク

東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構自然科学教育高度化部門から公開されている生命科学の教科書 “A Comprehensive Approach To LIFE SCIENCE”(羊土社『理系総合のための生命科学 第2版』の英語版)における関連するセクションへのリンクです.

著者プロフィール

森田 林平(Rimpei Morita)
略歴:2002年 京都大学大学院医学研究科博士課程 修了,2005年 米国Baylor Research Institute博士研究員,2008年 米国Yele大学 博士研究員を経て,2010年より慶應義塾大学医学部 講師.
研究テーマ:ヒトT細胞のリプログラミング方法の探索,インターロイキン1βの産生機序の解明.
抱負:ヒトとマウスの両方の研究をとおして新たな免疫学の分野を開拓したい.

上野 英樹(Hideki Ueno)
米国Baylor Research InstituteにてAssociate Investigator(PI).

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